#178 魑魅魍魎が跋扈する政治の世界!エリザベスを巻き込むイングランド王位継承事情

【今回の内容】
トマス・シーモアの大逆罪!エリザベスに迫る捜査の手/上手く立ち回るエリザベス/王位継承権と宗派の思惑/メアリーの蜂起/メアリーとエリザベスの確執/エリザベスの処世術/次回、メアリーの結婚!

樋口:はい、ええ今回トマス・シーモアの処刑のところの話なですけども。

深井:そうですね。粗野である意味いいお兄さんだった陽気なお兄さんで人に迷惑かけてたこのトマス・シーモアなんですけども。

樋口:エリザベスからすると義理の父になる。

深井:いや、義理の父にもならないんじゃない。

樋口:そうかそうか。義理の母の。

深井:義理の母の新しい夫。

樋口:なるほど。

深井:この人が時の権力者であるエドワード・シーモアの弟なんだけど、お兄さんが最高権力を握っていることをよしとしてなかったんです。なので、エドワード6世、まだ幼いエドワード6世から兄を遠ざけて、自分が最高権力の場に座ろうと画策をしてたんです。

楊:出世欲があったんです。

樋口:ほお。

深井:だからお兄さんのエドワード・シーモアの悪口をエドワード6世に吹き込んで、嫌っていくようにしむけていく。お小遣いくれないみたいなことを言ったら、エドワード6世がね、じゃあ代わりに僕がお小遣いあげよう、みたいな。という話が本当に残ってる。そういうことやって、反乱を起こすための資金集めと人材集めをしてたんです。

樋口:ふうん。

深井:この海軍卿なんでその立場を悪用して商船から賄賂を巻き上げてやってた。エリザベスに近づいたのも、どうやら王女と結婚すると大量にお金もらえるらしいね。

楊:嫁入り資金みたいな。

樋口:なるほど。

深井:これを反乱資金にしようと思ったんじゃないかといわれてたりするんだけど。こんな感じでエリザベスに本当に近づこうとしてた説もあるんです。こういう危ない動きをしてる、トマス・シーモアが。この危ない動きをしてるトマス・シーモアをエドワード・シーモアは最初から危ないなってことをわかってて、これがエリザベスが15歳の時なんですけど、トマス・シーモアの陰謀が明るみに出る。

樋口:バレる。

深井:バレちゃう、やる前に。大逆罪ということでロンドン塔というところに収監されちゃうんです。33の罪状を課せられちゃう。その中の一つに国王と枢密院、当時の内閣の許可なくエリザベスとお前結婚しようとしたよね、という罪が入ってる。これ罪なんです、許可がいるので。

樋口:そうか、罪なんですね。

深井:このことによってエリザベスにも操作の手が及ぶんです。

楊:飛び火してしまう。

深井:飛び火するんです。

樋口:あちゃ。

深井:過酷で厳正な取り調べで定評のある、別に覚えなくていいけど、ロバート・ティルビットていう人がいて、あ、デヴァルーですね。この人が取り調べに派遣されてすぐに本当のこというだろうと思ってた、ロバート・デヴァルーは思ってたんだけど、これがね、エリザベスが勉強してるだけあって強かった。口がうまかったというか、あの手、のらりくらりでかわしてくるわけです。かわしてくるんだけれどもこの罪状に巻き込まれた人の中に自分の育ての親みたいな、育ての親まではいかないかもしれない、家庭教師的な立ち位置の人も実はその罪に巻き込まれてたんです。

樋口:ありゃりゃ。

深井:エリザベスとしては自分にすごく良くしてくれた人がトマス・シーモアの罪の中の一つのとばっちりめっちゃ受けてて、自分も受けてるんですけど、とばっちりを受けて罪を問われようとしてるんです。本当のことを言っちゃうとどうやらまじで捕まっちゃうような感じだったらしくて、すごくのらりくらりとかわしていくんです、エリザベスが。嘘も言わず本当も言わずみたいな感じでのらりくらりとかわしていくのに、どうやら罪に問われている育ての親の人たちが自供しちゃうみたい。

樋口:あらら、だめでしょう。

深井:トマス・シーモアは有罪判決で出ちゃうし、育ての親の人たちを助けようとしてエドワード・シーモアに懇願の手紙を送ったりする。こうやって助けようとしたりします。多分助けれたんじゃないかと思う、これ。けれども本人としてはショックだった。本当に別になにも悪いことをしようとしてないのに、すごい飛び火で来て、いろいろ学ぶことがあったと思うし、このトマス・シーモアが断頭台に送られて亡くなった時にエリザベスが言った言葉が残ってるのがむっちゃ面白い。これがね、処刑された日ね、今日は知恵に富むが判断力の欠如した一人の男が亡くなった。

樋口:なんだ、その言い方。ドライやな。

深井:10代半ばだよ。

樋口:なんじゃそれ。

深井:そうなんだろうなと思った。判断力が欠如してると思われてた。

楊:本人もムカついたと思う。お前のせいだろ。

樋口:とばっちりだもんね。

深井:やっぱり政治という、お兄さんが処刑してる、トマスの。だから政治の非情な部分が身にしみてね、ここで学んだし自分の育ての親とかにも罪が及んで行ってたから。ここで彼女が学んだのは用心しないといけない。みんなの野望とか欲望が魑魅魍魎が絡み合う政治の網に絡め取られないように生き延びていくのがすごく難しいけどそれをやっていかないといけないんだなということがすごくよくわかっていったんだと思う、こういう経験から。

楊:本人も頭よかったし。普通の人だったらこのファクトを前にしてもそいういう学びはでてこないと思う。やっぱ彼女はそれができたというのはあります。

深井:そうだね。

樋口:改めてばんばん死んでますね、周りの人たちが。

深井:ね。

楊:あと、面白いのは、本当これ見てると王様弱いなと思う。

深井:全然ないよね。

楊:全然弱い。むしろ官僚とかから死刑される側だもんね。

深井:そうそうそう。本当に立場が弱い中でこういうような状態で。この後自領、自分の陣地に引っ込んであまり目立ったことしないようにしてた、この後は。装飾品とかも身につけずに地味な装いで。ここら辺から本当に学問に激振りしてずっと勉強してたし、特にキケロみたいに、この人って追放されて殺害されたりしてる、ローマの中のキケロみたいな悲運の人とか運命に翻弄された系の人たちの本を読むのが好きだったらしい。歴史もすごい好きで勉強してた。1日3時間くらい歴史勉強してたらしいです。

楊:そういう自分を重ねたかもしれない。

樋口:共感したんでしょうね。

深井:まあね。国王の愛人の娘みたいな認識のされかた、この時点でしてますから。こういう中で生きていた。当時この時の王様はエドワード6世、自分の弟が王様。弟なんですごい若いんですけど、この弟が悪性の感冒を拗らせて。

楊:風邪かな。インフルエンザかもしれない。

深井:なんか流行病があったらしい、この時。16歳の若さで亡くなっちゃう。

樋口:あら、若いね。あらら。

深井:この頃にはもともと権勢を誇ってたエドワード・シーモアも失脚しちゃって、ジョン・ダドリーという人が権力を握り始めるんです。このエドワード・シーモアも処刑される。

樋口:へえ。

深井:このジョン・ダドリーていう人はプロテスタント化を推進して来た人なんです。エドワード6世の次の王位継承権だれが持ってるかといったら、エリザベス1世のお姉さんであるメアリー1世。これキャサリン・パーが王位継承権を回復させてくれた。ヘンリー8世の最後の妻、キャサリン・パーが王位継承権を回復させてくれてたからエドワード6世こんなすぐ亡くなると誰も思ってなかったんで、すぐに亡くなっちゃって、メアリー1世に継承権がある状態になります。

樋口:エリザベスからすると腹違いの姉。

深井:腹違いのお姉さんで。

樋口:結構歳が離れてる。

深井:20歳近く歳が離れてる。すごい歳の上のお姉さんがいます。このお姉さんが次なんですけど、この新しい権力を握ったジョン・ダドリーはプロテスタント化を進めていた。けれども、メアリー1世はカトリック教徒なんです。ごりごりの。このカトリック教徒が女王になるとやばい。もしかしたら自分また処刑されるかもと思う。なので、エリザベスの次の継承権を持っているジェーン・グレイていう人は他所にいるんですけど。ヘンリー8世の妹の孫です。

樋口:ええと。

深井:ちょっと遠いですけど。

樋口:親戚ね。

深井:うん。親戚。この人を連れて来てこの人を擁立しようとするんです。

楊:自分の息子と半ば無理やりジェーン・グレイと結婚させる。

樋口:ふうん。

深井:この時当然エリザベスはプロテスタントだからエリザベスを女王にしようとする案もこの時点であったんだけど、どうやらそのジョン・ダドリーさんは地味すぎて、エリザベスがこの時、ほら、引っ込んでたという話した。

楊:戦略的引っ込み。

深井:戦略的引っ込みしてて、ちょっとこの子ないなと思ったらしくて。で、ジェーン・グレイを連れて来た。当然ジェーン・グレイを連れてくるってことはメアリー1世と対峙することになる。私が女王になるはずなのにってなる、メアリー1世的には。だけどジョン・ダドリーはメアリー1世のことなめてたんだよね。なんも言わないだろうと。別に大丈夫でしょうと思ってジェーン・グレイ連れて来たらメアリー1世がまさかの蜂起するんです。

樋口:ほお。

楊:多分ジョン・ダドリーの政治力はその程度だったんかもしれない。読めなかったんだろうね。

深井:読めなかったんでしょうね。

樋口:ふうん。蜂起ってばあってなんかしたんですか。

深井:んとね、えとね、彼女に賛同する貴族とかが増えて来たという感じです。彼女はカトリック教徒だしカトリックってこの時点だと一回権力を失って、イギリスの中で。もともとローマ教会が持ってた土地とかはプロテスタントじゃないけどイギリスの実力者たちに分け与えられたという話をしたじゃないですか。カトリックに戻るっていろんな人にとって都合が悪い。だけどもこん時点だと流石にジェーン・グレイおかしいだろってみんな思ってたみたい。どう考えてもジェーン・グレイじゃないだろ。どう考えても次メアリーでしょう、みんな思ってた。

樋口:遠すぎるんですね。

深井:遠すぎて。みんな思ってたから、メアリーにみんな同情してみんなそっちに味方になったんだって。軍隊が集結して、1万5千人程度、イングランド自体が小さいから。それで蜂起をしてメアリーが勝っちゃうんです。

樋口:ほおお。へえ。

深井:メアリーが勝ってイギリス女王であることを宣言し、ジェーン・グレイってのはわずか9日間だけ女王の冠を戴いていた。

楊:権力闘争に巻き込まれたって感じだよね。

深井:ただ巻き込まれて速攻で亡くなっちゃう。ジョン・ダドリーは処刑されるし、ジェーンは、ジェーン・グレイをメアリー1世は罰するつもりはなかったんだけど、この翌年にジェーン・グレイのお父さんが反乱を起こすんだって。お父さんが処刑されるのでもうジェーン・グレイも処刑された、あおりを食らって。

樋口:かわいそう。

楊:悲劇の人なんで、絵とかになってますよ。

樋口:その、ジェーン・グレイが。

深井:処刑の絵がある、有名な。

楊:そう、有名な絵がある。

深井:怖い絵展とかで出てた。

樋口:これはかわいそうな人だな。

深井:メアリー1世はこれで女王になります。イングランドに女王が生まれた。正式な女王はこれが初めて。

楊:そうかそうか。

樋口:しれっとそうか。女性が王様になったんですね、ここで。

深井:継承権を回復させてた上に男子が一人しかいなくて、その子が早逝しちゃうからこういうことが起こる。女王になりました。この時はメアリー1世はすごくいい気分だったみたい。いい気分だったからエリザベスに対してもすごい寛大な気持ちを持っていて。愛情をしめしてたんだって、だけどメアリー1世の心情としてはエリザベスのことが色々思うことがあったみたい。一時期子供の頃かわいがってたりしてたけど、そもそも自分のお母さんを差し置いて結婚したのはエリザベスのお母さんじゃないですか。だから自分のお母さんにとっては仇敵なわけです、エリザベスのお母さんてのは。だから親も憎いし子も憎いとなっちゃってて。しかも決定的なのは自分は敬虔なカトリック教徒なのにエリザベスはプロテスタントなんです。

樋口:うわああ、宗教観。

楊:仮にメアリーに子供がもし生まれなかったらエリザベスが次の女王になる可能性がある。それがまたせっかく自分がイングランドにカトリックっていう正しい教えを体制を敷こうとしてるのにまたプロテスタントという邪教に戻るってのは彼女としてもそういう理由で許せなかった。そういうのもあるんでしょうね。

深井:次期継承権がエリザベスであるということはメアリー1世からするとすごい嫌なことでもあったので。このメアリー1世が即位したのは37歳の時、彼女が。37歳の時に即位してからは急に態度を変えたらしい、エリザベスに対して。最初は寛大だったそうです。気分がよかったんで。だけれども、彼女の戴冠式の時にすごく豪華に三百種類以上の料理が出されて自分のための会じゃないですか。そこにエリザベスが来た時にエリザベスの方が目立っちゃったらしい。

樋口:ふうん。

深井:こっちの方が女王ぽいよねってなった。賢そうだし、若いし、いいなってみんな思ったことを鋭敏にメアリー1世は感じ取ったらしいというのは書いてあった。

楊:隠そうとしても滲み出るオーラがあったんだろうね。

樋口:なるほどね。気品というかね。

楊:これは危険だよね。

深井:この時エリザベス20歳くらいなんだけど、20歳の方が女王にふさわしいとなるのかなと、わかんないんですけど、そうなったらしい、その時。それもメアリー1世としてはむちゃくちゃムカついたらしい、イラっとしたみたい。この後感情的に拗らせていくよね、メアリー1世は。エリザベスに対しての感情ですね。

樋口:なるほど。

深井:あばずれの娘みたいな感じの感覚で見てる、エリザベスのことを。あのあばずれの異教徒の娘、みたいな感じで見てる。そういう記述も残っている。でもエリザベスの方の気持ちになって欲しいんだけど、自分ではどうしようもないことでめちゃくちゃ嫌われてる。次期継承権を持つことも別に自分が勝ち取った権利でもないし、もともとあったやつが勝手に廃止されたやつを勝手に戻されたやつで、トマス・シーモアみたいな人がちょっかい出してきていいなとは思っていて、ちょっかい出して来たやつでめちゃくちゃ裁判みたいなのに巻き込まれたりもして。ひっそりと暮らそうとしてるのに政治抗争があっていきなりお姉さんが女王になったら次の継承権自分が持ってて、したらめちゃくちゃ、戴冠式行ったらめちゃくちゃ子供のころあんなによくしてくれたのにちょう嫌われてて。ええ、ええ、みたいになってる、エリザベス1世からすると。ストレス性の胃炎になってたみたい。

樋口:悩むな。

深井:もう精神戦が、精神の戦いが本当に嫌だったみたい、エリザベス1世が。まあそうだよね、家族だからね、一応。味方の家族がいなくなっちゃってる、キャサリン・パーがいなくなって、肉親で味方がいない、敵だらけの中で生きるみたいな中で一応血が繋がってるお姉さんからも嫌われちゃっててってなって。自分はそれで地味になって引っ込んでる、それが嫌だから。なのに未だに狙われてあいつがみたいに言われてるから。胃を壊した、かわいそう。

楊:王族の宿命だよね。立場がある以上は何かしら巻き込まれる。

深井:面倒臭い。

樋口:面倒臭い。

深井:ここでメアリーにはこういうこと伝えてたらしい。もし自分に纏わる悪い噂があったらそれを信じる前に必ず直接自分に確認してください、それ絶対嘘なんで。そういうことが起こりうることを彼女は予見してたわけです。

楊:賢いのは徹底的にメアリーに対してへりくだる態度をここでとる。

深井:徹底的に。

楊:反抗しない。

深井:彼女プロテスタントだから、エリザベス1世は。メアリーからはカトリックを強要されるんです。だからカトリック教徒になったかのような振りもするんです。

楊:そうそうそう。そこは処世術。

深井:メアリーは信じてない、お前カトリックなんか信じてないだろうみたいな。ずっと言ってた。まあ、胃が痛くなりますよね。

樋口:どうしようもない。ごめんとしか言えん。

深井:そうです。いい時間なんで、一回ここで切って、次はメアリー1世が結婚します。この結婚がね、またいろいろ起こるんですけど、その話をしていきたいと思います。

樋口:いやあ、不幸ですね。不幸っていっていいのか、大変。

深井:メロドラマみたい。

樋口:ドロドロ。

深井:ドロドロのメロドラマ。宮廷系のドロドロ系ドラマがある、海外とかのやつ。大奥とかでもある。あれだよね。

樋口:まじであれですね。

楊:だからディズニーじゃない。ディズニーのプリンセス、結婚して幸せになる物語は嘘ですよ。

深井:ただのこういう嫉妬と権力闘争の魑魅魍魎の中で翻弄されるという。

楊:一歩間違えたらぶっ殺される。

樋口:すぐに処刑。

深井:処刑される。

樋口:周りの人がばんばん死んでいって。

深井:おぞましい世界なんです。

樋口:おぞましいな、これ。なるほど。いやあ、じゃあ続きは次回ですかね。ありがとうございます。

深井:ありがとうございます。

楊:ありがとうございます。

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