#95 一夜にして長州転落!そして奇兵隊爆誕

【ポイント】
①クーデターにより京都政界から排除された長州藩は禁門の変の起こし、朝廷の敵として認定される
②長州藩は独自で攘夷運動を実施したが、逆に列強艦隊の報復に遭いボコボコにされる
③長州藩最大のピンチに際し高杉晋作に白羽の矢を立ち、奇兵隊結成へ


樋口:ということでございまして、前回までは、何やかんやあって、10年の休暇を取って頭を丸めるという高杉晋作の(笑)、

深井:そうですね。10年の休暇を申請して、一応許可されて、で、頭丸めて、いわゆる政治の舞台から思いっきり身を引くんですよね。

樋口:これはもう、急に方向転換しましたね、人生。

深井:そうですね。で、この間も、当然ですけど、日本の政局自体はものすごい目まぐるしく変転してまして、ついに将軍が朝廷に、この日までに攘夷しますっていう期限が迫ってくるんですよ。で、この期限が、結論から言うと、幕府、何もしなかったんです。ただ長州藩は攘夷断行したんですよ。つまり、長州の港に来ている外国船、砲撃するんですよ、長州は。

樋口:うわー、やっちゃった。

深井:これで戦争が起こるんですけどね。

樋口:やっちゃったー。

深井:で、全部幕府のせいにされますけど、結局これも。これを実行に移すというのがまずあります。で、久坂玄瑞とかが、そこら辺、結構、

楊:政治工作して、

深井:政治工作してやってんだけど、外国艦を砲撃します。実はアメリカ商船から、軍艦でさえないアメリカの船をいきなり砲撃します。

楊:もう外国船見かけたら、とりあえず砲撃みたいな。

深井:そう。で、次はフランス艦砲撃します。で、オランダも砲撃します。全方位ですよね、いきなり。オランダも?ってなるけど、もう全方位、

楊:いけいけどんどんだよね(笑)。

深井:そう(笑)。

樋口:すげえな。

深井:そしたらアメリカ軍艦が報復に来るんですよね。で、向こうのほうが圧倒的に強いので、砲台が、もうぼっこぼこに破壊されて、味方の船も全部撃沈していくみたいな。さらにフランスの軍艦が来て、フランス兵が二百何十人ぐらい上陸して、もう農家を焼き払うみたいな。

樋口:うわー、嫌やな。

深井:で、それに対して甲冑とほら貝で戦うみたいな、もう本当に時代遅れの軍隊対近代兵器みたいな感じで、思いっきり負けるんですよね、これで。全く太刀打ちできないことがわかってしまうんですよ。久坂玄瑞たちもばかじゃないんで、彼らが進んでることは知ってるんだけど、とはいえ、地の利を生かしたりだとか、向こうが攻めてきてる状況とかを考えたときに、頑張れば勝てると思ってた。そしたら、もう全然勝てなかった。

楊:武器からして、全然向こうがね、

深井:そう。まず武器を、自分たち、ちゃんと持ってない。昔の武器さえちゃんと持ってない、まず。甲冑とかさえね。みたいな状態があって、その中で普通に負けてしまいます。勝てると思っていた戦に普通に負けてしまった。困った。

樋口:困るわ。

深井:藩が困るんです。どうする、どうしようってなったときに、晋作呼び戻せってなるんですよ。

樋口:うわ、ここでくるんや。

深井:そう。3カ月前に頭丸めていとま請いした晋作を、呼び戻せってなるんです。

樋口:3カ月しかたってないのに?

深井:3カ月しかたってないです(笑)。
一同 (笑)

樋口:結構な決意で10年っつって。

深井:はい。で、そこで晋作に、何か打開策はないかって聞くんですよ。したら、馬関っていうとこで戦ってたんだけど、

楊:下関かな。

深井:下関ね、そう。馬関のことは私に全部任せてくれと。私に策があります。有志の兵を集めて兵隊を作って、これを奇兵隊と名づけますっていう話をするんです、彼が。

樋口:奇兵隊。

深井:ここで出てくるのが奇兵隊。奇妙の奇に、兵隊の兵に隊、奇兵隊。ものごとには正と奇っていうものがあって、正の反対語として奇っていうのを使ってると。正兵がいるとしたら、神出鬼没の奇兵が存在すると。この神出鬼没の奇兵隊っていう、まあゲリラ部隊ってことよね、だから。

樋口:そうですよね。テロリスト集団や。

深井:まあそうね。ゲリラ部隊っていうものを作る。で、今回の戦争で負けたときに、武士って基本的に人口の10%しかいない。その10%しかいない武士っていうのは、本来であれば国を守ることができるから、彼らはそういう偉い立場にいる。けど、その偉い立場にいるやつらが、もうぼっこぼこに負けてしまったんですよ、今回。何なら逃げたんですよ。それを見て、現実的に考えて、武士だけで戦うっていうのは難しいと。いろんなやつの力を借りないといけない。で、いろんなやつの力を借りるってなったら、もう階級、身分は関係ないと。階級、身分を関係なく兵を集めて、そいつらの力を使って戦わないと勝ち目はないっていう考え方ですね。

楊:純粋に軍事力増強にフォーカスしてるんですよね。

深井:合理的な、

楊:彼はここら辺が得意かも。やりたかったのかもしれないね、やっぱりずっと。

深井:そうだね。

樋口:なるほどね。強くしたかったんや。

深井:とはいえ、階級的な考え方がないかっていったら、全く彼の中では濃厚にあるんですよ。単純に機能として必要だっていう話で、じゃあ農民を侍と身分が平等だと思ってるかって、全く思ってないわけ、晋作は。この農民ごときが、ぐらいで思ってるわけ。

樋口:あ、そこはそうなんだ。

深井:そうです。彼は侍のエリートなんで。そこら辺が伊藤博文たちと違うとこですね。っていうふうに思ってやってると。で、長州は長州で、もうただの攘夷論じゃなくて、攘夷開国なんで、基本的に最終的には国交を結びたいと思ってるわけ。だけど、こんなかたちで、今、虐げられたかたちで条約を結んでることに対しては断固反対しなければならないと思ってる、そういう考え方です。だから、この間に、実は伊藤博文と井上聞多っていう人をロンドン留学に送り込んでます、戦争をしながら(笑)。

楊:あともう3人ぐらいいた。何か長州ファイブっていうんですけど。

深井:長州ファイブ?それは誰が言ったんだ(笑)。
一同 (笑)

深井:絶対長州藩は言ってない(笑)。

楊:コウシュウ(?)、後世(?)ね。実は映画もなってるよね。

深井:あ、そうなんだ。長州ファイブ?

楊:うん。松田龍平が主演してますよ。

深井:そうなんだ。長州ファイブ。

楊:密留学だよね、確か。

深井:そう。密留学。幕府は認めてませんから。っていうかたちで送り込んでたりもしますと。で、奇兵隊が結成されるんですよ。もう民衆の力借りてやっていこうと。で、このときに、あとは商人の力とかいろんな人の力借りるわけ。白石正一郎とかそういう人がいて、エンジェル投資家みたいな話をしてたんだけど、こういうお金持ってる人たちとかも集めて、身分を問わない力量重視の軍隊を作って。で、これとまた別に正規軍がいます。奇兵隊と別に正規軍がいます。この正規軍を無理やり奇兵隊に入れたりはしませんと。ただ、正規軍にいる人たちの中で、奇兵隊に入りたいという人がいれば奇兵隊に入ってもいいこととしますと。あとは、それぞれ得意な武器で戦ってくださいと(笑)。

樋口:指定はしない。

深井:指定しないという、そういうものの中で、民衆もナショナリズムが芽生えてたらしくて、当時。イギリスから攻められてるとかアメリカから攻められてますと。そうなると、俺たちって何だ?ってなるみたい、やっぱ。

樋口:お国の感覚が出てきてたと。

深井:そう。それまでは、侍と自分たちみたいな考え方だったのが、第三者から攻撃されてるから、俺らでみんなで一緒みたいになってるわだよ、やっぱ。

楊:自分たち守らないとね。

深井:そう。あと、自分たちが頑張んないと任せてらんないっていうのもあったと思うし、そもそも村とか焼かれてる、自分たちが。だから、殺されるよりは殺しにいったほうがまだましじゃないですかって思う人たちが何人かいるわけですよ。その人たちが奇兵隊に志願して、実際に集まっていって、壊された砲台を再建したりとかして、次の彼らの、アメリカとかの来襲に備えるんですよ。備えるんだけど、別に来ないんです、もう。そのあと来ないので、奇兵隊って結成されたあと、長らくやることないんです。

楊:そう。しばらく、何年かね(笑)。

樋口:え?空回り?

深井:うん。空回りです。

樋口:(笑)

深井:やることなくて、結局そのあと正規軍と仲悪くなって、もう内紛しますもんね、この人たち(笑)。

楊:死傷者が出るけんかをします(笑)。

深井:死傷者出ます。

樋口:え?だって10年休みもらって、で、3カ月で戻ってきて、

深井:戻ってきて奇兵隊作った。そこまですごいんですよ。だけど、やることなかったんです、そのあと攻めてきてくれなかったんで。

樋口:何じゃそりゃ。

深井:(笑)。まあ一応、このあと活躍の場はありますけど、奇兵隊も。で、ここでもう一つ、めちゃくちゃでかいことが京都で起こるんです。八月十八日の政変っていうんですけど、それまで長州が日本の攘夷論をリードして、公家を動かして幕府に圧力をかけて政治を動かしてた。けど、実は孝明天皇は、ちょっと嫌いだったんだよね、長州のことが。

楊:ちょっと過激すぎると。

深井:これさ、すごい皮肉だと思わん?だって長州藩の人たちは尊王攘夷ですから、めちゃくちゃ天皇を尊敬してるんですよ。その天皇から、実は嫌われてたんですと(笑)。

樋口:切ねえ。

深井:切ないっすよね。

楊:一説には、もう本当に長州藩って、倒幕を、押せ押せどんどんだったんですよ。でも孝明天皇は、倒幕まではちょっと、

深井:考えてなかった。

楊:ちょっとアウトです(笑)。

樋口:だからそこが違うんだね。

深井:そう。だから、いきすぎてた。いきすぎてたし、何か偽の勅使とか出してたらしくて、

楊:そうそう。ちょっと調子に乗ってね。

深井:公家を動かして。そこら辺の公家動かして、偽の命令書みたいなの勝手に出したりしたのが天皇にばれて、

楊:激怒するんだよね。

深井:天皇が怒るんですよ。で、その怒ってる天皇に、今度、薩摩藩が忍び寄るよね。忍び寄るって言ったら何か悪もんみたいだけど、薩摩藩としては長州がいけいけどんどんすぎて、今度自分たちの立場が危ないなって思ってるわけ。俺らがリードしないといけない。だから長州を一回ばんって落としたいと。で、そこで天皇と結んで長州の排斥に成功しちゃうんですよ。

楊:京都から排除。

深井:そう。京都から、今までめちゃくちゃ活躍してたのに、今日からいきなり追い出されていくんですよ。しかも尊王攘夷派の7人の、三条実美とか岩倉具視とかの公家も追放されちゃう。で、長州藩落ちっつって、七卿落ちっていうんですけど、それで長州に追放されちゃう。で、長州は、いきなり一夜にして京都での基盤を失っちゃう。しかもそのあと朝敵認定されて、天皇の敵ですって言われるんです。

樋口:うわー、皮肉すぎる。

深井:皮肉。一番尊王してたのに、長州は、もう天皇の敵だと。

楊:ここはもう、完全に薩摩の政治力が相当やばかったんですよ。

深井:政治力ですね。

楊:ちょっと、あんまり薩摩のことを、そんな別に悪く言うつもりはないんですけど、政治力、あの国はやばいですからね。

深井:すごいですよね。だから西郷(さいごう)、西郷(せご)どんとかがすごいんですよ。

楊:とか、あと大久保さんね。

深井:大久保さんとか。

楊:もう切れ者中の切れ者ですよ。

深井:そう。で、長州藩内でも、今まで尊王攘夷派が幅を利かせてたじゃん。それがもう、びっくりするよね、追放されたからさ。やばい、やばいってなって、もともとの、俗論派っていうんですけど、その俗論派の人たちがまた出てくるわけ。まあ穏健派ですよね。その人たちが出てきて政治を支配するんですよ。支配するんだけど、ここにまた晋作が出てきて、晋作ってエリートだから、偉い人たちとすげえ結構フランクにしゃべれるわけ。まあフランクにはしゃべってないけど、

樋口:マインド的には対等、

深井:久坂玄瑞とかよりも全然しゃべれるわけ。

楊:ルートもあるしね。

深井:そう。で、そこで晋作が、わずか10日間で、この俗論派っていう人たちを追い出して、尊王攘夷に塗り替えるんですよ、一回。

樋口:え?相当すごい。

深井:そう。一回塗り替えるんですよね。しかも、自分、奇兵隊総督だったんだけど、政務座役っていうのにさらに昇進して、本当に中枢にいくんですよ、政治の。ど中枢にいくんですよ。で、これによって、がっちがちの過激派政権が誕生するんですよ。

樋口:すごい。

深井:もうむしろ、今までも過激派だったのに、本当にその反対派を完全排除してしまって、もうスーパー過激派政権がここで誕生してしまうんですよね。けど、実は何も問題が解決してなくて、追放されっ放し。しかも朝敵認定される。で、朝敵認定されたので、長州としては、このがちがちの過激派政権が薩摩にガチギレしてるわけ。薩摩藩のせいだ、全部、天皇は悪くないと。俺たちが尊敬する天皇は悪くない、全部薩摩藩が悪いっつって薩摩藩のせいにしてる。実際その部分あるし、薩摩と会津のせいだって言ってるのね。今でも仲悪いらしいですけどね(笑)。

楊:そうだよね。

樋口:いまだに?まあいいや、それは(笑)。

深井:で、このときに、京都まで攻め上ろうって言うんですよ、このがちがちの過激派である久坂玄瑞とかが。

楊:天皇をたぶらかしている悪いやつらを討とうよ、みたいな。

深井:そう。天皇のそばにいて天皇をたぶらかしてるやつらを全員ぶっ殺すっていって、京都まで攻め上ろうと。でも晋作は、その中間ぐらいで、攻め上るのはちょっとやばいと。さっき、すごく位が上がったって言ったじゃん。位が上がった人が冷静に考えると、攻め上っちゃやばいんですよ(笑)。本当に朝敵になっちゃうし、それはやばいから、ちょっと落ち着けと。勝機があるんだったら行っていいけど、勝機がないのに行ったらやばいだろうと、合理的な判断し始めるわけ、晋作は。

楊:ポジションに応じてね(笑)。

深井:ポジションに応じてね。

樋口:そのとおりですからね。

深井:そしたら、いや、おまえ、今まで一番過激なこと言ってたのに、出世していきなり何言ってんの?みたいなこと言われ始めるんですよ。

樋口:(笑)

深井:だし、もともとの穏健派とか俗論派からは、おまえ、すごい過激だよねって思われてるわけじゃん。だから両方から責められるんですよ、この時期の晋作って。エリートゆえの、だからあれだよね。この人がエリート出身だから出世しちゃって、若いながらもすっごい出世しちゃって、けど、ほかの人たちを納得させられないわけ。彼も若いし、まだそんなスキルも度量も、人徳も多分ないんですよ。だから全然納得してくれないわけ、彼の周りの人たちが。晋作が何言っても聞いてくれなくて、これに対して、また晋作が逆ギレするもんね。

楊:そうよね。自分がめっちゃ頑張ってるのに、両方からああだこうだ、心にもないことを言われて、うわ、みたいになる(笑)。

深井:そう。それで、この人の悪口面白いんだけど、おまえらが言ってるやつ、めちゃくちゃ上っ面だよねみたいな、本当に考えたらそんなことしねえわっつってキレてます、晋作が(笑)。それで、すごいここでもやっぱ仲が、悪くはないんだけど、意見が割れてる状態ね。

楊:落ち込むよね(笑)。

深井:落ち込んで、先に溺れます。

樋口:またそういうこと?

楊:(笑)

深井:先に溺れて、土佐の脱藩した中岡慎太郎っていう人と、龍馬と仲いい人ね、一緒に暗殺された人ね、中岡慎太郎と、島津久光、薩摩の藩主、暗殺しようとします。

楊:違う国の首相を暗殺しようって(笑)。

深井:そう。だから、さっき止めてたのに、また振り切れて暗殺しようとするみたいな、このこれね。

楊:やけくそになってたんだろうね(笑)。

深井:やけくそなんです。だから彼は、彼のエリートである立場と彼の本心が、やっぱ常に違うんだよ。だから本当に、ちょっとそのたががはずれると、すぐ暗殺しようとする。まあこれはすぐ、テロをしようとしたんですけど、いろんな人たちから説得されてあきらめます。で、誰にも理解されない中で、いろいろ自分なりに頑張ってるわけですよ。で、いろんなところ、ほうぼう回ってやっていって、持ち場から離れたらしいね。持ち場から離れたら、仕事放棄したと思われて、

楊:彼はそんなつもりはないんですけどね。

深井:そう。投獄されちゃうんですよ、今度は。

樋口:何かいろいろある(笑)。

深井:(笑)。野山獄に。

楊:まさに師匠が入ってた牢屋ですよ。

深井:そう。彼は説得するために多分京都か何かに行ったんだけど、藩から、彼らと合流しに行ったと思われたんだよね、久坂玄瑞たちと。それで投獄されちゃう。

樋口:しかも投獄先が、

深井:しかるべき役職にあったのに何しとんねんっつって。で、今までの、家が持ってた石高とか、今まで得たすべての地位、そして、今まで殿様からもらった衣服とかもすべて没収される。だからいきなりゼロになるんですよ(笑)。

樋口:ジェットコースターやな。

深井:ジェットコースターですよね。で、ここで松蔭が入ってたところと同じ野山獄っていうところに入るんですけど、ちなみに、ちょうどこのとき妻にはおなかに子どもがいます。

樋口:うわ、プライベートでもいろいろある。

深井:(笑)

樋口:すげえいろいろある。

深井:で、ここで歌を読みます。「先生を慕うてようやく野山獄」っていう(笑)。松蔭と同じ、皮肉だよね、だから。先生を慕って、ようやく野山獄まで来たよという皮肉なんだけど、かつてエリートとして上海視察までして政務座役までいった自分が、すべてを失って囚人になっていると。この状況で、また彼はすごく、やっぱ精神を保つのが限界に達するんだけど、読書と詩作にふけるんですよ。

楊:徹底的にこの時期は、自己に向き合うようになるんですよ。

深井:そう。めちゃくちゃ本読んで、めちゃくちゃ詩を書くの。

楊:毎日本を読んでます。

深井:そう。で、日記も書くし。

樋口:あのとき言われたことですからね、松蔭先生に。

深井:そう。で、松蔭から、死して不朽の見込みあればって話聞いてたんじゃん。

樋口:あ、あった、その言葉。

深井:ああいうのを多分思い出してんだよ、こんときに。

楊:それで日記に書いたりとかね。

深井:死にたかったと思うよ、プライド高いからね。けど、生きて何かしてから死んでやるって思ってたと思う。で、内観して、自分で、獄に入れられていろいろ考えたんだけど、やっぱり死にたいと思ったと思うんだけど、国を思う心っていうのは変わんないっていうことがわかったと。だから頑張ろうって思ったらしい、本人は(笑)。で、周布政之助って、ずっと目をかけてくれてる政府の重鎮ね、この人が来て激励してくれたんだって。だけど、これによって周布政之助は失脚、謹慎するらしいです。

樋口:激励したことによって?

深井:そう。だから結構、本当晋作ってひどい立場にあったんだと思います。

樋口:激励するだけで失脚させられるぐらい。

深井:うん。

楊:当時は、どうだったかな、萩の中でも藩論が俗論派になってたかな。

深井:もう政治的な揺らぎがすごい。もうどっちに振れてもおかしくない、常にどっちかに、

樋口:そうですよね。何かもう、ぐらぐらしてますよね、いろんなところが。

深井:そう。で、最大の自分の理解者であった松蔭の意向、書き残したものの編纂とかをしてるんです、この時期。

楊:松蔭のお兄さんから頼まれるんですよ。

深井:そう。頼まれるんです。松蔭のお兄さんから、よく理解してくれてるだろうから作ってくれっていって、

樋口:編纂っていうのは文をまとめるみたいな、

深井:まとめる。まあ途中で結局やめちゃうんですけどね、晋作。

楊:時間がなくて。

深井:時間なくてやめちゃうんだけど、だから、とにかく松蔭とかとすごく向き合ってると思う、この時期。ここに入れられた、同じ獄に入れられた松蔭の気持ちを考えたりだとか、いろんなことを多分思い返したりとかして、精神状態を保ってる状態です。

楊:すごいよ。時々本当に泣いたりとかしながら、またちょっと静かになったりとか。

深井:そう。このときの日記があるんで。

楊:そうそう。日記が最高ですね(笑)。

深井:すごいやっぱ大変そう。すごい大変そう(笑)。いつもプライドだらけの晋作と、ちょっと違う書きっぷりです。

樋口:それってやっぱ、自己とずっと向き合ってる感じなんですか。

深井:向き合ってもいるし、やっぱ悔しさもあるんですよ、彼の中で。俺はすごく国のためを考えて動いてるのに、誰も理解してくれないっていう悔しさであるとか。本当に誰にも理解されてないから。で、何でこんなこと起こるんだろうっていうのも考えてたりしてるし、じゃあどうすればいいんだろうっていうのもわかんないしみたいな感じで、すごくやっぱ、すっげえ長文書いて、7000字ぐらいの。

楊:そうね。書いてるよね。

深井:ある日、いきなり7000字ぐらい書いてるわけ。だからそれは、ここで仮に死んだとしても、後世の人に、自分が本当はこういうことを考えてたんだっていうことをわかってほしいっていう思いで書いたって書いてある。だけど、お父さんが結構偉い役職にいるから、お父さんがいろいろ頑張ってくれて、自宅の座敷牢に移るんですよ。松蔭のみたいな感じで自宅蟄居になるんだよね。まあ蟄居と座敷牢違うと思うけど、座敷牢になって、したらお父さんが、すごい温かく迎えてくれたんだって。それで号泣したらしい。

樋口:やっぱここでまた父が出てくるんやな。

深井:そう。そこで父がね。だから父親は、本当愛情持ってたんでしょうね、晋作に。厳しくて封建的な人だったけど、すごい多分晋作のことを愛情深く見てたんだろうね。

楊:そうでしょうね。一人息子だしね。

深井:一人息子だしね。籍はずすんだけどね。晋作って、高杉家から籍はずして谷っていう名字に変えて、もう迷惑かかんないようにすんだけど、けど父親は、すごく、やっぱり一人息子だからいろいろ思うことあったでしょうね、父親も(笑)。

樋口:何か投獄されてから、昔の松蔭先生とか父親とか、そっちに帰ってる感覚がありますよね。

深井:そうなんですよ。だから上海に行っていろんなインプットして、いろいろ、ばーんって暴発すんだけど、うまくいかないんだよ、結局。で、奇兵隊作ってみたりすんだけど、何もやることないわけ(笑)。

樋口:で、政府の中核いってとかあるけど、

深井:中核いくんだけど、やったけど失敗してるんですよね。で、最底辺まで落ちてるじゃん、囚人まで落ちて。で、囚人になって、やっぱいろいろ考えるんです。で、そのときに彼の精神を支えたのは、やっぱり吉田松陰の言葉だったと思います。

楊:そこでまた、もう一回松蔭先生と出会ってると思いますよ。

深井:そうだと思う。野山獄で。

樋口:何となくですけど、原点回帰というか、昔のあのときに思ったこととかを思い返してる感覚が伝わってくるな。

深井:そう。一方で、長州の状況は最悪なんですよ。このあと朝敵認定されて、しかも幕府から、征長軍っつって、長州を討つための軍隊が派遣されるんです。で、同時期に、アメリカとかイギリスとか攻撃したじゃん。あの人たちも今度また来るからさ。

樋口:まじ四面楚歌じゃないですか。

深井:そう。全員からめっちゃ攻められる状態になるわけ、長州って。あんだけいけいけどんどんで京都政界を動かしてたのが、もう全方位から攻められて超絶体絶命。で、晋作は牢屋の中なんです。

樋口:やばい、やばい。

深井:そう。ここから先が、晋作が歴史残るアクションが、ここから先に起こる感じ。

樋口:うわー。ちょっとじゃあそろそろお時間なので、続きは次回ですかね。

深井:はい。

楊:はい。

樋口:よろしくお願いします。

楊:ありがとうございます。

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