#34 イエスは救世主になるつもりはなかった!?

【ポイント】
①弟子もユダヤ人もイエスを一方的に救世主として期待し、勝手に幻滅して見捨てた
②それでもイエスは誰も恨まず、その死をもって愛を貫き通した
③弟子たちはイエスの死後、凄まじい勢いで覚醒していく

 

深井:いろいろなトピックがあるんだけど、この人(イエス)についてはもう一つ特徴があります。イエスって、こんなに優しくていろいろなことを言ってるけど、彼の言ってることを誰も理解してないんですよ、どうやら。

当時、生きてる人たち・・・だから弟子が12人。

主要な弟子がいると言われてるけども、イエスが本当に何を言ってるのかって彼らも理解していないし。確かに聖書に書いてある発言を見ても、何を言ってるか難しいです。

樋口:難しいですね。

イエスの言ってることが「曲がって」聖書に書いてる可能性もある。

深井:「曲がってない」前提で聖書は書かれてるんだけども、理解されてないですね。

これは、仏陀とかムハンマドと明確に違うんです。仏陀は弟子の中に仏陀を理解してる人がたくさん存在するんですよ。

イエスは理解されない上に最終的に、たった一年半くらいを活動した後に、政治犯としてローマ当局から逮捕されたときに、弟子から金貨3枚で売られ…ユダですよね。

樋口:ユダが。

深井:居場所を売られ。

当時、12人の弟子、全員集結してたけど、捕まえられたときに全員が走って逃げられちゃって。

ヤンヤン:全員から裏切られる。

深井:全員に裏切られる。

イエスは当時、すごく良いことを言ってたから、民衆から人気があったわけ。人気があったけど、民衆がどう捉えてたかというとですね、全然違うんですよ。イエスが、おそらく意図してたことと違うだろうと思われるんですけど、彼は当時、「メシア」…って「救世主」のことですけど、「メシア」として捉えられてた。

樋口:救世主。

深井:救世主だって。

樋口:救ってくれる人。

深井:自分で言ったし、みんなからもそう捉えられてた。

当時、この世界のユダヤ人から見て「メシア」は、具体的にいうと「ローマ帝国の支配を脱して、ユダヤのイスラエル王国を再建する人」なんですよ。だから、普通に考えたら、「ローマの今の支配層を倒して、新しく王様になってくれる人」だと思われてた。

樋口:思われてたんすね。

深井:これはほぼ確実だと思われてることで、「イエスがどんな人だったか」は史実からすごくわかりづらいけど、「当時の人がどういう常識だったか」は記録残ってるんですよね。

その常識から考えると「メシア」っていったら「ローマの今の支配層を倒して、新しく王様になってくれる人」。

そう捉えられてたのに、イエスって最後の最後まで別に何もしないわけです。先ほども言ったけれど、スピーチ以外のことを…ですね。なので、民衆からもめちゃくちゃ失望されるんですよ。

ヤンヤン:幻滅される。

深井:ホントに幻滅される。石とか投げられまくる。政治犯として捉えられ、鞭打ちの拷問をさせられるんですよね。この拷問も。鞭打ちされていることを知ってる人は数多くいると思うんですけど、

映像で見ると・・・映像とは映画でそれをすごく忠実に再現してるものがあって、メル・ギブソン監督の『パッション』って映画。なかなか入手できないんですけど、そこを見たんですけど、やばいっすね。めちゃくちゃ残酷だった。トゲトゲのついた金属の鞭でバチンバチンたたくんですよ。

そのとき、後ろから両手が縛られて背中を向けてる状態のところを、背中をたたかれてるけど、鞭だから…前面の肋骨のところとかに鞭が回ってきて、その金属のトゲが胸ら辺にひっかかって、それを引き抜く時にビリビリって…

樋口:うわうわ。

深井:イエスが叫んだりするんですよ。でも、たぶん確かにそんな感じなんだろうな…痛いなと思って…

樋口:なんでそこだけ急にリアルに表現したんですか!?(笑)

深井:痛さを理解してほしいと思って…それくらい彼はつらいことを受けて、その後、ボロボロの状態で十字架を自分で背負って、ゴルゴダの丘という丘を登って、上がっていって、そこで両手の…一般的解釈だと手のひらに杭を打たれたって言われてるんだけど、医学的というか、人体の実際にどう行ったら磔できるかというので考えた時に手首らしいです。手のひらだと支えられないから手首に打たれたって言われてる。

樋口:うわぁ、骨の強度的に?

深井:たぶん、手首に打たれてる。あと、足は関節を外すらしいんですよね。脱臼させるんだって。そうじゃないと、打てないから。脱臼させて、杭をまた打って、映画で見るとね…痛い。ほんと。その都度、叫ぶから。やっぱり痛いから。

樋口:そりゃ…でしょうね。だからなんでそんなにリアルなんですか(笑)

深井:(笑)

磔にされるっていう超しんどいことをされてるのに、イエスは裏切った人や民衆に対して、「この人たちは何も知らないから、自分を虐げてるだけだから許してあげてください」って祈りながら死んでいくんですよね。

樋口:そんなことをされてるのに。

深井:されてるのにです。

ヤンヤン:普通は、恨み言を言いながら死んでいっても良いんじゃないですか。

深井:「なんで神様は見捨てたんだ私のことを」言ったと記述はあるけれども、それもよくよく解釈していくと、そういう恨み言を言ってるわけじゃないんですね。

樋口:なるほど。カイジの世界だったら絶対恨んでますよね。

ヤンヤン:確かに。

深井:本当にそのくらい痛いことをされながらも、彼は最後まで恨み言を言わなかったんですよ。

ヤンヤン:弟子とか民衆から勝手に期待されてですよ。

深井:勝手に期待され、勝手に失望され、すっごい残酷な処刑をされ…けど、恨み言を言わずに、最後の最後まで自分が口で言っていた「愛」の話を体現して死んでいく。

民衆がそれを見てもあんまり何も思わなかったみたいですけど、裏切った弟子はおそらく、かなりの良心の呵責を経験したと思われます。

樋口:その残酷なところを見てる。

深井:見てはない。たぶんね、ホントに逃げたから。逮捕されたら死んじゃうから。逃げたけど、たぶん話とかで聞いたとは思うんですよね。

で、聖書の中では3日後にイエスは復活するんですよ。生き返る。

樋口:魔法使いやん(笑)

深井:「生き返る」って一般的な信者じゃない人からすると、意味がわからないので、生き返らなかった前提で想定していくと、おそらく良心の呵責に耐えかねた弟子たちが、その後、逃げたくせに、やっぱり死んでいくんですよ。ちなみにほぼ全員死にますよ。その後、結局、処刑されます。

樋口:うわ〜。遺志を継いで。

深井:継いで。継いだのかどうかわからんけど、布教して。

樋口:布教して。

深井:そこからキリスト教が生まれていくんですよ。

樋口:なんか、吉田松陰の時もそうでしたよね。

ヤンヤン:そうなんですよね。師匠が死んでからみんなライジングしていった。

深井:あぁいう死なれ方をすると、弟子からすると死ぬ選択しかないんでしょうね。

樋口:なんなんすかね。それなんか読み解きたいですよね。師が死んでからの流れについて。

深井:弟子は裏切ったけど、たぶんすごく心の底から尊敬してたんです。

その尊敬してたイエスを、見殺しにしてしまったっていう…

樋口:良心の呵責。

深井:ちょっと想像したら、それがもし本当にあったら、相当心にきたんじゃないって思う。

樋口:あとは頼ってた部分があるっていうのも、あるかもしれないですね。

例えば、親が病気になった瞬間に、すげぇ子どもが頑張り出すとか、あるじゃないですか?現代でも。

深井:確かにね。

樋口:「お父さんお母さんに頼ってられないんだ!」「自分で稼がないと」みたいな感じで、どーんていくとか。ポッカリ開いた穴にキュって埋まるような仕組みが、もしかしたら、人間の精神にあるかもしれないって今の話しを聞いてて思ったっすね。

深井:ざっくり語るとこんな感じです、イエスって。

樋口:なるほどなるほど。いやぁ、面白いですね。

深井:愛に生きて死んでいった人ですよね。

樋口:さっき、聞きそびれたんですけど、「メシア」の定義っていうのが、人々からはちゃんと政権に対してリーチするというか…

深井:そうですね。

樋口:「自分で動いて、行動する。政権を奪う」みたいなことだと思うんですけど、イエスはなんと思ってたんですか?メシアっていう言葉を。

深井:分かんないっす(笑)それがもう「解釈」しかできないんですよ。フワッとしたことしか言ってないんですよ。ただ彼は 聖書の中で「神の国はもうすぐ来るよ」って話をしてる。

それは、当時のユダヤ人の一般的解釈からすると「政権をとって新しいユダヤ人の王国を再建して、本人か本人の周りの誰かが王様になって、新しく国を作るよ」としか聞こえないはずなんですよ。

樋口:はいはい。同じ言葉でも向こうが解釈してるんだと。スケールが違うみたいなイメージ。

深井:違うけど。イエスも当時の人間だからわかるはずですけどね。そういう解釈をされうることを。

ヤンヤン:それで「自分で弁解した」とも書かれていない。

深井:明確に否定もしないわけ。民衆が期待してることに対して、「私はそうではない」みたいなことは言ってるんですよ。言ってはいるけど、フワッとした言い方をしてる。もっと明確に否定したらわかるのに、そのような言語ではしゃべらない、表現をしないんですよね、聖書上では。

樋口:分かんないですよ。意図的なのかはわからないですけど、その想像を残す空白の部分、余白があるからこそ、今でも22億人魅了してる。

深井:まぁそうでしょうね。それはあると思いますよ。いろいろな解釈が可能ですからね。

樋口:完全に理解できてしまったら、完結するような気がしてて…

深井:現実的すぎて、つまんなくなっていくんでしょうね。

あとは想像ですけど、仮に彼が具体的なことをいってしまってたとしたら、もっと早く逮捕されてる可能性が高い。だから、言えなかった可能性もありますよね。

樋口:そうかそうか。

深井:もしかしたら、本人はホントに神の国を再建しようとしてたかもしれないから。

樋口:そっかぁ。

深井:否定もしないけど、具体的に言うと速攻で逮捕されちゃうので言わないみたいな。

樋口:それはあるかもしれないですね。最終的に言ってたけど、全部消されたみたいな、言ってた言葉がということも。

深井:それもあるかもしれない。なぜかと言うと、聖書が書かれた時期っていうのは、ローマからユダヤがめちゃくちゃ弾圧されてる時期。

なので、その時期に、そのようなことを聖書表現として書くこと自体、はばかれるような時代に著述されてるんですよ。

樋口:だからギリッギリ歴史から消されない。

深井:ギリギリのラインを攻めてる可能性はありますよね。

ヤンヤン:あるいは逆で。もしかして、イエスは「自分がそういうことを思ってんじゃないよと、救世主じゃないよ」とはっきりと拒絶したかもしれない。

ただ、後世のキリスト教において、イエスがはっきりと「自分が救世主じゃない」と言ったことにすると、宗教的にロジックが弱くなる。だから、そこをぼやかしたのかもしれない。

樋口:「逆ねつ造」の可能性がある。

ヤンヤン:ねつ造というか…そうですよね。

深井:まぁね。

樋口:なるほど。いやぁ、ありがとうございます。相当イエスさん…さん付けするんかな?こういう時。

深井:イエスで良いですよ。

樋口:キリスト教っていうものが、だいぶわかってきたところで。

深井・ヤンヤン:はい。

樋口:次回はイスラム教について掘り下げていこうと思います。

ありがとうございます。

深井・ヤンヤン:ありがとうございます。

次回につづく…

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