#116 驚異のサバイバル力!過酷な草原を生き抜く遊牧民の正体

【今回の内容】
遊牧民=ノマド
実はしんどい生活環境
掠奪、普通にしますけどなにか?
全員戦闘機乗り
株式会社の原型?
スネ夫とジャイアンで例えると
カンとハンの違いって?
チラッと玄奘登場
人事評価と戦闘指揮の上手さが大事
国家と組織があれば強いのか?
遊牧民たちの代理戦争

樋口:はい、ええ今回はチンギスカンがテーマってことですけども、チンギス・カンをより深く知るためにまずは遊牧民の特徴と歴史ってところから今日は

深井:そうですね。まずは遊牧民ってどう言う人たちかってのを、イメージはみなさんあると思います。あの、羊をさ、こうやってなんか棒もって、まとめたりとか、馬のって移動したりのイメージがあるとおもうんですが、そこは本当その通りなんですね。で、ただ、ノマドとかといわれるけど、ちょっと気楽なイメージありますよね。めちゃくちゃしんどいです。

楊:砂漠そんなあまい環境じゃないもんね

深井:草原じゃない。

楊:草原ね

深井:草原よりも荒地の方が多かったりするし、めちゃくちゃ能力社会なんですよ。遊牧民世界って。

樋口:ほお、能力社会

深井:まずね、馬に乗れないとなんにもできない、まず。

樋口:そうか

深井:馬にのれないといけない。じゃあ身体障害者はどうなるんだみたいな話になっていく。だから、強くないといけないし馬にのれないとダメなわけです。で、馬にのって、やっぱりすごい能力主義で戦闘が強いとか指揮権が、戦闘指揮がうまいとか、そういうなんというかな、農耕民族にあるような人間関係からくるみたいなのがあんまりなくて

樋口:はあはあ

深井:その自然をどう読めるとかとか

樋口:なるほど。ざ、生き抜く力、サバイバルスキルですかね

深井:サバイバルスキルがものすごく高くないとまず生き残れないような環境で彼らは生きてるわけです。すごい乾燥地帯に住んでるからね

楊:そう。寒暖の差も激しくて、夏の最高気温40度、冬の最低気温マイナス40度。とか。けっこうきついから環境なんですよ、実は

深井:これ、あの時でてきたね、玄奘

楊:玄奘

樋口:玄奘のとき出て来た

深井:だからそういう土地に住んでる人たち。この人たちが、その、農耕とはまた違った生き方をしていて。まあその、季節ごとによって住む場所が違って季節移動する。でも大体住む場所決まってて、そこルーティーンでぐるぐるぐるぐる回って、その道中に井戸とか掘ってあるわけですよ。そういうすごく広範囲だよね。だから農耕民族と違って定住してるわけじゃなくて、けっこう長い距離、それも距離もまばらだそうです。まちまちだそうです

樋口:まばらって部族によって

深井:部族とか、そのグループによって

樋口:そういうことか

深井:それはまちまちだそうで、すっげえ移動する人たちもいれば、数百キロ。あの、数十メートルしか移動しない人たちも。数十メートルって移動してるのかってなるけど、移動してると。冒頭言ったように彼らものを持つことができないから、物欲ってあんまりないんだよね。でも物資がないんですよ、まず。物資がないからルーティーン、生活ルーティーンの中に、これモンゴルの方に怒られるかもしれないですけど、略奪っていうのが入ってます

樋口:はあはあはあ

深井:わかりますか

樋口:なるほど、現地調達

深井:そう、例えば僕たちが皿欲しいなみたいな。お皿買おうじゃなくて、皿欲しいな、略奪しよってなるんです

樋口:なるほど。はあ。

深井:極論いうとね。感覚がだからそこから違うわけ

楊:もちろん交易もしますよ

深井:するよ

楊:かれら

深井:そうだね、怒られるね

楊:農耕民から要するに中国大陸にいる農耕民から例えば羊と日用品だったりとか、鉄とかだったりとか、ナイフだったりとか。まあ交換して、そこでマーケットが形成されて。

樋口:はいはい

楊:実はその農耕地帯と乾燥地帯の境目で文明が生まれることが多いのはそこにマーケットが需要と供給が交換される場が形成できるから文明が生まれることが多いんですけども。で、その、交易プラス略奪が彼らの生業だよね。

深井:生業の一つに入ってる。だから略奪のハードルとか罪悪感はそんなにないし、その、略奪に行くっていうこと自体がなんていうんですかね。ハードルがすごく低い

樋口:仕事行くくらいの感じで行くんですね

深井:そう。なんか、なんか、竹取物語の野山にまじりて竹切ってる爺さんくらいな。全然うまいたとえじゃなくてびっくりした

樋口:でもでも、さあ、今日も仕事行くか、生きるために。みたいな感じで盗りに行く

深井:そうそうそう、そんな感じがあるので

樋口:竹取り。ごめんなさい。間違いない。

深井:で、あの。

樋口:はいはい

深井;何が言いたいかと言うと、戦争のハードルがめちゃくちゃ低い

樋口:そこだそこだ。そういうことだ

深井:だからばんばん戦争するんです。そういうところもある。世界帝国を築くそのスピードで世界帝国を築けるのは彼らが一致団結さえしてしまえば超強いからなんです。最初から。馬全員のれるしね。

樋口:そうか

深井:騎馬兵しかいない。歩兵いない。

楊:当時の馬って、今でいうと何だろうね、飛行機くらいじゃない

深井:戦闘機

楊:戦闘機だよね。戦闘機くらい

深井:だから戦闘機に乗るのって技術がいるじゃないですか。パイロット養成しないといけない。だから、普通の国はパイロット養成学校作って、そこに戦闘機用意して、そこでパイロット養成するでしょ。だけど、モンゴル人は最初っから全員日常で戦闘機に乗ってるんで

楊:3歳からね

深井:女も子供も全員戦闘機乗ってるから、基本全員が戦闘機のれるんですよ

樋口:なるほど

深井:定住してないから、移動に対する心理的あれも少ない

樋口:ストレスというか、ハードルがない

深井:移動した先で住むこともそんなにやぶさかではないわけですよ

樋口:はあ。そして別にものを持たなくても全然生きていけるし

深井:ものも持ってないし、何ならそのものを調達するためにどんどん外に出ていかないといけないので、統一したら強いんだけど、強い人たちが争ってないわけだから自分たちで略奪しあえないから。外に略奪しにいかないといけないでしょう。そういう膨張が帝国をどんどん作っていってるって側面が一つあるんです

樋口:膨張だ。外に外にドバアッと行く

深井:だだだだって。だからアレクサンドロスとの違いがすごく面白いのが、アレクサンドロス自分が戦いたくて兵士連れて行ってた。チンギス・カンはね、みんな戦いたいわけ。

樋口:はあ

深井:アレクサンドロスはペルシャ帝国を潰した時点でみんなモチベーションはなくなったわけですよ。

樋口:はいはい

深井:それが大義名分だったんで。過去ギリシャに攻めて来たペルシャ帝国を復讐のために攻め滅ぼすぞっていって、攻め滅ぼした時点で終わってたんだけど。モンゴル族はそもそもルーティーンの中に略奪はいってるから。略奪外にしていかなくてはいけないというモチベーションが最初っからみんなの中にあるわけです

樋口:うわあ。

深井:そのモチベーションを沸かせる必要もなかった。チンギス・カンは

樋口:文化が違いすぎる

深井:ビビるくらい違うでしょ。びびるくらい違う、だから。

樋口:え、ここでちょっとめちゃくちゃ素朴な疑問なんですけど、なんで定住しないんですかね

深井:定住できないから

楊:できないから

樋口:でも、え、生きるためには、例えばじゃあ、どっか国征服します、倒します。ええ、米獲れます、麦採れます、住めばいいっていう発想なるんですけど。え、なにがどう、

深井:それはだから、北海道の人になんでそんな寒いのに住んでるんですかっていってるのとあんま変わらない。寒くて嫌だった人は南にいってるだろうし、

樋口:はあ、そう。

楊:もちろん中には定住して農耕始めた人もいるし

深井:いるでしょうし

楊:ちゃんと農耕民の国家を支配してそこから税金をとるっていう、それ多分あとで話でてきますけど

深井:けどだって、普段自分がそこで生まれ育って遊牧民として育ってたら、そんなそれは苦じゃないわけ。きついかもしれないけど、苦じゃないわけ。だからその生き方で生きるってのは彼らにとっては当然のことな訳です。

樋口:なるほど、前澤社長別にゾゾ辞めんでもいいのになんで辞めるんみたいなこと僕言ってる

深井:そうです

樋口:なるほど

深井:当然のこととしてそういうことをしていて。で、さっきヤンヤンも言ったように自給自足的なんだけど、物資が自給自足できないんですよね。なんで、生活用品とかも含めて技術者が必要なことに関しては基本的には交易か略奪で調達をしている。だから、武器とかもそう

楊:だよね。

深井:武器とか、皿とか、そういうものは周りの周辺文明から仕入れをしてるわけです。逆にいうと周辺に農耕文明がない限りはその遊牧民の生活は成り立たないわけなんです。これセット。

楊:そうそう、まさにそう。

深井:常にセットなの、実は

樋口:なるほど

楊:お互い補完しある関係だよね

深井:補完しあってて、特に遊牧民は、もちろん中華文明もそうだし、あと、オアシス系の中東にいるオアシス系の人たちともこうやりとりをずうっとしていくわけです。で、あの、特徴的なのは技術者がいないんです。さっきも言いましたけど。技術できないじゃん、だって移動しながら。あんあり

楊:そう

樋口:開発ができない

深井:できないし、なんていうか、もの持てないわけだからさ、基本的に。技術ができないわけ。だから全員軍人なんです。これちょっとスパルタと一緒なんです。そこは。

樋口:はああ。

深井:スパルタとの明確な違いはスパルタは奴隷がいたんですよ。その奴隷が農業してるんだけど、モンゴル人はモンゴル人というかモンゴル族は、モンゴル部ってのが一番表現が正しいんだけど

楊:部族だよね

深井:モンゴル部はね、その、奴隷もいないからさ。

樋口:そうか

楊:そう。

深井:征服したとしても奴隷にはしてないんだよ。あの、技術者をコネクションみたいな感じで繋いでいく。だからめっちゃ株式会社に近いんです、実は。

樋口:ほお

深井:めっちゃ株式会社に近い。ちなみにこれ後で喋ろうと思ってたけど今喋っちゃうと、あの、戦争するってなるじゃん。戦争って略奪のためにするから人殺すためにやるんじゃない。物資獲得のために戦争しにいくんですよ、さっきの話で。しに行くときに各部族に対して集めて、部族長を集めて最高会議クリルタイというのを開くんです。このクリルタイの中で各部族長からどれくらいの兵力を出すかを決める。で、略奪した物品はこの出した兵力に応じて分配されるんです

樋口:株式やん

深井:株式にめっちゃ近いんです

樋口:すごい。

深井:株式会社の考え方にとても近いんです。各部族の人たちは武器とかは全部自分で用意しないといけない。その代わり彼らは税金も徴収されてないんです。すごく違うんです、国の作り方が

樋口:全然違う

深井:びびるくらい違う

樋口:全く違うですね

深井:税金を納めてない、だって、彼ら。途中からモンゴル帝国になって少ししたら税金が生まれたんだけど、すっごい軽い税なんですよ

楊:そうそうそう

深井:羊100頭につき1頭渡せばいいんですよ。江戸時代とかとはえらい違いなんですよね。

樋口:ほお。ちょっと待ってください。もう一回比較すると、普通国を形成維持するのってお金かかるじゃないですか。例えば役所の人件費だったり、ええと、建設費だったり、それがない

深井:ない。だって役所の人は

樋口:まずいない

深井:いないです

樋口:はい。

楊:だって、農耕民の農耕定住民って要するに定住してる。生産力ってものすごく大事にされる。ちゃんとたくさんの人口を養うために生産力だったりとかあとはとにかく人、その、定住してる土地で産業を作ったり国を作ったりするにはみんながそこに定住していくと人間が増えていくじゃないですか、で、国が形成されていくじゃないですか。国をマネジメントするためにどうしても組織が必要になるんです

深井:組織と管理コストが高いんですよ

楊:官僚

深井:農耕国家て管理コストがちょう高い。遊牧国家は管理しなくていいから管理コストがないんです。バックオフィスがいらないんです

楊:確かに

樋口:そうか

深井:営業だけで形成できる

樋口:そういうことか

楊:そうだよね。自分で全部できる

深井:全員営業の人なんです。経理の人いない

樋口:オフィスいらない

深井:マネージャーいます。営業マネージャーいます。

樋口:なんか、僕今聞いてて、農耕民族が花で遊牧民がミツバチみたいなイメージが。根を張らなくてよくて、花からとってきてミツバチが移動することによっていろんな物資とか文化が

楊:もっと、違うたとえをすると。農耕民族ってスネ夫なんですよ。金は持ってるけど弱い。でも、遊牧民はジャイアンなんです。金もってないけどまじくっそ強い

樋口:お前のものは俺のもの

楊:そうそうそう、

深井:そのたとえ新鮮だな

樋口:めちゃくちゃわかりやすかった

楊:お金でジャイアンもってないんですけども、軍事力にものを言わせて農耕民であるスネ夫からおい、いい値段でよこせよみたいな

樋口:ラジコンね

楊:じゃないとこれだぞってのをユーラシア大陸の歴史でけっこうこういうパターンあります

深井:めちゃくちゃ南下してくるわけ。基本的に北の方にいたり西の方にいるんです。遊牧民てのは中国からみたらの話ね。その人たちが降りてくるんです。それってやっぱり交換、交易がうまくいかなかった時とか、その、なんか自分たちの状況が変わった時とか、中国側の状況が変わったときとか、バランスが崩れたときに略奪に転じていく。その略奪の頻度とかもすごく多かったりして、

楊:そうだよね

深井:ずっと中国人は漢民族と言われる人たちが怯えてるっていう構図がけっこう長い間あって

楊:そうだよね

深井:僕はねずっと疑問だったわけ。あの、人類学学ぶ前とか特にそう思ってたんだけどその遊牧民の方が文明的に遅れてる感覚があった

樋口:なんか、そうですね

深井:その人たちの方が強いって何でって思うわけです。だっていい武器とかこっちの方が作りそうだし。中国、中華文明の方が。と思ってたんだけど、そういう捉え方が間違えてるって話だった

楊:実際は中国大陸で形成されてる王朝にとっていかにその北側、西側の遊牧民といい関係を築くかって最重要課題なんです

深井:最重要課題

楊:どの王朝にとっても安全保証上最重要課題なんですよね

樋口:常に怖い

楊:そうそう、常に怖いからさっき深井くんがいったように贈り物あげたりとか、時々政治力を使っていい関係を築いたりとか。あとは防いだりとか。攻め込まれたときに防いだりとか攻めにいったりとか。一番重要な課題。国家課題。ずっとそうだった

深井:そう、ずっとそうだった。そうそうそう、ずうっとそう

楊:ずうううっとそう

深井:で、歴史の話をするんだけど。あ、その前に、そうだ。クビライ・カアンと、クビライ・カーンとチンギス・カンの違いのカンの違いちょっとさらっと説明しときますね。ええとね。部族長みたいな意味なんです、カンて

樋口:そういうことなんだ、固有名詞じゃない

深井:その遊牧民のリーダーのことなんです。その部のリーダー。だから部長みたいな感じ、それをカンといって。チンギス・ハーンとかカーンていう伸ばすやつは、そのカンの中のカンなんです。だから皇帝と王様の違いです。皇帝がカーンで、王様がカン。チンギスは王様までしか行ってない。

樋口:そうなんですか、へえ

深井:だからチンギス・カン

樋口:じゃあここけっこう区別して言わないと意味が全く違うんですね

深井:意味が全然違うんですけど、昔混同されてて書物とかにもチンギス・ハ-ンて書いてあったり、発音がハになってるんだけど、どちらかというと当時のモンゴル語だとカに近かったらしい

楊:へええ

樋口:それはすごい。

深井:はい。ていうことで、一応それ、豆知識ということで

樋口:豆知識、面白い

深井:で、すっげえざっくり遊牧民の歴史、すっごい長いからね。

樋口:はい

深井:普通に2—3000年分くらいあるから、すっげえざっくりいうと、まず漢ていう漢帝国ね。あのライバルに匈奴という人がいる。これフン族と同じ人たちじゃないかと言われてるけど。

樋口:フン族

深井:フン族というのはヨーロッパの歴史に出てくるんだけど。その、いきなり来てすげえ強かったっていう人たちがいて、その人たちと匈奴って同じ人たちじゃないかと言われてるんだけどその、劉邦という漢帝国のね始祖の人、作った人が32万の大群を率いてね、匈奴を攻撃に向かうけど負けるんです。

楊:32万で負けるんだ

深井:32万で負けるんです

樋口:すごい

深井:本当に32万だったかどうかわかんないけど、32万で行って負けて、屈辱的な和平を結ぶ必要が出てくるわけです。そこで毎年決まった額の物産であるとか棉とか絹、シルクとかコメとかお酒とか植物という物資を渡して、物資を渡すから要は略奪しないでくださいということです

樋口:はいはい

深井:はい。あとは皇族の娘をその時の匈奴のトップの人単于という人、冒頓単于という人がいて、その人に、こう貢ぐ。貢ぐじゃないや、嫁がせる、嫁入りさせたりしてね。やって、匈奴とか、これ、今後ね、すげえ色んな単語出てくるから適宜省くんだけど、覚えなくていいんだけど、匈奴、鮮卑、柔然、鉄勒とかね、契丹とかね。聞いたことある人は聞いたことあると思いますけど。色んな人がいる。

楊:遊牧民がね

深井:これ全員遊牧民ね。あと女真ね

樋口:遊牧民の部族の名前なんすね

深井:名前。部族の名前。だからね、ま、部族の名前。だから他の文明でこういう形で例えると間違っちゃうからあんまりたとえないんだけど。

樋口:そういう種類の人たちがいるっていうくらいの感じ

深井:そうそうそう。この人たちはモンゴル系であったりトルコ系だったりする。だけどぶっちゃけぐちゃぐちゃに混ざってる上に、トルコとモンゴルというものが形成されたのがこの人たちがいた後の時代に形成された概念だから。

樋口:そうかそうか

深井:本当は混ざった後にそれができてるから。この人たちが実際何系かってのはわかんない

楊:自分たちで別に定義してないからね

深井:してないし。もう混ざる前だから。そういう定義の仕方も実は間違ってる。歴史ではトルコ系とか色々書いてあるんだけどね。で、モンゴル登場まえにモンゴル高原て今呼ばれてる場所があるわけ。モンゴルらへん。そのモンゴル高原て呼ばれてるところは当然モンゴルが出てくる前はモンゴル高原じゃないんですよ。そういうモンゴルっていう単語がないから。で、紀元前3世紀から紀元6世紀くらいまでは匈奴とか鮮卑、柔然ていうモンゴル系の人たちがキングダムを作ってね。王国を作って。それは遊牧民としての王国ね。だからさっきみたいに概念としては全然違うところ、のを作ってました。その後6世紀から9世紀にかけては、これも聞いたことはある人はあると思います、これは突厥

樋口:あ、突厥なんか

深井:あと、ウイグル。これはトルコ系と呼ばれてる人たちですね。この人たちが出てくる。ちなみに三蔵法師、玄奘のときに出て来たのは突厥。

樋口:出て来ましたね

楊:そうです

深井:ヤブクカガン。カガンていうね、このカガンはカンと同じ意味です。

樋口:すげえ。

深井:はい。で、まあ、こんな風に色んな人たちがそれぞれ治めてました。で、モンゴルってのが登場するのが7世紀くらいの時。600年代ってことですよね。初めてこれが文献に登場します。チンギス・カンが出て来たのがさっきいった1160年代くらいって言ってたから。だいぶ前ですね。そのだいぶ前に、まあその、モンゴルって名前は出て来てて、小さいモンゴル部って人たちがなんかしてることはなんとなく資料の中に出て来てるわけです。そのころは蒙兀室葦とかいわれてるんだけど。ちょっとなんか、漢字でね、書いてあってすごく難しい漢字。このモンゴル部が住んでた場所はどうやらやっぱり冬マイナス50度になるところに住んでたらしい

樋口:過酷やな

深井:めちゃくちゃ過酷だよね、だから外で寝たら死ぬよね。

楊:そう

深井:見事に

楊:死ぬし、羊を死なせたら自分たちも死ぬしね。食料がなくなるから

深井:でも周りのさ、周りに色んな部族がいるから、やっぱり結構危険な状態なわけ。自然環境も厳しいし置かれてる状況も厳しいという状況に住んでます。ただこの人たちが具体的にどんな人でどんな人間がいたかもはやなんの歴史にも残ってない状態ですね。

樋口:はいはいはい

深井:はい、で。この後、ええとですね、11世紀くらいになってようやく、そのちょっと王国ぽくなってくる。リーダーが出てくるわけです。このリーダーがそもそもなんで出てくるか。なんですけど、遊牧民が略奪の必要性が出てくると、略奪行為にはリーダーが必要なんです

樋口:そうか

深井:遊牧してる範囲内ではリーダーというよりはグループ毎に遊牧してればいいわけ

楊:自己完結

深井:結構自己完結するんだけど、略奪しますってなると、そのグループ同士を集めて戦闘指揮とるひとが必要ですよね

樋口:確かにそうですね

深井:しかも略奪したものを分配する人が必要

樋口:そうか

深井:お前にはこれだけあげる。これくらい活躍したよね。確かにって思わせる力が必要

楊:インセンティブね

深井:そう。インセンティブと分配だから評価だよね、どっちかというと。

楊:なるほどなるほど

深井:うまい評価を行える人物ってのが必要になってくる。だから遊牧民のリーダーってのはうまい評価が行えて戦闘指揮がうまい人なんです

樋口:はあ

深井:その人が、ええと、必要になって来て、こういう人たちがリーダーとして生まれてきて、そのリーダーの中のリーダーが王様ぽくなっていってカンと呼ばれるようになる

樋口:なるほど

楊:彼らの価値判断の基準ですね

深井:はい。

樋口:はいはいはい

深井;で、まあ、11世紀くらいにそれぐらいまでは大きくなってきてるわけです。逆にいうとそれまではそうでもないというわけです。常に軍事的な緊張地域にモンゴル部はいる。だからサイヤ人なんだよ、みんな。

樋口:サイヤ人

楊:一人一人がサイヤ人

深井:一人一人がサイヤ人、戦闘民族

楊:戦闘民族

深井:ていう状態。

楊:それは中国はびびるよね

深井:だけどまだ弱小チームなんですよ、モンゴル部はこの時。強いのはやっぱ突厥とかウイグルとか強い人たちがいて、その人たちと比べると全然弱い状態ですね。で、その後にね。そのモンゴル部っていうのが徐々に徐々にでかくなっていくんだけど。ええ、と、その意外と血縁同士で結びついてるわけ。

樋口:へえ

深井:意外と血縁で結びついて氏族と呼ばれる、氏の族と書いて氏族の人たちが、まあ複数寄り集まって集団を形成するんですね。だけど農耕民族ほど世襲制とかではなくて。まああるていど血統がいい人たちの中から、その、強力なリーダーてのが合議制によって選ばれるから、ちょっと民主主義チックなんです、そこは

樋口:へえ、面白い

深井:あらゆる要素があるよね。

樋口:面白い

深井:さっきも言ったみたいに、でもこの時点では法律もないし、税金もないし、そういう国家、農耕民族が考える国家ていうものとは程遠い状態

楊:全然違うもんね、イメージが

樋口:全然違う

深井:そういう仕組みが整ってない国が農耕民族よりも強いわけですよ

樋口:はあはあ

深井:ちょっとベンチャーみたい

樋口:ベンチャーですね

深井:大企業よりもベンチャーが強い時がある、たまに

樋口:はいはいはい

楊:そうか、あるね。

深井:ある分野においては

樋口:一人一人のマンパワーが強い

深井:一人一人のマンパワーが強くて制度とかが整ってないんだけど、結果的にそれがパフォーマンスにつながることってある。そんなことがここでも起こってるわけです。遊牧民にもそういうことが起こってベンチャーチックにその大企業である農耕民族をちょっかいだしてる状態

樋口:確かに、ベンチャーはヒルズにオフィスもたなくても自宅でやりますからね。なんやったらそれこそスタバでやりますから。ノマドで

楊:確かに

深井:そういうことができるんです

楊:適応性も高いですね

樋口:適応性も高いし、移動もできるし、持たなくていいし

深井:そうそうそう

樋口:確かにベンチャーとかサイヤ人とかと比較すると

深井:わかりやすい

樋口:ちょっとイメージは。でもまだ全然わかってないです

深井:国家の仕組みが整ってるからといって強いわけではないってところが面白いところなんですよね

楊:そうだよね。いつのまにか無意識のうちに国家イコール強いってたぶんある

深井:あると思うんですけどそんなことないんですよ。制度が整ってるからっていってパフォーマンスが高いわけじゃない。全然。

楊:逆に制度に縛られてぜんぜん身動きが取れないこよけっこうある

深井:そうそう。賄賂だらけになって腐敗してることだってあるし

楊:漢帝国とかそうだもんね

深井:でも一方で遊牧民が腐敗することってほとんどないですから。だって実力で選ばれてるから、合議制の部族の。だから、ええと、そういう状況なんだけど、ええと、この、まあ、6世紀から9世紀とかで、その、統一国家ができてたんだけど、このモンゴル高原、それ以降はずっとね、統一国家ができない状態になるんですよ

樋口:ほう

深井:だから、群雄割拠の戦国時代みないな状態がモンゴル高原がなるんです

樋口:はいはいはいはい

深井:これを統一する人間がずっと出てこなかった。300年間。

楊:戦国時代だったのかな

深井:戦国時代と例えてもおかしくはないくらい群雄割拠の時代。この群雄割拠を、これまたね、色んな国出てくるから混乱するかもしれないですけど、覚えなくていいです。金ていう国とカラ=キタイ、まあ、西遼とも呼ばれるんですけど、この遼という国が代理戦争を行ってるんです。このモンゴル高原で。

樋口:へえ

深井:この金と西遼という国が両脇にあってね、その下には宗という中国があったりするんですけど、この金と遼に接してるわけです、このモンゴル高原で部族たちが。この各部族が金側か遼側かどっちかに付いて、代理戦争として戦ってる状態なんです

樋口:へええ、なんか不思議

深井:で、その、逆にいうと金と遼は代理戦争でここをかき乱すことによってこのモンゴル高原の中心に強力な国家が出てこないように、彼らがまとまらないようにし続けてた。

樋口:ええ、なんじゃそりゃ、え

深井:だってモンゴル高原の人たちってめっちゃ強いから

樋口:なんじゃそりゃ

深井:まとまったら負けるんですよ。でも彼らは利害が一致しずらいから、リーダーが出て来づらかったから、一致させれる人ってすごい人だからね。

樋口:はいはい

深井:その人が出てこないうちはとにかくかき乱していた

楊:互いに代理戦争について争わせあうというね

深井:で、そこに出て来たのがチンギス・カンなんです。それをまとめて。だからもともと強かったやつらをまとめることができたのがチンギス・カン。だから強い。まず。

樋口:うわああ。ちょっとすごいな。その構図。かき乱そうとしてかき乱していた。なんじゃそれ

深井:と言われている。でしょうねといわれてるってことです

樋口:へえ、面白

深井:この次にやっとこういう状況の中でチンギス・カンのおじいさんくらいの代からどうやって始まっていくかっていう話をします

樋口:なるほど。うわあ、ちょっと、今の所、ええと、言ってる単語は全部わかるんですけどぴんとくるのがけっこう難しい

深井:たぶんね最後から2回目くらいでやっとピンとくると思う

樋口:ちょっとこれ、もっともっといっぱいどんどん聞きたくなってきちゃうね

楊:10回くらい聞いて下さい

樋口:いやあ、面白いです。じゃあ続きは次回からですかね。

深井:ありがとうございます

楊:ありがとうございます



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