#180 女性蔑視の社会をどう統治する?エリザベス1世の戦略

【今回の内容】
エリザベスの即位/エリザベスの性格/枢密院の再組成/イングランドの貧困とヨーロッパのインフレ/毛織物の輸出/カトリック?プロテスタント?国教問題/当時の女性蔑視問題/フェリペの告白/結婚をしない決断/エリザベスの決断しない強さ

樋口:はい、ええ、では今回はエリザベスついに即位というところからですかね。お願いします。

深井:ついにエリザベスは即位しますが。国民からはメアリーが人気がなかったので歓迎されます。プロテスタントだしね。エリザベスが女王になった時にどういう性格だったと言われているかなんですけれども、これはね女性だからこんなやり方してるんじゃないかなと正直思いました、本読みながら。気性が激しい、奔放だった、と言われている。あとは家臣、廷臣などに対してもしばしば激しい感情を爆発させた。

楊:スリッパなげたりとか、平手打ちしたり。 

樋口:ヒステリック。

楊:あくまで残ってる文書から。

深井:ヒステリックだったと言われている。上機嫌だったのに急に不機嫌になる、感情の起伏も大きい。みたいな言われ方をしています。だけれども、ここ矛盾してるんですけど忍耐強い、しかし女王の権威をないがしろにするような臣下への態度には容赦がなかった。という言い方をされてる。僕はここが全てなんじゃないかなと思ってて、絶対君主にならなければ近代化に遅れるという時代の中で家臣に舐められてはいけなかった、女王として。なので平手打ちしてるんじゃないかと思います。

楊:当時の女性が君主になるってのはどういうことかというと、基本的にイギリスではオッケーだったんだけど宗教的にあまりすすめられたものではなかった。国の統治権を女性が握ることは神への冒涜、神が定めた秩序の破壊だと言う人もいます。いますし、女性はそもそも一人で王権を担うことは不可能だという考え方が根底にある。女性がずっと統治権を担うと国が崩壊するという価値観はあります。一方では、これちょっと話逸れますけど、女性君主を擁護するロジックも存在してた。例えば宗教改革で出てきたカルバンいますよね。カルバンはどっちかというと女性君主擁護的な考え方を実は持ってた。もちろん女性の君主は基本的にはだめだと、基本的にはだめだけれども例外として類稀なる才能を持つ女性が現れてその人が神の御意志によって君主の地位に引き上げられる例外もあるとカルバンは考えてた。これがそういう選ばれしもの、アナキン・スカイウオーカー的な出方で女性君主が現れることがあるというのはカルバンも言ってるみたいで。そういった一部の知識にはあるにはある、でもマイノリティということですね。

樋口:まあね、

深井:気性は激しいけどここぞというところの判断力は冷静、かなり理性的な人だと思います。気性が激しい、感情に振り回されてるわけじゃないんで僕としてはそれ演技なんじゃないかなと思う。あとはイケメンが好きだった。

楊:容姿に優れた若者が、美への拘りがすごくあって、見栄えがよくないものを王室に勤務させることは絶対にしなかった。とか、残ってる話ではだれもが認めるイケメンがいたんですけど、ただ前歯が一本かけてるだけで解雇した、雇わなかったとか。だから、なので自分はもちろん美しく、女王らしく美しくあらねばならない、でも自分の周りの立つ人も自分の舞台に登ってる役者さんだから綺麗じゃないといけないというのはもしかしてそういう感覚は持ってたかもしれない。それも含めて彼女の政治行動、政治家としての振る舞いかなと。

樋口:なるほど、美意識。

深井:あとね、エリザベスは枢密院と呼ばれる内閣を再組成します。新しく自分が王様になったんでね。この再組成する際にすごい気を使ったのは宗教問題なんです。カトリックもプロテスタントもどっちもいる状態にしたんだけど、カトリックに寄りすぎてる人もプロテスタントに寄りすぎてる人もいれないようにしたらしい。

楊:極端を排して中道を行くようバランスを取ろうとしたのが彼女の基本戦略だよね。

樋口:ふうん。

深井:そう。前回の回でいいましたけど、この時のイングランド、イギリスというのはすごいいろんな問題を抱えてるんです。まず、フランスとスコットランドと戦争状態にあるんです。フランスはさっきのフェリペ2世とメアリー1世が戦争仕掛けてた。あれ終わってない。フランスとまず戦争してます。そしてスコットランドのメアリー・スチュアートという女王がいて、この人はフランスの皇太子と王太子と結婚している。なのでフランスとスコットランドが結んでる状態。だからスコットランドとも小競り合いをしてるんです。さらにエリザベスが女王になった時にメアリー・スチュアートはこれに異を唱えて、イングランドの王位継承権も彼女は主張するんです。ここらへんなんでそんな王位継承権を主張するのかって前も言ったように血がぐっちゃぐちゃで繋がってるからそういうことがよくあるんです。

樋口:面倒臭そう。

深井:そうです。なので、フランスと戦わないといけないしスコットランドとも戦わないといけないので莫大な戦費が湯水のように流出していて、国の金庫は空の状態なんです。

樋口:そうか。戦争してて情勢悪くて、金もない。

深井:金がないんです。貴族でさへ貧しく退廃しきってた時代だと言われてる、この時代は。

樋口:あらら。

深井:で、もう一つ問題があった。これは貨幣の質が非常に悪くなってしまって信用度合いが落ちてインフレしてる状態が起こってた。

楊:これ、お父さんのせい。

深井:これ、お父さんのせい。ヘンリー8世のせいで、もともと16世紀に1500年代にヨーロッパの物価がめちゃめちゃ上がっていったんです。なんでかっていうと、一つにはスペインが大量の金銀を新大陸から持ってきた。お金の歴史の時にやった、ということをしたことによってインフレになった。ていうのがまず一つあった。主にはそれの理由で語られる。本当はもっと複雑らしい。そういうことが起こっていた。しかしヘンリー8世以降のテューダー朝は積極的に国際戦争に介入してた。ヘンリー7世の時はそうじゃなかったけど、ヘンリー8世からは積極的にヨーロッパ大陸の国際戦争に介入していた。そのせいで戦争に巨額のお金がかかったからこそ修道院を解散させてそれを接収してた。接収したけど足りなかった。足りなかったから何をやったかというと、貨幣をもっとたくさん作らないといけなくなった。つまり自分たちが持ってる金とか銀の貴金属の数が足りないくらいたくさんコインを作るということをする。そうすると、これお金の歴史の時言ったと思うけど、この当時の王権とか国権が弱い当時の貨幣の価値を何が担保していたかというと、その貴金属である貨幣の価値そのものが担保してる。

楊:金の含有量とかね。

樋口:はい。

深井:金の含有量とか銀の含有量がこの貨幣の価値を担保してるからお金の価値として使えていた。王権が強ければそれをする必要がないので紙幣が生まれることができるんだよという話をしましたよね。まだ王権がそんな強くない、ヨーロッパ全体が、それができない。そうすると質の悪い貨幣をたくさん作ると貨幣の信用力が落ちて行くんです。経済が混乱するわけです。

楊:大陸の商人とかはポンドを信用しないわけです。ポンド持ってきたらこれは価値が低いから取引に使えません、そういう状況が生まれてきます。

樋口:そうか。はいはいはい。

深井:価値が暴落していきます。暴落していったことによってデメリットとしては、まず輸入することがいろいろできなくなっていく、海外のものを買えない、今と一緒ですよね。これによって国民生活に深刻な問題が出てきます。メリットも実はあって、イングランドは毛織物の輸出というものが急増していくんです、これによって。

楊:羊毛だよね。

樋口:おお、おお、おお。

深井:羊毛。これがほら。

樋口:産業革命だ。

深井:産業革命にこの後また、だいぶ間空くけど、100年くらい。繋がって行く布石になっていく。

楊:一方ではイングランドから大陸に輸出される毛織物って本によって記述のばらつきあるけど、完成品じゃないみたい。完成品までもっていく技術とかコストがかけられなかったみたいで、半完成品みたいな状態で輸出されたので。付加価値が一番のった状態ではないんです。だから半分の完成品を大陸の方に輸出して、一番付加価値がのる仕上げの部分、服とかに仕上げていく部分はファッションの中心地である大陸の、たとえばアムステルダムとかああいうところが握ってたというのはあるみたいです。

樋口:なるほど。

深井:そういう貨幣悪鋳という問題がある。もう一つまだ問題が、もう一つ、二つ問題がある、でっかい。もう一つが国教です。カトリックかイギリス国教会かという問題がある。エリザベスがやりたかったのはローマ教皇と断絶したかった。なんでかというとローマ教皇と繋がってるとローマ教皇にお金払わないといけない。そんなお金の余裕ない、全く。なんでそれはまじで断絶しないといけない。一方で今フランスと戦争してる。フランスと戦争してたらスペインと仲良くしないとやばい。二大勢力を敵に回すのは相当やばいことなんです。スペインと仲良くしないといけない。このスペインはごりごりのカトリックなんです。ということはプロテスタントというか国教会であることを突き進めて行きすぎると今度スペインと仲が悪くなりすぎても困るわけです。なのでここには絶妙なるバランス感覚が求められるんです。カトリックにいってもいけない、だけれどもカトリックを刺激しすぎてもいけないという、完全に敵に回すわけにもいかない。というような状態を保たないといけなかった。

樋口:うわあ。

深井:かなり難しい状態。

樋口:むずそう。

楊:難易度高いよ、これ。

深井:結果的に国王至上法というのを復活させる。ヘンリー8世の時に発布されいた法律でイギリスの教会のトップというのは国王だよということをいってる法律を再度、メアリー1世の時になくなってたやつを再度復活させることになるんですけども、変な気の使い方、なんていうんだろうね、その法律の中にはもともとは最高の首長として国王が定められていたんだけども、最高の統治者という言い方に変えられる。

楊:ちょっと軽くした感じ。

樋口:うんうん。

深井:これはね、何が変わったかというと、これは宗教改革の時にやったと思うけど、世俗の権力と宗教の権力ってのは圧倒的なランクの差があるよという話をした。これ、世俗の権力者だよということを強調した。それで聖職者たちをあまり刺激しないようにした。

樋口:自分はその程度のものですから。

楊:あなたたちのそういう権威を侵すつもりはないですよというアピールでもある。

深井:アピールもあるし、あと女性だから、なおさら宗教のトップに女性が座るということがすごく嫌われてた、その当時。女が宗教のトップなんてありえないだろとなってて。だってイブの、アダムの肋骨から生まれてるみたいなことをいわれてるから。それで、そこに対するあれでもあったわけです。

樋口:アピールね。

深井:アピールでもあって。もう一つ礼拝統一法という法律を作ってね、これは作法が違うわけ、カトリックとプロテスタントは。どっちにも寄らないようなやつを作った。折衷案みたいなのを作った。だからここは間をとったんだけど、ローマ教会とは断絶してます、至上法を作ってるから。ていう状態を作った。これによって何が生まれたかというのが面白い。プロテスタントの人たちは満足しなかったんです。急進派の人たちは、折衷してるから。

楊:もっと徹底的にプロテスタントを広めようよ。

樋口:生ぬるいぞ。

楊:そうそうそう、急進派の人たちは。

深井:これ宗教改革の時にやったプロテスタントの人たちがプロテスタントなのは聖書に書いてないだろというのが結構あるわけじゃないですか。聖書に書いてないことを儀式でやるとかいうのはよくないと思ってる。という純粋な思いの人たちがいるから、この人たちが後々ピューリタンとして出てくるわけです。このピューリタンがイギリス国内で居場所があまりないからアメリカ大陸に渡って行く。それでアメリカが出来て行く。

樋口:あったあった。

深井:ね。もう一つ問題がある。女性蔑視の問題です。この時代は、これはメアリー1世もそうなんだけど、この時代は今と比べ物にならないくらい女性蔑視がひどい時代です。ただ、女性だとしてもそれを任命してるのは神なんだよね。だからそこの拠り所はあるんだけれども、やっぱり一般通年として女に務まらないんじゃないかという懸念をみんな持ってるわけです。

楊:ましてやエリザベスは侍女の子なんです。侍女の子で王位継承の正当性を突かれる材料も持ってた。だから彼女が君主になった時に優先的にやらいといけなかったことの一つは女性君主に対するバッシングの封じ込めなんです。封じ込めて私は正しい正当性に則った君主ですよという理論武装を最優先でやらないといけなかったのはありますね。

樋口:ふむふむ、なるほど。

深井:一応彼女が言ってる言葉としては、君主の座を用意したのは神だと。

樋口:うん。

深井:だから女性だからといって君主の偉効を減じることはない。ということをいってたりとか。

楊:前言ってたカルバンの説を引用したかもしれない。

樋口:はい。なるほど。

深井:あとは神に自分を選んでくれてありがとうございますってことを感謝したりとか。あとは、それはアピールでもあったと思う。神が選んだんだからちゃんということ聞いてねというアピールでもあったと思います。一方でエリザベスはすごく自信に満ちてたらしくて、か弱い女性に見える、今までの幼少期の話聞いて、ストレスで胃を壊したりとか。実際女王になってみるとめちゃくちゃ命令するのがうまかったらしい。たぶん人を嫌な気持ちにさせずモチベーションを保ちながら指示を与えるのがすごくうまかったらしくて。そこに関しては天才的だという評価をもらってる。芸術的なレベル。

楊:リーダーとなるべき人だったかもしれない。リーダー気質の人がいる、そういう人だったと思います。

樋口:へえ。

深井:と言われてます。

樋口:優秀だったんだな。

深井:優秀だね。本当に。

楊:本当に優秀。

深井:で、フェリペ2世がこの時どうなってるかですけども、フェリペ2世としてはまずせっかくイングランドと結んでたんだけど、そのメアリー1世が亡くなってしまった。フェリペ2世として一番困ることがなにかというと、スコットランド女王のメアリー・スチュアートがイギリスの君主になったら困る。なんでかと言ったらスコットランドがフランスと仲がいいからです。

樋口:はあはあ。

深井:さっき、さらっとだけ触れましたけど。この当時のスコットランド女王であるメアリー・スチュアートは元々フランスの王太子と夫婦だった。

樋口:はいはいはい。

深井:だけど、フランスの王太子が亡くなったのでスコットランドに戻ってるんですけど、このメアリー・スチュアートがもしイギリスの王位継承権を主張してたエリザベスが王様になった時に、この人がもしイングランド、イギリスの女王になってしまった場合、メアリー・スチュアートが、フランスとスコットランドとイングランドが全部バロア家になっちゃう。

樋口:そういうことだ。

深井:バロア系になっちゃう、バロア家の。だからすごいでっかい国を出現させてしまって、また均衡が崩れるわけです。しかもフランスに攻めていったイングランドが大敗してカレーていうところを失っちゃってるので、なおさらそうなってはやばい訳です。それを防ぎたいという意向があります。

樋口:フェリペはスペインですからね。

深井:スペインの人ですから。ハプスブルク家のスペインの人。だけど、フェリペはメアリー1世をけしかけてフランスと戦争させて負けちゃったんでもう威信が地に落ちてます、イングランドでの、イギリスでの。誰も話聞いてくれなくなってる。フェリペの話みんなちゃんと聞いてくれてたけど、みんなフェリペの話聞かなくなっちゃった。なんで、エリザベスに擦り寄るんです。擦り寄るという言い方悪いけど、エリザベスに寄って行くわけです。だけどエリザベスはプロテスタントなんで。

楊:寄りすぎたら自分が国内のプロテスタントと急進派から突かれる。

深井:カトリックの急進派ね。

楊:カトリックの急進派からつつかれる。

深井:という状態があります。メアリー1世がエリザベス1世をロンドン塔に収監とかしてたときにフェリペ2世が一回助けたことがあったよね。

樋口:はいはい。

深井:口添えして。そんなことしなくていいんじゃないかって。そういうのもあって、仲を取り持った経験もあるからフェリペとしてはエリザベスは簡単に懐柔できると思った。言うこと聞くだろうと舐めてた。

樋口:恩もあるだろうし。

深井:そうそう。そしたらエリザベス強くて全然いうこと聞かないんです。

楊:それはね、数カ国語出来て、ギリシャ哲学読みまくって。

樋口:しかもそうか、国背負ってますからね。

深井:フェリペ2世がエリザベス1世が即位して4日後にエリザベスに求婚する、結婚してくれと。

樋口:お、なるほど。告る。

深井:告った。告るという感じじゃないんですけど、告った。

樋口:呼び出して。

深井:呼び出してはない。

樋口:好きだと。んで。

深井:で、これはフェリペ2世としては断らないでしょう。おれいい男だし。

楊:いい男だし、生まれもけっこうね、カーストではちょう上だから。

樋口:肖像画めっちゃいい感じ。

深井:なんせ当時のヨーロッパのトップであるスペインの国王だし。

楊:スペックちょう高い。

樋口:はいはいはい。

深井:なんならメアリー1世はぞっこんにさせてた、フェリペは。エリザベスもいけると思ってたらしい。思ってたらですね、エリザベスはまず最初に議会が、一番最初に議会が招集されて早々結婚しませんという。

樋口:きたきた。

深井:誰とも結婚しないという。

樋口:誰とも。

深井:そう。

樋口:へえ。

深井:まず彼女はその時25歳だった。経済的に逼迫しているとはいってもですね、イギリスってのはやっぱ国なんで、一つの。花婿候補ってたくさんいる。

楊:引く手あまた。フェリペ以外にもいろんな国から来てた。

深井:いろいろいる訳です。その中で一番かっこよくて、一番実力を持ってる人が求婚するんですけど、エリザベスは結婚しないという話をするんです。

樋口:仕事の。

深井:誰もが、でも、絶対強いやつと結婚した方がいいと思ってる。女の人だし女性だから絶対男の人が補佐した方がいいと常識として全員が思ってるけど、エリザベスはメアリー1世の失敗を見てる。フェリペにうまいことされてる。フランスに戦争けしかけられて国民からの人気も凋落してというのを見てるから。もう結婚しませんと。

楊:これを論点、議論のテーマにしないでくれ。だからこれ以降もいろんな家臣からこの人どうですかあの人どうですかみたいな結婚早くしてくださいみたいな言われるけども全部跳ね除けてる。

樋口:へえ。

楊:リスクを排除してる。

深井:ここでこういうことを言います。私はすでにイギリスと結婚し夫を持つ身となりました。あなた方一人一人がイギリス国民の全てが私の子供であり私の親族なのです。神様があなた方を私から奪わない限り私が子のない女になることはありません。

樋口:強い。

深井:もう一つ後継者については心配しないでください。名君は時の采配によって生まれると言います。神様が私の胎、胎児の胎、お腹から生まれた子よりもずっとこの国のためになる後継者をお授けくださいましょう。という。これすざましいことなんです。ありえない、常識からちょう外れてること言ってる。つまり、テューダー朝がこれで終わりますと言ってる。

樋口:そうだ。親族じゃない人。

深井:かもしれない。そんなちょう遠い人は連れてこないと思いますけど。自分の子供を王様にしなくてもいいんですという話をするのは、当時の常識からするとすさましい外れ方してるんです。

楊:これね、完全に普通、当時では普通の君主とかクリスチャンの考え方のフォーマットじゃない。

深井:これが嘘だという説もあるけど、これ本当に言ったとしたら人文学勉強してるからだと思う。

樋口:はあ。

深井:だからルネッサンスを勉強してキリスト教以前の論理的な社会を勉強してるからこういうことが言えるんだと思う。

樋口:外してる、ちゃんと常識のタガを。

深井:タガを外して、これ、みんな驚く。驚いて、まさかまじで結婚しないと思ってるとは思わないわけ。常識から外れすぎてて嘘だろと思ってる。言ってるだけでしょ。絶対結婚するでしょと思ってた。けど最後まで結婚せずに終わる訳です。

樋口:ちゃんと貫き通すんだ。

楊:ここでさらに彼女がやったのは、やっぱ一般的には男性の君主ってのは大事じゃないですか。大事なんで、女性の君主、男性の君主ってのは戦争に強いとか強いというブランディングが付随してるんです。でも女性で強さのブランディングを押し出しにくい。彼女がそこで考えたのがここもやっぱり人文学を勉強したからだと思う、旧約聖書に女の預言者という人がいる。デボラという。その人と自分を重ね合わせるブランディングをやって行く。だから女性も君主としては全然ブランドとしてあるし、それを知識人とか詩人とか画家とか劇作家を通じていろんなメディアを通じてこのイメージを発信していく。他にもいくつかのメディア戦略がある。自分を批判する文書とかを徹底的に排除して検閲をかけて行くってのをやってます。

深井:はい。

樋口:すげえ、ちゃんとマスメディアとかも。

楊:ロジックを作ってメディアを使ってセルフブランディングをかけて行く。

深井:そう。フェリペ2世が求婚してきた。この求婚に対してもフェリペ2世側の大使としては外交官としては絶対喜ぶと思ってるわけです、エリザベスが。絶対喜ぶと思って反応を待ってたら結婚の意向を聞いたエリザベスが全く喜ばずに考えさせて欲しいというんです。これなんで考えさせて欲しいというかというと、スペインを邪険に出来ないからです。スペインというのは当時はオランダ、今のオランダであるネーデルランドというところを支配下に置いてます。このネーデルランドというのはイギリスにとって最大の交易相手なんです。この交易相手の親分であるフェリペ2世と結婚をしなかったらもしかしたらその収入を絶たれるかもしれない。ただでさえ財政逼迫してるのにもかかわらずそういうことが起こったら相当やばい。

樋口:はい。

楊:もう貿易からも稼げなくなるということです。

樋口:ほお。

深井:なので、しかも宗教問題もある。フェリペはカトリックでしょ。だから宗教問題と経済問題の狭間の中でこの結婚問題がでてきてエリザベスはどうすればいいかということに対してすごい迷いすぎて体調崩すほどになっていく。けど、結婚しないとする。

樋口:どこを選んでも誰かが敵になるんですね。

深井:そうなんです。複雑ですよね。こういう状況の中で一つ一つを決断していく必要がある。という状況でいい時間になったんで続きは次回にしましょうか。

樋口:はい。

深井:フェリペ2世の結婚を断った後の話ですね。

樋口:なんか、超絶綱渡りしてる感じがしますね。ちょっとこっちに行ったらやばいからこっちに行ってバランスとってみたいなことやってる感じがある。

楊:決断しない強さが、我慢強さはあるよね。

樋口:なるほどね。決断しない我慢強さね。

深井:難しい。どっちもだめそうだから。

樋口:決断してもしなくても。

深井:でも、最後してるから、ちゃんと。

楊:その辺の一番ましな決断、針の穴に糸を通すくらいの可能性を見つけて決断していった。

深井:バランス系。

樋口:バランス系ですね。

深井:どっちか一方に劇振りみたいなことあまりしないですね。

樋口:多分この時はそれが最良だったってことですね。

深井:そうですね。

樋口:いやあ、面白いですね。こっからどうなって行くのか。次回も楽しみです。

深井:はい。

楊:はい。

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