#92 獄中からの贈る言葉 ― 吉田松陰との涙の決別

【ポイント】
①松下村塾を出た高杉晋作は晴れて江戸デビューを果たすが、早速人生に迷う。
②言動がエスカレートしていく吉田松陰が周囲から見放される中、高杉晋作は甲斐甲斐しく師の身の回りの世話に奔走した。
③獄中の吉田松陰から贈られた手紙で説かれた「死生観」が、後の高杉晋作の人生の要所要所で楔となって効いてくる。


樋口:さあ、ということでございまして、前回までは、吉田松陰が、もうどれだけ影響を及ぼしたかみたいなところから話していって、ちょっと僕、手紙が、あれは結構きましたね、前回。

深井:あれ感動しますよね、手紙。

樋口:うん。で、そんな高杉晋作が江戸に行ってから。

深井:江戸に、ついに念願かなって、仲間たちと同じ江戸に行くことができたと。で、そこで、まあ勉強のために行くんですよ、基本的に。今で言ったら留学的な感じですよね。それで、日本橋にある大橋訥庵っていう人の私塾に入るんですよね。ここは、攘夷論を、もうみんなで激しくぶつけ合ってるような、すごい当時大人気の私塾だったんですけど、晋作はそこに入ってたった2カ月で辞めちゃいます。

樋口:え?何で?

深井:理由は一応不明なんだけど、一説によると、新入生が玄関番させられるらしくて、まあ当たりませだよね。今でもそんな感じじゃん、日本って。だけど当時、その当たり前のことさせられたら、俺は玄関番とかの稽古のために来てるわけじゃなくて勉強のために来てるんだから、こんなとこにいないっつって辞めたらしいです。

樋口:とがり腐ってるじゃないですか。

深井:とがり腐ってる(笑)。

楊:そりゃあ松下村塾で、あんな最高の学び場を体験したのもあると思うよね。

深井:そうね。松蔭とああいう勉強してたら、いきなり普通の学校いったら、

楊:つまんねえよな(笑)。

深井:だめだよね。で、松蔭に向かって、もうばかばっかりですみたいな手紙を書いたりする(笑)。
一同 (笑)

樋口:いいね、いいね。いいよ、晋作。

深井:ここには、ばかしかいませんみたいな、

楊:このあと、ちょいちょいこういうディスりが出てきます(笑)。

樋口:いいよ、いいよ。

深井:こういう若さ、俺も大好きで(笑)。
一同 (笑)

樋口:いいね、いいね。

深井:あと、尊王攘夷の精神的というか思想的中心地にあるのが、水戸学っていうのがあるんですけど、それって水戸藩のところから出てきてるんで、その水戸藩の人たちって、このジャンル、要は攘夷のジャンルで言うシリコンバレーみたいな人たちなんですよ。ベンチャーで言ったらシリコンバレーみたいな。で、そのシリコンバレーの人たちもディスってるもんね。水戸藩のやつらも全然大したことがないっつって(笑)、松蔭にそれを送ってるみたいな。

楊:ちょっと当時の話を言うと、当時って、いわゆる攘夷志士みたいなことってあるじゃないですか。今も攘夷志士たちっていうふうに、攘夷志士ってすごいよねみたいな感じにイメージなってるんですけど、実際のところ、大半が実はチンピラなんですよ。要は口だけ。

樋口:(笑)

楊:要は、黒船が来て、世間がこういうふうに、今の感覚で言うと右寄りに寄ってると。俺、攘夷志士だから偉いんだぞみたいな、俺、攘夷志士だから、おまえ、ちょっと金よこせよ、スポンサーになれよみたいな、そういうやからがめちゃくちゃいたんですよ。で、晋作も松蔭も、そういうやからって徹底的に軽蔑したんですよね。こいつらは大口ばっかりたたいて全然何もやらないと。

樋口:だって陽明学学んでますからね。

楊:そうそう。実際戦争なったとき、こいつらは絶対役に立たないぞみたいな感じで、誇りを持って勉強してたんですよね。だからそこで、この塾でも、もしかして晋作は、そういうことを感じたかもしれない。こいつら、口めっちゃでかいけど、大口たたくけど、絶対こいつら実がともって(伴って?)ないよって、もしかして感じたかもしれない。

深井:そう。で、次に、名門である昌平黌という幕府が作っている学校があるんですけど、国立大学みたいなやつが。そこに次は入るんですけど、全国のいろんなところの秀才がそこで集結してるところなんですけど、そこに入ってめっちゃ遊びまくったらしいですね(笑)。
一同 (笑)

樋口:まじ大学デビューみたいな***じゃないですか。

楊:確かにね。

深井:(笑)。学校の規則破りまくって、いつも酒楼に行って酒飲んでたらしい。

樋口:(笑)

楊:飲み会ばっかり(笑)。

深井:そうそう。その頃の日記は、ちょっと俺、何したらいいかわかんないとか、俺の心は今乱れているとか、学問の方向性がわからなくなったみたいなことを、また松蔭に向かってね。だから、そういうことを言える人なんだよ、松蔭って。弱音吐けるんでしょうね。

楊:ああ、そうね。本当だね。

深井:もうどうしていいかわかんないですみたいな(笑)、ことを松蔭に向かって書いて、多分松蔭が、また返してくれてるんだろうね、何かを。だからエネルギーがあるんだけど、松下村塾でみんなでエネルギーを培養してから、いざ檻から解き放たれて、江戸に、ばんってみんなで行ったけど、どうしていいかわかんないんだよ、みんな。

楊:いろんな多分、人も出会ったし、

深井:若いしさ。

楊:誘惑もあっただろうし。

深井:そう。誘惑に負けまくっとるしさ(笑)。
一同 (笑)

楊:何か、かっこ悪いところをさらけ出せるっていいよね、そういう関係。

深井:いいね。チームワークが、ここ、心理的安全性がありますよね。

樋口:そうね。吉田松陰のところが安全だったからこそ、そうじゃないとこに行ったときに、ちょっと戸惑ったかもしれないですね。

深井:そうでしょうね。だと思います。違和感がすごかったんだと思う、多分、普通の学校にいってね。で、この昌平黌に入学した1カ月後に、松蔭が野山獄に投獄されるんです。これは松蔭の回で言いましたけど、彼は、老中、間部詮勝っていう人の暗殺を企てるわけ。

樋口:はい。あった。

深井:暗殺を企てて、長州藩政府に武器くれって言ったよね(笑)。

樋口:(笑)。言っちゃうんですね。

楊:やばいよね。堂々と、俺テロしますんで武器くれ、みたいな(笑)。

深井:そう。で、驚いた政府は、彼を野山獄に入れたよね。

樋口:そりゃそうや。
一同 (笑)

樋口:自白というか何というか(笑)。

深井:そう。で、ここに前後してなんですけど、どういうことがじゃあ江戸で起こってたかっていうと、ペリーから開国を迫られてますと、まず幕府が。幕府は、でも単独で開国とかいうことをする自信がないので、いろんな人を集めて、いろんな人の意見を聞きましたっていう話をしましたよね。けど、コンセンサスは結局得られませんでした。で、その中で、どうするってなるんだけども、一番欲しいのは、やっぱ朝廷の許可があったらまずいいよね、天皇からの。

楊:それを一応、まとめる一つのエネルギーにしたかったんですよ。

深井:そうそう。けど、その当時の天皇である孝明天皇っていうのがいるんだけども、孝明天皇は、ものすごい攘夷論者の人で、開国絶対反対な人なんですよ。全然許してくれないわけ。で、幕府は朝廷の許可がずーっと得られないまんまの状態で、日米修好通商条約を結ぶことになってしまうんですよ。

楊:もう板挟みの状態で。

深井:板挟みですよ、彼ら。

楊:決して優秀じゃないとは思わないんだけどね。しょうがないと思うけど。

深井:そう。当時、腐敗はしてましたけど、上層部にいくつか、やっぱりすごく優秀な人たちは頑張ってるし、その人たちをちゃんと上のほうに取り上げてやれてるんだけれども、彼らは、ちゃんと国に、国というか徳川家について考えて動いてるんだけども、やっぱりシステムの敗北があって板挟みになって、もうどうにも動くことができない。で、前、紹介した老中の阿部正弘さんは、もう心労で、ちなみに亡くなってしまうんですよね。

樋口:あららら。超優秀だった人ですね。

深井:超優秀だった人は、もう本当につらいですっていって、老中辞めたあとにそのまんま死んじゃうんですよ、ストレスで。で、そのあとに、この混乱した幕府が、反動で、今度は井伊直弼っていう人が出てきて、この人が、老中の上の役職である大老っていう非常職に就くんですよ。この非常職に就いて、国政を思いっきり一気に動かしていく。それで不平等条約を勝手に結んじゃう。

楊:最後まで、天皇の許可を得るために結構粘ったんだって、井伊直弼は。でも最終的に、やっぱりちょっと、もうちょっと今は潮時だっていって、無理だって結んじゃったっていうのが、説ある。

深井:そう。で、結んだ結果何が起こったかっていうと、やっぱり朝廷の許可も得てないのに不平等な条約を結ぶとは何事かということで、全国でキレる人たちが出てくる。

楊:(笑)

樋口:まあそこも出てくるか。板挟みすぎるな。

深井:そうです。その筆頭が吉田松陰です。吉田松陰はそれに対して、この幕府っていうのは、もう非国民というか、むしろ国を害するものだと、これはもう絶対に倒さないといけないってなってくるわけ、この中で。こんな幕府の弱腰外交をしてたら、日本は、もう外国の属国になってしまうぞと。

楊:今もありますよね、たまにそういう雰囲気が流れるの(笑)。

樋口:ありますね。

深井:属国にしようとまでは思ってないんだよ。ただ、確かに高圧的に自分勝手なことを言ってます、アメリカは。アメリカとかほかの人たちはね、ヨーロッパの国々は。その人たちに対して松蔭は、朝廷を中心とした優秀人材を集めて新政府を作るべきだと思ってる。だから明治政府と一緒だよね、そこは。で、間部詮勝殺そうとしてる。で、捕まって野山獄に入れられる。で、野山獄に入れられたあと江戸まで連れていかれて、井伊直弼っていう大老が大弾圧するわけ。

楊:攘夷派を。

深井:攘夷派の人たちを大弾圧した結果、いろんな罪人が江戸に集められて尋問を受けるんですよ。で、吉田松陰は全く別の内容で、間部詮勝暗殺と全く別のことで呼ばれてるんです。これもラジオの中で話しましたけど、攘夷派のすごいキーパーソンの人と、おまえ、結託した?みたいな、

楊:ウメハマウンピョウ(梅田雲浜?)だったかな。

深井:そうそう。っていう人と結託しましたか?みたいな疑いで言われるんだけど、いや、してませんと。本当にしてなかったんです。してなかったんで、してないんだねって、じゃあもうこれで解散だねってなったときに、だけど俺は老中を暗殺しますって言う(笑)。
一同 (笑)

樋口:そこでも言うんやな。

深井:そこで言った結果、

楊:言っちゃうんだよね。

深井:そう。言った結果、今の小伝馬町駅の近くの獄につながれるんです、彼は、江戸の。

樋口:言わんかったらいいのに(笑)。

深井:そう。っていうことが、晋作が昌平黌に通っているときとかに起こってるんですよね。

樋口:揺れ動いたな、いろんなことが。

深井:そう。で、この間、手紙で晋作たちにも松蔭からきてるわけ。何がきたかっていうと、一緒に間部詮勝殺そうぜっていう手紙をもらってるわけ。決起しようと、もう今がそのときだ、みたいな。だけど晋作も、桂小五郎とかも、あと久坂玄瑞とかも、もう江戸に行っていろんな情報を得てるし、結構冷静になってるわけ、松蔭からちょっと離れてるから。

樋口:あらら、すごいね。

深井:そう。よくも悪くも熱が冷めてんだよ、ちょっと。そのときに松蔭だけ、もうずーっとヒートアップし続けてるから、やばいってなってるわけですよ。ちょっとこいつやばいなって(笑)。
一同 (笑)

深井:先生、ちょっとやばい。

楊:先生、ちょっと落ち着いてくださいな(笑)。

樋口:(笑)

深井:落ち着いてほしいと。今、決起してもどうしようもないと。江戸でいろんな情報得てファクト認識ちゃんとした結果、これ、どうしようもないと思うから、今じゃないんだっていう話をして、血判状を出すんですよ。僕たちも本気だよっていって血判状を出したら、松蔭が超キレるんですよ。

樋口:(笑)

深井:ふざけるなと(笑)。

楊:おまえらの志はどこにいったんだっつって(笑)。

深井:おまえらはその程度の人間なのかと、もう絶交だってなるんですよ(笑)。

樋口:(笑)

深井:あんないい手紙で送り返したのに、もう、すぐ絶交だとかいって、

樋口:いやいや、送り出すとき結構涙もんやったけどなあ。すぐ絶交するんや。

深井:そう。彼も激してるときと冷静なときがあるのでね、松蔭も。みんな長所があるから、みんながだめだって決めつけることはしないけど、何で反対するんだろうって言ってるんですよ、彼は。わかんないと。

樋口:まあね。悔しかったんでしょうね。

深井:そう。可能か不可能っていうのも、やってみないとわかんないでしょと。崖の高さは飛び降りてから理解しようぜっていうスタンス、松蔭は(笑)。

樋口:(笑)

楊:確かに、それ面白いね。その例え、相当面白いね。

深井:そう。これ本に書いてあったんですけどね。わかりやすいなと思って。

樋口:死ぬぞと、

深井:そう。

樋口:死ぬぞと言ってるんですね、晋作たちは。

深井:そう。で、晋作も、ちょっと若干引いてて、ほかの人宛の手紙で、松蔭先生、もう少し思慮ある人間だと思ってたんですけど絶望しましたっていう手紙書いてるんですよ(笑)。
一同 (笑)

楊:ついていけなかったんだろうね。

深井:ついていけない、もう。距離も離れてるし。やっぱ心理的距離と物理的距離って、ある程度ちょっとあるからさ。

樋口:あるでしょうね。

深井:リモートワークで、ZoomとかSkypeとか使えないからさ(笑)。

樋口:そうですね(笑)。しかも、こっちは都会にいますからね。

深井:そう。都会にいるから。で、桂小五郎とかってすっごい冷静な人なんですよ。桂小五郎とかと一緒にいるから、その影響やっぱ受けちゃうんだよね。

樋口:なるほどな。

深井:面白いよね。これ、あるあるなんだよね。ベンチャーとかでも、本当これ、よくあるから(笑)。

樋口:まじでおもしれえ。

楊:別に松蔭悪いっていうわけじゃないんだけど、そういう性格なんだよね。

深井:そう。こういうことよく起こるんだよ(笑)。

楊:(笑)

樋口:面白いな。

深井:面白くなってまいりました。

樋口:面白い、面白い。

深井:それで獄中にいながらも、松蔭は、ずーっと何ができるかっていうのを考え続けてるわけ。いろんな人に手紙出して、こういうことをしてくれとか、こういう情報をくれみたいな感じで。ちなみに一時期、もう松蔭先生には手紙出すのやめようって、みんなで(笑)、

樋口:(笑)

楊:そう。あったね。

深井:本当は、みんな江戸から松蔭にいろんな情報を渡してたんだよ。松蔭に、こんなこと起こってます、こんなこと起こってますって言ったら、松蔭がどんどん激していくから、ちょっともう、今、これ以上この人に情報を与えたら、

楊:そう。情報を与えないでおこう(笑)。

樋口:(笑)

深井:そう。やばいから、一回ちょっと手紙出すのやめようってなって、それもあったと思う。

樋口:(笑)。たき火に燃料くべるのやめようと。

深井:そう。やめようと。

樋口:燃えすぎると(笑)。

深井:そう。もう辟易してたんだよ、弟子はね。

樋口:ああ、おもしれえ。

深井:けど、獄中で松蔭もずーっといろんなこと考えてて、自分についてきてくれる人もいるわけ、弟子も。

楊:2人ぐらいいたね。入江兄弟。

深井:そう。入江杉蔵兄弟とかは、それにすごいついてきてくれてるんだけど、そのついてきてくれた人も、どんどん窮地に追い込まれていくわけ。それを見て松蔭も、すごいやっぱり困ったりしてたらしいですよ。で、結果的に松蔭は、やっぱ孤立していくんですよ。どんどん彼は突っ走りすぎて、

樋口:(笑)

深井:一人孤立していくんですよ。で、結構みんなから見放されるわけ、この時期。江戸の獄中につながれてるときとかは特に、もうみんなから見放されていくんだけど、この見放されていったときに、晋作が、やっぱり松蔭先生を忘れられなかったんでしょうね、世話をするんですよ。

樋口:晋作―。

深井:(笑)。松蔭が牢番からいじめられないように、賄賂を渡せるようにお金渡したりとか、いろんな人に手紙渡せるように筆記用具を持ってきたりだとかいろんなことを、面会はできなかったんだけど、させてもらえなかったんだけど、いろんなことをするわけ。

楊:世話をするもんね。

樋口:美しいね。

深井:いろんな世話をするんですよ。

楊:ちょっと罪悪感もあったんだろうね。

深井:罪悪感もあったと思う。松蔭が決起しようって言ってることに対して、ついていかない選択をした自分は本当によかったのかっていうのを、多分ずーっと考えてたんだと思う。

楊:まじめだよね。本当にまじめ。

深井:まじめだね。ちなみに長州藩の重役も晋作に、もう松蔭とはかかわるなって言って、

樋口:(笑)

深井:全員総出で(笑)、松蔭には、もうかかわったらだめだし、

樋口:はぶられまくってんじゃないですか。

深井:そう。

楊:陽明学を勉強しすぎ(笑)。

樋口:(笑)

深井:そう。これ、ちょっとどこまで本当かわかんないですけど、僕が読んだ本の一冊の中に、久坂玄瑞もだいぶ見放したらしいですね、松蔭。逆に久坂が見放したのを、晋作が何かかわいそうになったらしくて、松蔭のことを。これが、どこまで本当かわかんない、もう想像の域なんだけど、それで世話をし始めたというふうにいわれていると。

樋口:何かでも、ちょっと美しいですね。

深井:そう。けど絶交されとるじゃん(笑)。絶交されてるんだよ。絶交されてるけど、やっぱ世話をし始めて、それで松蔭から、ようやく心が落ち着きましたっていう手紙がくるんですよ。

樋口:絶交が解かれた?

深井:解かれるんですよ(笑)。

樋口:ああ、うれしい、何か。たまらん、俺。こいつらやばいっすね。
一同 (笑)

深井:かっこいいっすよね。かっこいいというか、

樋口:たまんないっすね。

深井:未熟なところがいいよね。

樋口:かわいい。

深井:かわいい。そう。

樋口:こう言ったらちょっとあれやけど、偉人に対してあれやけど、

深井:いや、本当、みんなそんな感じでやりながら、松蔭はそういう過激なことをしてるんだけど、久坂玄瑞たちも過激なわけ。十分過激。松蔭が本当にいきすぎてるだけで、みんな過激な中、実は晋作にだけストッパーがかかってるんですよ。晋作は、とにかく父親から、まじでおまえ、変なことすんなってずっと言われてるわけ。

樋口:あ、父親が出てくるんや、ここで。

深井:ずーっと言われてるわけ。父親から、まず松蔭とおまえはかかわってはいけないし、絶対に変なことをするなと。それは、まず私に、この高杉家にすごい迷惑がかかるぞと。あとは毛利家にめちゃくちゃ迷惑かかるから、絶対するなって言われてるわけ。

楊:まあ正しいよね。

深井:正しい。そのとおり。

楊:正しい。ちゃんとした父親(笑)。

樋口:それはそうか。

深井:で、それを、晋作は板挟みなんですよ。またここで、さらに板挟み構造があるわけです。久坂玄瑞、松蔭、父親、この間の中で、ずっと揺れるんですよ、彼が。どうするんだろう、俺は、どうすればいいんだってことになっていくわけ。で、この揺れてる中で、久坂玄瑞に対しての手紙に、父親のこと尊敬してんだけど、この手紙は、父親がすっげえしょもないこと言ってくると、しょうもない父親が俺を、しょうもないことを言って止めてくると。これは自分の考えと全く違うんだけど、何せ僕の父親だから、聞かざるを得ないっていう手紙を書いてるんですよ。でも久坂とかは、そういう父親がいないからさ。エリートじゃないから、彼らはそんなに。

楊:お医者さんの家だもんね。

深井:そう。まあ、お医者さんはお医者さんである程度エリートだと思うんだけど、その時代の。やっぱりもっと下の位の人とかもたくさんいる中で、もっとがんがん自由に動けるわけですよ、ほかの人たちは。けど晋作は、やっぱり君主に対してとか父親に対しての親不孝っていうのは、もう絶対にやってはいけないことなの、彼にとって。

楊:儒教の基本だもんね。

深井:そう。で、彼は、その儒教を死ぬほどインストールしてるから(笑)、武士としてね。武士のエリートであるアイデンティティーの一つがそれですから、そのアイデンティティーと、芽生えてる、新しい松蔭から受け取ったアイデンティティーの、この板挟みなんですよ、彼の中で。超人間臭くない?(笑)。

樋口:むちゃくちゃドラマティックっすね。

深井:ですよね。俺、ここが好きなんすよ(笑)。

楊:この板挟みで作られる葛藤を、彼は一生、これ、続いていくんですよね。これが彼の人間的な魅力を醸し出していく。

樋口:父親、そして松蔭、自分、国みたいな、いろんな要素が絡め合って身動きが取れない。

深井:そうですね。

楊:なかなか振り切れないところがいいじゃないですか。

深井:そう。振り切れない。

楊:松蔭とか振り切れてるけど、彼は人間として、そこで悩むんですよ、まじめにも。

深井:だから、すごい破天荒なのに、本当にどっちとも取れないっていう。どっちとも、だから、父も松蔭もどっちとも。それは生みの親と人生の師みたいな、この間で揺れる。そして、自分が信頼していて、松蔭の手紙で一緒におっきいことをしなさいと言われた仲間たちは、どんどん過激化していく。その中で、ずっと父親のストッパーが入るっていう。だけど、自分はどっちかっていうと、タイプとしては思いっきり、一番過激なタイプなわけ、彼は。久坂玄瑞より過激なんだよ、本当は彼は。

樋口:本質はね。

深井:本質的には。この板挟みですよ。面白いですよね(笑)。

樋口:面白い。

深井:ちなみに、このときに、しかもこのときに、松蔭と手紙をやり取りしてるんですけど、急に松蔭から手紙がくるんですよ。晋作さあ、と。君がすごく昔に、男ってどういうとき死ねばいいのかっていう質問、俺にしたよねっていう手紙がくるわけ(笑)。そういうやり取りがあったんでしょうね。

楊:悩み相談っていうかね。

深井:そう、過去。晋作は、もうとにかく武士として死のうとしてたからさ。このときもそうなんだけど、どうやって武士として、男としてかっこよく死ねばいいのかっていうのを、やっぱり質問したんだよね。そんとき多分わかんなかったんでしょうね、一緒に考えても。どうだろうねっつって。それが、この獄中にいる松蔭が考えたらしいの、それを。で、それわかったと、ついに俺の中で答えが出たっていう手紙がくるんですよ。それに書いてあったのが、死して不朽の見込みあれば、もういつでも死ぬべしと。つまり、死んで、それが朽ち果てない功績となるのであれば、いつだって死ねばいいと。ただ、生きて大業の見込みあらば、いつまでも生くべしって言ってるんです。つまり、生きていて、そのあとの人生ででっかいことをする可能性があるんだったら、いつまでも生きろっていうことがわかったよって言ってるんですよ。これがめちゃくちゃあとで利いてくるの。

楊:そう。利いてくる。

樋口:これは結構、

楊:要するに、生きるか死ぬかはどうでもいいんだよ。生死に関係なく、一番大事なことは生死の外にあるんだっていうことを言いたかったんですよね。

深井:そう。それですごい、これが、あとで話しますけど、晋作の、もう要所要所の決断に生きてくるんですよ。

樋口:きた。鳥肌ポイントっすよ、ここ。

深井:そうなんですよ。

楊:だって当時の志士とかは、何かあると、すぐ死のうとするもんね。

深井:そう。すぐ死ぬ。

楊:何か死にすごくこだわってて、いかにかっこよく死ぬか、いかに死を華やかにするかってこだわってるんだけど、それに対して松蔭は、違うんだよと。

深井:そう。だから久坂玄瑞とかがどんどん早めに死んでいく中で、晋作は、すっげえすぐ死にそうなキャラなのに、死なずに残って結構でっかいことするんですけど、それがなぜできたかっていうのは、このときにいきなりきた、このメッセージのおかげなんじゃないかなって思う。で、松蔭は松蔭で、自分が獄につながれて、実は彼は、自分がまさか処刑されるとは思ってはなかったんだけど、獄中でいろいろ、やっぱやることないし、ずっと考えてるわけですよ、いろんなことを。で、考える中で、そういえば、あんとき晋作があんな質問してきたなみたいな、多分思ったんでしょうね。で、時間あるから考えて、思いついたことを伝えるという、これが人生にまた影響を与えていくという、この松蔭のDNAが、もうばんばん利いていくんだよね。

楊:松蔭も、この手紙の中で、陽明学のさらに過激バージョンがあるんですよ、実は。李卓吾っていう、また王陽明よりも、ちょっと過激な思想家が出てきて、その書物を読んで、この結論、このアドバイスを高杉晋作にしたんですよね。

深井:あと、恐らくこの時期だと思うんですけど、進路についてのアドバイスもしてて、まず遊学をちゃんと済ませなさいと。今、江戸遊学してるよねと。それちゃんと済ませなさいと。で、帰って結婚して役職に就けと。それで、もうひたすら、まず両親を安心させてあげなさいと。

楊:儒教の考え方にのっとってるよね。

深井:そうですね。で、藩主に仕えて信頼を勝ち得ろと。で、信頼を勝ち得たら、正論正義を主張して失脚しろと。

樋口:失脚?
一同 (笑)

樋口:そこまでずーっといいこと言ってたのに、失脚?

深井:失脚しろと。

楊:捨てろと、全部(笑)。

深井:全部捨てろと。で、人に会うなと。

楊:(笑)。は?

深井:人に会わずに死ぬほど勉強しろと。そして無私無欲の人になったら、その10年後に、おまえは爆発するみたいなキャリアアドバイスをしてる。

樋口:むちゃくちゃなアドバイス。何じゃそりゃ(笑)。
一同 (笑)

深井:むちゃくちゃなアドバイスしてるけど、これを再現するんだよ、あとで。

樋口:えー?(笑)

深井:それもちょっと覚えといて。

樋口:まじか(笑)。

深井:晋作、これをちゃんと聞いたんだよね。だから、本当にちゃんと言うことを聞いてるわけ、晋作って。

楊:素直な人だよね。本当素直。

深井:すごく松蔭の言うことを聞いてるわけ。ほかの人の言うこと聞いたかどうかわかんないけど、父親と松蔭の言うことをすごくよく聞いてるの。面白いよ。

楊:破天荒なイメージだけじゃないんですよ。

樋口:すげえ。もうこの人は、と思ったら、まず聞くんでしょうね。

深井:そうです。で、松蔭は、獄中にいるとはいえ、まさか死刑になるとは思ってないんですよ、彼は。死刑になるとは思ってないんだけど、その当時、幕府の大老である井伊直弼は、すごい強硬派なんですよね。もう朝廷の意向も無視して、攘夷派の意向も完全に無視して、やりたい放題をわざとやってるんですよ。それによって国政を前に進めるっていう政策。

楊:国を安定させるという意向もあったんだろうね。

深井:そう。それで、もういろんなやつがいろんなこと言ってるけど、俺がしっかりしないといけないって多分思ったんでしょう、彼は彼で。それで思いっきりものごとを進めて、どんどん処刑していくわけ。で、ある一定の人たちが処刑されてるのが耳に入った頃から、松蔭も、これはもしかしたら俺も死ぬかもしれないって思い始めるんですよ。それで遺書みたいな感じで、いろんな人にメッセージを最後に送るんです。それが、これも松蔭の回でも言いましたけど、またいろんな人にメッセージ送っていって、最終的に、「身はたとい武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」。だから、ここで自分は死んでしまうかもしんないんだけど、この俺の魂はここに置いていくぜ、みたいな意味です。っていう話をして、本当に斬首されるんです。

樋口:うわー、死んでほしくないな。

深井:で、この斬首されたのは、晋作が遊学から帰ってる途中なんですよ。だから晋作は、師匠がまさか死ぬと晋作も思ってないわけ。

楊:父親に呼び戻されるんだよね。

深井:そうそう。晋作、何で帰ることになったかっていったら、松蔭を手助けしてるのがお父さんにばれちゃうんです。で、お父さんが、おまえ、もう本当に松蔭とかかわんな、もう帰りなさいっていって、萩に帰させられちゃう。で、帰るのって、当時、時間かかるじゃん。

樋口:新幹線ないですからね。

深井:そうそう。何週間かかかるわけよ。この何週間か帰ってる途中に、実は松蔭は処刑されてるんですよ。で、戻ってからそれを知るんです。萩に着いて、晋作は松蔭が死んでしまったことを知る。ぶちギレるんですよ(笑)、晋作が。

樋口:うわー。これはちょっと、どんな気持ちになるのかが、

深井:そのぶちギレたところから、次回やりましょっか。

楊:うん。

樋口:ちょっと松蔭先生が、もういなくなったのが、

深井:いきなり死ぬんですよね、だから、彼からしたら。

樋口:いや、僕からしてもいきなり死んだんですよ。
一同 (笑)

樋口:松蔭、松蔭って思ってたら。

楊:もう松下村塾に入ってます(笑)。

樋口:まじで俺、結構、今、もう俺、いや、生き延びようと思ってますけど。

楊:(笑)

深井:だから、本当に晋作目線とかで見てほしいんだけど、まず松蔭先生と一緒に楽しく勉強してます。で、やっと江戸遊学行けます。で、江戸にいたら松蔭が急にやばいことになっていきます。

樋口:おかしくなって(笑)。
一同 (笑)

深井:で、獄につながれます。で、そのまんま江戸に、しかも召喚されます。で、江戸で審議、尋問を受けて、いきなり罪を自白します(笑)。
一同 (笑)

深井:で、江戸の獄中につながれて、そのまんま、処刑されると思ってないのに、いきなり処刑されますっていう、もうどたばた、いきなり処刑までいくんですよ。

樋口:すごいよな。

楊:感情はなかなか処理しきれなかったと思いますよ。

深井:そう。今みたいな感じだと思う、本当。

樋口:いや、まじでそんな感じっすよ。え?と俺が思ってますからね。処刑?っていう。

深井:え?って(笑)。

樋口:知ってるのに、うわってなるぐらいなんで。

深井:という死に方をした松蔭の、この今までの手紙とかが、次、どういうふうに晋作に影響していくのかだよね。

樋口:なるほど。じゃあちょっとそれは、また次回ですかね。

深井:はい。次回です。

樋口:ありがとうございました。

楊:ありがとうございます。

深井:ありがとうございます。

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