#33 イエスはなぜ政治犯として処刑されたのか?

【ポイント】
①もともと人類の信仰形態は多神教がメジャーで、一神教はむしろ新しい価値観に属していた
②33歳で処刑されたイエスはそれまでどこにでもいるような身分の低い日雇い肉体労働者だった
③イエスが布教した期間はわずか1年半

※現在ポッドキャストのテキスト化を準備中です。もうしばらくお待ちください。

樋口:さて、前回はテーマというか、宗教をざっくりとおさらいした感じやったんですけど、今回からはそれぞれの宗教を掘り下げて行きたいと思ってます。まずは、言わずと知れた最大宗教「キリスト教」ですね。

深井:そうですね。イエス・キリストからですね、話していきましょうか。話す前に今回、改めて三人を勉強し直したんですよね、創始者の三人を。

結論、ぶっちゃけよくわからないんですよ。

樋口:そうやと思いますよ。(笑)

深井:どういうこと?ってなった。

ヤンヤン:凡人にはわかんないっす。

深井:これは、相当想像したりとかいろいろな補い方をしないと見えない。

樋口:ですね。わからない人がわからない人のために、わからないなりにしゃべるっていう。

深井:そう。

ヤンヤン:そういう感じですね。

深井:「それぞれみんな解釈して」って感じ。

樋口:だから僕ら三人全員バカです。

全員:(笑)

ヤンヤン:悟れてない人たち。

樋口:NON 仏陀で!

全員:(笑)

樋口:それを踏まえていきましょう。

深井:キリスト教で最初に聞きたいのが、どんなイメージがあります?「イエス」って。

樋口:いや〜、ホント「聖人君子ってイエスのことを言ってるんじゃないか」って思うぐらい、ホントに素晴らしい人というか。

深井:そういうイメージがあるんですね。

樋口:真面目で、言ってること全部が正しくて、優しくてみたいな。

深井:「優しい」みたいなイメージもあるんですね。

樋口:「聖人君子」のイメージが結構が強いですね。

深井:教会で磔の十字架のシンボルと。

樋口:あのイメージもありますね。

深井:そういうのもありますし、いろいろなイメージがあると思いますが、彼はですね、キリスト教の創始者というより、まずは「ユダヤ教徒」です。キリスト教とイスラム教ってもともとはユダヤ教から派生した宗教なんですね。なので、同じ神様をルーツとしてるんですけど、ヤハウェっていう。

樋口:ヤハウェですよね。

深井:キリスト教の話をする前に、ちょっとユダヤ教の話をしなきゃいけない。

ユダヤ教っていうのは「一神教」って呼ばれてて「唯一絶対神」がいるんですよ。これがすごい特徴。

樋口:一神の教ですよね。

深井:そうです、はい。一つの神様の宗教ですね。僕は仏教徒なんですが、仏教とかは「多神教」じゃないですか。ローマの神話とかギリシャの神話とか多神教だし、北欧神話とかも多神教だし。実は古代の普通の世界って、全部「多神教」なんですよ。

樋口:神様がいっぱいいますもんね。

深井:ごくごく一部のユダヤ教とかゾロアスター教とかだけが一神教だったんですよ。

今の世界ってキリスト教とイスラム教がどっちも一神教ですけど、世界の半分くらいを占めているじゃないですか。22億と15億もいるから。たまたま、この二つが思いっ切り広がったことによって世界の半分が一神教になりましたけど、もともとは、人間の宗教の発祥のスタンダードが多神教がであって、一神教って特殊なんですよね。

樋口:マイノリティだったわけですね。

深井:もともと、マイノリティですごい特殊。

「全て一つの神様が全部を創ってる」「この世界も一つの神様が全部創ってます」という考え方が一神教。ユダヤ教はこの一神教の考え方で始まっていて、すごく厳しい宗教なんですよ。

樋口:厳しい。神様が結構厳しいイメージなんですね、鬼軍曹?

深井:そうそう、鬼軍曹。神様が言ってることをちゃんと守れなかったら、罰せられる感じ。

いろいろな罰せられ方があるんですけど、旧約聖書にはさまざまな罰則が書いてあるんです。

だから「畏れながらも神様の言うことを守って生きていくと、神様が愛してくれる」みたいな感じですね。

樋口:なるほど。

深井:すごいざっくり言っていますけど、ユダヤ教はこういう概念だったけど、キリスト教では「神様はもっと愛情深くて、そんなに厳しくないよね?」と、キリスト…つまり、イエスが言った。

だけど、イエスはユダヤ教徒なんで、そこを理解しないと何を言ってるのかわかんない。

ユダヤ教徒として生まれて、ユダヤ人としてユダヤ教を信仰していた。ただ、ユダヤ教はすごい厳しい宗教。それに対して「神の愛はもっと深いよ」って話をした。

樋口:んー、なるほど。

ヤンヤン:「厳しさじゃなくて愛が大事なんだよ」っていったところに、彼の特異性がありますよね。

樋口:ヘ〜。だから刑罰で・・・刑罰なんすかね?「悪いことをしたら悪いことが起こるよ」っていうハードマネジメントじゃないですけど、叱る系でやったわけですね。

深井:そう、叱る系だった。あと、ユダヤ教はユダヤ人しか救われなかった。

そこの部分も「ユダヤ人だけじゃなくて、神の愛は全人類に注がれてるんだよ」っていう概念に変わってくきっかけとなってるのがイエス。

樋口:なるほど。

深井:そういうことを言ってるわけです。ちなみに、彼が処刑されたのが33だったかな。

樋口:若っ!

深井:だから同い年やん、今オレ。

樋口:やばっ!若っ!後輩やん。

深井:30歳くらいまでホントに普通の人なんですよ。

樋口:えっ?30まで!?

深井:なんもしてない。

樋口:え〜。

深井:普通の人。

ヤンヤン:仕事が日雇いの大工、肉体労働者ですよ。

深井:その当時のパレスチナの地方の大工さんの日雇いっていうのは、社会的地位はとても低い。奴隷の次くらい。

樋口:え〜。

深井:なんですよね、普通に。

樋口:そっから、3年すか。

深井:なんですよ。

樋口:やばいっすね。

深井:やばいでしょ。

樋口:は〜。

深井:だから意味がわかんないんですよね。

樋口:はいはい。

深井:だから彼が布教に近い活動をしたのって一年くらいです、ちなみに。

樋口:え〜(笑)

まじスタートアップ界隈くらいのスピード感じゃないですか。

深井:やばいよね(笑)

樋口:まじっすか。

深井:活動範囲も全然広くない。半径数十キロから数百キロくらいまでです。

樋口:ヘーーーーー!

深井:歩ける範囲です、単純に。

樋口:だって、飛行機もまだないですからね。

深井:当然ない。馬とか乗らず、歩いて布教してたんで、ホントに百キロくらいじゃない?半径。

ヤンヤン:いくつかの村を回っていたイメージですよ。

深井:キリストは、30まで大工さんやってるんですけど、ある日突然大工さん辞めるんですよ。大工さんを辞めて、洗礼者ヨハネって人がいるんですけど、ヨハネに弟子入りするんです。弟子入りをして、そこでちょっとライジングしてくるんです(笑)

イエスはその人の右腕みたいな立ち位置に上ります。それが、なぜかもよくわからない。

ちなみに彼の資料って聖書しかほぼ残ってなくて、聖書も歴史学の視点から見ると、全部が事実じゃないんですね。

樋口:でしょうね。

深井:歴史学から見ていくと、彼について確実に言えることって「ユダヤ人」と「処刑された」ってことぐらいなんですよ。

あとは、たぶん「そうなんだろうね」か「確実に違うだろうね」みたいなのしか残っていなくて。

樋口:客観的な史実みたいな「書」が残ってないんですね。

深井:あんまり残っていない、聖書がメインですね。聖書も彼が死んでから100年後くらい。数十年後から100年後くらいに書かれたやつなんで。

樋口:当時って文字はあったんですか。

深井:あるんですけど、ほとんどの人が書けないですね。97%は読み書きが出来ない時代です

樋口:じゃあ、もう口伝というか言い伝えで。

深井:全員が話しをして、伝えている状態ですね。イエスは十字架に磔にされ、殺されるじゃないですか。あれがまず「なんで?」なのか、わからないですよね。

樋口:あれ、分かってないんですか?

深井:分かってますよ、普通、みんな分からないと思いますが、彼は政治犯として処刑されています。

樋口:政治犯。

深井:そうです。当時の時代背景説明しますね。話はとっ散らかっているけれど…

当時のイスラエルとかパレスチナ周辺がどういう状況だったかというと、まずユダヤ人が住んでます。

ただ、ユダヤ人は独立できなかった状態で、ローマ帝国に支配されてます。このローマ帝国が直接支配してるのは、ユダヤ人の「ユダヤ教の祭祀であり、政治的指導者」であるごく一部の人たちだった。そして、この「政治的指導者」たちが、今度はユダヤ人を支配している。

だから支配されてるユダヤ人からすると、この中間層にいる「同じユダヤ人だけどローマの犬みたいになってる人(=祭祀であり、政治的指導者)たち」が、すげえむかつくんですよ。

樋口:ですね、一番腹立つな。

深井:イエスはこの人たちに対して、反旗を翻すと思われ、処刑されます。

要は「ローマ帝国と今の支配層に対して脅威だ」という認識をされ、政治犯として十字架に架けられる。「十字架刑」っていうのは政治犯の処刑方法なんですよ。処刑と言っても、拷問なんですけど。

樋口:なるほど、出る杭は打たれたんですね。

深井:そう、殺される。彼は愛の話をしてるのに、政治犯として処刑される。

樋口:だからそれくらい、愛の話をすることが政治に影響するって思われたこと?

深井:当時の支配層が大事にしていた、ユダヤの常識を覆すようなことをいっぱい言ってたんで。

ヤンヤン:そう、やってもいましたね。

深井:やってもいたし、言ってもいたから。

「それをやられてしまうと、自分たちの支配基盤が覆っちゃうよね」ってことをたくさん行うんですよね。さっきも言ったけど、厳しい宗教なんで、ユダヤ教って。

「トーラー」という律法…神様との約束ごとがたくさん在ります。

ヤンヤン:ルールです。

深井:ルールが、めっちゃたくさん在る、それも何百個も。ユダヤ教では、それを一つ一つ守って生きていく必要があるんですけど、イエスは「あんまりそれを従事しなくてもいいよ」みたいなことも言っちゃってるんですね、「それよりも大事なことがあるよね」って。

ヤンヤン:「法律が人の幸せにつながっていないよね」と言い出して、「それよりも、もっと差別されてる人、病気になった人たちに、人間として寄り添うことが法律よりも大事なことじゃないの」って言ったんですよ。今の感覚でいうと「なんか良いことを言ってるね」って感じなんですけど、当時の人からすれば「何言ってんの!?」みたいな。

樋口:なるほどっすね。

ヤンヤン:「法律を守らないでどうすんの」っていう。

樋口:今でこそわかるじゃないですか。でも当時にそれを言ったらヤンキーですよね。(笑)

ヤンヤン:確かに。

深井:その捉え方もできますね。

樋口:良い意味で言ってますからね。

要は、先生は「みんな、前ならえ!で同じようにしろ」って言ってるけど、「いやそうじゃない、オレは自分の生き方をやる」って外れていくわけじゃないですか。自分のルールで勝手に社会と外れて動き出すって、これヤンキーっすね(笑)

深井:当時、たくさんの恵まれない人たちがたくさん存在したんですよ。

古代なので、衛生状況が悪い。後、気候的にも厳しい土地なので、貧しい人も、病気になる人も多くて。

ヤンヤン:ハンセン病者ですね。

深井:そう、ハンセン病。他にも病気の人や、売春婦とかも含まれていましたね。

あともう一つ、ユダヤ教の人からは「税を徴収する人」も、すごく差別されていたんです。

そういう人たちに対しても、イエスはめっちゃ優しい言葉をかけて語りかけている。それはやってはいけないことだったんですよ。

樋口:ユダヤ教では。

深井:そう、基本的に常識外れだったんですよね。例えば、売春婦とかは明確に律法を破ってる人なんです。破ったらダメなんですよ。

樋口:そういうことか。

深井:破ってる人は救われない人なんですよ、ユダヤ教では。その「破ってる人に愛を語ってどうすんの」って話なんですよね、

樋口:なるほど。見捨てるものなのに。

ヤンヤン:不浄の者なんですよ。だから避けるし、接しちゃダメなんですよ。

深井:接しちゃダメ。

ヤンヤン:神罰を受ける人。

深井:イエスは「最後に救われない人」と見なされてる人たちにも、平等に接していくんですね。それが当時すごく革命的だった。それは、イエスしかやってない。

実は当時、イエス以外にもそうやって説教して回ってる人ってたくさん存在した。例えば、彼が師事したヨハネもそう。それ以外にもたくさん存在したけど、被差別民に対して優しくしたのはイエス。

樋口:なるほどな、やっぱ良い人なんですね。

深井:良い人です。

樋口:めちゃくちゃ。(笑)

深井:良い人っつったら、良い人だよね。

樋口:僕のイメージは今んとこあってますよ。

End

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