#131 オスマン帝国の都市再生事業 ―ムスリムが住みやすい街づくり

【今回の内容】今回はオスマン帝国の興りとムハンマド以降のイスラームの状況、そしてキリスト教世界に衝撃を与えた事件「コンスタンティノープル陥落」まで語り合いました。 600年にも及ぶ歴史はあまりに膨大。 今回だけで語り切れませんが、ぜひご視聴ください。

樋口:はい、ええ、前回まではコンスタンティノープル陥落についてのお話をお聞きしました。と。いやあダイナミックな回でしたね。

深井:そうですね。すごい奇策でしたね。

樋口:はい。

深井:これが陥ちた後ですね、メフメト2世がどうしていったかというところをちょっと最後語りたいなと思いますけど。この戦いっていうのはもういろんな要素を孕んでいて、ハリル・パシャと前言ったザガノス・パシャっていって、メフメト2世の親派ですよね。メフメト2世側のパシャといわゆる奴隷から出身のパシャとすごく由緒正しいパシャとの戦いでもあったわけです、これは。このコンスタンティノープルが陥落するかどうかってのは、反対しているハリル・パシャからしてもこれに勝ってもらったら困る、本当は。勝たれたらあれだけ反対したのにやっぱりやった方がよかったってことになっちゃう。ザガノス・パシャもこれで負けたらこれ自分は立場は終わりだと思ってたし、勝ったら自分たちの世界だと思ってたし。ハリル・パシャたちもそう。ついに勝っちゃったから、なんと勝って入城した翌日にチャンダルル・ハリル・パシャを罷免、逮捕して、一族郎党ともに処刑します。

樋口:うわあ、殺すんですね。

深井:罪状は利敵行為。つまり敵に利益のある行為をしたよね、お前は。

樋口:はいはい。

深井:これもすごくて、事実してるんですよ、ハリル・パシャ。

樋口:してるんですね。

深井:はい。賄賂をもらいながらこの戦争を終わらせようとしてる。和平交渉に持って行こうとして賄賂とかいろいろ贈り物をもらっちゃってる。

樋口:へえ。

深井:お互いのスパイじゃないんですけど、ハリル・パシャがやりとりした和平交渉をして欲しいみたいなお願いを受けてるところの手紙とかが実は戦ってる最中のメフメト2世もう見てるんです。

樋口:お、お、おお。

深井:見てるんだけど、戦いが終わるまで何も言わなかった。

樋口:どういう意図や。

深井:わかんないけど。

楊:まあ、戦いの最中でね、そういうこと断罪しても自分たちの軍の雰囲気というか状況を揺らす、あんまりいいプラスの影響を与えないからとりあえず弱みを掴むだけ掴んどいて、あとでお前清算してやるぜみたいなね。

樋口:手一杯ですからね、こっちは。ウルバン砲もね。

深井:本当感情のコントロールが上手いよね。だって自分が人生かけてやってるこの戦いに対してスパイ行為みたいな、スパイまでいかない、そこまで汚い行為ではないんだけど、ある意味裏切りじゃないですか、ハリル・パシャがやってることが。敵と通じてたわけだから。そこ相談して和平交渉に持って行こうとしてたわけだから、敵と。それの事実を見た時に普通の21歳であればキレると思うんですよ。

楊:なんしよん、みたいな。

深井:そう。

樋口:そうですよね。

深井:キレない、だって。

樋口:うん、いやいや21歳ですからね、ちょっと忘れがちですけど。

深井:45歳とかで出てきてたら、まあ人生経験も積んでるしそういうことができるのかなと思うですけど、21歳でそういう激昂しないていうのはしてる時はしてますけど。すごいなって思いました。

樋口:はあ、なるほど。

深井:で、まあ、その、ハリル・パシャを罷免して処刑した代わりにザガノス・パシャを大宰相、もともとハリルがいたところに据えて、これ以降のオスマン帝国ってのは、この大宰相という職を奴隷出身者がやることが圧倒的に増える。

樋口:ふうん。

深井:これによって前も言いましたけど専制君主体制ていう権力が王様に集中してる状態、皇帝に集中してる状態ってのを作ることができます。

楊:ずっとグリップしやすい体制に。

深井:だからメフメト2世がコンスタンティノープルを陥とすということは、その本当にいろんな意味があって。キリスト教への攻める糸口をしっかりと抑えたということにもなりますし、経済圏としての交易地を抑えたり、東西の交易地を抑えてお金持ちになれるという意味もありますし。自分たちの社内の、社内というか国内の権力構造を自分に有利な方に構造改革をしたという意味もあったんですね。

樋口:うんうん。

深井:その全部を一気にやっちゃうんですよ、彼は。

樋口:うわあ。

深井:21歳でね。

樋口:すげえな。

深井:はい。

楊:以前の回でどっかで言ったと思うんですけど。なぜヨーロッパが大航海時代に乗り出したかってのはモンゴルかどっかで言ったかもしれないですけど。彼らはアジアとずっと貿易してたんですけど、イスラム、とくにオスマントルコ、オスマンが出てきたことによって、彼らがアジアと貿易するには、そこでものすごく搾り取られたりするんですよね。利益を。中抜きされたりとか、あるいは商売を邪魔されたりとか。彼らが大航海時代、イスラムを避けて違う交易ルートを開拓しないといけないくらい、実はオスマンというのはすごくビジネスの上でも影響力がでかかった。逆に言えばそれが大航海時代によってヨーロッパの、要はキリスト教国の方が力を持ってしまったていうひとつの原因にもなってる。

樋口:なるほど。

楊:歴史はわかんないですけどね。

深井:そうですね。

樋口:なるほど。

深井:で、コンスタンティノープルを今度は治めなくてはいけなくなる。治めるってなると大きく2つ課題があった。

樋口:はい。

深井:1つはまずキリスト教徒の街なんですね、ここ。

樋口:そうだ、もともと。

深井:ちなみにここに首都移す。コンスタンティノープルに首都にするんですけど。ここをムスリムが住みやすい街に改造しないといけない。

樋口:けっこう違いそうですね。

深井:はい。まず大聖堂のアヤソフィア、ハギアソフィアを急遽モスクに改造するわけ。

樋口:そういうところからやる。そりゃそうだ。はいはい。

深井:これはムスリムにとって1日5回の礼拝てのはすごく大切なことなので、これができる場所を作ってあげないとムスリムとしてはしんどいということで、これをすぐに作ってあげます。で、これを、それ以外にもあらゆる教会をモスクに作り変えていく。イスラムの教会に変えて行く。そのためにいろんなミフラーブと呼ばれるアーチ型のくぼみとか、メッカの方向を示すみたいなやつがあったりだとか。塔があるんですけど、その塔は上の方からすごい歌声みたいな感じで今から祈りの時間ですよ。

楊:アザーン。

樋口:ほうほうほう。

深井:ていうのを、YouTubeとかで聞けますので、エザーンとかアザーンとか言われるんだけど、そういうのをやるための塔を建てたりして。ちなみに今もイスタンブールのハギアソフィアって塔が建ってるでしょ、シンボルの。

楊:あるね、あるね。

深井:写真見て欲しいんだけど。あれ、なんで塔たってるかっていったら。あれがモスクに改造されたから塔が建ってて。あの塔は前のビザンツ帝国の時代なかったんです。

樋口:へえ。

深井:ていう豆知識ですけど。

樋口:豆知識、はいはい。

深井:後もうひとつ課題があって。人口激減してる、ビザンツ帝国。最後結局7千人しか戦える人いなかったでしょ。

樋口:はいはい。

深井:だから、ここに人間呼ばないといけない。

樋口:そうだ。

深井:人間呼ばないと街として機能しない。

楊:そうそう。

深井:じゃあどうやってここにいろんな人たちを住み着かせるかていう課題があった。これに関してはムスリムたちが住みたいと思う街づくりというのをしていくんですけど。モスクをたくさん建てたってのもありますし、あとは政府だけじゃなくて公的なものじゃなくて私的にもモスクを建てるというのを奨励していくんですよ。

樋口:はあ、民間にやらせる。

深井:そうそう、民間にもやらせていく。あとはイスラム学院を作って優れた学生をたくさんよんできて学生を集める。その学生には寄宿舎とかを無料で用意をする。あと給食とかも用意をする。あとめっちゃいい図書館を作る、みたいな。いろんなそういういい制度をたくさんやって、30年後には人口10万人。

樋口:上手いな。

楊:ちゃんと都市として機能させたってことですね。

樋口:超創生事業やってる。

楊:まさにそうです。

樋口:はあ。

楊:彼ら別にムスリムだけの国を作ろうとしてなくて。前も話したと思うけど。オスマンて基本的にごちゃ混ぜなんです、いろんな宗教の人たちが入って。ちゃんとオスマンに従いますよっていうキリスト教徒たちもいた。彼らは彼らでちゃんと教会組織を残して自治権力を持たせたんですよ。自分たちで裁判をできるようにしたりとか、自分たちで教育できるようにしてた。もちろん税金もらいながら。そういったこともちゃんとしてました。というのと、もうひとつ都市化すると絶対必要なのは食料なんです。都市化は食料需要を生むので。経済圏を、圧倒的な広い経済圏を治められたのでいくらでも食料を調達できるようになるんですよね。例えば商人たちが違う国に小麦とかを輸出したくてもすごい絶対的に強い権力をオスマン帝国が持ってるから、それはイスタンブールに持ってこいよみたいな、そういったこともできる。

樋口:なるほど。

楊:だから食料供給もビジネス環境を確保したことによって都市として回すことができた。

樋口:なるほどなるほど、はあ。

深井:あとは復興、前2代で復興したって言いましたけど、まだ完全に元に戻ってないところとかがあって。残りのね、アンカラの戦いっていうティムールにバヤズィドが負けた戦いの時に失ったものをここで完全に取り返したりして。バルカン半島、アナトリア半島というどちらともほぼ統一する状態までこのメフメト2世の時代に持っていきます。めちゃめちゃ繁栄してきました。

樋口:はあ。

深井:ここまで繁栄させるんですけど、このあと出る杭は打たれるということで新しい対抗勢力とかが出てきます。

樋口:うんうん。

深井:サファビー朝とかマムルーク朝とかいうね、新しい対抗勢力が出てくるんですけどまたそれは別の時の話かな。

樋口:なるほど。

深井:はい。なんせメフメト2世の7代までで、今何話目、8話目でしょ。

樋口:8か9か行ってますね。

深井:600年分やったらさ、何話?

樋口:今何年ぶん経ってるんですか、ていうことは。600年分の半分くらい。

深井:半分もいってない。

樋口:半分もいってない、ええ?

楊:そうなんですよ。まだ全然ありますよ。

樋口:まじですか。

深井:全然いってないです。けど、どっかで僕たちはやりたいねと言ってたのは。このあとメフメト2世よりもさらに有名な王様が出てくるんです。スレイマン1世。このスレイマン1世と、そのあとに近代にケマル・アタテュルクって人がでてくるんです。この人は今のトルコ共和国が作った人。オスマン帝国を終わらせてトルコ共和国を作った人。

楊:建国の父ですね。

樋口:ほうほう。

深井:が、出てくるんですけど。この2人はどっかでやりたい。

樋口:じゃあ一番美味しい目玉のところまでいってない。

楊:面白いと思いますよ。

樋口:ええ、いきたい。いきましょう、今から。

深井:この後いきます。じゃあ、今日もおれらいいかねパレット泊まらないと。

樋口:いいですね。

楊:だいぶ長いな。

深井:長いな、もう2日目なんですけど。

樋口:そうですね。くそ無理はさせれんな。

楊:ちなみに、今日、今回ここまで話したメフメト2世なんですけども。すごい頭もキレて、ストイックでしかも若いながらもちゃんと国を治められたというすごい王様なんですけど。実はチューリップが大好きなんです。

深井:めちゃくちゃ可愛い。

樋口:可愛い。それも可愛いし、それをめっちゃ嬉しそうに言うヤンヤンさんが。好きなんですよ。

楊:こういうギャップ、萌えないですか。みんなの前ではすごい真面目な顔して正確な判断を下す超クールな王様。

深井:笑うこともほとんどない。

楊:そうそうそう。実はめちゃくちゃチューリップが好きなんです。チューリップオタクていうくらいすごいチューリップが好きで。自分の服だとか食器だとか絨毯とかいろんなところにチューリップデザインをひたすら入れて行く。

樋口:チューリップ柄。

楊:チューリップ柄。で、自分の宮殿内の庭園、チューリップ庭園を造ってそれを見て愛でたりとかしたりとかするので。彼の代ですごいチューリップがオスマンを代表する花みたいな感じになって。チューリップブームみたいな。それ以降のオスマンも常にチューリップってすごい国にとって大事な花なんだね、ひとつ流行りを定着させたってのは。

樋口:可愛さだしてきて、メフメっちゃん。メルメっちゃん。

楊:一気に親近感。

樋口:深井さんの大学の研究が猫ってのいうのと。同じなんか。

楊:そんな感じでしょうね。

樋口:そうそうそう。なるほど可愛いところもある。

楊:こういう一面もあって。なんかどっかバランスとってるかもしれない。

深井:そうだね。そういうところで寂しさを紛らわしたのかな。

樋口:寂しさ。

深井:寂しいかどうかは知らんけど。孤立というかあれはあっただろうからね。敵だらけ感覚はあったかもしれない

楊:そうね。芸術が好きなのそういうところあるかも知れんね。心癒してたかもしれない

深井:若い頃2回廃位させられた時はすごく、すごいショックだったと思う。そこから、それの反動って感じ、コンスタンティノープル攻略もそもそも。

楊:そうだよね。

樋口:いやあ、けっこう壮大な。

深井:て感じでしたね。だから今回タイトルが栄枯盛衰600年て言ってますけど。全然600年言ってないです。

樋口:じゃあ続きはまたどっかの機会でって感じですかね。

楊:ですね。

樋口:じゃあいったんここで。

深井:はい。

楊:はい。

樋口:いやあ、エンディングですよ。お疲れさまでした。

深井:お疲れさまです。

樋口:第8回か9回かもおれわかんなくなりましたけど。

深井:8回かな、これ。

楊:8回、9回かな。

樋口:すごかったですね。

深井:9回か。

樋口:これで半分いってないんだな。

深井:ね。まあけっこう前提が長かったからね、今回も。

樋口:ビザンツ帝国とかも細かく見ましたもんね、1回。いやあ面白かったですよ、今回も。

深井:よかったです。何が面白かったですか。

樋口:いや、なんかやっぱり多様性を認めるっていうまず根本的な性質があったじゃないですか。いろんな人種とか認める文化みたいな。それをまとめ上げてたのがイスラームていう。そこの基礎とかがあれば人種とか越えて1個の、人種みたいなものの壁を越えた上位概念みたいなものでガッとまとまった。それが法とかなんか文化とかも、なんていうんですかん、越えたところにあった

楊:絡んでると思う。ひとつの社会で自分、おれとお前の違いをどういったところで線引きするかってのは時代によっても場所によっても違うかなと思いますので。歴史を勉強するときもおれとお前の違い、おれとお前はどっちが上か下かっていう、どういったところで判断してるんだってのは、そういう視点で歴史をみるとわかりやすくなるかなと思いますけどね。

深井:おれとお前が面白かった。そこ、なんでそんな男らしい表現使ってる。

楊:うちとあんた、みたいな。

樋口:うちとあんた。いやあ、そうですね。僕らって人種が違ったら全然違うこと考えてるだろうと思ってるんですけども。そこでおまえとおれと違うんだけど。ちなみにおれイスラームだけど、え、私もイスラーム。え、じゃあ一緒だ。うん、一緒かも、仲良くしようぜみたいな。そこにちゃんと機能してたんだなというのが面白かった。それって日本人の感覚だとちょっとあんまりピンときてないところがあって。あれかもしれない。好きなミュージシャンが一緒だったら盛り上がるみたいな感覚のもっと根強い。

深井:もっと根強いよね。

樋口:ものすごく根強い。

楊:この多民族、多言語、多人種、多言語、多宗教、多民族のプラットホームがあまりにもうまく生きたので。これが崩れた時に実はバルカン半島とかでいろんな民族が自分で意識を持ち始めて、がんがん民族紛争が起きたってのもあった。

樋口:崩れることもある。

楊:そう、近代になってですね。それがまた第一次世界大戦の遠因になってるんですよ。

樋口:なるほど。

楊:みんなをなんとなく多様性をまとめてたプラットホームが崩れて、それぞれの民族が自分たちは、おれとお前は違うっていう意識がまた強くなり始めた。

樋口:接着剤みたいなのが効かなくなってくる。

楊:それが民族主義、ナショナリズムですよね。

樋口:はあ、じゃあやっぱまとまっては離れ、まとまっては離れって、そういうことしてきてる。

楊:それはいいか悪いかではなくて。まとまるはまあいいか悪いか両方あるけどね。まとまりすぎて相手を排除することもあればまとまることによって自分の生存権が確立できるってのはありますからね。

深井:そうですね。民族主義的な話出たんで補足で言うと、前ちょっと説明不足で伝わらなかったと思うので補足でいうと、オスマントルコ帝国とも呼ばれるじゃないですか。呼ばれるじゃないですかって呼ばれるんですよ。

樋口:呼ばれるんですね。これずっとオスマン帝国といってる。

深井:今回僕は敢えて、僕たちはオスマン帝国って呼んでる。トルコって入れなかったんです。なんでかっていったら、今のトルコの人たちもそう思ってるかもしれないけど、トルコだと思われてる、オスマンて。トルコ系だし、一応、スルタンが。けど実際歴史勉強していくとトルコだとは限らないていう話をちょっとしましたよね、覚えてますか。

樋口:はい、わかります。

深井:冒頭で。これなんでこの話をしたかっていうと、近現代ってオスマン帝国領だった人たちが自立していってオスマン帝国が崩壊して行く時があるんです。トルコ共和国まで縮小して領土が、もっと広かったのに。で、トルコになってそれ以外のところは独立して別々の国になっていくっていう過程を踏むんだけど。トルコ以外の国の人たちが独立するときのエンジンがなんだったかといったら、自分たちはこういう民族であって、あななたちとは違うんだってところが出発点というか原動力になったんですよ。

樋口:ほうほう。

深井:だから対比対象としてトルコ人というのを作って、そのトルコ人と自分たちは違う、だから独立する。ギリシャだから、セルビアだから、みたいな感じで。独立していくってことが起こって行く。この、これが起こって行く過程でトルコ人はトルコ人で自分たちがトルコ人としてまとまらなくてはいけなくなっちゃったから。トルコ人としてまとまろうってなって、オスマントルコはトルコ人の国だって言ったんだけど。何が言いたいかといったらオスマントルコの時代はね、オスマン帝国の時代は民族がどうとかなんにも誰も考えてない、たいして。

楊:宗教。

深井:まとまり方が全然違うから。

樋口:そうですね。

深井:さっき言ったみたいに、イスラームでまとまってる面もあれば、オスマンでまとまってる面もあるわけですよ。だから何人だからどうとか、そういうこと考える必要もないし、それによって、そういう分け方をする意味もないので分けてない。だからオスマン帝国て別にトルコ人の国でもないし、トルコ系の人がトップにいたりするんだけど、そもそもスルタンていろんな人との混血だし。お母さんいろんなブルガリア人とかセルビア人とかざらにいるから。めちゃくちゃ混血なわけですよ。だからいろんな人種の人たちが混ざっていて、しかも奴隷から大宰相とかにしてて、その奴隷どっからもってきてるかってったらキリスト教徒の人をムスリムに改宗してるっていった。

楊:ギリシャ人とかね。

深井:そうそう。ということはそもそも人種けっこう違うわけです、みんな。その人たちが政治の中枢にいる。ていう全然別にトルコ人の国っていう形容が正しくないオスマンていう国があって。だけど、その理解の仕方だと近現代が生きられなくなった人たちが新しい民族という概念を作って、その民族で自分たちのまとまりと連帯を作って、その民族で独立して今があるので。オスマン帝国はトルコでもないのにオスマントルコ帝国だって呼ばれてる。オスマン帝国の人たちは自分たちのことをオスマントルコだなんて1回も呼んだことがないわけ。

樋口:へえ。

楊:そうですそうです。

深井:ここらへんも歴史を勉強してないと絶対にわからないことの一つです。僕たちは民族というものを昔からあった当たり前の概念だと思ってるけど。全く存在しないんです、そんなの。

楊:時代の要請によって自分たちで新しく強く意識した枠組みの一つにすぎない。

樋口:ちょっと待って。てことは時代遡って民族を定義して過去をみた。

深井:そうです。

楊:そうです。

樋口:ええ、すごい話だな、それ。

深井:ビザンツでも同じことが起こってます。ちなみに。ビザンツ帝国でもローマ人って思ってたりギリシャ人だって思ってたりするんですよ。ギリシャ、今のギリシャの場所にあったからね、ビザンツ帝国って。けっこう。

樋口:はあ。

深井:だから中身ギリシャ人の人多かったけど自分たちのことギリシャ人と思うかローマ人と思うかってところの転換点があったりするわけ。で、そこらへんのアイデンティティの作り方って時代によって違う。

楊:全然違う。

樋口:はあ。

深井:普遍じゃないんですよね。

樋口:なんか、しかも遡って、塗り替えられてはないですけど遡って見られてるってことじゃないですか。

楊:自己再定義とかしてる

深井:そうそう自己再定義ですね。

樋口:はあ。

深井:だから。今回オスマンていうのがわかりづらいから後回しにした。すごく有名な国なんでもっと早くやってもよかったんだけど。けっこう後回しにしたのはそういうところからしてけっこうわかりづらいんですよね。現代の概念からまたちょっと遠いんです。

樋口:遠い、遠い。

深井:そこわかりづらいんで後回しにした。だから前提条件けっこうたくさん喋った。

楊:そうですね。

樋口:なるほどね。

深井:はい。

樋口:そうか。じゃあ僕らが普通に生きてる中で後々僕らを再定義して、分けられる可能性がある。

深井:余裕でありますよ。

樋口:例えば、肩幅広い派と狭い派で。政治がばかってわかれるとか。それくらいのレベルでしょ。

深井:それくらいのレベル。

楊:日本だって明治維新の前は日本人ていう概念があったかどうか。

深井:ないないない。思ったことないです、日本人とか。

楊:ないですよ。

樋口:そうか。

楊:長州人とか薩摩人とか。

樋口:そうだそうだ。フォルダーの階層が違う。

楊:そうだ。いいですね。フォルダー、そうかもしれない。

深井:だからけっこう今のね、今のそういう分け方にこだわるのもひとつの生き方なんだけど。歴史勉強してわかるのは、そういう分け方なんてのは本当なんていうか普遍じゃないから。なんていうかそんなこだわらなくていいよって思う。

楊:幻想。

深井:幻想、幻想。唯識論の時にあったけど勝手に自分で境界作ってるだけ。そんな境界最初は存在しないし、あるって思ってるだけで、ないかもしれない。

樋口:はあ。

深井:あることにしてるっていうルールにしてるだけ。おれら日本人てのもそうですよ。日本人だってルーツめちゃくちゃ調べたらマジわかんないからね。

楊:そうですよ

深井:何をもって日本人と呼ぶかは相当難しい。中国人とかさらにそうですよ。

楊:遡っていったらどこのだれがみんなが血が入ってますからね。いろんなところの

深井:チンギス・カンの時にもやりましたけど、遊牧民と農耕民族っていう分け方も本当は絶妙なんですよ、実は混ざってますから。

樋口:まあね。

深井:はい。

樋口:そう、そう言ってるだけ。

深井:そう。わかりやすくそういう風に定義しないと一旦カテゴライズできない。

楊:国としてまとまらないし。

深井:そう、カテゴライズわかりやすくしてるだけだけど。実際のをみていくといろんなグラデーションが存在してるという事実を認識するのが大事でしょうね。

樋口:それ、おれ前半の時で何かを日本の何かに例えたじゃないですか。その時に本当は例えちゃいけないんだけどね、って深井さんがいったのが結構覚えてて。例えた時点で違うものになる。

深井:そうですね。

樋口:まったく歴史上の違う場所で起こってることが同じなわけないから。

深井:そうなんですよ。

樋口:本当はイメージするだけで理解はできないっていうことなんですね。

深井:そうそう。いかに例えずに理解しにいくか。これよく言語の時に僕いってますけど。英語のアップルをりんごに訳さずアップルで理解しにいくのと一緒です。

樋口:ああ、そういうことですよね。

深井:りんごとアップル違いますから。

樋口:ですね。ホームと家も全然違います。

深井:ホームと家も全然違いますし。ファミリーも全然違うでしょ。

樋口:ですね。

深井:全然違うんですよ。やっぱり、言語によって。それと一緒ですね。イェニチェリはイェニチェリで理解しないと理解できないし、デヴシルメはデヴシルメで理解しないと理解できないし、ティマールはティマールで理解しないと幕藩体制とは違うからね。

樋口:なるほど。じゃあヤンヤンはもう楊睿之ですね。

楊:それを呼ばれたのは人生で始めて。

樋口:そんな呼び方聞いたこと。

深井:楊睿之、楊睿之。最後にヤンヤンの正しい発音言って終わろう。

楊:いや正しい発音、楊睿之。

深井:ありがとうございました。

樋口:楊睿之、ありがとうございました。ええ、ていうことでございまして世界の歴史キュレーションプログラムコテンラジオは毎週月曜日と木曜日にお送りしております。コテンラジオでは引き続き金銭的サポートを受け付けておりますので応援していただける方は少しだけ気持ちをいただければと思います。詳しくはコテンラジオ公式サイト、コテンラジオドットエフエム、cotenradio.fmの方でご覧になってください。ということでございまして、以上コテンラジオでした。ありがとうございました。

深井:ありがとうございました。

楊:ありがとうございます。

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