【今回の内容】
・ベル博士、あんたすげえよ!
・サリヴァン、社会人になる
・愛の教育か?スパルタ路線か?
・DOLLから始まる二人の偉人の物語
・キレるクソガキ
・ヘレン、サリヴァン泣かす
・家族が逃げ出す仁義なき戦い
・教育方針180度転換
・やってらんねえ!マジで
・キレる生徒、キレ返す先生
樋口 ということでございまして、今回はヘレン・ケラーのお父さんがベル博士に会いに行ってからの話ということなんですけれども。
深井 そうですね。その前にちょっとベル博士、どんな人なのか。アレクサンダー・グラハム・ベルという人なんですけど、この人の人生も実はやっぱりヘレンに影響していたんだよね。面白いなと思ったんですけど。ちょっとざっくり紹介しますね。この人はやっぱり発明家であり、また物理学者でもあるんですけど、すごい人で、A.T.カーニーって分かるかな。アメリカのNTTみたいなめっちゃ一番でかい通信社の創始者でもあるし、前の回でも言ったけどデシベルとかいう単位にも名前を残している人ですよね。この人、実は母親が耳が聞こえない人なんですよ。
樋口 あら、またろうあ。
深井 そうなんです。この人がそもそもろうあ教育に情熱を注いでいるのはなぜかといったら、この人は注いでいるんですけど、なぜかといったら母が耳が聞こえないからなんですよ、1つは。
樋口 なるほど。
深井 だから電話の発明とかもちょっとそこにつながっているんだよね、本当は。
楊 そうだよね。それ、だって音声の研究だもんね。
深井 そう。この人、母親が耳が実は聞こえなくて、彼が何歳だったかな、10代前半ぐらいのときに母親の耳が聞こえなくなっていくんですよ。やっぱりそこで音声の研究を彼は始めるわけです。
楊 そうだよね。そこで研究したものが、技術が一部、電話に利用されていくんですね。
深井 そうなんです。とにかく音声に対しての◇志向◇性がすごく高いんですよ、グラハム・ベルさんは。お父さんはちなみにスピーチの先生だったりして、お父さんも障害者教育にちょっと携わっていたりするので、結構、本当サラブレッドなんですけど。そういうふうなお父さんのお父さんもそうですね。おじいさんもそうなんですけど、スピーチ術だったりとか、あと読心術とか。
楊 唇の動きを読んでコミュニケーションする技術だよね。
樋口 読心術ですね。
深井 あと可視音声といって、すべてのこの世の音を全部可視化できるという技を持っていて、彼らは。
樋口 どういうことだ。
深井 だからまったくしゃべったことがないような言葉でも、発音、1回も音で聞いたことがないやつでも書き記したやつを読めば発音できるという技を持っていたんです。
樋口 そういう技術があるんですね。
深井 あるんです。鳥の鳴き声とかでさえできるんです、ちなみに。
樋口 へえ、知らなかった。
深井 20歳ぐらいのときにオートマタとかいって発音アンドロイドみたいなのを使って、ママと発音させたりね。
楊 天才やん。
樋口 すごいな。
深井 天才、天才。この人は、だから電話の発明社としてすごく有名なんですけれども、ルーツとしては母親が実は耳が聞こえなかったというところから来る、母とのコミュニケーションを取りたいという思いから彼らはすごい音声に興味を持っていくんだけれども、そこがどんどん進んでいって、最終的にろうあ教育に従事したいという思いがすごく強くなって、ろうあ教育に対して本当ボランティアレベルでどんどん活動していったわけです、彼は。
だから父親のアーサーにグラハム・ベルが紹介されるんですね。グラハム・ベルに会いに行くんですね。アーサーとヘレン、どっちも。あとおばさんも一緒に行ったんだけれども、ワシントンまで行くわけ。ベルは非常にヘレンをかわいがってくれたらしいんだけれども、ここで運命的な紹介文を書いてくれる、さっきのハウ博士、ローラ・ブリッジマンとか言っていた人ですね。目が見えない、耳も聞こえない、50年前にいた人。
あの教育、ハウ博士は実はもう亡くなっていたから母親も結構失望していたんだけど、グラハム・ベルに会いに行ったらベル博士が、実はパーキンス学院という学校があって、そこにハウ博士の偉業がずっと引き継がれているんだよと。だから1回そこにちょっと相談してみたらどうかということで紹介状を書いてくれるわけです。
楊 サリヴァン先生が通っていた学校だよね。
深井 そう、それがサリヴァン先生が通っていた学校なんです。
樋口 そうか、それがきっかけか。
深井 そうなんです。
樋口 なるほど。
深井 これでパーキンス学院に手紙を送って、父であるアーサーと母であるケイトは2人とも、もう本当にすごい気持ちで返事を待っているわけですよ。一日千秋の思いで待っていると、サリヴァンという人がいて、その人を家庭教師で送るねという手紙が届いて非常に喜ぶという。
樋口 なるほど。光をそこに見いだすわけですね。
深井 まあ、光だよね。だって今までどうすればいいかまったく分からないところに、ハウ博士の遺業を継いでいるといわれる学校から家庭教師が来ると言われたからめちゃくちゃ喜んだわけですよ。何とかなるんじゃないかとここで思うわけ。一方のサリヴァンの方はパーキンス学院の校長から手紙を渡されて、アーサーが書いた手紙とベル博士の紹介文を渡されて、手紙を読んでやっぱり引き受けることにしたらしい。すごくそこの切実な思いが書いてあったらしいんですよ。ヘレンを何とかしたいという思いがすごく書いてあって。
楊 不安はあったけどね。教師経験もないし。
深井 そう。教師経験もないし、すごい不安は持っていたんだけれども、ちょっとやってみようと。彼女自身、やっぱり目も悪いし、なかなかいろいろな仕事をするわけにもいかないわけですよね。だけど自分も身寄りがない中で生きていかないといけないわけじゃん。誰も親戚がいないから自分で働いて生きていくしかないんですよ。だから仕事は絶対ちゃんとやらないといけないと思っていたから。給料が高かったわけ、アーサーが金持ちだからさ。ヘレンの家が。
最初はやっぱり稼がないといけないという思いで引き受けたと本人が言っています。サリヴァン先生が。何か慈善の気持ちがあったとか、慈善活動をしたいとかいうよりは、生きていかないといけないから、仕事ができるんだったらさせてほしいと思って引き受けたと、最初は。
楊 そうだよね。何かパーキンス学院、卒業した後に彼女もいろいろな福祉の仕事に就きたかったんだけれども、なかなかそういう働き口がまだない社会だったんですよね。しばらくお世話になっている寮母さんの家で居候していたんですけれども、やっぱり自立したい気持ちがすごくあるんですよね。それは社会人として当たり前ですけど。そこに仕事の話が来て、やった、ちょっと生計が立てられると受けたのはあると思います。
深井 そうですね。もう1つ本当運命的だなと思うのは、ローラ・ブリッジマンがまだいるんですよ、パーキンス学院に。
楊 そうだよね。
深井 住んでいるんです、この人、パーキンス学院にね。ハウ博士は死んでいるんだけど、ローラ・ブリッジマンは生きているわけ。だからローラ・ブリッジマンにいろいろ教えてもらいに行ったし、ハウ博士が残している書物とか文献とか全部1回読んで勉強したらしいんですよね。仕事が決まってから仕事に行くまで結構時間があったらしくて、半年間ぐらいだったかな、時間があったらしくて、3カ月か半年ぐらいだったかな、時間があったらしんだけど、その間すげえ勉強して、耳も聞こえず目も見えない子をどうやって教育するかというところの土台というところを情報としてインプットしているんですよ。
楊 すげえな(笑)。
樋口 半年で、勉強熱心やな。
深井 この後、言いますけど、サリヴァンが一番重視したのは、ヘレンを甘やかさないということだったんですよね、一番最初。やっぱりこういうことができたのも、たぶんローラ・ブリッジマンとかと話したり、あと自分が障害者だったからさ。この時点でも弱視といわれるやつなのかなと思うんだけど、目が見えなくなっているから、1回ほぼ。そういうところから障害者に対してどうやって向き合うと彼らが自立できるかということは、感覚的にたぶん分かっていたんだろうなと思うんですよ。
楊 そうだと思う。何かローラ・ブリッジマンとサリヴァン先生が会ったときにローラ・ブリッジマンからアドバイスしたことは、絶対障害を持っている子供でもわがままを許しちゃいけない、甘やかしちゃいけないというアドバイスをしたらしいんですよね。
深井 なるほど。ローラ・ブリッジマンから直接ね。
楊 そうそう。厳しさが最初に必要だよというふうに言われたらしいですよ。
深井 すごいよね。
樋口 すごい。
深井 いよいよヘレンの家、アラバマ州のタスカンビアというところにあるんですけど。
楊 遠いよね。
深井 遠いですよ。マサチューセッツなので、出身が、サリヴァン先生は。結構遠いんですけど、向かうんですよね。汽車でね。汽車で向かって、何か途中で泣いたらしいね。
楊 そう。汽車の中で不安すぎて泣いてしまって(笑)。
樋口 それはそうだよな。
楊 そうそう。車掌さんから何かちょっと安心できる言葉を掛けられたみたいですよ。
樋口 優しい車掌さん出よかったな。
深井 そうですね。
楊 最初の仕事だし、北部から南部にめっちゃ遠い旅で行くわけですから。しかも二十歳だしね。相当心細かったと思いますよ。
深井 まだ南北戦争が終わってからそんなにたってないから、20年ぐらいしかたってないから。
楊 そうだよね。
深井 やっぱり南北の違いみたいなのも絶対あるから、すごい遠くに行く感覚だったと思うんですよね。
楊 でしょうね。反北部の雰囲気もやっぱり残っていたみたい、まだ残っていましたよね。
樋口 それは怖いな。
深井 怖いですよね。だからそういう状態で不安を抱えながらも行って、いよいよヘレンと対面するわけですけど、ヘレンは最初、サリヴァン先生、お母さんと間違えて突進して行ったらしいね。何か抱き付いてきた(笑)。抱き付いたんだけど何かお母さんと違うということは触覚で一瞬で分かって、その後はかばんをあさっていたらしいね。かばんをがっと取って、そのかばんを開いて食べ物を探していたらしいんですよ。本当ちょっと動物チックだよね、最初は。
楊 まあ、そうだよね。確かに。
深井 サリヴァンはすごい目と耳が聞こえないと言われていたから、色白の神経質な子供を想像していたらしいんだけど、かなり体格がよかったらしくて、ヘレンって。体格がよくて血色もよかったらしくて、だいぶイメージと違ったらしいです。
樋口 思っていたのと違うとなったんですね。
深井 思っていたのと違うわと思って。やっぱりすごい短気でわがままだから、ヘレンが。
楊 すぐキレるしね。
深井 そうそう。家族が甘やかしているなというのがよく分かって、腹違いのお兄さんだけはヘレンにちょっと厳しいんですよね。お母さんが違うし、たぶんそんなに愛情を注いでなかったんじゃないかなと思うんですけど。
楊 あとの家族は知らん顔だよね。
深井 うん。そのときのコメントが、顔つきは知的だけど魂が抜けていると言っていましたね。サリヴァンがヘレンに対して。一瞬たりともじっとしてなくて、ちょろちょろ馬のように動き回って困りますとか、友人への手紙にサリヴァン先生が書いていますね。
樋口 なるほど。大変だろうな、それは。
楊 大変だろうね。
樋口 しかも言葉、通じないんですからね。
楊 そうだよね。ちょっと止めようとするとすぐキレ返してくるし、親もどうしようもなかったと思うけどな。
深井 そうですね。最初、サリヴァン先生がヘレンに会う前に決めていたことは、彼女の気質を損なわずにどうやって訓練していくかという、これが最大の課題であるというふうにまず考えていたんですよね。あとは愛情を勝ち取りたいと、信頼関係をちゃんと築きたいと思っていたと。あと力ずくで押さえ付けたりとか、体罰をしたりとかいうことは絶対したくないと言っていたんですよ、一番最初。
樋口 偉い。
深井 すごい立派な、もうこの時点でものすごく立派な考え方で挑んでいるんですね。一方でヘレンはかばんを奪ってかばんを開けて勝手に中のやつを探しているんですけど、ちょうどその中にプレゼントを持ってきたんですよ、サリヴァン先生って。パーキンス学院の人たちみんなで作った人形があったんですね。その人形を見つけて人形で遊び始めるんだけど、すかさずサリヴァン先生はその人形を持っているときに、指文字といって指の形でアルファベットをつづる方法があるんですよ。
楊 こんな感じで。
深井 そうそう。当然、まだ知らないですよ。ヘレンは。それをドールといって、「doll」ね、ドール。
楊 人形のね。
深井 人形。これをばっと指でつづってあげる。これは人形だよということで、ずっとドール、ドールとつづってあげる。その後、ケーキを取ってきて、これまた「cake」とつづってケーキを食べさせるとか。例えばカードを持ってきて、これは「card」と指でつづってやってみるみたいな。そうするとヘレンもまねして「doll」みたいな「doll」とつづるんですよ。まねしてね。
そうするとサリヴァン先生が褒めてあげるわけですよ。そうしたらヘレンもうれしくなって、すぐお母さんのところに走っていって、お母さんにその「doll」と指でつづって見せてあげるんですよ。褒めてもらいたくて。まだ小さいから、7歳だからさ。そうしたらお母さん、めちゃくちゃ感動して、文献によっては泣いたと書いてある文献と、そうでもない文献があるんだけど、すごい感動したらしいんだけど。この時点ではまだ全然何のことか分かってないんです、ヘレンって。
楊 単なる指遊びだと思っていたんだね。
深井 そうそう、指をこうやったら何か褒められるみたいな(笑)。
樋口 でもそうか。それが単語というあれがないですからね。言葉という。
深井 そうそう、単語という概念がないから、言葉という概念がないので、それをすると喜ばれるみたいな。これをするとケーキをもらえるとか、そんな感じで思っている状態ですね。サリヴァン、最初からやっぱり厳しくしようとしていたから、ケーキを食おうと、とにかく甘いものが好きなので、ヘレン。ケーキを食っているんだけど、ケーキをばんと取り上げてつづりを教えようとしたりだとか、いろいろなことを教えようとするんですけど、その取り上げたことにめちゃくちゃヘレンがまたキレるんですよね。かんしゃくを起こして怒るんですよ(笑)。
その日はもうサリヴァンに近づかなかったらしいです。何かかわいいですね。ケーキを取り上げたらキレて、サリヴァンに寄りつかなくなったみたいなね。
樋口 でも確かに食べ物を奪う敵ですからね。
深井 そうなんです。何でこいつは食べ物を奪うんだとなりますからね。
樋口 だって教育とか厳しさとかいう概念もないわけですからね。
楊 ないですよね。だってヘレンも家族で食事しているときも全然マナーとかなくて、自分の皿のものだけじゃなくて、隣の人の皿に手を突っ込んで物を取って食っていましたからね。
深井 そうそう。だからナイフとかフォークとかも使えなくて、とにかく食卓の周りをうろうろしながら、自分の皿もあるんですけど、勝手に手を突っ込んで勝手に食べるみたいな。家族はそれを許容しているんですよ。もう目も見えないし、耳も聞こえないから教えられないからしょうがないし、かわいそうだから、しょうがないからみたいなことになっているんですよね。
サリヴァン先生はまずこれを許さなかったんです。これが壮絶だったんだよね。これ、映画とかにもなっているかたちょっと見てほしいんだけど、結構映画そのままなんだと思う。そこそこ、『奇跡の人』とかいう映画があるんだけど、『Miracle Worker』という映画があるんですけど、結構昔の白黒の映画がありますけど、そこら辺にも描写されていましたけどね。
サリヴァン先生が絶対まず自分の食事は食べさせないわけですよ。そうするとヘレンからすると、誰の食事という概念はないから。
楊 まあ、そうか、ないよね。
深井 食べようとしたら阻止されるからむかつくわけですよ。ばんばんやり合い始めるわけ、そこで。そうしたら家族が食事中にそれをされて迷惑だから、みんな部屋から出ていくんですね。部屋に2人だけ残ってずっとばんばんやって(笑)。
楊 そうそう。お父さんとかはヘレンの好きなようにさせてくださいよとサリヴァン先生に言ったらしいけどね。
深井 そう。それはでも逆ギレしているんですよ。サリヴァン先生は親に、ここで甘やかしたら自立ができないと。ここで必要なのは彼女に対する同情じゃなくて厳しいしつけなんだという話を両親にしてやり合うんだけど、ヘレンの手にフォークとかを無理やり持たせて、それでいすに無理やり座らせてこうやって食べさせようとするんですよ。そうしたらスプーンを投げたりするんだよね、ヘレンが。
楊 そうそう。
深井 それを投げたやつを、今度、ヘレンの、力ずくで落ちたやつを、フォークをこうやって拾わせて、みたいなことをやるんですけど、一番最初に教育方針を立てたじゃん、サリヴァンが。
樋口 たたかないとかね。
深井 そうだし、力ずくやらないとか、もう即効で破っているんだよね(笑)。子育てってこんな感じなんだろうなと思った。
楊 最初もサリヴァン先生はやっぱり愛を持って小さな私の生徒に接してあげようと思ったけど、やっぱりこういうことが続いていたから、いや、その愛どうのこうのよりも、まず先に服従することを教えてあげないとだめだよねというふうに切り替えたんだよね、教育方針を。
深井 本当にまず言うことを聞くという状態をつくらないと、そのスタート地点に立てないから、まず言うことを聞かせることに集中するんですよ。今度、ヘレンがつねってきたりするのね。そうしたら平手打ちとかしていたらしいです(笑)。
樋口 もうたたきもしているじゃないですか。なるほどね。
深井 まあ、そうなるよね。正直この状況で、まあ、しょうがないかなと思いましたけど、この時代、この状況でね。
樋口 でも、それでも根気を持ってやったということですよね。
深井 そう。スプーンを渡すけど投げつけてくるんだけど、それも根気の勝負で投げつけても投げつけても拾わせていたら、スプーンを持たざるを得ないということが分かってくると。今度はナプキンを畳ませるんだけど、このナプキンを畳ませようとするとまた最初から格闘が始まって、また1時間たちますみたいな。ナプキン1つ畳むのに1時間かけて、もうどっちが先にあきらめるかの問題なんですよ、これは。
楊 俺が家庭教師だったら1日で辞めていると思うけど(笑)。
深井 実際、初日は家に帰ったら思いきり泣いていたらしいですよ、先生は。サリヴァン先生、部屋で。しんどすぎて。そうなりますよね。こんな感じで始まるんですよ。この時点ではまだ物の概念も分からないし、ものすごく迷惑な人が来たなとたぶんヘレンは感じているところですよ。
樋口 そうですよね。敵ですね、完全なる。
深井 敵が来たみたいな。
樋口 今までの自由にできていたことを、自分の自由を奪う敵ですからね。たぶん想像すると。
深井 そうなんです。
樋口 ですよね。
深井 ここから本格的にサリヴァンの教育が始まっていくので、次回はさらにこの後、物の概念を理解するまでにどういう変遷をたどっていったのかとか、あとは今、単語の話をしているけど、ちょっと皆さん想像してみてほしいですけど、文章とかをどうやって伝えるのかという話です。彼女はどうやって文章を使えるようになっていくのか。あと抽象的な概念をどうやって彼女に伝えるのか。
楊 そうだよね。
深井 例えば勇敢だとかいうことを、彼女にそれをどうやって伝えるのか。
樋口 むずいね。
楊 神様は何だとかね。
深井 そう。
樋口 神様とかも絶対きついな。むずいな。
深井 あと文法とかもどうやって伝えていくのか。再三言うけど、ハーバード大学に行っているからね。だから数学とかも普通に勉強したんだよ、最終的に。
楊 ラテン語、ギリシャ語、言葉もいっぱいできたもんね。
深井 そうそう。ドイツ語とかも勉強して、フランス語も勉強していますし、あとは自伝を彼女は書いているんですけれども、ヘレン・ケラーは。めちゃくちゃ普通に書いているんですよ。読んだら普通に文章が書いてあるわけ。とても7歳まで言葉が使えなかった人とは思えないですね。なので、そういうことがどうやったらできていくのか。サリヴァンもこの時点ではちなみに分からないわけですから。
樋口 なるほど。
深井 何でそんなことができるのかということをちょっと次回以降でまた、いよいよ本題というか、説明していきたいと思います。
樋口 僕はまったく想像がついてないので、めちゃくちゃ楽しみですね。自分だったらどうするかなとか思いながら楽しみに聞いていきたいと思います。ではありがとうございました。
深井 ありがとうございます。
楊 ありがとうございました。
(録音終了)