#140 最澄、雨ニモマケズ。一隅を照らす人材育成事業

【今回の内容】今回はそんな我が道を行く二人のスーパースターの生涯と、 彼らが身を焦がした仏教という西洋哲学に比肩する膨大な哲学思想について迫っていきたいと思います。 勉強して痛感したのは、結局僕らは何一つ仏教を理解してなかったこと・・・。 難解で刺激的な回となっております。ぜひご視聴ください。

樋口:はい、ええ、前回までは空海がどうやってライジングしていったかというところの話をお聞きしたんですけども。その後最澄と空海がどうなっていったのかということですね。

深井:ちょっと繰り返しになりますけど、最澄帰国直後っていうのは密教は最澄しかわかってないので、彼が密教の日本のトップみたいな感じで都市仏教の僧侶たちにもそうやって教えてたし、それによって結果的に自分が年2人の僧侶を出していいよという権利もらったりだとか、したんだけども。最澄は桓武天皇が亡くなってから今まで権力をある意味「with権力」で自分の地位を上げていってる。そうすると都市の南都六宗の人たちからするとムカつくわけです。

樋口:なるほど。

深井:しかも結構批判してるんで、最澄が。なおさらムカつくわけです。

樋口:そりゃそうだ。

深井:でも、天皇が後ろ盾にいるんで下手なことができないわけです。けど、その天皇が亡くなっちゃったわけなんで、ついに南都の方からの反撃が始まる。それが最澄冬の時代。最澄冬の時代がきた時に最澄がやったことってのは立派だなと思います。

樋口:なんでしょう。

深井:まず、密教を勉強するんです。

樋口:まず、勉強、インプット。

深井:それがさっきの空海に師事するとこにつながって行く。空海にお経を貸してもらって、それを見て勉強するというのと。天台教学というのを地方とかにも広めていきたいし、それを盤石なものにしたいので。そこを守りの部分をちゃんとやっていくみたいな感じ。

楊:彼も、もちろん弟子をかかえているので。弟子を教育をするわけなんです。弟子の教育のカリキュラムの中に密教を入れるんです。その密教のおそらくカリキュラム作りのアドバイザーを空海に依頼したといわれてます。

深井:全面的に頼ってるっちゃ頼ってる。何度も手紙を書いて、経典を借りるというのを最澄がする。空海に対して。初めのうちってのは、空海も最澄って相当自分より地位が上の人だし。「貸して下さい」っていう感じでめちゃくちゃ低姿勢で来てるわけじゃないんですけど、「貸して下さい」って来てるから。別にいきなり断る必要もないから貸してるんです。何回か貸していくんだけど、3回目くらいで空海キレるんです。

樋口:なんで

深井:なんでかっていったら。密教ってそもそも師匠から言語を超えて学ばないといけない。それが密教なわけ。

楊:修行を通じてね。

深井:修行を通じて真理に到達するもの。その最澄が修行もしてもないのに、天台教学をメインにやってるのに。囓った感じで密教し始めて、それでお経を読んでわかったつもりになろうとしてるのがすごく嫌だった。

樋口:なるほど。

楊:最澄もすごく努力して勉強したけれども。最澄にとってはあくまで天台教学がトップで密教はその下なんです。ひとつのツールとは言わないまでも「下」、「従」なんです。

深井:自分が密教をメインに据えるわけにもいかないし。そもそも比叡山あるから、もう。自分がちゃんとやらないといけないから。

楊:どっかに、空海に弟子入りして修行する時間もないし。

深井:ないわけです。だから、経典は借りてるけど本気で弟子入りはできないわけです。

樋口:本業がありますから。

深井:空海にしては本気で弟子入りできないんだったら、こんな中途半端な学びはやめて欲しい。と。それは密教の本意ではない。だからあなたが、あなたほどの人であれば弟子入りをすれば3年間くらいでけっこういいところまで行くから。でもね、すごいよね。自分はもっと短期間で習得したのに、最澄に対して。

樋口:3年と言ってる。なるほど。

深井:すごい冷静だよね。

楊:おれはけっこうできるからねっていう自信がある、自負かな。

深井:この人はちょうどそれくらいなんだと思ったんだろうね。あなたほどの頭のいい人だったら3年間くらいで結構いいとこまでいくので、ちゃんと勉強したらどうですか。という話をする。

樋口:僕は2年ですけどねって。

深井:最澄はそれを飲むわけにもいかないわけです。だから断られちゃう。

楊:そうそう。だってお経だけ借りて、文章読んでそれなんになるの。言葉とかカスだぜって最澄から言われて。本気で密教勉強したいんだったらやる気100%でこいよ。みたいな。

深井:空海が言ってた。

楊:空海が言ってた。

深井:弟子もね、自分の弟子も最澄は空海の元に送ってる。最も可愛がっていた泰範という弟子がいるんですけど。この泰範がしかも空海に取られちゃうんです。

樋口:へえ。

深井:最澄からしたら取られてる。空海からしたらたぶん取ったつもりあんまりなくて。

楊:普通に空海に魅了されたんかも知れんね。

深井:じゃないんかなと思う。そんなに狡猾では、僕、空海はないんじゃないかなと思ってて。そういう風に書いてある本もあるけど。単純に空海の方に泰範が魅了されて、あ、こっちの方がいいやと思ったんじゃないかな。でも、泰範て最澄がめちゃくちゃかわいがってる弟子なんです。最澄が可哀想な手紙書いてる。戻ってこないから、泰範が。最澄が手紙を出したのが、こういうことが書いてある。「もう、人生もいくらも私は残ってない。この寂しい最澄がなにより残念なのはお前が私から離れてしまったことだ。私とお前はこの世で深い縁で結ばれた仲で。この縁により来世に弥勒を待とうと思っている。二人はこの世でもあの世でも深い縁があって、生涯を共にして衆生救済に努力するべきなんだと。私は来春、東西南北あちこち旅をして天台教をひろめていこうと思う。お前も一緒に行ってくれたらありがたいのだがな。」

楊:ラブレターだよね。

樋口:ラブレターだな。

深井:ただのラブレターです。

樋口:さみしいよ、って言ってる、きてよ。って。

深井:これの返事を空海は泰範にさせずに自分がする。

樋口:うわ。今彼が。

楊:どろどろ。

樋口:元彼に今彼が。

深井:ボロクソ書く。

樋口:え。

深井:すごい、ボロクソと言ったらちょっとあれだけど。空海からしたらボロクソ書いてるつもりなくて。最澄がいかに筋の通ってないこと言ってるのかということをちゃんとたぶん言っちゃう。それで、もう、いわゆる2人は絶縁状態になっちゃう。空海と最澄が。決裂したまま2人とも亡くなりますけど。決裂するんです、この2人。

樋口:絶縁するんだ。

楊:2人の天才がね。

樋口:うわあ。なるほど。

深井:最澄が可哀想なんです。

樋口:ちょっとね。ふられて。

深井:もう、庇護者であった桓武天皇に死なれ、そして南都六宗から攻撃され、そして空海に拒絶され、そして最愛の弟子を奪われ。

樋口:はあ、なるほどね。

楊:でも、さっきも深井くんと一緒に話したんだけど。当時も今も空海って華があるし、華のあるカリスマとして人気じゃないですか。でも実際にその時代のあと、日本の仏教に対して与えた実質的なインパクトでいうと圧倒的に最澄の方がでかいんです。

樋口:そうなんですね。

深井:端的にいうと、鎌倉仏教が比叡山からたくさん出てきてる。日蓮とか親鸞とか法然みたいな。それは影響力がでかいってこと。もちろん空海もめちゃめちゃ影響してますよ。影響してるけどそこが影響がでかいと判断されるところでしょうね。

楊:比叡山で最澄が教育事業を始める。いろんな、天台宗だけじゃない。天台、戒律、禅、あと、密教。この四つの学科みたいな、学部を全部勉強できる。総合大学みたいな感じで。

樋口:総合大学みたいな感じですね。

楊:その中から浄土宗とか、日蓮宗とか、あと、曹洞宗とか。いろいろ今の日本のトップをはる、メインをはる仏教の宗派がぶわっとその後出てくる。

樋口:なるほど。

深井:そういえば、その話してなかったんだけど。最澄が開いた、そうだね、最澄は教育の理念としてすごく、確固たる理念を持っていて。空海も最澄も最終的には教育に力を注ぐことになる。最澄が比叡山を開いて、そこの比叡山てのはある意味総合大学のような扱いになって。当時仏教てのは学問でその中にすでにいろんな学問が入ってる状態だった。密教も学ばせる。さっき言ったみたいに4つのそれぞれの宗派みたいな感じで。それぞれのものを学ばせるということをする。最澄としては天台が一番いいとは思ってたと思う。だからこそ彼は天台を重視してる。天台が一番いいとは思ってるけど。天台を学ぶにしても他のものも学んでおくっていうバランスのよさってのはすごく彼は重視していて。全部勉強しましょう、と。いうふうにしてるし。僧侶2人出せるようになったっていうやつも、1人は天台だけどもう2人は密教。

楊:そうだよね、たしかに。

樋口:ちゃんとバランスとる。

深井:それぞれ流派から出すというやり方をしていて。バランスよく、世界、結局彼は衆生救済をどうやってやるかということしか考えてないわけです。その衆生救済をする際に人材がいないとどうしようもない。それは人材は国宝だって話をしてる。自分で考えて動ける人だよね、彼からすると。自分で考えて動ける人っていう、国宝をたくさん作っていく必要がある。それは今権力で腐敗した今の仏教ではそれはできない。だからちゃんと自分たちは人里離れたこの山の中でしっかりと修行してしっかりといろんな仏教を学んだ上で自分を悟りに近づけていった人たちを増やしていって。その人たちが衆生救済につながって行くというビジョンを持っていて。そのビジョンに基づいて大学を作って。ある意味大学ですよね。比叡山延暦寺っていう。その大学でみんなが学ぶという状況を作って行く。その義務教育的な概念が彼の中にあって。どういう意味かというと。とにかく量産したい、素晴らしい人を、彼は。ひとりの天才が100人にひとり出ればいいという考え方ではなくて。みんなの底上げをしたいんです。義務教育ぽく。

楊:確かにね。

深井:空海もそうだったんだけど。それをしたいので、すげえ修行方法たくさん残ってるけど。比叡山て今でも。3年間山にこもりますとか。何年間山に篭もります。

楊:12年間の修行とかね。

深井:12年間篭もります。とか。でも、12年間もこもったらどんだけだめなやつでもだいぶ行くだろうという考え方なわけ。最澄としては。

樋口:なるほど。

楊:その12年間も前半の6年は講義をメインにする。講義を聞くことをメインにするとか。あとは後半の6年は自分でいろいろ実践して考えることをメインにするとか。そういう細かなカリキュラムを彼も全部考えて決めてる。

深井:とんでもない修行内容だからね。ずっと寝ずにぐるぐる回り続けるとか。ずっと座って座禅し続けて、寝ずにね。食べずに寝ずに座り続けるとか。そういう限界も攻めつつ、みたいな。そういう総合大学的なものを彼は開いていくわけです。

楊:事業者だな。

樋口:事業者か。

楊:経営者かな。

深井:冬の時代にそれを彼はそうやってどんどんどんどん仕込んでいって。今みたいないろんな後ろ盾が無くなったりとか、空海とかに攻撃されたり、最愛の弟子を奪われたりとか。南都六宗にも弟子は奪われてる、実は。せっかく輩出した弟子を。

楊:戒壇院の。

深井:あとで喋るけど、奪われたりとかして、そういうのがどんどんどんどん続いていってる中で心折れずに衆生救済のために頑張ってるなというのは感心します。

樋口:むちゃくちゃ立派じゃないですか。

楊:立派ですよ。「一隅を照らす人材を作る」ってのは彼の言葉ですからね。

樋口:そうですよね。そうそう、「一隅を照らす」ってね。

楊:中村晢さんの回でいいましたけど。

深井:本当にどうやったら衆生を救済できるかということに対して彼なりに本気で考えた結果をちゃんと積み上げ型で地道に冬の時代でも、いい時も悪い時もしっかりとやるってのが彼のスタイルですね。

樋口:なんか、むちゃくちゃかっこいいな、最澄。

深井:空海はもっとスキップしてる感じ。ステップを。

楊:スキップして一点集中して極める感じ

深井:密教を極めたし、他の人がどう動くかわかるんですけど、くらいな感じ。空海は。

樋口:はいはい、なるほど。

深井:だから南都六宗も味方につけちゃうし。彼は。時の権力者も味方につけちゃうし、当時エリートと言われていた最澄を普通に批判しちゃうし、みたいな。で、弟子も普通に奪おうと思えば奪えちゃうし。やろうと思ったことできちゃう人。

樋口:すげえな、思い通りだ。

深井:思い通りにね、唯識極めるとなるはずです。

樋口:ですよね、それ、おれ思った。

深井:そう、自分の認識だけで世界は動くので。彼は密教極めたと思ってると思う本人が。ある程度。すごく謙遜はしてますよ、書物の中で。でも、やっぱある程度いったろと思ってると思う。それを実際に生かしてるんじゃないかなと思います。

樋口:その感覚もある。

楊:確かに。

深井:けど、影響を与えたのは最澄の方であるというのは非常に面白いよね。

楊:現象としてね。

深井:最澄が作った比叡山がのちの鎌倉仏教に影響を与えて。その鎌倉仏教ていうのは実際にその時の本当に荒れた時代になっていくわけですけど、荒れた時代になっていった時に、勉強がどうとかじゃなくて、とにかく今救われるかどうかが大事だみたいな、もしくはもう現世がもう終わりなんで、もう来世に期待みたいな。

楊:末法思想ね。

深井:人たちに対して機能するような教えがそこの中から生まれていって。今の日本人に圧倒的に浸透したのはそっちの方だったっていう。

楊:確かに、確かに。

深井:空海みたいな天才にみんな追従できないってことですよね、真言宗の。

樋口:そういうことやな。

深井:すごい面白くないですか。

樋口:いやあ、なんかな。スーパースターすぎたし。密教がさっきの10段階あったですけど。あのレベルが高すぎたというのもあるかもしれないし。なるほど。

楊:まあ、クローズドとオープンな感じで性格として違いがあるかもしれない。天台宗はいろんなものを最初から多様性をオープンに取り入れて解放したようなイメージがあるんですけどね。密教の方は本当に秘密の教えの通りにクローズドじゃないですか。

樋口:まさにクローズド。

楊:クローズドで純度を高めるというふうなやり方なんで。そこが違いかもしれない。どっちがいいか悪いかじゃないと思います。

樋口:雰囲気が違いますよね。

深井:あと、単純に比叡山でいろんな宗教を勉強をできるからでしょうね。

楊:そうね、確かに。

深井:単純にそこだと思います。

楊:確かに。

深井:親鸞とかが新しい宗派を作っても。別にだって比叡山的にはオッケーって言ってるわけだから。それがすごい。

樋口:社内ベンチャーいっぱい作っていいみたいな。

深井:もっとすごいと思う。だから、社内ベンチャーできるレベルじゃないと思います。だって自分が言ってることをある意味ちょっと違うこと言ってる人たちが弟子から出てきて。その人たちに対してフラットに接してる。ある意味否定されてると言っても過言ではないけど。否定されてるなんて思わないってことだよね。それはその、その、マインドセットっていうのはすごいマインドセットだと思う。

楊:たしかにね。

樋口:なるほど。

深井:これは、やっぱり空海にはないところです。

楊:空海は極める系かな。

深井:極めるというか密教が一番だと思ってる。

楊:一番だよね。

樋口:ほおほおほお。

楊:確かにそのちょっと緩さが最澄にはあるかもしれんね。

深井:緩くせざるを得なかったと思うんですけど。緩くせざるを得なかった事によってそうなっていくっていうね。

樋口:そうかそうか。

深井:なんか、だから、わからないんだよ。本当、歴史は。毎回言うけど、死んだ後でさえわからないから。

樋口:うんうん。

深井:面白いなと思いますね。次回かな、これ。次回がラストですかね。

樋口:ついに。

深井:この後彼らがさらにどうなっていくのか。最澄と空海がどうなっていくのかという話をしたいと思います。

樋口:そうか、ついに、最澄、空海シリーズラストですね、次回が。はい、ありがとうございました。

楊:ありがとうございます。

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