#144 時代は揺り戻す?グラックス兄弟/マリウス/スッラによるローマ改革

【今回の内容】英雄出現/調子に乗った元老院/なぜ貧富の差ができるのか/キレる平民/グラックス兄弟の台頭/暴力という手段/嫌われたガイウス/おじさん、マリウス将軍出現/変化するローマ共和制/元老院派閥、スッラの改革/ついにカエサルに突入

樋口:はい、ええ、共和制への移行や様々な戦いを経てどんどん拡大していくローマって感じなんですが、今日はその続きでございます。

深井:はい。ええとですね。これからの話は征服地が拡大したら社会の歪みができましたという話をしまたよね。貴族と平民で分かれていった。そこの話をもう少し詳しくしていきます。そこに実は何人か英雄がでてくるんです、また。カエサルに繋がる系譜が出てきます。ここから。これがグラックス兄弟。マリウス、スッラ。マリウスとスッラっていう別々のひとなんですけど、て人たちがでてくる。今回はこの話をしようかなと思います。長いので二回に分かれるかもしれない、話が。

樋口:はい。

深井:で、ハンニバルっていうものすごく有名なカルタゴっていう国の武将が攻めてきた。で、ローマが実は一回滅びかけます。それを追い返して倒しちゃう、ローマは。それはどっかでまたシリーズでやります。これだけで十話くらい作れる。

樋口:ハンニバルは名前だけは。

深井:スーパー面白いんです、これは。今回はとばしますけど、これがまずありました。これによってちょっと社会変化がでかくなる。ローマが地中海全域を支配する。イタリア半島だけだったのが、地中海全域を支配するようになる、カルタゴを倒すことによって。これによって何が起こったかというと、元老院の権力が高くなってて、平民が護民官とか作ってちょっと拮抗し始めたって話した。けど、ハンニバルを倒すために一回元老院に権力をもう一回集中させる必要があった。外敵がきて緊急事態って一つの権力の統率に基づいて行動したほうが絶対いいから。

樋口:速いから。

深井:うん、一回そうした。外交権とか人事権とか司法権とか財政権とか全部元老院に集中させたんです。元老院が調子に乗るんです。

樋口:あれ。なんか

楊:元々元老院、て、一回元老院の議員になれば終身制じゃないですか。これはメリットは経験値がたまっていくのがメリットなんですけど、デメリットは既得権益化するデメリットがある。

樋口:そうですね、集中しますよね、そこに。

深井:これ、本当にどの組織でも、どの王朝でも起こる、本当に再現性のある現象です。

樋口:いっぱい聞いてきたな、この話。

深井:いろんなところで聞きましたよね。これが起こるんです。その結果何が起こるかというと貧富の差が拡大します。これも歴史みてたら面白い。貧富の差が拡大すると必ず社会不安になるんです。必ずおかしくなるんです。だから貧富の差を作らないのは大事だなと思った、歴史勉強してて。その、なんで貧富の差ができるのかてのをもう一度ちゃんと説明すると、領土が拡大します。そうすると新しく獲得した領土の人たちから富を得ることができるようになります。ローマは比較的そこ緩やかに統治してるんだけれども、とはいえ、富をもらうことができる。収入が増えます。この増えた収入、誰に分配するのかという話になる。この誰に分配するのかというのに元老院が権力を握っているので、やっぱり貴族の方に流れていく。そうすると平民はなにが起こるかというと、戦争で昔はローマの近郊で戦ってた。そんなに遠くもなかったから比較的すぐに帰れてた。けど、領土が拡大してヒスパニアとかいって、スペインとかまで、イタリアからスペインとかまで遠征しないといけない。ないしはガリアとか、フランスとかまで遠征しないといけない。そんな遠くまで遠征したら何年間も帰れない。何年間も帰れないとずっと農業ができないから自分の実家はずっと貧乏になりつづけていく。だけど、その戦争から帰ってきてその富を得るのは貴族のほうだと。しかもなんならその貴族は新しく獲得した土地から奴隷をたくさん安く買ってしまってるから仕事も全部とられてしまう。その奴隷が農業とか小作人とかも全部やっちゃう。で、新しい土地も獲得してるんでその土地で大きい農園とかを経営してしまう。そうするとどんどんどんどん貧富の差が広がって行って。ある日平民がキレるんです。

樋口:それはキレるは。

深井:こんなにローマのためにおれらは頑張って戦ったのに、なんだこれは。

樋口:それはそうだ。

深井:なんでこんなことに、こんな状況になってるんだということでキレるんですけど、このキレる中でローマ市民の声を代弁してこれを煽動してくれる平民が出てくる。平民からしたら英雄です。これがグラックス兄弟っていう兄弟が出てくる。

樋口:かっこいいね。

深井:ぼく、このグラックス兄弟すごい人だと思ってるけど、全然評価されてない、世界史で。なんか、馬鹿って書いてあった。

樋口:馬鹿。ひどい。

深井:なにも考えずにとか書いてあるけど、ぼくはけっこうすごい人だと思う、この人たちなかなかできないと思います。

楊:好きだね。

深井:何も考えず突っ込むの好きだなと思ってる。好みの問題ね。貧富の差が拡大しました、それで耕せなくて農地を失う人が出てきました。農地を失った人たちはもう農地さえ持ってないので都市部の方に仕事を探しにいきます。仕事を探しに行くんだけど、仕事は奴隷に取られちゃってるんで、仕事がありません。みたいになった。けど、この人は選挙権を持ってるわけです、ローマ共和制において。この選挙権を持ってる人たちがたくさんローマに無産市民、ようは財産を持っていない市民として溢れてくる。そうすると選挙権を持ってるから元老院も無視できないってなっていって、その中からこのグラックス兄弟ってのが出てくる。そこを生かしてこのグラックス兄弟ってのが護民官ってさっきあった。平民を守るためにコンスルに対して、執政官コンスルに対して、最高権力者コンスルに対して拒否権を発動することができる。という。あと、自分で法案提出することもできるんだけど、このグラックス兄弟てのが護民官ってやつになるんです。グラックス兄弟はもうキレてるんです。ローマ平民たちがすごいかわいそうなことになってることに、このローマの勝利に尽くしたはずの平民たちが、なぜこんなことにならないといけないんだということで、まずお兄さんのティビリース・グラックスという人がいるんです。この人が30歳で護民官に就任して、土地改革に着手する。

樋口:土地。

深井:この土地改革というのは何をしようとしたかというと、大土地所有をしていた貴族の、その大土地の上限を決める。だからあんまり持てなくする。ということですね。で、その分余った土地をいま土地を持ってない市民に渡しちゃう。

樋口:なるほど。

深井:これをしようとする。おそらくこの人は正義感と愛国心で動いている。ローマのため、そして平民のため。自分も平民だから、ティベリウスは。

樋口:資産の再分配みたいな感じですね。

楊:そうですね。

深井:で、この人、それで頑張るんだけど、当たり前だけど元老院がキレる。

楊:これって既得権益というか自分たちの特権を削ることだから。

樋口:そうだね。そりゃそうだ。

深井:でも、ティベリウスまだ30とかで若いし、キレてるから全然政治力ない。カエサルのような政治力全くなく、相手のことダメなやつらだと思ってるから突っ込む。そうすると元老院はこいつ殺さなきゃとなる。

樋口:いいね。

深井:もう、がんがんくるから。もうバランスとかとってこない、ティベリウスは。もうがんがんくるから、もう元老院も、こいつ殺さないとやばいとなって殺しちゃうんです。

樋口:あら、

深井:いままでほぼ内紛はなかったわけ。

樋口:あちゃ。

深井:ローマって。ローマ人どうしでこういう殺し、戦争で殺しあうとかってあんましてこなかった。ここで殺すという事件がおこっちゃう。

樋口:あらら。

楊:これによって今後のローマの政治の中では問題解決の一つのルートとして暴力が登場するんです。

深井:そうなんです、ここで初めて。

樋口:気付いちゃった 。

深井:このティベリウスが火をつける。

樋口:あちゃあ。

深井:ぼく、このティベリウスが火つけたのすごい好きなんです。

楊:この後けっこう内紛というか政治で最終的に決裂すると殺し合おうみたいな。

深井:これ、ちょっと吉田松陰を感じる。

楊:ああ、なるほどね。

深井:初期にこの人つっこんだから、その後流れが出てきてる、多分。

樋口:なるほど。

深井:この後カエサルまでの流れこの人が作ってる。

樋口:なるほど。

深井:それで元老院を倒す、最後。けど、グラックスがもしここで死んでなかったらどうにもなってなかった、やっぱ。この人がつっこんでばーんて死んでわけわからない前例作ったから、他の人が、後の人がバランス取れてる。この人がバランス取らなかったから後世の人がバランスとってる。

樋口:なるほどなるほど。

楊:たしかに、たしかに。

深井:だから、ぼくこの人すごく好きなんです。

楊:いつか割れるシャボン玉を最初に割った人。

深井:そう。

樋口:いまのいいな。

深井:そう。

樋口:なるほど。

深井:で、ぼくがもっと好きなのが、この弟が、兄弟なんで、ガイウスっていう弟が出てくる。これカエサルと名前一緒なんだけどね。ガイウス・グラックス。この人がティベリウスの9歳下で。この人も30歳になったら護民官になるんだけど、お兄さんと同じことして殺されるんです。学ばない。そこがめっちゃ面白い。この人も農地改革もう一回やったりとか、公共事業による雇用政策を作ったりだとかですね。あと、失業者に安い価格で小麦を配給するとかめちゃくちゃいろんな政策をね。

楊:生活保護に近い。

深井:そうそう。ばんばんやっていくわけ。で、そのローマ市民権ていうあなたローマ市民ですってやつを、もっと広い範囲の人たちに与えようとする。ガイウス・グラックスからすると、ローマ市民権をローマ市民だけが持ってる状態ってのがいびつであるってことがわかってた、彼。これカエサルの時に出てくるんだけど、周辺の人たちも軍隊とかを送ってくれてる。その周辺の人たちも軍隊を送って、いろいろやってあげるのに、ローマのために、権利がないということで、ちょうどカエサルの時代に戦争がおこる、それが理由で。ガイウス・グラックスはその前の時代の人ですけど、その時点でそれはいびつだよなってことを看破してたわけです。で、絶対だれも賛成しないのわかりきってるのに与えようとする、そのローマ市民権を。最終的にこれをカエサルが実現させちゃうんだけど。

樋口:やるんだ。

深井:そう。ガイウスはこれを先立ってやろうとする、お兄さんが殺されてるの見てるのに。

樋口:ふうん。

深井:なんか、あの、EUみたいな感じなのを作ろうとする。で、殺されるんです。

樋口:なんかいいね、いいっていったらまたあれですけど。

楊:たぶんここが日本的な偉人像と西洋的な偉人像の違いだろうね。おれ中国人だけど。

深井:ていうかおれらの好み。

楊:いやあどうだろう。

深井:日本人なのかな。

楊:みなさんコメントください。

樋口:つい、いいねっていってしまうね。

深井:この時にガイウスは元老院から嫌われすぎて、非常事態宣言出されてる、殺される時に。これを元老院最終勧告っていうんだけど。

楊:そうとう面白い。

深井:名前が面白い、かっこいい。セナートゥス・コンスルトゥム・ウルティルムていう勧告を出される。この勧告出されるってのは国家反逆罪みたいな、裁判なしで死刑ていうのを出されて。

樋口:そうとうやばい。

深井:これでガイウスは自殺するんです。

楊:もう、法律の保護の範囲外にお前はなった。だから誰が殺しても全然罪に問われないよというロジックです。

樋口:うひゃ。

深井:このグラックス兄弟のツッコミ感、おれね、好きね。好きでね。お母さんがいて、お母さんシングルマザーでこの二人育ててる。何人か兄弟いたけど、ほとんど死んでて、この二人育てて、そしたらこの二人ともめちゃくちゃつっこんでお母さんより先に死んじゃって。お母さんが弟のガイウスに最後らへん送ってる手紙とか、頼むからマジでやめてって。死ぬからって。書いてるけどやってしまった。みたいな。でもこの人たちがいるから歴史変わったと思いますよ。

楊:吉田松陰が好きそうなキャラだね。

深井:すきでしょうね。

楊:絶対好きだろうね。

深井:この人たちが出てきます。

樋口:火つけ役か。

深井:この人たちの次に、グラックス兄弟の改革ってのはいわゆる失敗に終わっちゃう、やろうとしたけど殺されて、その法政策は執行されなかったのでうまく機能しなかったわけです。で、そうすると何が起こるかというと、元老院の人たちは既得権益を吸えてる状態でいいんだけど、ローマ自体は弱くなっちゃう。それはそうだよね。軍隊に行くはずの兵士の人たちがどんどん貧乏になってる。軍隊に行く人たちは自腹で軍隊に行ってた。

樋口:はい。

楊:そうだね。

深井:装備は自分で揃えていかないといけないのに、その装備買うお金がなくなったりとか。あとはもう、ね、その戦争行ったら暮らしていけなくなるのわかってるからモチベーションがわかない、戦争に対して。しかも防衛戦争じゃなくて侵略戦争になってるから、ローマが拡大したことによって。なんでそんな遠くに行って戦争しないといけないのっていう問いもある。彼らの中で。しかも自分の生活は悪くなる、いいことはない。これによってローマ軍がめちゃくちゃ弱くなっていって、実はここからどんどん戦争に負け始めるんです。

樋口:あら、あらら。

深井:これで北からの蛮族が、蛮族っていったら悪い。今のヨーロッパ人。

楊:彼らが思う蛮族。ローマ人が。

深井:蛮族がぼんぼん攻めてきたりとかね。北アフリカの方で戦っても負けたりとか。

樋口:あら、大丈夫。

深井:こういうので負け始めて行く。元老院は賄賂とかもし始めてね、

樋口:あら。

深井:腐敗していく。そしたら、ローマの市民はキレる。キレるんです。また。ずっとキレてる。戦争にも負け、富も独占し、て感じで。許せなくなって行く。ここで出てきたのがガイウス・マリウス。これもまたガイウス。マリウスさんです。

樋口:はいはいはい。

深井:このマリウスという将軍が出てきます。この人は地方都市の出身の人、平民階級の、平民階級も二つあって、普通の階級と騎士階級ってのがある。

楊:馬を用意できるお金持ちのこと。

樋口:ふうん。

深井:騎士階級ていうと、なんかナイトみたいなのイメージしちゃうかもしれないけど、どっちかというとビジネスマン。

楊:そうですね、社長さんたち。

樋口:なるほど。

楊:豪族ね。

深井:そう、豪族。このマリウスってのは地方都市出身だし貴族でもないから、絶対たぶん周りからバカにされてたんだけど、この人がめちゃくちゃ有能、有能な兵士としてがんがん出世していく。で、がんがん出世していく過程で貴族との血縁関係を作らなくてはいけない、出世するにあたって、ある程度は。なんで、政略結婚としてここで始めてカエサル一瞬でてきますけど、カエサルのおばさんと結婚します。カエサルってユリウス家、ユリウス氏族カエサル家って家なんだけど、めちゃくちゃ名家なんです、彼の家って。で、マリウスっていう人はカエサルのおじさんにあたりますよね、おばさんと結婚してるから。

樋口:そうですね。

深井:このおじさんにあたる人なんだけど。このマリウスって人は地方都市出身の平民階級の金持ちで周りから馬鹿にされながらもその実力で出世をしていって、政略結婚によってカエサル家とかとも縁故ができて、そういう縁故とかを使って護民官になって、この護民官からさらに政務官の出世の階段ってのを登っていって、ついにコンスルまで登り詰める。

樋口:すごいすごい。

深井:この人すごい人なんですけど。このコンスルまで上り詰める。なんで上り詰めたかっていうと、負けそうなローマを守ったんです。彼が。

楊:軍事力をフル活用した。

深井:そう。強かった。

樋口:戦って守ったってこと。

深井:だって、そりゃ、ヒーローになる。だって弱くなったローマで滅ぼされようとしてた。その滅ぼされようとするローマを守ってくれた人だから、もうワールドカップで優勝したサッカーチームよりも英雄になれる。

樋口:そうですね、守ってくれた。

深井:めちゃくちゃ英雄になるんですけど、この人が軍政改革をする。さっき言ったみたいに軍隊てのは非常に本質的な課題を抱えていた。本来兵士になるべき平民の人たちってのが貧乏になりすぎてまともな兵士になれない。軍隊としてすごく弱くなるという問題を抱えていた。マリウスは戦争に勝つためにここにメスを入れるんですよね。何をしたかっていうと、給料を渡すようにした。

楊:仕事にしちゃうんです。

樋口:はあ。

深井:仕事、職業にした。それまでは。

楊:ボランティアじゃなくて。

深井:ボランティというか義務だった。税金みたいな感じだった。

楊:そうか、税金か、税金だ。

深井:それを仕事にしちゃった。給料払うようにした。それまでも実は税金とはいえ労務提供してお金もらってたんだけど、本当にそれだけで生きていけるようにしちゃった、兵士だけで。戦争がなくても給料がもらえるってこと。これによってめちゃくちゃ変わる。だから、マリウスって本当に英雄なんです、平民からすると。戦争は強い、ローマは守ってくれるは、平民の失業対策もしてくれるは、貧乏から救ってくれるは、で、めちゃくちゃヒーローなわけ。カエサルが出てこれたのは実はこのマリウスがおじさんだったからってのはすごいでかい。

樋口:へえ、すごい人や。

深井:グラックスたちは失業者に土地を渡そうとした。農地改革をして。マリウスは土地を渡すんじゃなくて、職業軍人にして彼らに給料を渡すということで救おうをした。

樋口:まあ、仕事を作ったとも言えるのかな。

深井:それは、一定機能したんです。実際ローマってのはそれによって持ち直すことができる。だけどこれによって実はローマの国の根幹というかシステムが変わってしまうんです。

楊:そう。

樋口:どういうことや。

深井:質が変わって行くんです。ローマの共和制というものの質が変わって行く。端的にいうと何が起こるかというと、今まで基本的にローマ軍の兵士ってのは誰もそれを自分のものにはできなかった。だけど、職業軍人化することによって何が起こるかというと、その給料配分て将軍がやってる。

楊:そうそう。

深井:だからみんな将軍の部下っていう気持ちがすごく強くなっていくんです。もともとパトローヌスとクリエンテスっていう制度がある。だからみんな将軍のクリエンテスになっていくわけ。これどういうことかといったら、全員将軍っていう貴族みたいな人の家来みたいになっていく。

楊:私兵になる、私の。

深井:ローマの軍から、将軍の軍になってしまうんです。この将軍の軍という概念を使って、カエサルは元老院を倒すことになります。

樋口:おお。

楊:それまでのローマの軍団て招集されて戦争して、て帰ってきたら解散しないといけない。その都度常に解散させられてた。だから従軍してた兵士は再び徴兵されても違う分団長とかリーダーの下につくようになってた。でもこの場合は仕事として軍に従事するんで志願兵なんです。志願兵になって、自分が希望する指揮官の下で従軍して、その指揮官から戦利品だとか退役したあとの土地の分配だとかいろいろしてくれたので、プライベートな結びつきができるようになったんです。

樋口:なるほどね。

楊:これがローマの根幹を揺るがすような一つの改革になる。

深井:これは本当に根幹を揺るがしてしまうし、これはローマ市民にとってはローマの平民にとってはすごくいい制度だったんですけど、実は同盟市と言われる過去敵だったけど、ローマに滅ぼされて、中に入れられちゃってる人たち。この人たちはこれが適用されなかった。これによって何が起こるかといったら。平民と貴族の争いはなくなったけど、今度はローマ市民と同盟市との争いが発生して。これがさっきも一瞬言ったけど、同盟市戦争っていって、周りの奴らがいきなりばんと蜂起することになる。

樋口:あちゃちゃ。

深井:一回傘下に入れた人たちが蜂起する。

樋口:あら。

深井:これはイタリア半島の中の比較的貧しい人たちが一斉に蜂起する。これにはローマ軍もすごい苦戦を強いられるという状態になるわけです。これがちなみにカエサルが生まれた頃、生まれた頃というか小さい頃の話。

楊:カエサルはけっこう混乱期に生まれてる。

樋口:ですね。へえ。

深井:マリウスは一時期権勢を誇ったんだけども、この同盟市戦争を誘発してる、彼の制度が。自覚してたかどうかわからないけど。一線から引くことになるわけです。一線から引いていくんだけども同盟市戦争に勝てない、ローマが、ちゃんと。

樋口:ふうん。

深井:あの、大負けもしてないんだけど、抑え込むということができなかった。これカエサルが10歳くらいの話。結果的に何が起こったかというと、ローマが大幅に譲歩することになって、同盟国に暮らす市民にもローマ市民権を渡すことになる。これはこの30年前にグラックス兄弟がいってたやつです。

樋口:なるほど。

深井:結局かれらはちょっと先見の明があった。当時は既得権益を手放したくないやつが、そんなことやれるわけないだろうっていって切ったんだけど、その外敵に攻められてしかたなく彼らは結局30年後にそれを認めるということになったわけです。

樋口:はあ。ちゃんとつけた火が爆発したんだ。面白い。

深井:で、マリウスってのは平民寄りの政策をしたことになる。この平民寄りの政策をしたから、こんどはその揺り戻しがくるんですよ。

樋口:あら。

深井:これ、またね、政治って面白いなと思う。この揺り戻しがきて、今度は元老院派のでっかい政治家が出てくる。この人スッラっていう、スッラ。いいずらいけど。

樋口:スッラ。

深井:スッラという人がでてくる。このスッラってのは由緒正しい貴族の生まれ。だから元老院派閥。この元老院派閥のスッラがですね、思いっきり元老院が有利な方向に制度を改革しなおしちゃう。

樋口:あらら。

楊:そう、彼の考え方の中には、ローマがなんでこういう混乱が起きたのか。それは元老院の力が弱かったからだ。だからもう一回元老院に力を持たせて、権力を集めないといけないというのが彼の政治思想なんです。

深井:その政治思想に基づいてマリウスが作った私兵化、自分の軍隊にしちゃう、ていうのを活用してですね、元老院を元老院派なのに脅しあげて独裁権を取得しちゃう。

樋口:ほうほうほう。

深井:で、元老院に有利な法律を一気に制定して引退するんです、スッラは。

樋口:引退するんだ。

楊:最終的にね。

深井:彼は元老院を独裁したいわけじゃない。共和制を強化したい。そのために独裁をつかったひと、これがスッラ。

樋口:私利私欲という感じじゃない。

楊:ではない。

深井:私利私欲じゃない。

樋口:本当にこれがいいと。

楊:公益のために。

深井:ちなみに今回でてくる登場人物で私利私欲で動いてるやついない。

樋口:え、。

深井:まじで。

樋口:へえ。

深井:自分の名誉という概念はちょう強いけど、基本的にローマのために動いてる。

樋口:めっちゃいい国ですね。。

深井:日本と一緒です。幕末の日本もそう、比較的。スッラも私利私欲っちゃ私利私欲。元老院、

楊:政治的な野心とかもある。

樋口:そうかそうかあの辺もそうだ。

深井:とか、元老院のために動いてることが自分たちのためにではあるんだけど。本当にそれがローマのためだと動いてると思う。

楊:ただ、スッラは人殺しまくる。

深井:そう。ちょっと、もう時間を経過したから、長く言わないけど、スッラというのも元老院ていうのを議席を増やしたりだとか、護民官の弱体化をしたりとか、てのを自分の軍隊の圧力を加えることによって元老院に自分を独裁官てのにさせて、これが前例になる、独裁官の。独裁官ていうのはディクタトール、と呼ばれる独裁者の語源になってる。ディクタトール。これはさっき政務官の説明の中でしなかったけど、実は独裁官の制度があって、一時的にコンスルよりも上になれる。これはコンスルが任命する。コンスルが今緊急事態です、非常事態で一人にだけ、最長半年間の絶対的権力を渡しましょう。これはギリシャにも存在してた、これを渡しましょうという制度があった。これをスッラは軍隊の力を使って半ば脅しあげる形で獲得する。それを獲得したスッラはさっきいったみたいに共和制、元老院派の政治を築き上げる諸改革をしてサラっと引退する。任期を残したままサラって引退する。

樋口:そこが面白いな。サラっと引退する。

深井:そこがローマ人のローマ人たる所以だよね。独裁が嫌いなんだよ。

楊:そうだよね。システムを手段として最大限活用しただけだもんね。

深井:ていうのをする。これによってまたローマってのが元老院の方によっていってしまう。この後出てくるのがカエサルです。

樋口:うわあ。どうやっていくんだ。

深井:この後カエサルがまた民衆派の方に平民の方に揺り戻していって、そのままばんって突破するんです。揺れるんです。めっちゃ揺れて、ぐんぐんぐんって揺れてぱんと突入する。その端緒を作ったのがグラックス兄弟。慣性の法則のようにみえる、おれには。

樋口:すごいですね、振り子というか、ばんばんばんって勢いついてどがんみたいな。

楊:そうですそうです。

深井:今のアメリカとかもそうなるんじゃないかと思う。

樋口:わお。

深井:極端にどっちかどっちかって触れてる。それが拮抗している。仮に今回バイデンが勝ったりとかしても、その次がきてぼんてきてどっかで突破するって、なったら、歴史勉強してて面白いと思う瞬間ですね。

樋口:それ、目の当たりにしたら面白いな。

楊:面白いですね。

深井:どうなるかわからないけど。

樋口:面白い未来になるかどうかわからないけど。

楊:でも独裁もこれをみてわかるように、カエサルの時代に一瞬でなったわけじゃなくて、段階がある。

深井:ね。

樋口:段階がある。

楊:少しずつ権力が特定の個人に集中していく先例とかが増えて行ったってのが流れです。

深井:そうですね。

樋口:なるほどね。

深井:スッラとマリウスはよくないことしてて、軍隊を使ってローマ人を殺しまくるという内紛しちゃう。内紛の前例をさらに作ってしまう。

楊:千人、何千人って殺す。

深井:いや、最終的に何万人も死んだらしい。流血に次ぐ流血の内乱状態でぐっちゃぐちゃになる、一旦。この時に幼少期を過ごしてるのがカエサルなんで。この影響も強くカエサルは受けることになります。

楊:そうですね。後で話すことになると思うけど、けっこう死体とかみてる。

深井:死体もみてると思います。

楊:小さい時から。

深井:首が晒されてる広場のすぐ近くに彼が住んでるんですよね。絶対見てますね。

樋口:くあああ。

深井:カエサル結構内乱しようとしてない。やっぱあの泥沼に突入するのめっちゃ嫌だなと思ってたと思う。

樋口:なるほど。

深井:そういうのもあります。

樋口:なるほどね。

深井:というで、この後、やっとカエサルに突入しますかね。

樋口:きたよ。ついにカエサルに会えるわけですね。

楊:ちょっと早かった、最澄よりも。

深井:最澄よりも。ブッダからやったもんね。

楊:たしかに。

樋口:そうやったですね。一回、おれ空海、最澄行き着くまでに頭がぱんてなりましたから。

楊:テーマなんだっけ。

深井:やっとカエサルいけるよ。行きましょう、カエサル。

樋口:次ですね。とういことで、じゃあ、次回はついにカエサルの幼少期から人物像を掘り下げて行きたいと思います。ありがとうございました。

深井:はい。

楊:ありがとうございます。

関連エピソード