【コテンラジオ公式ステッカープレゼントキャンペーン実施中】
バリューブックスとコテンラジオで、プレゼントキャンペーンを実施中です!
2021年2月11日から3月31日までの間に、バリューブックスで本の買取を申し込まれた方に、コテンラジオのステッカーを2枚プレゼントいたします。
お申し込みの際に、「キャンペーンコード」という欄がありますので、『 cotenww1 』という合言葉を忘れずに入力してください。
本の買取申し込み:https://www.valuebooks.jp/sell
※キャンペーンコードは、大文字でも小文字でも大丈夫です。
※ステッカーは、お申し込みから1週間前後を目安にお届します。
【サポーターになる】
※2021年2月11日 5:00am以前にサポーターになられた方はメールにて特典のご案内をいたしましたので、ご確認ください。
http://www.cotenradio.fm/support
【今回の内容】 フランス革命の時に何が起こったか復讐しよう/帝国と国民国家の特徴/帝国が国民国家のいいところを真似し始める/第一次世界大戦にて帝国はほぼ無くなった/どういう帝国が勝ち、どういう帝国が負けたのか/国民国家モデルを導入できた国の特徴/戦争における多様性の脆さ/ナショナリズムの誕生/プロイセンの改革/教育が国家の仕事になった/識字率の変化/新聞の影響/国民国家の完成/時代によってナショナリズムは移り変わる?/3人の感想
樋口:はい、ええ、前回までは世界大戦を可能にしたテクノロジー発達ということでおききしたんですけども、続きでございます。
深井:はい。まず、フランス革命の時になにが起こったかということですけど、僕たちは国民という概念をものすごく当たり前のものとして受け取ってますよね、現代人て。
樋口:まあ、はいはい。
深井:でもこの国民というのは元からある自然物じゃあなくて人工物なんです。われわれが作り出した概念なんです。
楊:そんな歴史があるわけじゃない。
深井:そう、歴史の途中から出てきたそのの人たちが作ろうとして作ったものなわけ。
樋口:へえ
深井:これはフランス革命の時に人権宣言というのがあったって話した。それによって国民国家ていう国民が主権の国家が誕生する。これが誕生した時に何が起こったかというと、国家ってのは国民国家がよくわかったんじゃなくて、これおれがよく言ってることだけど、帝国が何かってことがよくわかったんです。
樋口:ほお。
深井:つまり、いままで自分たちはどういう国に生きてたのかってことがわかってきた、新しい概念が生またことによってね。
樋口:なるほどなるほど。
深井:で、この帝国ってじゃあなんだったのかてことですけど、帝国の定義って正直けっこういろいろできちゃう。一応一旦近代以降の帝国、フランス革命以降の帝国ってもので帝国ってこういうものだよって定義するとすると、いろんな帝国がある中でその最大公約数みたいなのをとっていくと、一つは広大な領域を持っている、持っているんだけどコアな地域を持ってる、コア地域ってのを持っていて、そのコア地域とは別の文化や別な異質な歴史をもっている複数のコアではない周縁地域からなりたっているものである、ということです。だから大英帝国の時にいうインドとかがそうですよね。
楊:そうだね。
深井:で、さらに帝国の統治エリート、ようは帝国を統治するエリート階級の人たちとそうじゃない周辺の住民の人たちというのがいて、その間には支配と被支配の関係がある、ということです。ようは身分が違うよということですね。この二つの条件を満たしているものを帝国と呼ぶとします。こうではないものが出てきたのがフランス革命で起こったことでこうでないもの、こうであるものですよね、今言った二つの特徴を持ったものがより際立ってきたというのがフランス革命で起こったことなわけです。フランス革命で起こったことってのは革命家たちが封建的な所得権とか身分制を廃止させて、これはここでは詳しくは言わないけど、第一身分、第二身分てのがあった、聖職者とか貴族とか。あれもう全部なくしましょう。国民ていうのを均質な国民というものにしましょう。という概念をここで作り出した。
楊:ヒエラルキーをなくしたってことだね。
深井:そうそうそう。これができるまでって国民て概念ない。貴族がいる聖職者もいる、けどフランス人ていう概念がない。ここで初めてフランス人という概念が出てくる。同じグループだよねってことです。さらにフランス革命で起こったのはこれも繰り返しになりますけど、王様ではなくて国民に主権が属する。この身分制がなくて国民主権があることを国民国家という風に呼びますね。その後フランスってのはもう一回王様を戻したりとかナポレオンがいたりとか、そのあともナポレオン3世がいたりとかゆりもどしがある。反動がある。思いっきり人権に振り切ってね、思いっきりそっちにやったらそれはそれでロペスピエールとかがいろんなこと起こした。あの揺り戻しがきてまた帝政に戻るけど、また共和制の方に戻っていくわけです、最終的に。帝国と国民国家モデルの特徴をもう少しいうと、さっきいった特徴もありますし、帝国ってのは比較的国境が変動的なんだよね。ここが国境ですみたいなことにならないわけです。
楊:そうだね。
深井:だけど、国民国家ってのは明確にここ国境線でありますみたいな感じで決まったりします。あとは法律とか行政とか住民というものに対して多元性がある。多様性、多元性があって、法律も一律法律を全員に適応してるわけじゃない、帝国はね。でも国民国家ってのはコア地域に対しては均質。とにかく均質化させるという性質がある。
樋口:ローカライズさせない。
深井:そうそうそう。で、帝国の方は臣従関係があるし、それは暴力的な軍事力を使っての強制だったりするわけ。だけど、国民国家モデルはここが一番でかい概念の転換ですけど、国民が政府と社会契約をむすんでる、人権がある。こういう違いがあるのが国民国家と帝国の違いなんですけども。この国民国家の性質を持ったものがフランスで出来上がって、それが周りに影響を与えていったときに、これ意外だと思うけど、相互にこれを殲滅するっていう方向、ようはお互いを攻撃してなくしてしまおうという方向にはいかなかったんです。
樋口:帝国と国民国家がですか。
深井:そうです。そうではなくてお互いのいいところを取り合って、浸潤していくって本には、論文には書いてあった、お互いのいいところを取り合っていくという方向にいったんです。
樋口:参考にしあったみたいな感じ。
深井:参考にしあったです、そう。お互いに参考にしあったわけです。実際は戦争が起こった。実際はね。ナポレオンが出てきたた周りのヨーロッパの国々は怖かった。なんでかっていったらフランス革命で言ってることは他の国の人たちの権力の源を根本から否定する論理だったから。これは宗教改革のときにやったローマ教皇の権威を否定する話とかなり似てます。根本から論理を崩す内容だったので、こんなものが広がったら困るということで抑えつけるという方向に働いた。これをウイーン体制といって、実際みんなで抑えつけようとした。けれども実際は抑えつけれなかった。抑えつけれずに強さ、国民国家の強い部分を知らしめられてしまった、周りの国々は。だからナポレオンにみんな負けた。国民国家ちょう強いなとなった。で、それをいいところを真似しなきゃってなった、周りの国。それを真似するっていう方向にいった。そうすると何が起こるというと、単純にここは国民国家ですね、ここは帝国ですね、ってことは言えなくなったんです。どっちの性質も持ってるねっていうものが誕生していく。
樋口:なるほど。いいとこ取りした結果合いの子が生まれちゃった。
深井:そうなんです。
楊:マーブル状態の段階になったのかな。
深井:はい。そうなんです。このマーブル状態がなくなったのが第一次世界大戦なんです。第一次世界大戦はこのマーブル状態をなくして帝国ほぼ崩壊したんです。
楊:そうだよね、確かに。
深井:で、国民国家に全部なっていったってのが第一次世界大戦が起こしたことなんです。
樋口:へえ、なるほど。
深井:はい、こういうことが起こる。ナポレオンが他の国を繰り返しになるけど、他の国を侵略した時に他の人たちも国民という概念なかったんだけど、フランスがフランス国民として攻めてくるから自分たちも意識せざるをえない。俺たちはなんなのか。ということを。これで国民ていう概念が他の人たちにも植えつけられていくんです。だから押さえつけられないんです、各貴族たちはそれを。
楊:自分のアイデンティティについて深掘りをするきっかけができた。
樋口:なるほどね。
深井:しかも冒頭にいったようにフランスは国家総動員戦ができるわけ、国民だから。めちゃくちゃ兵動員力が強い。みんな国のために戦ってる。一方は周りの国は貴族のために戦ってる傭兵で戦ってる。
楊:そう、忠誠心がそんなにない。
深井:だからフランスの方が強かったりする、素人が集まってるのに。職業軍人じゃない素人集めてるのに、その素人軍団に、ブラウンシュヴァイクで負けたりしてて、あの人たちが。フランスが勝ったりする。そうすると他の周りの国は研究するわけです、なぜそんなに強いのか。そういうところからそうやって相互の参考にしあうというベクトルに向いていく。最初は抑えつけようとする。だけど抑えつけれないんで相互に影響しあう。押さえつけられてフランスも反動で一回帝政に戻ったりする。だけどやっぱり揺り戻しがくる。この揺り戻しって歴史でたくさんある。極端に触れてまた真ん中に戻っていく。
樋口:あったあった。
深井:そういうことが起こるってのの参考例。
樋口:なるほどね。概念を知らないのと認識できないのはもちろんですけど、概念を知っちゃうと目覚めちゃうんですね。
深井:そうです。そうなんです。
楊:確かにね。
深井:第一次世界大戦はさっきいった帝国を崩壊させるということが起こって、国民国家になっていったんですけど。これによってわかったことがあったのが、どういう帝国が勝って、どういう帝国が負けたのかという話がわかってきた。これはさっきいったように両方の性質をそれぞれの国が持ってた。列強はね。帝国の側面も持ってたし、国民国家の側面も持ってた、どっちも持ってた。けれども勝った国と負けた国が出てきた。これを分析するとどうやら性質が分かれているってことがわかってきた。
樋口:これは興味深いよ。
深井:はい。勝った国ってだれかったいうと例えばイギリスとかアメリカとかフランスとか、あとは日本も勝ったほうに入る日本も。負けた国ってのはロシアとかドイツとかオーストリアとかオスマン帝国。これわかりやすく分かれてる。国民国家の概念が導入しやすかった国が勝ってるわけ。
樋口:ということは帝国モデルよりも国民国家モデルの方がまず優秀だったって。
深井:優秀というか戦争で強い。国家総動員戦とかができるから。これも何回も繰り返すけど、参考にしあったんだけどそのまま導入できた国は勝った。導入できなかった国は負けてる。
楊:なるほど。
樋口:なるほど。
深井:国民国家モデルを、モデルね、これ。そういうスタイルを導入できた国てのは勝った。導入できなかった国は負けてる。じゃあ導入できた国ってどういう特徴を持ってるかというと、植民地がまず遠い。アフリカとかインドとかに持ってる。日本も海を隔てて遠くにある。そうすると何ができるかというと、自分の国にいるコア地域にいる国民には国民国家モデルで適応できる。ようは僕たちの民族ってのはみんな均質な制度でいけるよね。みんな参政権もってますよね、ということができる。だけど、植民地はそうじゃないぞ、お前らは僕たちの帝国の植民地なんだぞというモデルが適応できる。
樋口:おお。すごい、いいとこどりだ。
楊:なるほど。
深井:そうなんです。だけどオスマントルコはこれができなかった。なんでかっていったら多民族が共生してるからです。
樋口:はあ。
深井:多民族がそんなに離れてない場所で共生してるので、お前らは違う法律で我々は同じ法律だぞということもできないし、なんならオスマントルコ民族って人はいない。これはオスマントルコの時に言ったよね。民族って概念は一次世界大戦の時くらいから出てきたって話したんだけど、これが適応、これを適応するために民族って概念をみんな使った。それまで民族って概念なかったし、国民ていう概念がなかった。
樋口:はあ。
深井:だけど、統治モデルを導入するときに国民国家にしないといけない時に何の単位で均質化するかってことにみんな悩んだんですよ。均質化するのが簡単だった国は近代化に成功したんです。均質化するのに難しかった国が近代化に失敗する。これがロシアとオスマンとドイツ、ドイツは近代化に成功したんだけど、ロシアとオスマンとオーストラリアとあと清だよね中国の。
楊:そうだよね。うんうん。
深井:この違いが第一次世界大戦で出て負けちゃうんです。
樋口:面白すぎる。
楊:なるほど。ある意味多様性、多元性の脆いところがでてきてしまった。
深井:そういうことです。彼らはあらゆる民族を抱えている多様性に富んだ国だったからこそ、国民を定義することにとても難しくなって。さっきいった植民地は帝国モデルで統治するけど、国内は国民国家モデルで統治しますみたいな二重構造を作るってことが容易にはできなかった。それを納得させることもできなかった。そのために文化的地理的差異みたいなのの差分を埋めることができなかった。
樋口:これはすごい。
楊:なるほど、互換性がないのか。
深井:なので、例えばオスマントルコが戦争するからトルコ民族集まれみたいなこと言っても、ブルガリア人は集まらない。ブルガリアは当時もうあれだったんだけど、オスマントルコってギリシャとかブルガリアも含めてた、昔。オーストラリアだって南スラブとかの問題を抱えてる。ドイツ系民族だけじゃないわけです。
楊:そうだね。
樋口:面白い、だから、海洋というか海を挟んでたら地理的な要因で境界線が思いっきり引けてたってことですね。
深井:引けてたし、同じ場所に住んでない。これが例えば中国と日本と韓国がみんな同じような場所に住んでて、混ざりまくってます。例えばだけどどっかの県には半分半分くらい住んでますってなったら、日本も難しかった、近代化が。
楊:めちゃくちゃだろうね。その前に民族紛争が起きる。
深井:そうそう。民族紛争が起こるから。誰に参政権を渡すかとかちょうむずいわけ、そうなるよ。
楊:確かに。
深井:それが簡単だった、日本とかイギリスとかフランスとかが。アメリカも。
樋口:なるほどね。
楊:確かに。
深井:もうアメリカは特殊だけどね。
楊:アメリカはちょっとまたまとめる、そもそも一つにまとめることにすごく拒絶反応があるから。
樋口:ありましたね。
深井:で、一次世界大戦に勝ったのはそういういわゆる海を隔てた海洋帝国とも呼ばれる国々です。あとは負けたのは大陸帝国的なやつですよね。ドイツは海洋帝国の性質も大陸帝国の性質もどっちも持ってるというふうに言われてる。もう一つのグループがあって。これが国民国家モデルを採用して帝国を再生産した国がある。
樋口:ほうほう。
深井:ようは国民国家にならなかった国ってのがある。これがロシアと中国。国民国家モデルじゃないんだけど、帝国モデルなんだけど、第一次世界大戦を経てリファクタリングしてる。それでロシアと中国は新しく作りなおしていった違いがありますよね。ということです。
楊:面白い。
樋口:面白いね。
深井:こういうのがありましてですね。この国民国家ができることによって、わかりやすく徴兵制度ってのができるようになります。これが近代的なんだよね、とても。18世紀の終盤のフランス革命からすでに始まってる。これも繰り返しになるけど、傭兵か貴族が戦争してた、今まで。中世の戦争ってのは傭兵だから職業軍人なんだよね。その傭兵の殆どってのは故郷に仕送りをしたくて戦争をしてるわけ。仕事としてやってるわけ。お金を稼ぐために軍人をやってる。だから死んだらもともこうもない、仕送りできないから。君主のために戦ってるわけでもない、お金のために戦ってるから。だからみんななるべく死にたくはない。自分の国を略奪したりするような戦争であるとか宗教戦争とかだったらちょっとけっこうそういう側面が減っていくけど、農民戦争とかいう、そういうのは。けど、基本的にはそういう傭兵での戦争だったし。
楊:ビジネスだもんね。
深井:そうそう。捕虜も殺さないし。冒頭一番目くらいに言いましたけど、この城を陥したらじゃあ一回おしまいね、みたいな。この町を陥したらおしまいね、みたいな。ここでどっちが有利になったからこういう講和条約を結んで終わらせましょうみたいな話をするわけです。そういう戦い方がスタンダードだった。これがフランス革命によって変わっちゃう。ヤンヤンがいってたようにアテネの時、これはアテネの時代は2000年くらい前のアテネの時代には参政権と徴兵制度があった。アテネ市民の成人男性ってのは対象になっていたけど、それが2000年ぶりくらいに復活するわけです。
楊:面白いね、先祖帰りだ。
深井:性質はちょっと違うけどそうなっていくわけ。今回はしかも人権に基づいてるから、今回は。
楊:確かにね。
深井:ナショナリズムというのが生まれるんです、その中で。
樋口:うわ、来た。
深井:ナショナリズムというのが生まれていって、その指揮官として天才であるナポレオン・ボナパルトという人がそれを率いて、各国の傭兵隊に連戦連勝していく、東はロシアの方まで西はスペインの方まで攻めいっていってヨーロッパを震撼させるわけですね。
樋口:ほお
深井:これに一番びっくりしたのがプロイセンという国です。
樋口:ドイツかな。
深井:ドイツです、今の。プロイセンは一気に近代化に舵を切る、これで。農奴制というのをやってたんだけどこれを廃止して、国民軍を創始します。ドイツ語を話す人たちは国民だよという定義にすることにします。これでドイツ民族というものが誕生しますね。これが僕が冒頭いった国民てのは作られたものだよってはこういうことです。定義を作ってるということです。僕たち本当に最初から日本人がいると思ってるけど、作ってるから日本人てのを。
楊:明治時代にね。
深井:そう。ドイツ人もこの時にドイツ人を作ったんだよね。
樋口:うわあ。
楊:みんな同じ教育とか受けさせて。
深井:そうそうそう。そう。これでやっとフランス軍というのを倒してナポレオン戦争てのを終わらせて、さっきいったみたいに、この後はナポレオンに対しての揺り戻しがきて、フランス革命に対しての揺り戻しですね。が、きて、むしろ絶対主義が絶対王政万歳みたいになる、また一回。だけれどもまた元に戻って、元に戻るというかフランス革命の方の機運がでてきて国民国家化していく。ビスマルクっていう天才の宰相が出てくる、総理大臣みたいな人。1871年にこの人の元でドイツは統一されます。この1871年てのは、ほら、明治維新とほぼ一緒。
樋口:明治維新のちょい後になるのかな。
深井:はい。1868年が明治維新なんで。その三年後にドイツもそういう風に統一したし。なんならイタリアも同じ時期なんです。だからこの時期にやっぱり国民国家てのが世界的に誕生するってのがフランス革命の余波で起こってるわけです。
楊:この3か国が第二次世界大戦で同盟を結ぶってのが運命的だよね。
樋口:ほお
深井:そうだね。この時期の後発の国民国家だからこそだろうね。
楊:だろうね。やっぱり後発だからこそ先発の列強たちとのコンフリクトがそういった発生する構造にはなってた。
深井:だけども中国とか朝鮮とか東南アジアとかインドとかイランとかオスマンとかでは国民軍の創設ってのは失敗するんです。
樋口:さっきの原因ですね。
深井:はい。
樋口:はいはいはい。
深井:あとは第二次世界大戦後ってのはちなみにナショナリズムはさらに今度はアジアとかアフリカに広がっていって、その後けっこう歴史の、今度現代史というのを勉強したと思う、世界史の中では。ガンディーが出てきてイギリスからインドを独立させたりだとか。それもやっぱりインドっていうのでまとまってる。それまでインドっていうのでまとまったことないわけだから、ナショナリズムではあるわけ。あとホーチミンがベトナム独立したりとか、あとはスカルノがインドネシアやったりとか。そういう今度はそっちの潮流にありますよね。これはちなみにの話なんですけど。ちょっとまたナポレオンの時代に戻ります。さっきいったみたいに徴兵制の話をしてる。フランスは徴兵ができました。これは失業対策。当時若年層の失業とかもひどかった、失業対策にもなった。これが国民国家意識に目覚めていくナショナリズムを持った国民軍のはしりとしてでてきたやつにプロイセンが負けて、これを敗因分析して無線とかを使って参謀本部を作ったって話をした。プロイセンていう国はドイツの中にあるんだけど、フランスとロシアというすごい大きい国に両輪で囲まれてる。日本でいうところの陸続きでアメリカとロシアに挟まれたらちょう怖い。アメリカと中国とか。
樋口:確かに。
深井:ある意味そういう状況なわけです。ドイツってそいういう状況に置かれてる国。そのプロイセンはすごい危機感を持つわけです、やっぱフランスに対して。一気に改革をして職業軍人だけでは足りないので徴兵制を作る。この徴兵制をするんだけど、徴兵制をすると訓練もめちゃくちゃしないといけないし、費用もちょうかかるじゃないですか。常備軍を持つってのはめちゃくちゃ費用が。その人たちに給料にずっと払わないといけない。
楊:その人たちも生産活動するわけじゃないしね。
樋口:外注じゃなくて正社員でやとわないといけない。
深井:そうそう、その間経済活動、さっきヤンヤンがいった生産活動とか経済活動が止まる、その人たちって。それもよくないので、そこで新しい概念として予備役という制度ができる、プロイセンで。これはなにかというと、一回訓練を受けます。その後社会にでて普通に経済活動とか生産活動をしてもらってます。戦争が起こった時だけもう一回徴収しますってやつです。これをすごくうまく使ったりしますね。これが起こるとそれに参政権を求めてプロイセンでも普通選挙みたいな話がでてきたりだとかしますね。この時の軍隊の概念ていうのはこれも日本人のための第一次世界大戦史に載ってましたけど、わかりやすいなと思った、スポーツのナショナルチームみたいな感じなんだって。
楊:ちょっと近いね、確かに。
深井:ナショナリズムが醸成された国における軍隊っていうのはスポーツのナショナルチームに本当に勝ってほしいし、勝ったら英雄だし、負けたら罵声を浴びせられるというか。
楊:死ぬかどうかの違い、だけとは言わないけど、確かにそこのマインドは近い。ナショナリズムという感情を引き受けるという一つの形だよね。
深井:ナショナリズムっていう感覚ってのは僕たち普通に持ってるけど、けっこうそれ意識しづらいと思うけど、そういうことなんです。チームを応援してる感覚と近いところがあって。
楊:愛国心に結びつく。
深井:負けたら絶望して、そのためにフーリガンにもなれるような、ものだし。
樋口:はいはいはい
深井:この後出てきますけど、政治的主張とかの全てに優先して実はナショナリズムが一番強かった。政治的対立とか全部吹っ飛んで国のために戦えたんです、みんな。
樋口:はいはいはい。
深井:ていうくら実は強いものでもあった。
樋口:逆にいうとあれか、選手側じゃない、兵隊側も活躍したら国民からやったねと言われるからモチベーションにもなってたんですかね。
楊:そうですそうです。
深井:そうだね。本当に国のために純粋に頑張ってたと思う。でもけっこうな数の人たちが。
樋口:なるほど。
深井:そこはいいことでもあり、やっぱりそういう戦争を起こした要因でもある。どっちもありますよね。両面何事も両面あるので、ナショナリズムは悪いとは思ってないけど、僕も愛国心ありますし。とはいえ、ナショナリズムによってそういう戦争が起こってるってのは確実だなという感じですね、これ勉強してたら。この徴兵制ってのは国民国家の形成に一役かってる。ようは軍隊ができます。みんなが徴兵されてます、それはナショナルチームですという感覚。軍隊がありますということは我々は同じチームなんだという感覚、国民なんだという感覚を持つことにつながっている。
楊:感情の動きを共有できるわけよね。シンクロできるわけ。
深井:そうそう、それが新聞でリアルタイムで今どうなってるどうなってるみたいなのを伝えられるとそれに対して一喜一憂する。みたいな、基本的に悪い情報てみんな伝えてなかった、新聞で。いい情報がばんばんきてうわあみたいになるみたいなね。というのが正に今でいうところのスポーツの感覚にちょっと近いというのを想像してもらうとわかりやすい。
樋口:めちゃくちゃしっくりきました。
深井:ていう感覚でありました。というのと、あとは、国民という概念が出来上がってから教育ってのが国家の仕事になったんです。これも非常に面白い観点で、国民という概念ができるまでは、国、ようは貴族が農民を教育してもいいことなんて一つもないわけ。
樋口:なるほど。
深井:ないでしょう、実際。
楊:むしろ賢くなってもらったら困る。
深井:困る。だから文字も読めなくていいし、農業だけしとけばいい。
楊:そうそう、聖書も読めなくていいよ。
深井:だけど、国民国家って参政権を渡してるし、文字読めてもらわないと困る。
樋口:そりゃそうだ。
深井:し、兵士として徴兵するからやっぱり文字を読めてもらわないといけないし。参謀の人たちもたくさん必要だし、頭がよくないといけない、やっぱり、ある程度。ここで初めて教育てのは国の仕事になるんです。だから僕たちって教育って国の仕事が当たり前と思ってるでしょ、当たり前じゃないってこと。
樋口:うわあ。怖い。
楊:江戸時代なんて寺子屋が教育、民間教育のベースですから。
深井:僕はいま強烈に感じるのは国の仕事じゃなくなってるなと思う。教育が。
樋口:はあはあは。
深井:時代が。
樋口:はいはいはい。
深井:義務教育はなくなりはしない、先生方がやってる仕事ぼくすごい尊敬してるけど、新しい潮流でると思います。ここから。
樋口:感じてますね。
深井:もう、完全に流れが。ここから義務教育ってこの時代に始まってるんですけど。転換点だなという感じ、それの。
楊:そうね。
深井:役割の転換点きてる。国家の教育の役割かわるだろうなという感じがする。
楊:そうだね。義務教育も国民という統一規格を生産するためのシステムだから、それは別に悪いことではないんだけど、当時の時代として必要だったんだろうね。
樋口:うん。
深井:そうそうそう。この時の識字率とかめちゃくちゃ低くて、まじで。例えば1850年の時のフランスとか60パー。
樋口:そうか、60パーか
深井:日本でも50パーくらい。だけど50年後の1900年代になると80何パー。日本も80何パーとか。だから一気に上がったってことだよね。ちなみにロシアはすごい最初から低くて、1850年が15パーくらいで1900年くらいでも25パーくらい。たぶん国土が広すぎて学校作っても通えないから、多分。
樋口:ああ。なるほど。
楊:あとおれが読んだのは、教育制度を作っても収入の低い農民とかは労働力を取られるから子供を出さないんだって、学校に。
深井:生産性が上がらないと学校に行かせられない、本当ね。
樋口:なるほど、だから、国の裕福さも相当関わってる。
深井:そうです、だから工業国の方が農業国よりも識字率が高いんです。そう意味で子供が農業しなくてもよくて。
楊:たしかにね。
樋口:なるほど。
深井:というのがあって。兵士の知的な質と軍隊の強さの相関性も言われてたんで、こうやって識字率をあげるための義務教育が出てくる。この時期にちなみに統一言語の制定とか共通語の制定が始まるわけですね。
楊:国家とかもこの時期かな。
深井:この時期に辞書とかが出てくるし、百科事典もこの時期に作られるわけです。逆にいうと本当あれだよね。それまで辞書もなかったし、共通語もなかったし、国民もなかったし、ということなんです、やっぱり。
樋口:おれも思った、そうか方言、ひどい方言だったんですね。みんな。
深井:全員そうだった。それで不自由なかったんだよね。
樋口:おまえたちきさんくぅらこのくらすぞとかいってた。
深井:うん、だけど、教科書を制定するにあたってみんな同じ言語で喋らないと教育できない、一律で。全部ローカライズできない。だから共通語作るんですよ。で、日本人ていう、全員を。面白いよね。
樋口:面白い。
楊:まとめる力、集約する力。
深井:それと、新聞がもっとみんな読めるようになるし、ていう相互作用が起こってくるわけです。
樋口:メリットも相当ありますからね。それね。
楊:一方で今新聞の話を深井くんがいったけど、新聞て前の回でも国の、政治家が世論を操作、ある程度コントロールするために使ったって部分もあるけど、メディアが登場することによってもう一つ実は役割みたいなのが生まれて。海外の他の国のそういう情報も入ってくるようになったんです。いい情報も悪い情報も。特に悪い情報。例えば海外はうちの国をどう見てるのかとか、海外のうちの国に対する批判だとか。そういう情報も入ることになることによってナショナリズムの一つの補強作用になった。
樋口:なるほど、面白い。
楊:例えばとても、例として適切かどうかわらかならいですけど、日本人がテレビで中国の方で反日デモをやってる映像を見た時の感情の挙動とかあると思う。そういうことが起きるようになった。こいつら敵だわ、みたいな。そういう判断もできるようになった。
樋口:面白い。これも情報の滑らかさというか、移動ができるようになったからというのもあって。なるほど、面白い。
楊:この国はうちに対して親近感があるよね、この国はうちのことをめっちゃ悪くいってるよね、とか。そういうことを国民ベースで世論として形成できるような材料になった。
深井:そうだね。形成しやすいしね、そういう風に持って行った方が。諸事やりやすくもあって。勧善懲悪的な論理で大衆を煽るってのがすごい簡単にできちゃう。真実でファクトですごい細部を伝えるよりもわかりやすく感情を激昂させる方が簡単なんだよね。世界大戦とかを通じて今もそうなんです。今の世界見てても非常に思う。煽るのってすげえ簡単なんだよね。抑えるのってめっちゃむずいわけ。だから、もう煽る方がつよい。
樋口:そうですね。
深井:煽るのって別に悪くない。株式会社の中では煽ったりする、社員の人たちを煽ってやる気出してモチベートしたりしてやるんだけど、それが国家レベルになった時には戦争に使われたりするとそういうのが起こる。この時は嘘の情報とか平気で流す。本当に平気で大嘘ついて新聞が、完全なる嘘をいって、フランスがこういうことやったよ、とか、ドイツがこういうことやったよ、とか言って、日本もこの国がこういうことやったよ、自分たちはこういうことやったよ、と平気で嘘ついて一喜一憂させて世論操作して、海外で敵を作って怒りの矛先をそっちに向けて、一致団結させてみんなでリソース集約していこうぜって管理の仕方をしていた。マネージメント手法がそうだった。
楊:一方では高ぶる世論をコントロールできなくて、本来なら外交の平和的な手段で解決できるようなトラブルが国民の怒りの感情によってハイジャックされて、結局それが外交的な手段で解決できなくなるという場面も多々出てきます。
樋口:コントロールできなくなる。
深井:そうですね。これによって今メディアの話もしましたけど、これによってついに完全なる国民国家の形成されるわけです。徴兵制があって、自分の体も国民としてカウントできる。義務教育によって自分の言語というのも国民化されていく。新聞というものによって言説空間というか世論、全体も国民化されていく。そして鉄道とか電信の普及によって空間も統一感のある国民化されていくということで。本当に均質化された国民が出来上がって国民国家というものがこれで完成する。という状態があります。この国民国家という概念とナショナリズムというものと後はさっきまでいってた技術発展がこの後政治状況と掛け算になって世界大戦に突入していく。この後は政治がじゃあどういう風にナポレオン以降動いて世界大戦までいくのかという話に突入します。
樋口:なるほどね。かあ、これはちょっとまた面白かったな。
楊:新しいまとめるための枠組み、人をまとめるための枠組みが登場したってことですよね。
樋口:そうですね。だからなんか本当に民族とは何かとか国とは何かとか人間とは何かとか。だから本当にもしかしたら今後宇宙人が出てきたときに本当に人類とは何かとか地球とは何かとか。ね、なんか今までの自分が当たり前と思ってるくくりかたってのがどんどん変わってってるというの。
楊:そうですね。
樋口:まあまあもう本当にいつもいってますけど今しか知らなかったらあれですけど、昔と今っていうのでくくり方をするとまた時間でみても変わっていってるのがあって。
楊:いやあ、本当にそうですよね。
樋口:面白い。
楊:本当に個人的なことなんですけど、僕のような中国人もたぶん今たくさんいるんですけど、このちょっと普通の本当に中国で生まれて中国でずっと育ってきた中国人はまたたぶんメンタリティとかが全然違ったり、アイデンティティが違ったりしてるんですよね。だから同じ今の時代だと、当時の時代もあったと、いたと思うけど、同じ国籍を共有しながら実はもその中でもいくつかのマーブル状態になっていたりいろんな色が濃淡が違ったりしてるから。なんかね、面白くもあり、怖くもありますよ。
深井:面白いよね。
樋口:そうですね。悩みのタネにもなる。
楊:なりますなります。
深井:僕はだからこの章の勉強した時に、これもあんまりラジオで言ったことないけど、けっこう愛国心強い方なんです、ちゃんと。けど、ナショナリズムってやっぱり時代によって移り変わるんだなってのがすごくわかった。この後に、僕はこの時代にこういうふうに生まれて生きてきてて、戦争だけじゃないけど、いろんな歴史勉強して、やっぱ日本人であることすごい嬉しかったりしたこともあるし、誇りに思ったこともあるし。すごい好きなんだけど、日本のことが。一方で日本ていう概念てこんな新しいんだってのがわかる、こうやって。そうするととらわれるのも違うなと思うわけです。だから今後今のヤンヤンの話じゃないけど、次から生まれてくる子供の世代とかってもしかしたら全然違うナショナリズムを持ってるかもしれないし、それを僕たちが押し付けるのたぶん全然違うんだろうなと思う。
樋口:でしょうね。
深井:昔の人はこうだったのにこうとかいうのはもう正直全然違うだろうなと思う。面白いなと思った。
楊:まあね。確かにね。ただ、戦争が起きたらまた状況が変わってくるんだろうな。
深井:そう。そこ打ち合わせでヤンヤンと意見が分かれて面白かった。ぼく、正直世界大戦みたいな大戦もう起こらないと思う。ナショナリズムが昔に戻ること正直ないかなと思ってる。ヤンヤンはなんかあったらそうなるんじゃないかと言ってて。
樋口:なるほどね。
楊:僕は全然ロジカルな思考によって導かれた答え、結論ではない。ただ単に今回の勉強して一次世界大戦もみんなが起こるとは思わなかった。じゃあ今の状況にもそれが対応できるんじゃないかと思った。
深井:それは本当そうだよね。
楊:今もみんな世界大戦起こると思ってない。でも起こる可能性はあるんじゃないというくらいの結論。
深井:でも、この後に出てきますけど、消耗戦と塹壕戦とね、というのが出てくるんです。個人的にはもう人類はもう消耗戦はできないんじゃないかなと思う。あれを繰り返すほどのことができるかなと、できないんじゃないかなと思うんで。戦争のスタイルは、世界大戦が起こったとしてもまったくスタイルが。
楊:核とか、今あるしね。
深井:そうだね。全然いい予想じゃないね、これ。
樋口:いや、まあまあ、でも核があるから抑止力になってるというのもあるかもしれないし、わからない、何がいいか。
深井:わからないですね。ということで。
樋口:ですね。
深井:次回以降政治の流れについて喋っていきたいと思います。
樋口:ちょっとまって、まだ大戦始まってないんでしたっけ。
深井:あのね。大戦始まるのね、9話くらい。
樋口:嘘でしょう。まあまあでも、大事なんでね。大事大事大事、そうそうそう。別に、いやいやまたこのパターンかと思いながら。
深井:9話。
樋口:オッケーです。でも一回一回楽しいんで、次回以降も楽しみです。ありがとうございます。
深井:はい。
楊:ありがとうございます。