#175 君は薔薇より美しい!結婚で広がるテューダー朝の外交戦略

【今回の内容】
テューダー朝について/ペストで人口激減/弱かったイギリス政府/議会と王権の関係性/ジェントリって?/ヘンリーとキャサリンの結婚戦略/キリスト教の結婚観と認められない離婚/当時の男女差

樋口:はい、ええでは今回はテューダー朝の始まりのところからのお話を聞いていきたいと思います、お願いします。

深井:はい、エリザベスが属してる王朝です。これは1485年にエリザベスのおじいさんにあたるヘンリー・テューダーという人がいまして。この人が30年間にわたって 起こっていた薔薇戦争というランカスター家とヨーク家という二の家が王位を争っていたんですけど。それを勝ち残ってヘンリー7世として即位する。この王朝はちなみにエリザベスの代で終わるんです。

樋口:え。

楊:三代しか続いていないってことだよね。

樋口:そうなんだ。

楊:おじいちゃんとお父さんとエリザベス。

深井:おじいちゃんとお父さんとエリザベス。その間に本当はメアリー1世がいるから。メアリー1世とエドワード6世がいるので、

樋口:5。

楊:5人か。

深井:5人。120年くらいの短い王朝なんですけれども、ここからイングランドがライジングしていく礎となる王朝なので、テューダー朝てのはかなりイギリスの歴史の中でもすごく重要な時代としてフィーチャーされてる感じなんです。繰り返しになるけどこの時のイングランドというのはスペインのハプスブルク家、そしてフランスのヴァロア家という二大巨頭の間にあって、非常に大変な思いをしてるわけです。しかも16世紀の初め、1500年くらいの始めというのは、ペストのせいでめちゃくちゃ人口が減っちゃった後なんです。

樋口:なるほど、ペストね。

深井:この二大巨頭といってるフランスの人口が1500万人、スペインの人口は最強国ですけど800万人。

樋口:そうか、今の東京都よりも少ないんですね。

深井:イングランドはウエールズを含めても300万人しかいない。ちなみに日本だと、ど時代の、家康とかいる時代、1200万人。

樋口:日本多いですね。

深井:普通にこの中にいたら大国なんだよね。

楊:当時は国力とか、産業革命が始まる前なんで、国力というのは人口に直結してる。人口が多い方が兵隊も確保しやすいし生産力もある程度比例してましたからね。

樋口:はい。

深井:ちなみに中国は6000万人。

樋口:強いな、やっぱり。なるほど。

深井:強いよね、人口。これも繰り返しになるけど絶対王政を確立していかないと近代化に遅れる時代だった。新しい波にのっていけないよという時代だった。

楊:あと、イングランドって小国なんでフランスとかスペインとかの強い国の王室から国王とか王妃を迎え入れないと統治とか外交の土壌に乗せてもらえなかった。

樋口:後ろ盾がいるんですね。

楊:そうです。常にに彼らに気を遣いながら外交と政治を展開していかないといけなかったというのが彼らの状況です。

深井:弱い国の必然ですよね。そうとう気を遣うというということと、当時のイギリスというのは、イングランドと同じようにイギリスを使いますね、当時のイギリスていうのは議会の力が強いんです。議会というのがすでに存在していて、この議会の中にいる王様という立ち位置なんです。王様の下に議会があるんじゃなくて、議会というのがトップにあって、その中に王様がいるよみたいな、そういう国の作り方をしてるわけです。だから王権ていうのが比較的弱いんです、フランスとかスペインに比べると。フランスとかスペインに比べると弱くて、国王が単独で法を作ったりすることができない。

楊:課税したりとかもね。

深井:そう。課税したりすることもできない。必ず議会に審議をかけていけないといけないし、彼らの承認が必要なんです。だからエリザベスの時代のイギリス政府ってのはそんなに強力ではない。常備軍もほとんどいない、数百人くらいしかいない。

楊:すごいね、数百人。

樋口:数百人。

楊:コテンラジオのリスナーの方が多いよね。

深井:全然多い。

樋口:めちゃ強い。

深井:官僚制度も整ってない。だから中国とかと比べると全然中央集権がなってない状態です。

樋口:戦争の時に傭兵を集めていたってイメージなんですね。

深井:そうそう、それ宗教改革の時にもちょっと言いましたよね。

樋口:ありましたね。

深井:フランスとかは常備軍ちょっとづつ育てたり官僚制をちょっとずつ育てたりして絶対王政に向かってた。テューダー朝の絶対王政ってそんな強くない。王政は強まってはきてた、ローマ教皇の力が弱まっていたことによって。強いっていっても全然強くないよということです。

樋口:はい。

楊:ちゃんと議会に入っているメンバーとか各地の諸侯とか貴族と同意とりながらあるいは彼らと利害調整しながらやっていかないといけないのが当時のイングランドの王様です。

深井:議会の話になっちゃう。なんで議会の話してるかというと、この後この中でエリザベスが苦労するから。どういう構造なのかを先に伝えておきたい。議会っていうものの中に上院と下院がある。いわゆる貴族院とよばれる貴族が集結してるところと、庶民院と言われる、庶民院といっても庶民ではないんだけど。貴族ではない力を持った人たちが集結してる議会が二つあります。この二つの議会とあともう一つ枢密院というのがあって、これは内閣ですね。今の日本で例えると内閣みたいなのがあって、この枢密院がいろんな施策を実行したりとか提案をして議会にかけて承認されたらそれをさらに推し進めていく。そういう構造で成り立ってるんです。貴族院ていうのは貴族がいる、それはそうだよね、このじゃあ庶民院の方、下院の方に誰がおるのかという話なんですけど、これジェントーと呼ばれる人たちがいるんです。

樋口:ジェントリー。

深井:うん。ジェントリーというのがなんなのかというと、最下層の貴族でもあり、逆に貴族ではない庶民のトップでもありという、いろんな説明のされ方がする。実力は持ってる、実力は持ってるんだけどもいわゆる権威がない人たちです。

楊:金とか土地とかは持ってる。

樋口:なるほど。

深井:金とか土地とかは持ってるんだけど。

楊:不労所得であるていど生活できる人。

樋口:うん。

深井:そうだね。このジェントリーというのはちなみにジェントルマンの語源。

樋口:なるほど、紳士。

深井:紳士。だからイギリスはジェントルマン、レディースアンドジェントルマンていう、今は言わないと思いますけど、という話はここから来ている。このジェントリーというのはローマ教皇の権力が下がっていって、この後説明しますけどイギリスはローマ教会からの支配から脱してイギリス国教会というのを作ります。このイギリス国教会というのを作った時にローマ教会が持ってたイギリスにいっぱいある土地が全部引き剥がされるわけです、ローマ教会から、接収しちゃうわけ、国が。

樋口:国のものになる。

深井:国のものになる。イギリスの物になる。

樋口:いいですね。

深井:それを入手していったのがこの人たち。それで力をつけて行った。

樋口:いいですね。

深井:この人たちの力をエリザベスは借りて政権を運営していくんです。こういう構図があるんで、ジェントリーという人がいるんだなというくらいで。フランスでいうとブルジョアジーと呼ばれる人たちと近い。このフランス革命の時に出て来た。

樋口:ありましたよね、庶民の中の人たちかな。

深井:実力持ってる人たちです。

樋口:富裕層かな。

深井:富裕層。

樋口:フランスの場合は。

深井:はい。

樋口:はい。

深井:という、そういう構図で成り立っていて、話がヘンリー・テューダーに戻ります。このヘンリー・テューダーさん、ヘンリー7世として即位しますよね。この人はそれまで内紛をしていたイングランドというのを再度まとめあげて、30年間くらい薔薇戦争という内紛があったんですけど、その内紛をかたずけてテューダー朝というのを作ります。そしてヘンリー7世として即位する。

樋口:はいはいはい。

深井:これはさっき言ったように中央集権化は目指したけどあんまりできなかった。常備軍も官僚制も整備されてなかったし、ジェントリーの協力がなければ全く政権運営もできなかったという状況があった。しかも王朝作った直後ってのはたくさん反乱が起こった。この反乱をさらに国王の収入とか国王の常備軍が少ないんで全然鎮圧できない。その度に新しくお金を徴収したりだとか議会を招集して議会にお願いをしないといけないので。お願いしてしまう立場になってる。命令する立場じゃなくて、ちょっと力貸してくださいと言わないといけない立場なんです。という弱い立場としてテューダー朝というのは出来上がって来た。なので彼としては、ヘンリー7世はすごい苦労してると思うけど、フランスかスペインのどっちかと仲良くして、このイングランドというものを安定させていかないといけない。フランスのヴァロア家とは100年戦争でずっと戦ってたわけなので仲が悪いわけ。

樋口:なるほど。

深井:なので、これはスペインだと、スペイン王家に擦り寄ろう。スペインの王女とヘンリー7世の長男のアーサー君がいる。このアーサーとキャサリンというスペイン王女キャサリンという人の結婚を画策するわけです、そして成功するんです。アーサーとキャサリンが結婚するんだけど、アーサーが15歳で病死するんです。

樋口:あら。

深井:これはね、いろんな意味で辛いわけです。ヘンリー7世としてはまず長男死んで悲しいし、

樋口:戦略が。

深井:そうそう、外交戦略としても崩壊した。これやばいと、やばいので、キャサリン、これキャサリン・オブ・アラゴンと呼ばれる。ちなみにこの後キャサリン何人も出てくるんで、なんていうかな、キャサリン・オブ・アラゴンと呼ぶね。4—5人出てくるから、キャサリン。

樋口:いろんな名前つければいいのに。

深井:ねえ。僕もそう思った、読みながら。このキャサリン・オブ・アラゴンが未亡人になっちゃったんだけど、すぐに次男のまたヘンリー君がいる。

樋口:こいつも。別の名前つければいい。

深井:これヘンリー8世ですね、後のヘンリー8世なんですが。このキャサリン・オブ・アラゴンをヘンリー8世の妻にする、それで成功するわけです。成功するというか妻にすることでなんとか事なきを得るわけです。なので次男ヘンリー8世てのは亡くなってしまった兄の妻であるキャサリンとキャサリン・オブ・アラゴンと結婚する。このヘンリー8世はカソリック教徒だね。

樋口:カソリック。

深井:カトリックです。

樋口:ああ、カトリック。はい。

深井:カソリックていう。カトリックって発音がけっこう間違ってる。カソリックですね。

樋口:なるほど、カトリック教徒のことですね。

深井:このキャサリン・オブ・アラゴンとヘンリー8世ね、との間に生まれたのがメアリーていう女の子が生まれます。これはエリザベス1世のお姉さんね。

樋口:ふうん。

楊:腹違いのお姉さん。

深井:腹違いのお姉さん。この時点でヘンリー8世てまだカトリック教徒だから当然メアリーはカトリックとして育てられる。これはなんでかと言ったら、まだプロテスタントがめちゃくちゃばんばん来てる時代じゃないから、イングランドに。ナチュラルにカトリックしかないからカトリックで育てられてる、というのが起こります。このヘンリー8世なんですけど、なんかね、若いころすごいイケメンだったらしくて、音楽の才能もあって、結構楽曲とか詩とかも残してるらしい。身長も1m84cm、1m90cm近くあって、武芸にも通じてるし教養もあったらしいです。

樋口:あら、もてもてじゃないですか。

深井:いやあ、これ話聞いた後全員満場一致でクズと思うと思います。

樋口:なに。なんで。

深井:擁護のしようもなかったです。聞いといて欲しい。

樋口:はいはい。

深井:このヘンリー8世てローマ教皇からの支配から脱してイギリス国教会というのを作って、それまでイギリスにある教会はもともとは当然ローマ教皇の傘下にある。そこから脱して自分が治めている教会だよということで国教会っていってイギリス国教会というものを作るんですけど。それを作ろうとする前は、作ろうとするきっかけがあるんですけど、その前の時点ではむしろ彼は敬虔なカトリック教徒としてカトリックの守護者を任じてるんです。カトリックの守護者だよと自分も言ってるしローマ教会からもそういう風に認められてるわけです。

楊:当たり前だよね。

樋口:うんうん。

深井:ルターが出て来て、ローマ教会を全面的に批判するよね、これ宗教改革の時に。

樋口:来たよ。

深井:これに対してもヘンリー8世はルターの著作に反論するような著作を書いてローマ教皇に渡したりしてる。それくらいカトリックにごりごりに寄ってるわけです。けれどもキャサリン・オブ・アラゴンと結婚して、何年か経ってでもですね、メアリー以外の男の子はなかなか生まれなかった。メアリーは女の子なんだけど、男の子がなかなか生まれなかった。当時のイギリス、イングランドは女の子が王様になることはできたんです。

樋口:できたんですね。

深井:政治、制度上。

楊:継承権があった。

樋口:ほお。

深井:継承権がある。あるんだけれども、女の子を王様にしてしまうといろんな意味でツッコミどころが多い、やっぱり。当時、まだ。ファクトとしてね。

樋口:そういう時代です。

深井:時代。だから、まだヘンリー7世、お父さんのヘンリー7世の時代にやっとまとめ上げたイングランド、しかもまだ王権が弱かったイングランドが自分の時代の次の時代に女王が誕生することによって王権が揺らいでしまったら彼としては非常に困るなと思ってた。

樋口:そりゃそうだ。

深井:だから男の子が欲しいなと思ってたんだけど、すでにキャサリン・オブ・アラゴンが40台くらいになっていて、これからこの時代の医療とかも考えたりして、男の子を産むの難しいなと思い始めてた。なので、新しい若い王妃を迎えないといけないと彼は考え始めてたんです。カトリック教徒って離婚してはいけない、基本的に。一生誓いますとかいってやるじゃないですか。結婚式で。

樋口:やりますね。教会で。

深井:あれ、本来一生誓わないといけない。

楊:結婚てキリスト教の中ではめちゃくちゃ大事なイベントなんです。キリスト教の中に七つの秘跡、重要な儀式があってその一つが結婚なんです。なので、はい離婚します、だったら、当時だったらローマ教会に吊るし上げにあってるくらいの犯罪行為なんです。

樋口:そんなにだったんですね。

楊:そんなに重いイベントなんです。教会を通じて教会が与える神の恵なんです、二人が結びつきあうのは。それを僕らの感覚からすれば結婚ごときでこんな考えたりとか悩んだりする、動いたりするのなんでだろうってもしかして理解しずらいのかもしれないけど、当時の宗教観からすれば相当重要なイベントなんです、結婚、離婚に関しては。

樋口:神に誓ってますからね。

楊:そう。神に誓ってるし、このルールに沿って結婚という宗教的なルールに沿わないことってのは教会に対する反抗なんです。

深井:そうなんです。けれどもヘンリー8世としてはこの離婚はそんなに難しくないと思ってた。ローマ教皇ともある意味ここまで仲良くしてるし、カトリックの守護者としていろんな貢献もしてるという感覚が自分の中にもあるんで。自分が離婚したいと言った時に過去それが認められた例もあるんです。なので今回も認めてくれるんじゃないかなと軽く考えていた。それが認められなかったんです。

樋口:あらら。

深井:それによって、いろんなことが起こってくるんです。認められないということから、それこそイギリス国教会の設立につながっていくわけですけど。それが次回からですね。

樋口:認められなかったってのはカトリック教会から。

深井:ローマ教皇が認めてくれなかった。

樋口:てことか。

深井:なんで認めてくれなかったのかは次回かな。話そうかなと思ってます。ここで認めてくれなかったことによって彼はいろんな画策をしてイギリス国教会を作るに至るわけです。

樋口:なるほど、はあ。

深井:これは本当皮肉だなと思ったのは、彼はめちゃくちゃ頑張って男の子を後継者にしようとした。それはもともと自分の王権の弱いテューダー朝、ないしはイングランドというものを大きくするためにはやっぱり女性の女王じゃなくて、男の王様を設置した方が今いろんな人たちを納得させることができるであろうと思ったわけです。

樋口:国としてね。

深井:だけど、結果的にイングランドを盛り上げたのってエリザベスだったわけじゃないですか。

樋口:そうか。

深井:面白いなと思って。

樋口:この後そうなるんだ。エリザベスは女性。

深井:あれだけヘンリー8世が望んだのに、女王が即位して、でもその女王がイングランドを力強くしていくんですよね。

楊:だから個人が常識を超えることってあるんです。

樋口:いい話ですね、今。個人が常識を超える。かっこいいな。

深井:面白いよね。

楊:あと、女王だとさっき深井君も言ってた、女王てどうして不安があるかというと、仮に一旦女王になったとしても基本的に結婚しなくちゃいけないんです。他の国の王室から国王を迎えて。その場合だと結果結婚すると女王女だから3歩下がらないといけない。

樋口:なるほど。

深井:男の方の、男のそれが仮にスペイン王家とかフランス王家と結婚したら。そっちに引っ張られちゃう。

楊:だから国の独立を守るという意味では女王はちょっと都合が悪いんです。

樋口:そういうことか。どうしても男女差があるんだな、その当時。

深井:それにもし傍系から男の王様を奉戴した反乱軍が出て来てしまうと、やっぱり男の方を選びがちになる、この時の時代の。やっぱり今だにだってそれで問題になってる、今でも男のリーダー、女のリーダーってのは完全平等じゃない。

楊:日本でもね。

深井:だからこの時代は言わずもがなそうだったわけですから。そういう不安をヘンリー8世としては残したくなかったんです。

樋口:なるほど、それはわかる。

楊:もちろん彼本人も男として男性としてそういう子供を持ちたいという個人的な希望もあったんでしょうけど、やっぱり彼は一国の君主なんで国のことを考えていろいろとこういう男子を持ちたい、息子を持ちたいというのが目的としてあったんです。それでもまあ聞いたらわかるんですけど、クズ。

樋口:その話すげえ聞きたい。

深井:次に回が彼のクズエピソードの回です。

樋口:なるほど。じゃあ一旦こういう感じですかね。

深井:はい。

樋口:じゃあ、クズエピソードを楽しみに次回を待ちましょう。ありがとうございました。

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