#185 キング・オブ・日本史 織田信長 〜本当のとこ、どうやったん?〜

【今回の内容】
増え続けるラジオ台本/Spotifyでオリジナルエピソード配信中!/新しいポッドキャスト番組『超相対性理論』も配信中!/織田信長の実像とは……?/意外と謎だらけ/信長の功績/そもそも武士って何だろう/まずは信長の800年前にさかのぼろう/戦国時代の動機/日本史ならではの権力構造に迫る/

樋口:世界の歴史キュレーションプログラムコテンラジオ。世界の歴史キュレーションプログラムコテンラジオパーソナリティの株式会社BOOK代表樋口聖典です。

深井:株式会社COTEN代表の深井龍之介です。

楊:同じく株式会社COTENの楊睿之です。

樋口:このラジオは歴史を愛し歴史の面白さを知りすぎてしまった深井さんを代表とする株式会社コテンのお二人と一緒に学校の授業ではなかなか学べない国内外の歴史の面白さを学んじゃおうという番組です。よろしくお願いします。

深井:はい、お願いします。

楊:よろしくお願いします。

樋口:さあさあさあ、調子いいですか、深井さん。

深井:調子ね、今日ちゃんと寝たんで意外といいですね。

樋口:まじですか。じゃあ今日はサクッと終わっていきますかね。

深井:めっちゃ長いけどね。

楊:ページめっちゃ長いよね。

樋口:めっちゃ長い。

深井:130何ページ。

樋口:130何ページ。

深井:全部喋んないけどね。

樋口:ちょっと待って、第一次世界大戦が一番長かった。

深井:インフレしてる、ずっと。ずっとインフレーションなんです。

楊:そうですね、誰か止めてくれ。

樋口:いつかバブルが弾けます。

深井:弾けますよ。死ぬとかで弾ける。おれが死ぬとか。

樋口:早くいこう、早く次にいこう。ということで、まず告知の方をざっとお願いしたいんですけども。

深井:前も言った、どこかで言ったけど、スポティファイでしか聞けないオリジナル番組を出してるんです。コテンラジオスポティファイオリジナル。再生数みたら全然聞かれてない、まだ。

樋口:なんで。

深井:あまりおれらが告知してないから。聞いたけど忘れてる人とかいる。これ聞いてる人スポティファイで聞いた方がいい。おれら頑張って作った。この織田信長とか勉強しながらそっちも勉強して作った。ヤンヤンがけっこう喋ってる、メインスピーカーがヤンヤンでやってるやつとかもいっぱいあって、カーネルサンダースとかめちゃくちゃ評判いい。

樋口:カーネルサンダースね。

楊:みんなKFC食いに行きました。

深井:そう、食いに言ってくれた。別に手先でもなんでもないけど、ケンタッキーの。今出してるエピソードが孔子、中国の孔子とグーテンベルク、印刷の。あとキング牧師、ガンディー2みたいな立ち位置でキング牧師やってるのと、あとはさっき言ったカーネルサンダース、これは65歳から頑張ってケンタッキー作ったんだよって話。あとはマヤ文明ですね。めちゃくちゃやばい儀式してたよって話。

樋口:これも面白かった。

深井:あと、もう一つはヤンヤンがメインスピーカーでまだ残っててこれから録る。何やるのかね。

楊:それは聞いてからのお楽しみ。

樋口:ええ。

深井:お楽しみか。ということで。

樋口:じらすね。

深井:コテンラジオでスポティファイで出たら二つとも出てくる。コテンラジオとあとスポティファイオリジナルのコテンラジオでてくるから是非聞いて見て欲しいですね。

樋口:あれなんですよね、本編はだいたい10話から12話とかしてますけど、スポティファイオリジナルは大体前編後編で2話。

深井:大体というか全部2話。2話構成。さっくり聞ける。1時間半以内じゃないかな、2話で。

樋口:さくっと聞けるので導入としてもいいですよね。

深井:せっかく録ったのにもったいないなと思って、皆さんにもっと聞いて欲しいなと思います。

樋口:と言うことでお願いします。

楊:お願いします。

樋口:もう一個深井さんの方から告知があります、お願いします。

深井:はい。ポッドキャスト新しくもう一個始めました。

樋口:いよ、おめでとうございます。

深井:ありがとうございます。樋口塾に影響されてまた始めました、僕たち。

樋口:ありがとうございます。

深井:僕たちといってもここの三人とはまた違う三人でやってまして。

楊:誰ですか。

深井:学びデザインという会社の社長さんであるボイシーでブックカフェという番組もされてる荒木博行さん、ぼくひろさんと呼んでる、と、TAKRAMのコンテクストデザイナーである渡邊康太郎さん、康太郎さんと呼んでるんですけど、この二人、すっごい賢いんですけど。

樋口:めちゃくちゃかしこい、僕も聞かせてもらいましたけど。

深井:この3人でテーマ決めて雑談するってのをやってるんだけども、まあ本当2人が賢い。

樋口:まずなんであんなに知識量があるんだ。

深井:本をめっちゃ読んでるからだと思う。あの2人めちゃくちゃ本読んでてすごく洞察インサイトも深くて、僕自身が話しててすごく楽しいんです。それを僕たちが楽しむ番組なんです。ポッドキャストだから振り切って見ようと思って、結構難しい言葉とかも使っちゃってるんだけど、素で話す時はあれが僕らも楽って感じ。本当だからあんまリスナー意識せずに3人で話すのを楽しんでる感じ。

樋口:本当そんな感じがしますね。

深井:超相対性理論という番組。

樋口:タイトルが頭いい。

深井:逆に一周回って頭悪いけどね。

楊:超とつけたのは何か理由があるの。

樋口:確かに。

深井:3話目くらいにその理由が出てくるから。

楊:そうなんだ。

深井:いま、4話、5話くらいまで。これが放送されてる頃には6話7話くらいまでがたぶん放送されてるんで、是非興味ある人は本当是非聞いて欲しいなと思います。

楊:ちなみにどういうテーマがあるの。

深井:テーマは、例えば、我々は数字の奴隷から脱却できるのか、とかね。

樋口:なんかエロいですね。

深井:エロいか。

樋口:頭良すぎてエロい。

深井:康太郎さんはセクシーだよ。

樋口:エロい。

深井:康太郎さんはすごいセクシーなこと言って、最後セクシーに締めてくるんですけど。

樋口:かっこいいですよね。

深井:本当そう、かっこいい。是非聞いてください。

樋口:はい。

深井:ということで、告知そんな感じですかね。

樋口:よろしくお願いします。

深井:お願いします。

樋口:キングオブ日本史織田信長本当のとこどうやったん。でございます。

深井:そういうふうな言い方する。

樋口:いま俺なりのやつなんですけど。来たですね、ついに。

深井:ついに来ましたね、織田信長。

楊:日本史のスーパースター。

樋口:タイトルになってますけどキングオブ日本史です。

深井:まさに本当キングオブ日本史ですね、この人は。

樋口:しかも織田信長というキャラがどれだけ歴史知らない人でも絶対知ってる。

深井:知ってる。

樋口:やっぱり信長、家康、秀吉、てのはその辺で、僕でも相当知ってるくらい。僕イメージでいうとかっこいい、強い、ホトトギス殺す人。

深井:そうね。

楊:そうだね。

深井:可愛いのにね、ホトトギス。

樋口:残虐で能力がめちゃくちゃ高くて魔王みたいなイメージ。そういったイメージですね信長。

深井:そうですね、おかしくはないというかずれてはなくて、実際にそこそこ残虐だし、強いし、自分で魔王とか言っちゃったし、彼も。

樋口:そうなんですか、へえ。

楊:仏教の中でのね。一つの考え方。

深井:そうそう、だからすごく、そのイメージからずれてはないんだけど、もう一つイノベーターみたいなイメージがある、彼には。革新者である。そこらへんは意外と史実と違ってたりする。

樋口:そうなんですか。

深井:最近の研究ではね。

樋口:小さい声で言ったな。

深井:研究が進んでる、どんどん。だから僕たちが習ってる時とかと全然違う感じになってる、最近。

樋口:そういうことか。

楊:日本史研究する人は日本人がほとんどなんですけど、すさまじく細分化してて、今回も文献探すのに相当苦労した。

深井:通してちゃんと書いてあるみたいなのが逆に少なくて、まとめてちゃんと書いてあるやつがほとんどなくて。信長の経済政策についてとか、なになにについてとかはいっぱいある。

楊:ディテールを深掘りしたやつが多い。

深井:じゃあ信長全体で結局どうなのかみたいなのをちゃんと書く、彼の一生通じて系があんまりなくて、それを見つけるまでまあ苦労しましたね。

楊:何冊買った、今回。

深井:わかんないけど、60冊くらいになる。

楊:おれの方は20冊自分でまた買ったから。

深井:バリューブックスさんに40冊は用意してもらったうえにヤンヤン20冊さらに。それだけで60冊。

楊:あと、室越さんと。

深井:おれも買ってるから。

楊:100冊くらいになってる。

深井:かもしれない。

樋口:やばい。逆にいうとその100冊分をぼく今から聞けるってこと。

深井:そういうことです。

樋口:それをまとめると台本でいうとどれくらいになったんですか。

深井:それが130ページくらい。

樋口:きつい。

深井:聞く方も言う方も。どっちもきついみたいな。最後全員きつくなるみたいな。

樋口:第一次世界大戦、でも第一次世界大戦もきつかったけどすごかったですからね。

深井:適宜省くよ。言わなくていいこともあるし。

楊:そう、学校の授業じゃないし。

深井:諸説分かれてる、結局。定見がないんです。と言うことでそこらへんの中でエッセンスを抜き出して、ていっても結構ありますけど。エッセンス抜き出して喋っていけたらなと思ってる。日本の戦国時代、結構取り上げるの遅いじゃないですか。

樋口:そうですね、もっと早く来るかと思ってた。

深井:キャラが多い、誰にしようと思ってた。誰でもいい、正直。全員キャラ立ちしてるから誰でも面白いけど、超メインでいこうと思って今回は織田信長っていうのを選んでます。

楊:キャラが一番立ってるであろうという先入観。

樋口:先入観ね。

深井:最近の研究でイメージ変わって来てるから。最近の研究どう変わったのかという話も今回は皆さんに伝えられたらいいなと思う。

樋口:面白そう。

深井:天下布武ってわかります、ドラマとか大河ドラマとかで聞いたことないですかね。天下に武を敷く、布って字を書いて天下布武といって、天下統一してやるぞみたいなイメージがあるんですけど。最近の説だとそうでもないっていう説がある、そうでもない。天下のことなんか彼は考えてなかったんじゃないか、とかいう人もいれば、いややっぱり天下のこと考えてる、っていう人もいるみたいな。

樋口:ほお。

楊:あと、天下の範囲も違う。

深井:天下の範囲が近畿地方か機内と当時いう、関西の方だけっていう概念だったりだとか、いや、それはちゃんと東北くらいまでいれた全部で天下と彼は呼んでたんじゃないかという説とか。けっこう学者さんで言うことも違う。

樋口:なるほどね。

楊:どこのディテールに注目して言うかによっても立場とか説も変わってくるし。

深井:変わってくるし、それが変わるだけで彼がどんな人か死ぬほど変わる、そもそも。だから今回は結構信長の人物像自体はぼやけてる。

樋口:そうか情報がありすぎて。

深井:ありすぎるんじゃないですね。無さすぎて諸説分れるということです。彼が天下ってこのことだよとか言ってるのが残ってたらそれでフィニッシュするんですけど、そういうこと言ってるわけじゃないので、この人が天下布武と言ってるけどそれがつまりどういうことなのかってことは諸説で分れて行くと言う感じなですね。

樋口:はいはい。

深井:とはいえファクトとして残っていてこれはやったやってないというのはわかってることがあるで、それを起点として整理していくというのが今回のシリーズなんですけど。そもそも結局信長が何した人かというところ。何した人だと思いますか。

樋口:天下統一の礎を作ったみたいな。イメージ。

深井:正しい。

樋口:やった。歴史詳しくなってきた。

深井:でもね、それで僕が彼の勉強して一言で何がポイントだったかと思うと、やっぱり室町幕府を終わらせたってところが一番でかいなと思った。鎌倉幕府、室町幕府ときて、この室町幕府の最後の将軍で足利義昭という将軍がいるんですけど、この人を追放するんです。実質的には将軍を追放したことによって室町幕府が終わった。将軍という称号は実は残ってたんですけど、実質終わった。この実質終わったってのがめちゃくちゃターニングポイントだったんだろうなと思ってる。一言でいうとそれをした人。

樋口:室町幕府を終わらせた人。

深井:そう、それが後の僕の一言でいうと何した人かってのは人によってたぶん違うんで。僕が5—60冊読んだ時にそう思ったってことです。いっぱい有名な戦いがある、彼。聞いたことあると思うけど桶狭間の戦い、vs今川氏、今川義元。長篠の戦い、これは甲斐武田氏、甲斐の武田。姉川の戦い、浅井長政。

楊:比叡山延暦寺の焼き討ち。

樋口:聞いたことある。

深井:好きな最澄の寺を焼いたところです。

樋口:僕らも行きました、京都。

深井:みたいなのがあって、これがどうだったかみたいなことも今回はシリーズの中で紹介していきたいなと思います。いろんな戦いで彼は勝ってきてるんだけど、日本を秀吉とか家康みたいな形で統一したわけではない。

樋口:ですね。

深井:統一する過程で毛利輝元と戦ってる途中で彼は本能寺で死んでしまう。

楊:明智光秀に討たれて。

深井:謀反で殺されてしまう、みんな知ってると思うけどね。ていうことが起こります。

樋口:ネタバレして大丈夫。

深井:ネタバレして、さすがにみんな知ってる。

樋口:ラストシーン。

深井:今の発言で驚いてる人がいたら逆に僕が驚きます。

樋口:よかったよかった。

深井:ていうのと。あとは今回信長を語るに当たってそもそも武士とはなんなのかという話をしていきたいなと思います。天皇の時にシリーズの天皇のシリーズの時に一瞬だけ出て来てる。そこをかなり今回ちゃんと掘り下げるというのをやりました。

樋口:武士ね、わかんない。

深井:武士って何。というところとどうやって生まれたのかという話です。これを語るために結局信長が生まれる800年前に遡る羽目になった。

樋口:え。今日。

深井:今日。だから今回の話は信長の話なんだけど、信長が生まれる800年前から始まります、話が。

楊:じゃないと信長という人物が生んだ時代の構造が理解できない。

深井:できないし、なんで彼がこういう動きするのかというのが全部意味がわからない。信長の上にこう言う人がいるんだけど、この人と信長の関係がどういう状況なのかがわからないからずっともやもやするんです。

樋口:800年前。

深井:800年前に遡らないとそれが分からないということがわかった。

樋口:なんですかね。優しいですね。

深井:優しいのかな。

樋口:ありがとうございます。

深井:優しいというか自分が疑問だったんです。誰、と思って。守護とか出てくるんですけど、守護って何みたいな。それは教科書とか調べたら書いてあるよ、それは知ってますよ。知ってるけど読んでも意味がわからない、守護、地頭とか出てくるんだけど、役職で。誰、みたいな。つまりどういうことみたいなのがずっとわからなくて、それを掘り下げていくと800年前まで戻った。あとは幕府って何ってことですね。室町幕府を終わらせるってどういうことってことだし、足利義昭って誰って話。足利義昭は何してる人なのかという話だし、信長との関係性どういう関係性なのかって話だし、天皇との関係性がどういう関係なんですか、ないしは毛利とか上杉とか武田とかと信長とかとどういう関係築いてて、この人たちがそれぞれどういう利害関係にある状態で何を目指してる状態でこれが起こってるのかがわからないと戦国時代ってわからない。信長って途中で上洛って京都に行くんだけど、なんで信長が上洛しようと思ったのかもわからない、そもそも、それがわからないと。わからないし、じゃあ信長が上洛するけどなんで上杉と武田上洛してないのってのもわからない。なんで朝倉とかが上洛しないのかがわからない。そういうのを幕府とは何か、足利義昭とは何か、ということがわからないと彼らの行動原理ってのが全部もやっとしかわからない。今回はそこまで遡ることによってそこそこクリアになるんじゃないかなと思ってます。そこそこね、むずいよ、むずいけどそこそこクリア。

樋口:それは壮大だ。

楊:戦国時代って文学作品とかドラマとかいっぱいコンテンツとして扱われてるのでなんとなく馴染み深いというイメージがあると思う。普通の日本人だったら、僕もそうなんですけど。実際勉強してみるとスパルタくらいに全然違う、僕らの今生きてる社会の構造だったりとかアクションにつなげるための価値観だったりとか。全然違うので、それをわかるから遡って今目の前にある、戦国時代にある一つの価値観だったり仕組みだったりの昔に遡っていかないとなかなか理解しずらいのがわかります。

樋口:勝手に日本のことだから情報入ってきてるから簡単だな、今回と思ってたけど、全然そうじゃない。

楊:結構あれだよね、演出されてる。

深井:逆にノイズとして今までのドラマとかの情報入っちゃってるからそれを塗り替えるのに大変だと思う。あそこでやってるイメージはあくまでドラマなんです。今回その史実バージョンが実際はどうなのかってのを複雑なんでなるべくわかりやすく喋ろうとは思ってます。戦国時代って僕が一つ読んだ本ではソマリアと近かった、みたいな。

樋口:あの、海賊がいっぱいいた。

深井:そうそう。だからざ戦国時代なですけど、命のハードル低い。ゴミのように人を殺すみたいな感じの感覚で彼ら生きてるんで。冒頭信長は残虐だったって話でイメージそんな変わらないですよという話した。確かに彼は今の僕たちの概念からいうと残虐なんだけど、じゃあ他の人たち残虐じゃないかというとそこそこ残虐ですからね。

樋口:そうか。

深井:全員残虐ですよ。

楊:すぐ殺す。

樋口:はあ。

深井:すぐ殺す。

楊:すぐ刃物を振りまわします。

深井:すぐ謀反を起こします、みんな。で、明智光秀がなんで裏切ったかって全員裏切ってる、別にあの人だけじゃない。

楊:デフォルトなんです。

深井:デフォルトで裏切ってる、みんなが。

楊:大したことじゃない、裏切る。

深井:だまし討ちしまくってるから。信長だって弟騙して殺してるし。そんな世界なんです。

樋口:全員悪人。

深井:全員悪人、今から見たらね。

樋口:アウトレイジ。

深井:そこそこヤクザの世界にたとえても成り立つくらいの、ヤクザの人たちそんな裏切ってないと思うけど、実力社会なのでめちゃくちゃあれですね。今回戦国時代の話もしたいと思ってて、みんなナチュラルに戦国時代の人が戦ってるの受け取ってると思うけど、なんで戦ってるかわかってないと思う。

樋口:ほお。

深井:なんで戦ってるとおもいます、そもそも。

樋口:え、なんか、領土を広くしたりとか。

深井:なんで広くしたいと思う、理由、という話もわからないはず。だって広くするインセンティブなんだと思います。だって、自分死ぬかもしれないのに広くします。例えばいま樋口さんが収入上げるか死ぬかどっちか選べるよって言われた時に収入上げる方を全員で選ぶと思いますか。

樋口:死にたくはないですね。

深井:ですよね。じゃあ、なんでこの人たちそれやってるのか。

樋口:たしかに。命かけて会社でかくしてるってこと。

深井:そういうこと。なんでそういうことしなくてはいけないのかというのも今回、そういう問いとちゃんと解消していかないと彼らのことわからないんで。なんで彼らが戦ってるのかという話も今回しようと思ってるし、さっき言ったいろんな大名もいて、戦国大名がいて、将軍もいる。将軍のナンバー2みたいな人たちもいる、みたいな。大名の下にまた違う人たちがいる、国人と呼ばれる人。国の人と書いて国人と呼ばれる人とか、地頭とかね、守護とかもいるんだけど、そう言う人たちがどう言う関係性でどういう成り立ちで室町時代というのがどういう時代の中で戦国時代ってのがさらにどういう時代なのかという背景というのをしっかりとイメージとちょっと違うのでここが。ここを掘り下げていくということを前半やって、そのあとその時代に出て来た信長という一人の特性を持った人間がある特性を持った人間がどのような決断をして最後謀反されるに至るのか、ということを今回は語ろうという、そういう試み。

樋口:すごい、すでに壮大さを感じてます。

深井:壮大ですよね。本能寺の変、先に言っとくと、本能寺の変で今回も当然でてきますけど、最後の最後に。光秀の動機の話、これ結論から言うとわかってない。

樋口:いまだに。

深井:まだと言うかおそらく一生わからないです。

樋口:ほおほおほお。

深井:新しい史料が出てくるとかしない限りはわからないです。結局動機を語ってるところってのは出て来てない。これこれこういう理由で謀反を起こしたことは言ってることは残ってるんだけど、なんて言ったかが残ってないんで、この人がそれを聞いたという話は残ってるけど、結局なんでかってのはわからないんです。

楊:ある意味人文学です。良くも悪くもどこに注目するかによってものすごく振り幅が広いんです。

深井:検証不可能な領域なんですね。この検証不可能な領域を逆に、逆にというか受け止めるともやっとする、わかんないから。わかんないもやっとしたものをもやっとしたまま受け取るというのも今回やっていきたいなと思ってますし、あとは今回800年前に遡るということはそこそこ日本史のことがわかるということですよね。平安時代後期から戦国時代くらいまでの流れが全部ある一定わかる状態にみなさんなると思う。この中で僕がすごい面白いと思ったことがあって、それ先に言っちゃうと権力構造がかなり複雑、日本は。

樋口:権力ね。

深井:さっきいった守護地頭とか国人、戦国大名、守護大名とかいろいろな大名もいるし、将軍もいれば天皇もいる。将軍の幕府の中にも管領という役職があったりとかいろんな役職があったりする。御家人というのがいたり、非御家人というのがいたりして、かなり複雑。これは中国とかの帝国の王朝だといろんな役職中国にもあるけど、中国の役職ってけっこうルールベースでなんの権限を持ってるかってのが確定して明記してあるけど。

楊:システムの中にちゃんと位置付けられてその意味とか機能とかもわかるようになってる。

樋口:まるまる係みたいな。

楊:そうです。

樋口:まるまる担当みたいな感じ。

深井:日本の場合はふわっとしてる。ふわっとしてるというよりは空気で決めてるから書いてないけど、もしくは書いてあることと違うんだけど、実際はこうってことになってる。

楊:建前と本音の部分ではかなり違うし、常に流動的だよね。

樋口:そうかそうか。

深井:そこが天皇というのが置き換わらないから外的要因が少なくて、日本てのは。これ前も何回かどの、どっかのシリーズで2、3回出してると思うけど、外的変動要因が、基本的には白村江の戦いか元寇か黒船の時か、あとは太平洋戦争の時か、くらいの4回くらいしかない。これ4回しかないって相当少なくて世界史で外的変動要因が少なさすぎて天皇というシステムを置き換えるということをしなかったんです。する必要がなかった。その結果システムに例えるとシステム開発に例えるとめちゃくちゃ昔に作った古いシステムを増改築してなんとか使ってて運用で実態とはめっちゃ離れてるんだけど設計思想が、運用で防ぎながら使ってますという状態になってるんで。だから運用してるやつと元々のシステムの設計思想が違うのがさっきヤンヤンがいった本音と建前が違う状態になってるんです。

樋口:面白い。

楊:めっちゃわかりやすい。

樋口:めちゃくちゃわかりやすい。

深井:これが、しかもすごい特徴があるなと思ったのは、日本の場合は権威と権力が必ず分化していくんです、分れていくという現象が起こっていて。これはわかりやすく言うとまず天皇と将軍で起こってるんです。

樋口:権威が天皇で権力が将軍。

深井:そうです。つまり権威担当の人と実際の実務担当の人が分れる。これは実は将軍が次また権威担当になって、その下に管領ていう人がいる、ナンバー2として、この管領が実務担当になるって感じでここでまた分れる。これが今度は管領がってなって、次守護がってみたいになって。守護は守護と守護代というまた別の名前似てるけど守護と守護代というのがある、今度は守護から守護代へ権限が移譲されていくみたいな感じでマトリョーシカみたいな入れ子構造になっていて権力が分化していくっていう傾向が日本の権力構造にある。

樋口:フラクタルだ。

深井:これによって複雑になってる。

樋口:へえ、すご。

深井:今回はこの入れ子構造なんだってことを理解しながら話を聞いていくと比較的理解がしやすい。これは他の文明であれば権威担当の人をぶっ殺して権力と権威をどっちも実装しますというかどっちも持ちますというのがデフォルトなんです。でも日本は権威担当の人を殺すメリットがあまりなかった。つまり対外的な脅威とかが来なかったので自分の権力を保証してくれてる権威を殺すってなると、権威を一から作り上げないといけないので、その権威を一から作り上げると言う開発コストを払うメリットがなかったので。

樋口:これ確か天皇の回で勉強しました。

深井:なので権威は残すんです。だけど実務担当で実力ある人たちが出てくる。権威と実力を最初天皇が持ってる状態からそれよりも実力がある人が出て来たときに権威だけ残して権力は渡すみたいなことをずっとやり続けた結果めっちゃ複雑な権力構造になってるんで、だからわからないんです、戦国時代が。なんで信長が上洛して将軍追放してとかしてるのかがイミフなんです。

樋口:なるほど。

深井:ていうことがどういうことなのか。これが日本史の特徴なんじゃないかなと思ってる。

楊:まあ、今も日本もかなり通じることがあると思います。

樋口:実務は下に振って、名前だけ貸すよみたいな。

深井:でね、日本のもう一つ特徴だなと思ったのが、強力な専制権力みたいなものがかなり少ない。

樋口:専制権力。

深井:つまり中央集権型ではない。

樋口:専用の専ですね。専制権力。

深井:専制政治っていう時の専制ですね。権力が少ないがために基本的にはルールがない。無法地帯。基本的に長い間無法地帯だったんですね、日本てのが。これも僕たちのイメージとけっこう違うと思ってるんですけど、およそ平安後期から江戸時代までに関しては日本にはちゃんと日本を管轄しているという権力が存在していない状態。

樋口:え。

深井:鎌倉幕府も室町幕府も戦国時代もずっとちゃんと日本を統括できてないんです。だからみんなすごい好き勝手してる状態なんです。

楊:そんな礼儀正しく何かをやるみたいなイメージ。

深井:というかルールを守らせれる人がいなかったんです、誰も。

樋口:へえ。

楊:ルールを守らせるって最終的には武力が必要なんで。

樋口:罰則が必要。

楊:罰則が必要、その罰則をめちゃくちゃ強く利かせられる集中された権力が結局できなかった。

深井:そうなんです。

楊:それぞれの小さな範囲内で罰則を利かせられる腕っ節の強さを利かせられる存在は出て来ています。

樋口:なるほど。

深井:なんで、その話もしたいなと思ってるのと。あとはポイントだけね、今回序盤はポイントだけ説明してそれを後で出てくるみたいな構造にしたい。もう一つは信長の天下統一という概念があったかどうかって話をさっきしましたけどね。天下統一っていう概念は当時僕はなかったんじゃないかなと思う、これは僕の私見です。学者さんがどっちか言ってる、あったっていう人となかったんじゃないかという人がいる。僕の意見なんか別に価値がない、歴史学的には全く価値ないんだけど。色々読んだ結果思ったのが僕たちは結果論として天下を統一するという概念があるんだけど、されたから。されてない時にどうやったらこの状況が収束するかを彼らは想像できなかったんじゃないかなと思う。

樋口:やったことないから。

深井:やったことないから。例えば僕たちの今の時代で例えると、コロナがどうやったら収束するかってよく分からない、みたいなことと同じなんじゃないかなと思っていて。

楊:ファクトを解釈して定義するような前提知識がそもそもない、新しい状況だから。

樋口:はいはい。

深井:僕らナチュラルにあの戦国時代でそれぞれの戦国大名が天下統一を狙ってそれぞれがトーナメント式に戦って勝ったやつが天下を統一するみたいなシンプルな構造を想像してるけど、そんなことはなくて。どうやったらこれがどうなるかわからない状態で全員戦ってるってのがおそらく真実なんじゃないかなと思います。

樋口:なるほどね。

深井:自分がどういう役職についたらどうなるのかもみんなわかってない。足利将軍追放した後にどうなるんだろう、みたいなのは探り探りなんだと思う。

樋口:それはそうか。

深井:ていう。そういう想像力で今回の話を聞いてもらえると、全然今までドラマとか映画とかで見て来たレベルと全然違うレベルの深さでたぶん今回の戦国時代が見れるので新しい新境地だと思います。ほとんどの人にとって。

樋口:いやあ、またなんか今回も今までと違った面白さがありそうですね。知ってる奴を塗り替えられる心地よさみたいな。

楊:日本史はね、大抵の人はみんなめちゃくちゃ知ってるつもりじゃないですか。でもそこらへんのアカデミックな本とかを突き進めて進むと意外とコンテンツレベルでは情報を摂取してるけども実際の動いてる研究の動向はずれがあったりするのは気付かされます。別にどっちがいいか悪いかじゃないですけどね。

深井:ということで、次回からはいきなりまず武士の起こりの話からしていきたいなと思ってる。今日の話聞いてね、一気に全部聴きたくなった人は是非サポーターになっていただければアーリーアクセスで。

樋口:ですね。

深井:はい。できますんで、コテンラジオのオフィシャルサイトから申し込めます。それか概要欄からリンク飛ばしてますので是非、それも一気に聞いた方が正直いいかなと思います。

樋口:是非サポーターお願いします。

深井:はい、お願いします。

樋口:ではこんな感じですかね。

深井:はい。

樋口:ありがとうございました。

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