【今回の内容】今回はそんな我が道を行く二人のスーパースターの生涯と、 彼らが身を焦がした仏教という西洋哲学に比肩する膨大な哲学思想について迫っていきたいと思います。 勉強して痛感したのは、結局僕らは何一つ仏教を理解してなかったこと・・・。 難解で刺激的な回となっております。ぜひご視聴ください。
樋口:はい、ええ、前回までは空海の話をお聞きしたんですけど、ついに満を辞して最澄の話をお聞きしていきたいと思います。
深井:そうですね。交互に出てきますけど。最澄の方が空海より7つ年上なんです。
楊:先輩なんだよね、本当に。
深井:先輩。で、仏教の活躍、仏教方面での活躍も圧倒的に最澄の方が早いんです。最澄さんはね、どういう人かっていったら、すごい真面目な方。
樋口:真面目。
深井:真面目って言ったらあれだけど。
楊:空海もまじで真面目なんだけど。
深井:空海が真面目じゃないみたいになったけど。最澄はすっごい堅実真面目で。ロジックでちゃんと積み上げて行動するってタイプの人だなって印象が僕はあるんですけど。
樋口:なるほど。
深井:前言った律令制度上における国家仏教の役割ていうのを最高に引き出して行った人だなと思っていて。彼も当然国家公務員なんですけど、まず、15歳くらいのときに正規の僧侶になってる。生まれが、最澄も先祖があれだよね、渡来人というか、外国みたいな、ね。
楊:お父さんが三津首浄足(みつのおびときよたり)。
深井:すごい名前。
楊:どうも、これも説の一つなんですけど。漢王室の劉の。劉姓、劉備とか劉邦の劉の血を引いてるんじゃないか、先祖がですよ、ていうふうな説があります。
深井:なんで血引いてるのにこっち来たんだってなるからね。なんだろうね。で、お父さんが仏教への信心が深い。
楊:深くて、滋賀にある小さな国の、今でいうと副知事くらいのレベルの。
深井:いいところの生まれだよね
楊:そこそこのいいとこ生まれなんです。これも空海とあんまり変わらない。
深井:15歳で僧侶となって、19歳で具足戒を得るって、ライセンスをもらうみたいな感じなんです。いよいよ正にここから僧侶として国家公務員として働くぞってところで、最澄も具足戒もらった3ヶ月後に山に入る。
楊:みんな引きこもりたいのかな。
樋口:すっげえ引きこもる。
深井:速攻で都会の都の仏教をある意味捨てて。それがエリートコースなんですよ、僧侶としての。それを完全に捨てて山に入って、山岳仏教で猿とか狐とか猪とか狸と一緒に山に篭もるみたいな。
樋口:なんなん、山好きですね。
楊:霞ヶ関を捨てて田川にくる、みたいな。
樋口:だいぶ変わってますね。
楊:官僚の道を捨ててこっちにくる。
深井:でも、そのレベル。なんで田川に行ったんだ?ってみんなが思うような。選択を彼はしていくわけです。
楊:一応いくつかの説があって。彼本人も空海と似たように山の方で修行することの方が今後の未来の仏教としては正しいあり方だったというふうな考え方もあったでしょうし。どうも天台宗、彼が興した天台宗に修行マニュアルってのが既に中国で成立されてて。その修行マニュアルの中に修行する場所っていう指定ある。例えば、静かなところとか、深山や人里離れたところ。世俗から離れた仏道とか。あと、人が集まる場所から最低1.5km離れなさいとか。
深井:細かいね。
楊:世間との交際、仕事を離れるというか、修行する環境について定められてて。もしかして最澄はその天台宗にすごい興味があって、この修行マニュアルを読んだ上で山に篭もるという選択をしたんじゃないかという説もあります。
樋口:なるほど。
深井:そうだね。後は最澄も南都六宗(なんとろくしゅう)という、六宗(りくしゅう)ともいいますけど。いわゆる奈良仏教と呼ばれる既存の仏教勢力に対してある程度嫌悪感というか愛想尽かしてるようなところがあって。山を選択していく。空海と一緒なんだよね。だから、この時代に出てきた天才たちが既存の腐敗っぷりに嫌気がさして、そうではない選択をしていくという流れがあるってことになる。
樋口:同じですよね。
深井:すごく立派だなと思うのが、この19歳くらいの時点で「衆生を救う」という。
樋口:衆生というのは一般の人たち。
深井:一般のみんなを、大乗仏教だからね。衆生を救いたいんだという強い思いを持ってたぽいんです。
樋口:すげえな。まだ未成年ですからね、今でいうと。
深井:そこは善を積んで、自分が悟りを開いていく、次の輪廻転生でもっといい生まれ方をするんだって思いもあるみたい、そういうところもある。衆生を救うためにこの山の中ですごく悲痛な、僕からすると悲痛な誓いをする。
楊:そうだよね。
樋口:へえ。
深井:19でエリートコースから外れて山に篭もった瞬間に、山の中での誓いというのがあって。真に仏のごとく清らかになるまでは、決して世間に出てこない。仏教の理をはっきり悟るまで俗学、俗芸には関わらない。つまり、セミナーとか開かないということだよね。あと、真に戒律を具するようになるまで、施主の法会には預からない、こっちがセミナーかな。セミナーなんか、それは自分がちゃんと悟る、しっかり自分ができたと思うまで、中途半端な状態で世に出ないていう意味。
樋口:セミナーを開く側にならない。
深井:開く側にならない。空を悟り、物事にとらわれない自由自在の心を得るまでは世間や人間の雑事には交わらない。同じようなことですよね。この身で受ける功徳を自分で独り占めにすることなく遍く心あるものに施してこの上ない幸せを授けたい。
樋口:はいはい。
深井:これ19歳。
樋口:すげえな。
楊:何を食ってこんないい人間になる。
深井:食いもんなんだ。食いもんのことなんですね。
樋口:だって19とか、モテたくてしょうがない時期。今だったら、大学入って「うえーい」みたいな。
深井:それがめちゃくちゃ人に視点が向いてる。人をどうやって救うか。最後の五番目の功徳を独り占めに。功徳を積むんだけど、それを独り占めにしないという視点がある。これはだからすごいよね。
楊:おれも、これを見たときに、前もぼく別のイベントで鑑真のセミナーをやったときに。
樋口:鑑真。
楊:鑑真。鑑真ですよね。
深井:中国から渡来した人。
楊:彼がなんで中国、唐からこっちに渡来したかという動機を調べた中で。どうも戒律、戒律の中に教えを広めることを惜しんではならない。それはもし惜しんだら罪だという決まりがあって、もしかしてそこにも影響してるかもしれない。
樋口:それをちゃんと守るのが真面目。
楊:そうですね。ちゃんとしたお坊さんなんですよ。
深井:すごいですね。
樋口:はあはあはあ。
深井:でね。この19歳の時点でまだ比叡山開いて天台仏教の本拠地にしてやろうみたいなところまでの壮大な計画ってまだなかったらしい。けっこう早い時点で比叡山に入られますけど。ここで山の中で一人で自分が悟り開くまでは世間に出ないと決めてるわけだよね。だから絶対に悟ってやろうと思ってる。絶対に悟ってやろうと思いながら勉強してて、ここの中で天台仏教ていうのが最も優れた仏教なんだなということを彼は考え、感じたんじゃないかなと思います。天台仏教ってのは、けっこう古い仏教なんだよね。この時点だと最新じゃないわけ。最新が密教とかなんだけど、最新の仏教ではないからちょっと時代遅れだと思われてる。なんなら唯識とかより古いんだったかな、たしか。なので、ちょっと古い仏教をいきなり信じ始め、信じというか信奉、メインに据え始め、そこをメインで勉強していくってのも、なんていうんですかね。今で言ったら最先端のものを選ばずにちょっと古くて、でも本人がめちゃくちゃいいと思ったことを自分の意思で選択して勉強してるみたいな、そういう感じ。
楊:汎用性がよかったのかな。
深井:汎用性というか、本当にたぶん僕は彼はすごく純粋にそう思ったんだと思います。本当に彼が考え抜いた結果いいと思ったんだろうし。彼の人生、このあと紹介しますけど、見ていって、冬の時代もあるんです。彼の人生て。空海てすごく運が良くて冬の時代がある感じしないんです。ずっと右肩上がり。でも最澄は本当乱高下してるんです。辛い時は辛そうなんです。その時も変わらない、本人は。この衆生を救うという目的に向かってずっと動いてる。そこは人間として尊敬できる感じの人。どっちが天才かというと空海の方が正直圧倒的に天才なんですよ。面白いよね。
楊:ナチュラルに人間として普通に立派な人間というイメージは最澄の方が強いし。
深井:空海も立派だよ。
楊:立派だけどね。空海はもうちょっとパンク的な感じあるよね。
深井:パンクというか、すごい人間が、常人が達しない領域に勝手に達しちゃって。全部ばんばんやっちゃってる感じ。
樋口:なるほど。
深井:最澄は苦しみながら。悲痛な感じで頑張ってる感じ。
樋口:なんかわかるな。地に足をついて一歩一歩進んでいく感じですよね。空海はヒョーンと飛んで。
楊:カリスマ的な感じ。
樋口:スターみたいな感じ。
深井:これ好き嫌いは分かれると言うか。どっちが好きかって人によって違うと思うけど。すごいそういう特徴分かれてる。
樋口:キャラがある。いいな、その対比も。
深井:この天台仏教がいいなと思ってから比叡山延暦寺を作ろうと思ったみたいですね。
樋口:なるほど。
深井:比叡山延暦寺を作ろうと思い立って、22歳のときに比叡山を開くんです。比叡山開くっておれ一言で言ったけど。想像してみて欲しいけど、ばちばちでヤバいからね。
樋口:比叡山て開く前どうなってるんですか。
深井:山だから。ただの山。
樋口:開くって、作ってったってこと、そこに。
深井:どうするって話。それを。どうやって開くんですかって話。前言ったけど、仏教って包括的な学問を修めてるわけじゃないですか。だから工学とかも修めてるからそういう知識が山開きに実は役立つわけです。
樋口:なるほど。
深井:そういう側面もあるんだけど。そこにお寺、本尊も自分で彫ったらしい、最初。仏像を自分で彫ってそこで修行するってことをやってて。それはたまたま平安京の近くにあったみたい。
樋口:へえ。
楊:ほうほう。
深井:これを開いたころは長岡京って、平安京の一つ前のやつ。長岡京の時代に比叡山に着手し始めて。
樋口:たまたま。
深井:で、たまたまなんだろうけど、平安京が近くにくるわけです。どこまでがたまたまでどこまでが狙ってるかわからないけど。平安京の鬼門に当たる部分に比叡山てある。めちゃくちゃ純粋に仏道を極めてる人がいるぞという噂は、近いっていうのもあって、どうやら都のほうに聞こえてくるわけです。そうすると天皇の近くにいるお坊さんとかでも、こんな純粋になんかしてる人がいるんだと思う人もいるし。桓武天皇ていうのは、ちょっと前に言った桓武天皇は腐敗した今の南都六宗とか奈良仏教に嫌気がさしてるわけです。嫌気がさして、権力欲にまみれて、腐敗してるなと思ってるわけです。それと全く対極にあるようなことをしてる人が新しい都、平安京の近くにいるっていう噂が聞こえてくる。
樋口:しかも鬼門の方向にいる。
深井:すごく興味が出るよね。最澄どんだけすごい人なん?みたいな話になる。呼ばれるようになるわけ。セミナーとか開かないとか言ってたけど、呼ばれちゃうから、すっげえ人に。行かざるを得ない。それで行って、どんどんファンができていく、最澄の。だから最澄って山に自分で篭もったんだけど、権力が向こうから寄ってきた。
樋口:おもしろい
楊:そうそう。寺を作ったり、僧侶、彼だけじゃないんです僧侶は。仲間の僧侶を集めて山の下にあるお経を山の上に持ってきて、ぶわっと写したりとか。そういうことを始めてるし。
深井:そうだね、独学でね。それで独学でそういうことやってたんだけど、それで有名になって権力者から呼ばれるようになりました。で、権力者側からすると、この人を、最澄を新しいお坊さんの新潮流にしていきたいわけ。
樋口:スターにしていきたい。
深井:スターにしていきたい。スターにしていきたいんだけど、最澄は学歴がない。独学でやってきていきなり山に篭もってるんで、いわゆる。
樋口:箔がないんですね。
深井:箔がない。
楊:野良学者ていっていいのかな。
深井:そう。在野の学者になってて。当時のエリートコースは東大寺とか興福寺とかいうところで学んでいる僧侶。都市、都で都市仏教の人たち。この人たちがエリートなんです。このエリートの人たちと最澄を対抗させようと権力者が思ったとしても。思ってるんだけど、思ったとしても学歴がないから弱い。論争したとしても。あとなんか戦ったとしても学歴がないからそれだけで下に見られてしまう。そこで桓武天皇が考えたのが彼を唐に留学させるということなんです。
樋口:おお。
楊:箔をつけるという。
深井:それで遣唐使が再開されるんです。
樋口:へえ。すごい
深井:久しぶりに。まあ、それだけじゃないけども、それだけじゃないとも言われるし、それが結構理由だと言われてて。じつはこの文書が散逸してしまってわかんない、本当の理由、ここの遣唐使の。いずれにせよ、桓武天皇の目に止まって最澄は入唐(にっとう)っていって、唐に入ると書いて入唐ていうんですけど。唐に留学することになるんです。
樋口:すげえ、いいな、手厚いな。
深井:遣唐使ってすごいことだからね。前も言ったけど、今で言うと月に送るみたいなものなんで。宇宙プロジェクト久しぶりにアメリカがやりますみたいな話と一緒ですよね、すごいことです。この最澄としても天台のすばらしい教えというのを日本で学んではいて、素晴らしいということはわかってるけど。中国の本場でもっと学びを深めたいというのはあるわけですよね。彼からしても唐に留学するというのはすごく嬉しいことです。それくらい唐てのは当時の世界の文化の圧倒的先進国なんだよね。1年間の留学というのを彼は命じられます。あとで空海のところでも言うけど。この遣唐使の一団の中になぜか空海が滑り込む。
樋口:おお、そこで出会うというか。
楊:同じ船団で、唐に行く。
深井:4隻の船団があって、そのうち、それぞれ1隻ずつ乗ってて。同じ船ではないんですけど。この2人が乗った船は辿り着くんですけど、あとの2つは座礁するんです。普通に命の危険がある、ちなみに。だから宇宙と一緒なんです、本当に。この2人は生き残って、ちゃんと辿り着いて、生きて帰ってくるんです。で、日本の仏教を変えるんですけど。
樋口:すげえ、運命の揺らぎみたいな感じる。
深井:空海がなぜここにいるのかっていうのは、また後で説明します。この時点では全然天皇に認められてるのは最澄だけなんで。通訳となる弟子の同行も最澄は許されるんです。最澄はそんなめちゃくちゃ中国語がうまいわけでもないしサンスクリット語ができるわけでもないんで、通訳、天皇に認められてるから通訳も入れられてて1年間の留学を命じられてる。空海はちなみに20年間の留学を命じられます。
樋口:なるほど。全然違う、20年。
深井:1年でなんで帰ってくるかというと。すぐ戻ってきて、役立って欲しいからですね。
樋口:そうかそうか。働いて欲しいんですね。
深井:働いてほしい。20年後に来られても桓武天皇も困るわけです。
楊:シビアな言葉でいうと、早く自分の政治権力に取り込みたいというところだろうね。
深井:そうそうそう。
樋口:まあまあ。
深井:で、無事、明州(めいしゅう)ていうのかな、明州(みんしゅう)かな、明州か読み方わからない。明るいという漢字に州ですね。今でもある、中国に。ここに辿り着くんです。無事っていってもちょっと位置ずれてるみたいですけど。辿り着きたい場所と。ここですぐに入って、天台山国清寺、っていう天台の本山みたいなところに行って、そこで天台宗ってのをしっかりと学んで行くわけです。
樋口:中心部ですよね、天台。
深井:そうです。ここで密教も実はちょっと学ぶみたいで。やっぱり密教て当時の流行なんだよね。最新のやつもちょっとかじってた方がいいかな。密教の特徴は呪力、呪術を使うことができるというところがすごい強みだったので。唯識の理論でね。即身成仏の現世利益みたいなのもあるし。その密教のニーズってのも、密教ニーズがあるってことも薄々感じているので、密教もちょっと勉強して帰る。密教の本場で学んだわけじゃないので。彼はあくまで天台の方をしっかりと学んで1年間の留学を終えて帰国する。帰国をすると、自分を取り立ててくれた桓武天皇が死にかけてるんです。
樋口:あら。恩人が。
深井:はい。でも死にかけてるってことは病気なんで、病気どうやって治すかというと呪力で治す時代なんで。よくぞ帰ってきてくれたということで最澄が呼ばれて、霊力で治してほしいと思ってるわけです。そこのニーズがさらに合致してより最澄の立ち位置っていうのを上げてくれる。桓武天皇が。ここは最澄も非常にそこをうまく利用したっていったら言い方あれですけど、しっかりと自分の教えこそが衆生を救うことになると彼は思ってるわけなので、自分の教えを広めて行かないといけない。起業家ぽい、ここ。それをするためにスポンサーはしっかりとつけたいと思ってるので、それにとってはすごく都合がいい状況が目の前に繰り広げられてるわけ。病を治すという要素は密教の方に非常に濃くある。彼は実は天台をめちゃくちゃ学んで帰ってくるんだけど、ちょっとだけ学んだ密教のニーズに答えるわけです。それで密教の儀式をしたりだとか、密教を全く学んでない日本の僧侶たちに密教の教えを授けるということをして。
楊:ちょっとエバンジェリストみたいな。
深井:そう、それによって彼はそこの地位を上げるということをする。実際に地位はあがる、めちゃくちゃ。めちゃくちゃ上がるわけ。この後に、面白いのが、空海がガチガチの本場の密教をスーパー学んできて帰ってくる。
楊:日本に最初に密教をもってきたのは最澄なんです。でも本格的な密教は空海なんですね。
樋口:だってずっといるわけですからね、中国に、空海は。そりゃそうなる。
深井:そう。ちょいちょい密教伝わってはおった。最澄の前から。でもそれをちゃんと学んできましたみたいな感じで、という程できたんです。したら空海が実は20年間のやつを無視して、2年間で帰ってくるんですけど、彼は。
楊:まあ、いろいろ理由がある。
深井:いろいろ理由がある。後で、この次のエピソードで説明しますけど。帰ってきた時に、最澄が学んでるのは全然大したことがないということがわかるような文書を朝廷に送るんです。
樋口:後輩が。
深井:後輩が。
樋口:うおお。
深井:無名の後輩がね。ということが起こるんだけど。この時は最澄が密教を学んできたぞみたいになって、みんなでありがたいありがたいといって最澄に密教を学んで、その呪力によって国家を守っていく。ひいては天皇の病気を快癒して欲しいという願いを託すわけです。で、桓武天皇の死に際に最澄はなるべく自分の地位を上げようとするわけです。
樋口:なるほど。
深井:自分の地位ってのは自分のためじゃないよ、衆生を救うために自分の地位を上げようとする。
樋口:実績を出そうとするんですね。
深井:そうそうそう。で、その腐敗してる都市仏教の対抗勢力を彼は作ろうとする。どういうふうになったかといったら、かなりでかいことここで起こるんだけど。年間二人の得度を認められる。前も言ったけど、国家公務員なんだよね。
楊:定員があるんだよな。
深井:定員がある。国家が基本的に認めない限りは僧侶ってなれないんです。この時代。簡単に、簡単にというか勝手になれない。勝手になれないんだけど、その許可をもらったってことになる。ていうことはどういうことかというと、天台宗が南都六宗に並んだってことなんです。七宗目になったってこと。
楊:一宗派として公認されたんです。
深井:そう。
樋口:お墨付きもらった。
楊:まさにまさに。
深井:これはすごいことだよね。すごく歴史をもった六つのやつが今まで連綿と続いてきたやつに、この、ある意味けっこう若いんだけど、この若さでぼんとそれを入れ込むことができて。時の権力者である天皇に気に入られることによってそれを成し遂げるということをするわけです。
樋口:うまくやってる感じがする。
楊:政治力、政治力といっていいのかな。
深井:政治力あると思います。2人ともある、ちなみに、最澄も空海も2人とも純粋でかつ政治力もある人なんですけど。最澄はそういう形で純粋にやってたら権力者に注目され、そして留学し、戻ってきたら天皇が死にかけてて密教のニーズを満たすことによって自分の権力を上げて行くことをする。
樋口:なるほど。
深井:で、次のエピソードになる。次、また空海の方にスイッチします。空海も入唐してたでしょ。入、唐にしてたでしょ。それはなんでかという話を次します。
樋口:なぜか2人が一緒になったあの船の話。
深井:そうそうそう。
樋口:なんだろう。いやあ、すげえな。まあまあなんかここの歴史の揺らぎみたいなものが気になるんですけど。続きは次回。
深井:はい。
樋口:ありがとうございます。
楊:はい。