#128「LOVE アレクサンドロス先輩♡」征服者メフメト2世ってどんな人?

【今回の内容】今回はオスマン帝国の興りとムハンマド以降のイスラームの状況、そしてキリスト教世界に衝撃を与えた事件「コンスタンティノープル陥落」まで語り合いました。 600年にも及ぶ歴史はあまりに膨大。 今回だけで語り切れませんが、ぜひご視聴ください。

樋口:はい、ええ、前回はデヴシルメ制度と奴隷制についての話をお聞きしたんですけど、ついに今回はメフメト2世。

深井:そうですね、やっとメフメトまできましたね。

樋口:はい。

深井:メフメト2世においてオスマン帝国はすごい集権的な帝国をつくることに成功するんですよ。

樋口:ほおほお、集権的。

深井:はい。要はスルタンていう将軍にあたる地位の人が権力を一手に握ってる大帝国を作ることに成功する。この人の代で成功するんだけど、それをどういう風にしてそれをやっていくかっていう話なんですけどね。まず、メフメト2世が、じゃあどんな人かっていうところから行くとですね。今回はけっこう詳しく生い立ちとかも喋ろうかなと思ってるんですけど。メフメトに関しては。まず、容姿。背が平均よりも高くて武器を堂々と所持し尊敬よりは畏怖の念を抱かせるような人物。とかですね。

樋口:ええ、本当。

深井:で、面長で色白く目つきは鋭く眉が寄っている。とか。髭は縮れて長い。みたいなね。

楊:細かく細かく書いてるね。

深井:けっこう細かく書いてるよ。

樋口:これ、いいように書いてないけど大丈夫ですか

深井:いや、これ結構これは悪いように書いてる方でこんな感じ。

樋口:そうなんですか。

深井:そうそうそう。で、性格がね、すごいストイックだったみたいで。なんていうんですかね、たぶん自分にも他人にも厳しい人です、この人は。

楊:ちょい始皇帝ぽい感じがおれは。

深井:始皇帝ぽいよね。頭脳が鋭敏で洞察力が深い人と言われてたりとか。好奇心が飽くことを知らないとかね。おどけたこととか滑稽なことは好きではない。酒や宴会も嫌い。彼は常に何かをしているか何かを考えていて、常に動いているような人だ、とかね、ほとんど笑わんとかね、冷ややかで本性を見せないので何考えてるかわからないとか。

樋口:うん。

深井:だけど芸術家に対しては優しい、みたいな。

楊:そうそうそう、芸術が好きなんですよね、この人は。

樋口:はいはい。

楊:ヨーロッパの画家をわざわざ招いて自分の肖像画とかを描かせてたんですよ。イスラムでは肖像画って偶像崇拝につながるからだめなんですよ、それなのに、肖像画を、自分の肖像画を描かせたのでけっこう傾奇(かぶき)者だったんじゃないかと思いますね。

深井:ちょっと織田信長感もある、おれの中で、この人は。ちなみに、メフメト2世が憧れてる人物というのがいるんですよ。アレクサンドロス大王。

樋口:きた。

深井:ね。

樋口:きたきたきた。

深井:アレクサンドロスの名声にめちゃくちゃ憧れてて、とにかく名声に生きた人だね。名声のために頑張った人。

樋口:はいはいはい

深井:相手視点とかじゃない。自分の名声が欲しい人。

楊:自分が高みに臨むため。それは別に利己的な感じじゃないもんね。もっと純粋に己を高めたい、アレクサンドロスのポジションまで。

深井:そういう意味でアレクサンドロスのモチベーションと一緒。

樋口:なるほど。

深井:みたいな感じですね。

楊:そう。

深井:ていうこういうストイックな性格を持っていて、まとめるとすごく頭がいいんですよ。頭がよくて、文武両道、どっちもできますみたいな。若い頃は武道をすごくやってるんだけれども、後々実は勉強に目覚めるんですよね、この人。勉強よりも武芸の方に関心があったにもかかわらず、勉強に目覚めたことによって何ヶ国語も喋れる。

樋口:すごいな。

深井:たとえば喋れる言語の数は、トルコ語以外にアラビア語、ペルシャ語、南スラブの言語、あとはギリシャ語。

樋口:もう5個。

深井:5個。

樋口:5つの言語。

楊:すごいね、いろんな国の人たちに指示が出せるよね。

深井:指示が出せるし直接話すことができるし。そもそも勉強が超好き。ヨーロッパからいろんな知識人を集めて、哲学とか歴史をめちゃくちゃ勉強してるらしい。

楊:そう。

深井:哲学とか歴史を勉強してるんだけど。この人はですね、どういう生まれ方をしてるかと言うと、母親はやっぱり非ムスリムの奴隷出身。これはもうけっこう本当にこのパターンが多いね。

樋口:もう驚かなくなりました。

深井:驚かなくなりました。

樋口:はい。

深井:お母さんはセルビアかマケドニア。マケドニアってアレクサンドロスの国ですね、出身で。母から大した愛情を貰ってないらしい。

樋口:そうなんですね。

楊:いいね、こういう。

樋口:それ個人的な感覚。

楊:人物像として欠落した部分にすごい惹かれるよね。

深井:父からも愛情を受け取ってない。

樋口:そうなんですか。

深井:あんまり。だからけっこう愛情に欠乏してたのかな。わかんないですけど。誰か他に愛情を注いでくれてる人はいたかもしれないですけど。幼少期はエディルネっていうあそこから奪った、ビザンツ帝国から奪ったところで育てられて。ここでお母さんとか召使いの女の人とか、あとは女の家庭教師もいたみたいで。その人たちに育てられて、だけど武道の方に興味があって。そんな感じで育てられてて。11歳になったときにマニサという場所の総督として派遣されるんですよ。

樋口:ふうん、11歳で。

深井:11歳。これ結構慣習でオスマンの王子たちってのはそういう地方の行政を任せられて、そこで経験積んでからスルタンに。

楊:ちょっと現場から鍛えろよ。

樋口:すげえ、小5とか小6ですよね。

深井:小6で知事みたいなことをさせられてます。

樋口:すげえな。

深井:あんまり大人の言うこと聞かない子供だったみたい。

楊:いいね。

深井:だけどすごくいい家庭教師、さっきの女性家庭教師とまた別の人だと思うけど。その人に学んだときにいきなり勉強の大切さに気づいたみたいで、そこから勉強し始める。

楊:おお、いい人だね。

深井:お父さんのムラト2世が勉強好きなんですよ、そもそも。好戦的ではないという話ししましたよね。

楊:そうだよね。

深井:お父さんが芸術も好きで、勉強も好きなんですよ。その影響もあったかもしれないですね。で、これ相当なんていうか意外というか、あまり歴史で起こらないことが起こるんですけど。お父さんのムラト2世がなぜか早く引退するんですよ。

樋口:ほお。

深井:で、メフメト2世に王位を譲るんです。究極的には理由はわかんないですけど。

楊:わかんないですね。

樋口:そうなんですね。

深井:なんで?ってなる。

楊:もしかして仕事に飽きたかもしれないし、ちょっと宗教にはまったかもしれないし、わかんない。

深井:そう、いろんな言われ方してるんだけど。

樋口:はい。

深井:とりあえず12歳くらいでスルタンになるんですよ。

樋口:え?12歳で。

深井:はい。

樋口:ええ〜。

深井:で、12歳でスルタンになった時にね、パシャっていう大臣みたいな人たちがいるんですけど。この当時の大臣で一番力を持ってた人がハリル・パシャって人、これチャンダルル家。前に出たけどチャンダルル家のハリル・パシャって人がいて、チャンダルル・ハリル・パシャっていうんですけど。この人が12歳の新スルタンを補佐することによって国が成り立つっていう関係性でやってるんですよ。これはお父さんもさすがに12歳のメフメト2世にいきなり国が治められると思ってないから。

樋口:難しいですよね。

深井:ハリル・パシャにもう多分にサポートさせて、なんならほぼハリル・パシャがいろいろやってる状態で。

楊:そうそう。

深井:そうだったら国がなんとかなるんじゃないかなと思って辞めたんだけど。たぶん周りはすごく反対だったと思う、お父さんが辞めることに。

樋口:そりゃそうですよね。怖いわ。

楊:一応お父さんは辞める前に周辺国と条約を結んだりとかして。一応自分が引退するための環境整備を一旦したんですよ。

深井:休戦条約を結ぶんですよ。メフメト2世自体は血気盛んだからよしやってやろう、おれこんなに若くしておれスルタンになったぞ。みたいな感じでなってたら、代が変わった瞬間に他国が休戦条約を破棄して攻めてくるんです。

樋口:ええ!

楊:そう。

深井:チンギス・カンの時の視点と同じだよね。要は新しい王様が12歳だったら今が亡ぼすチャンスだみたいになる。

樋口:そりゃそうだ。

深井:そこでハンガリーの人とか、ちなみにハンガリーの英雄ヤノシュ・フニャディて言う人が、すげえ弱そうなやつ。

樋口:フニャディ。

深井:ハンガリーの人に申し訳ない、英雄の人。発音だけの問題ですから。で、攻めてきたりしていきなりめちゃくちゃ危機的な状況になる、この帝国が。いきなり帝国が危機的な状況になった時にこのハリル・パシャは何をしたかというと、ムラト2世に戻ってきて欲しいって話しをしてムラト2世を復位させるんです。

樋口:お父さん。

深井:お父さん。当たり前っちゃ当たり前だよね。

楊:まあ前社長にまじで戻ってきてください。今の若社長じゃ抑えきかないっすよ。

深井:まじで若いし。

楊:周辺国から舐められますんでって。

深井:ムラト2世が戻って反乱した国をばばばばって倒して行って。で、収めるんです。

樋口:それもすごいな、お父さん。

深井:お父さんも復興させた2代は優秀っていったじゃん、優秀だから収めたんだよね。事後処理だけでオッケーてなった時にやっぱ引退しようってまた引退するんです。

樋口:おお。

深井:メフメト2世あとはよろしく。

樋口:もう大丈夫だろう。

深井:息子よろしくって。でやるんだけれども、また危機が訪れて。今度はイェニチェリの反乱が起こるんですよ。このイェニチェリの反乱が起こったらまたハリル・パシャがやっぱムラト2世に戻ってきて欲しいっていって、戻すんです。で、またすぐムラト2世が辞めるんです。

樋口:優秀じゃないですか。

深井:また、メフメト2世が王様になる。

樋口:よしよし。

深井:ていうのを繰り返した。

樋口:繰り返す?

深井:繰り返した。

楊:振り回しすぎだろう。

深井:振り回した。これによってメフメト2世がどう思ったかというと、ハリル・パシャ殺す!てなった。

樋口:笑っちゃダメ、ごめんごめん。

深井:でもそうなる。

樋口:そりゃそうそう。

深井:だって12歳くらいで血気盛んでよっしゃ王様になったぞってなった時に邪魔されて、なんでだよってなって。おれにもできるよみたいに思ってて。それで地方政権にまた飛ばされて、そしたらまたすぐ王様にさせられて。そしたらイェニチェリが反乱して、抑えようと思ったらやっぱりお父さん呼び戻されて、その座を奪われてみたいなことをやったときに。その多分そのメフメト2世はすごく悔しかった。

樋口:かわいそうだよね。

楊:悔しかったのもあるし、結局親父が戻ってきて収まるってことは臣下の人たちの忠誠心とかまだ親父の方に重心を置いてあったから、そこにもしかしてリスクは感じていたかもしれない。ずっと親父の方に忠誠心が集まってる状態だったらいくら自分がずっと王様の座にまた就かされても結局グリップできないから。これわかんないですけど、もしかしていずれ結局自分排除されてぶっ殺されるんじゃないか、もしかしてそういう危機感もあったかもしれない。

深井:排除までいかなくても多分自分が発言権を得られないまま終わるんじゃないかっていう危機感は普通に持ってて。特にこのチャンダルル・ハリル・パシャって人はオスマン帝国の創成期からの、ウラマーていう知識人を呼んできたときからの大宰相の家なんですごく由緒正しい家で、イスラム法の学者さんなんです。イスラム法学者の訓練を受けて、イスラム法官ていうすごく由緒正しい官職を得て、そこから大宰相まで実力で登っていくっていう超エリートキャリアコースの人なんです、これがハリル・パシャ。他にも実はザガノス・パシャっていう人がいて。このザガノス・パシャって人は奴隷出身なんです。

樋口:ふうん。

深井:ハリル・パシャと全然違う。

樋口:出が。

深井:出方。ザガノス・パシャ奴隷ってことはスルタンの所有物だからメフメト2世と運命共同体なわけ。だからザガノス・パシャはハリル・パシャがメフメト2世が王様ができないというたびにザガノスはその真逆のことを言ってたんです。いやあ、ムラト2世、お父さんを復位させるなんてのは絶対反対だってのをザガノスはずっと言ってて。実はこのメフメト2世の時代に何が起こったかというと、このザガノスとハリルの戦いでザガノスが勝つことによって奴隷宰相がこの後いっぱい、の流れが出てきてて。イスラム法官とかが力を失っていくわけじゃないけど要職から退けられていく。その結果この帝国は奴隷の人たちが一番上の地位を占めてるんで、前回やりましたけど、それがスルタンの所有物だから結局スルタンの国としての一極権力集中型ってのが完成する。

樋口:はあ。面白い。

深井:それがなぜザガノス、ハリルみたいな経験もキャリアもあって実力もあって先代の王様から信頼されているのがなぜザガノスに負けるのか。

樋口:はあはあはあ。

深井:これがコンスタンティノープルの戦いがすごく、陥落が超影響してる。

楊:立場的にハリルってキングダムの呂不韋的な感じはするけどね。

深井:呂不韋ね。そうだね。降ろされていってしまう。

樋口:はいはいはい。

深井:本当、呂不韋的な感じはありますよね。

樋口:ふうん。

深井:で、これが実はこのメフメト2世がなんでコンスタンティノープルていう超防御力マックスの町をリスクをとって攻めるという決断にいたるかってところの動機のひとつです。自分たちの勢力の発言力を増したいっていう気持ちもあるし自分の名声を得たいというアレクサンドロス的なやつもあるし。あとは先代先々代からコンスタンティノープルを包囲したけど陥せたことがない。そういうのもある。

楊:国としての悲願だよね。

深井:めちゃくちゃコストかかりますから、コンスタンティノープルを陥す。

樋口:難しい。

深井:難しいですから。ここをなぜ彼がすごいエネルギーでやるんですよ、この後喋りますけど。なぜできたかというのはこういうところにもあるのではないかと思います。

樋口:うわあ。なるほどね、感情やな。

深井:勉強してたのも、アレクサンドロスを勉強したくらいからたぶんおそらく勉強の大切さに気づいてると思ってて。アレクサンドロスも勉強してた。

樋口:ですね。

楊:アリストテレス。

深井:アリストテレスの元で。あそこらへんと自分を重ね合わせて。勉強もちゃんとする、そして武芸にもちゃんと励むみたいな。自分にストイックに生きる、みたいな。

楊:野望をしっかりと実現するというね。

深井:そのために邪魔なのがハリル・パシャ。でもハリル・パシャは現時点ではめちゃくちゃ権力を持っているので、この人にすぐに反抗するという愚かなことをこの人はしないんです。

樋口:頭いい。

深井:隠すんです、牙。

樋口:おお。

深井:隠してコンスタンティノープルが陥ちた瞬間に攻撃しにいくんです。

樋口:おお。

深井:だから、なんでそこがコンスタンティノープルの陥落と関係があるのかはこの後話ししますけど。非常にそういう狡猾さじゃない、狡猾でいったら悪い。

楊:沈着といっていいのかな。

深井:冷静沈着だし。頭いいんだよ。

樋口:頭いいですね。

深井:自分の感情をコントロールできる。

楊:そうそうそう。

深井:メフメト2世って。

樋口:はいはい。

深井:けっこうキレたりもする人なんですけど。

楊:アレクサンドロスほどキレてない感じするけどね

深井:ね。でも見せしめとかするからね、この人。みんなの前で叱ったりするマネージャーだからね。

樋口:マネージャー。なるほど。

深井:そうなんですよ。

樋口:はいはい。

深井:そうやって何回も降ろされたんだけど、ついにお父さん亡くなっちゃうんですよね。

樋口:あら。

深井:亡くなっちゃうんで、オスマン帝国を立て直したお父さんが亡くなっちゃいますんで。もういよいよ自分が絶対王様になれる。これなぜか文献によって年齢が違ったんだけど。19から21だから若いです。

樋口:まあまあハタチくらい。

深井:ハタチくらい。ちなみにお父さん死んだ時めちゃくちゃ喜んだらしいよ。

樋口:へえ。

深井:ま、愛情も注がれてなかったらしいし。

樋口:まあまあそうなる。

深井:自分の王位を邪魔する存在としてしか映らなかったんでしょうね、彼にとっては。皇帝になって一番最初にやったのは兄弟を殺すこと。

樋口:え!

楊:前にも話したけど。兄弟殺しの慣習がオスマンにはあるんです。

深井:ちょっとね。

樋口:それ、なんで、そうか。

深井:だから後継者争い。

樋口:そういうことか。

深井:自分がなった瞬間に芽を摘んでしまうってことです。

楊:目を潰したり、殺したりとか。あと手足を切断したりとか。イスラムの法律の中で身体障害のある人って王様になれない決まりなんで。手足を切断するとか。

深井:ふさわしくないって言われてたんで。目を潰すだけでも王位を断つということができた。

楊:それまでそういう慣習はあったんですけど。メフメト2世の時代で明文化したんですよ、兄弟殺し。法律的にもやっていい、やれよ。

樋口:すごいな。

深井:そのあとはね、本当は幽閉するくらいに留まるんだけど。メフメト2世の場合は自分と違うお母さんから生まれた弟で、まだ小さい弟がいた。赤ちゃんくらいの。その赤ちゃんを自分のお父さんが亡くなって悲しんでいる赤ちゃんのお母さん。

樋口:義理のお母さんみたいな感じ。

深井:そうそう、義理のお母さん悲しんでる最中に、その話しを聴きながら部下に赤ちゃんを殺すという命令を出して殺させている。お母さんがお父さんが死んで泣いてる時に自分の息子も殺されちゃうんです、かわいそうに。

樋口:キツいわ、それまじで。

深井:浴槽で溺死させるという殺し方で。

樋口:はあ。

深井:それを殺すという冷徹さも持ち合わせてる。このメフメト2世。

樋口:まあ当時の価値観だったんでしょうね、それが。今だったらキツい。

深井:ハリル・パシャのことはムカつくけど彼の実力は実は評価していて。彼をちゃんと活用することによって国を国家を安泰にさせていくというマインドも持ってたみたいですね。

樋口:そこも狡猾ですね。

深井:狡猾ですね。

楊:そうだね。すぐに権力闘争しないのがいいよね。

深井:しなかったですね。普通の人だったらたぶんしてたと思います。ムカついてるんで。だけどしなかったのは非常に大人だったのでしょうね、20歳にして。大人と言えるかどうかは微妙ですけど。本心を隠してることを大人というかどうかは。ま、でも、そのそういう感情を表に出さないということができたということになります。

楊:周辺国のプレッシャーも影響してる。ファクトを認識して。

深井:そうですね。ファクト認識して今内紛なんかしてたら周辺国にやられてしまう。一番最初にやったのはその周辺国に対して代替わりをしたときはみんな怖い。新しい王様がきて、今まで友好条約を結んでたんだけど、いきなり攻めてくるとかということもあり得る。実際この人するし。あり得るんだけど、そうじゃないよってのをみんなに言う。僕は攻める気持ちとか全くないですよみたいな感じで言って。一方で向こうから攻めてくる人たちもいるんだけど、そういう人たちは倒して、ちゃんと倒していって。だから本当優秀だよね、オスマン帝国の皇帝のみなさんは本当に。最初からメフメト2世はコンスタンティノープルを陥落させるというのがテーマとして持ってるんですよね。彼はアレクサンドロスの栄光になぞらえたときに、今それに匹敵する偉業ていうのは自分の先々代からそのさらに前から続いてるコンスタンティノープルを陥落させたいけど、できてない。コンスタンティノープル攻略によって自分の名声が圧倒的に上がる。東ローマ帝国の末裔の超由緒ある国ですし、キリスト教国の入り口ですから。そこを倒せばさらにまたキリスト教国に攻めてもいけるし。

楊:経済圏も抑えられるし。

深井:そうですね。交易の中心地なんで。キャッシュエンジンでもあるんですよ。コンスタンティノープル。

樋口:そうかそうか。実利もあるんだ。ちゃんと。

深井:コンスタンティノープル自身は貧乏なんですけど。

楊:その辺りの地理的な。

深井:地理的なメリットとかもあって。

樋口:はいはいはい。

深井:これを壊すということを、攻めるってことを決めてたと思う。最初から。けどハリル・パシャとかはめちゃくちゃ反対するわけ。ハリル・パシャの気持ちになったら確かに反対するかなと思います。自分は経験がある宰相で、先代、自分が仕えた先代は好戦的ではなかったよね。立て直しの時期を生きてきた人。で立て直しのために頑張ってきて、やっと立て直った。

樋口:なるほど。

深井:で、若い王様になった。この若造がいきなりリスクを侵してコンスタンティノープルを攻めるとか言ってる。

樋口:なるほど。

深井:下手したらまた十字軍がまた攻めてくる。そんなこと今やんなくていいじゃないってなる、ハリル・パシャとしては。

樋口:水の泡になる可能性が。

深井:そうそう。

楊:まあ、ロジックとしては正しいよね。

深井:正しいと思う。

樋口:そりゃそうだ。

深井:保守的ともいえるしある意味合理的とも正しいとも言える。リスクを侵してないともいえる。でもそれはハリル・パシャのロジックであってメフメト2世のロジックは全く違うところにあった。これは織田信長にみんな反対してた時に似てますね。

楊:なるほどね。

樋口:そうなんですね。

深井:はい。あの、織田信長に対するみんなの。彼は今の僕たちからするとできてるからやったほうがいいよって思うけど、できてない時の人たちからするとみんな止める。起業家だってそうだよ。みんなからやめた方がいいって言われることがほとんどだから。

樋口:まあね。

深井:合理的に考えたらそうだよね。

樋口:それは本当にそう。

楊:実感ありすぎ。

樋口:やめた方がいい。だいたい、普通に考えたら。

深井:けど。メフメト2世はもう決心がついてるわけです。

樋口:なるほど。

深井:それをまたこれから先、話をしていくんですけど。その前に一回ビザンツ側の立場からこの話しをしてみたい。今ずっとオスマンの話ししかしてない。

樋口:確かに、確かに。

深井:でも、コンスタンティノープルの話しってビザンツの気持ちわかんないと何もわかんないんですよ。

樋口:たしかに。

深井:ビザンツからしたらどうなのかっていうところを次回。次回ちょっとビザンツの話しして、そのあとコンスタンティノープルの話を。

樋口:確かに、それは気になるな。だってずうっと削られてる、削られてる側ですからね。

楊:そうそう、攻められてる側からみたオスマンはどうなのかっていうね。

深井:オスマンとか状況。あとはどういうような政治が行われてどういう心境で滅びていくのかっていう。滅びのビザンツを。

樋口:ほおお。確かにそうか。ぼくそこなんか果実の木に果実を取りにいくみたいな感覚だったけど、削ってる時って。人ですからね。

深井:人なんです。そうなんです。そこすごく大切で。

樋口:まじそう。

深井:メフメト2世の攻める気持ちも体感、追体験できたらいいなと思いますし、攻められる側もね、ばかじゃないんで、ビザンツ帝国も。

樋口:そりゃそうだ。

深井:その人たちがどう滅びていったかという。

樋口:なるほど。ちょっと今までにない新しい見方ですね。

楊:ですね。

深井:はい。

樋口:ということで次回楽しみにしてます。ありがとうございました。

楊:ありがとうございました。

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