#14 炎上の元祖!活版印刷 ―人類のコミュニケーション史

【ポイント】
①技術が広がるきっかけとなるのは「ニーズ」と「コスト」
②一対多のマスメディアの走りとなった活版印刷
③マスメディアによって「国家」という目に見えない概念が想像・共有され、新しい帰属の仕方を生み出した


樋口:なるほど、それでは次に参ります。キーワードは『活版印刷』です。


ヤンヤン:はい。


深井:紙の次にめちゃくちゃデカかったのが、印刷技術の登場。活版印刷ってのは言葉での説明が難しい。


ヤンヤン:まぁ文字を一個一個ハンコみたいにして、刷りたい文章に応じて組み合わせて、それを版を作って刷れる。


樋口:要は印刷機みたいなものですよね?印刷機。


深井:一番それを発明した人として有名なのがグーテンベルクっていう。


樋口:グーテンベルク。


深井:今のドイツかな?神聖ローマ帝国の人ですね。これはそれこそ、歴史の教科書とかにも載ってるんですよ、グーテンベルクさんは。結構有名なんでこの人。実は発明されたのは
もっと前なんですよね。中国でグーテンベルクのマジ700年位前に発明してるんですよ。


樋口:中国凄いっすね。


深井:凄いんですよ、紙も発明したしね。


ヤンヤン:あの時代の中国が、一番凄かった時代じゃないのかな。


樋口:すげーな。


深井:それが何で発明されたのかってのが結構面白くて、仏教に印刷ニーズがあったって言われてて。


樋口:え!なんで?


深井:仏教の経典を複写していくってことにそもそも功徳を積む。つまりそれ自体が良いことだっていう風に宗教上考えられてるんですね、だから。


樋口:写経ってことですか?


深井:そうそうそうそう。


樋口:あのお寺とかでやってる。


深井:だから今でもそうなんだろうと思うんですけど。


樋口:写経ですね。


深井:手で写すしかなかったわけじゃないですか、木版印刷っていうんですけど、木の版に
彫って、それをこうやってインクつけてパンパンパンって紙に押していく、大きいハンコみたいな感じでやっていくっていうのが、紀元700年前後くらいの時に中国で発明されて。そうするとめっちゃ刷れますよね。


樋口:うんうん、大量に。


深井:大量に刷れますよね。今まで手で物凄い時間かけて写してたのが、めっちゃ写せるじゃん!めっちゃ功徳積めるじゃん!みたいな。


樋口:功徳。


(笑)


一応功徳積んでるんですね


深井:功徳積んでる、積んでる。功徳積んでるつもりでそれやってるから。それでまず中国で印刷の技術が発明されるんだけど、漢字じゃないですか中国って。


ヤンヤン:ややこしいんですよ。漢字で印刷の活版印刷とか作ろうとするって、結構難しいんですよ。


樋口:そっか一個ずつパーツを組み合わせるんで。


深井:文字盤が何個あれば良いんだって話になるから、何千個。しかもさ同じページの中に同じ漢字が二回出てきたら、その文字のこのハンコを2個持ってないといけないわけだから。


樋口:そっかぁ。


ヤンヤン:そうなんすよ。


深井:文字分一つずつ持っておけばいいわけじゃないんすよ。


樋口:そっかぁ(笑)


深井:めっちゃいっぱい持ってないといけない。コスト高いし。


樋口:はい。


深井:検索もむずいじゃないですか、見つけんのがむずいでしょ?


ヤンヤン:どこの引き出しにその漢字が入ってるのかって、いちいち全部集めて周らないといけない。


深井:今でも活版印刷してますけどね、日本でも。


樋口:そうなんですか、まだやってるとこあるんですか。


深井:名刺とか印刷出来ますよ活、版印刷で。


樋口:かっこいい。


深井:けど、当時そういうコストに高さとかもあって、そこまで爆発的になんないんすよね。印刷によって社会が変容するレベルまではやっぱ。もちろん変容してるんだけど、グーテンベルクが出てきたレベルにはならないんですよ。


樋口:なるほど。


深井:けど西洋のグーテンベルク、だいぶ後ですよ。700年後くらいにグーテンベルクが活版印刷を中国と全く別ルートで考え始めて。交流してればね、そういう技術あるんだみたいになったかもしんないけど、そうじゃなくて完全に自分一人で考え始めて、西洋は西洋でそれでグーテンベルクさんが実用化していく。


樋口:アルファベットだから。


深井:アルフベットで26文字しかないから、めっちゃ簡単じゃないですか。


樋口:めっちゃ簡単。


ヤンヤン:もう自分の部屋の中だけで出来ますからね。


樋口:それ思ってたんですよ。僕たまにフォントとか好きで見るんですけど、英語のフォントめっちゃあるけど日本語のフォント少ない。今なんて言いました?フォントそうですね??


深井:言ってない。


(笑)


深井:言ったかな?言ったかもしんない。


(笑)


深井:フォントそうですね。


樋口:いや!今のは完全に言った!


(笑)


樋口:ちょっと何もじもじしてんすか。


深井:ちょっと死にたくなりますね。


(笑)


樋口:文字だけに。


ヤンヤン:上手いこと言いますね。


樋口:いやだからやっぱりこんなところで言語の違いが。


深井:出ますよね。


樋口:いや、すげえゾクゾクする。


深井:たまたまだよね。しかもそれはそんなこと想定しえないから、文字を作った時は。


樋口:え〜〜。


ヤンヤン:グーテンベルクの活版印刷が出てきたことによって、自分たちで印刷所を持つコストが低くなったんですよ。これ良い商売になるなと。みんなそこで印刷所が立ち上がるんですよね。


樋口:だからそこも重要ですよね。儲けれるって思ったら発展するんすね。経済が後押しするんですね。


深井:一番よく言われてるのが宗教改革。カルバン・ルターが起こした、プロテスタントによる宗教改革っていうのがあるんですけど、同時期に。それは印刷ができるからそれがこう実現したんだって言われてる。


樋口:どういうことでしょう?それは。


深井:えーと、結構長くなる。


樋口:宗教全然分からないです、関連性が。


ヤンヤン:ざっくりいうと宗教が大きな社会運動なんですよ、全ヨーロッパを巻き込んだ。全ヨーロッパを巻き込むってことは、みんながそれを議論をするような精神状態にならないといけないんですよね。宗教って確か今までのキリスト教って、ちょっと確かここちょっと悪いところあるよね。改善しないと。みんなで議論しようねっていうモチベーションにならないといけないんですよね。でもモチベーションになるためには、やっぱりそれだけたくさんの広い地域に、この論点この課題があるんだっていうのを知らせないといけないんですよ。


深井:若干マスメディアのプレマスメディア的な使われ方をしてるってこと。新聞があってみんながそれを認知して、同じ話題に対して議論がなされていくっていう土壌があったから、宗教改革っていうのが一気に進んでいく。


樋口:はぁ〜〜、なるほどな。議題を共有できたんですね。


ヤンヤン:実際ドイツのルターっていう宗教師が出発点だったんですよね、宗教改革の。彼が、あるビラがあるんですよ、おれは今のキリスト教に対してこういう論点に対してみんなで議論したいっていうふうに、教堂のドアに前に貼ったんですよね。それをおそらく大学の学生達が勝手に印刷したんですよね。印刷してばら撒いて配って、それがバンって一気に広まったんですよね。ルターは別に、自分のビラを印刷しようとしてないんですよね。やべえ、いつの間にかオレの書いた文章が話題になってるって感じですよね。


樋口:インフルエンサーが勝手に拡散したんですね。彼は良いところはそこに乗っかったんですよね。よし!じゃあこれの勢いで本家大元の偉い人たちに戦争仕掛けようみたいな、論戦しかけようみたいな。


樋口:うーーーん。


ヤンヤン:全くもう印刷によって、みんながある種炎上ですよね。人類史上初の炎上。


(笑)


樋口:うわ〜。


深井:確かに炎上ですね。


樋口:ルターが。


深井:そうそうそう。免罪符っていうのがあってね、お金払えば罪許してもらえるって言ってたカトリック教会が、それに対してアンチテーゼとしてルター・カルバンが出てきたんですよね。


樋口:ふ〜〜ん、そっかぁ。


深井:その時のプロパガンダ的な使われ方を印刷がなされて。


樋口:それで思ったんですけど、議論しましたと。まとまったやつもこういう意見が出てきましたっていうのも、紙で広まっていくわけ?


深井:そこまで活発に、当時の技術ではこの議論にこれを乗っけるみたいなことはあまり起こらない。


樋口:そうか。


深井:この議論がバーンて出てきて、そうだそうだ、にはなる。


樋口:そうか。それがだから最初冒頭の話か。発信者と受信者がここでは分かれてるんですね。


深井:あのインターネットとかの出現まで、そういうことはできないですよね。あと次にね、マスメディアがめちゃくちゃデカいんですけど、活版印刷の次にマスメディアってのが出てくるんだけども、今でも物凄い影響力を持ってますよね。今言ったプロパガンダ的な形で。マスメディアっていうものが出てきたことによって、まず新聞が先に出るじゃないですか。新聞が出るって、みんな読めないといけないじゃないですか、文字を。文字の識字率って近代まで結構低いんですよ。


樋口:そうなんですね。


深井:知識層か貴族しか読めないんです、基本的に。大体どの国も。だから50%切ってるわけです。20~30%とかで推移してる国が多くて、今の先進国でさえ、義務教育とかが始まって文字が読めるようになっていくんですね。そうなった結果、新聞がマスメディアとして機能できるような土壌が出来てきて、そこで印刷の速度がさらに技術として上がってたんで、ここで新聞がボーンと出てきて世論形成とか国民っていう意識であるとか、僕はこの国の人間なんだ!っていう意識であるとか。それまでは僕ってこの街の出身者だってことしかない。


樋口:国っていうところまでいってない。


深井:概念がそこまで広くなんない。


樋口:マスになってなかったんですね。


深井:マスじゃないですね。


樋口:はぁ〜。


深井:外国とのコミュニケーションとかも頻繁に発生しない限り、自分の国っていう単位で固まらないんで。


樋口:うんうんうんうん。


深井:そういうのはマスメディアの登場までならなかった。


樋口:くわぁ〜〜。


ヤンヤン:サッカーのサポーターみたいなもんですよね。サポーター同士って全然お互い顔も何も知らないじゃないですか。でもオレ達はアビスパのサポーターなんだ、みんな一つの家族なんだみたいな、ある種同胞なんだみたいな。


樋口:うんうん。


ヤンヤン:要はコミュニティ感というか仲間感が、やっぱりマスメディアの登場によって想像できるようになったんですよね。


樋口:なんかだから、結構その最初から統一して思うのは、自分の能力とか目に及ばない部分でのところの概念がそこでまとまるようになったというか、国家っていう概念って自分の目には入らないんすよ、生きてたら。


深井:そうですね。


樋口:想像上の産物ですからね。自分の生活とか体の範囲を超えた一個上位概念なものが、全員で共有できるようになったっていうのが。


深井:ほんとその通り


樋口:僕は分かってるんですけど難しいか。


(笑)


深井:ほんとにその通りです。それが活版印刷のあとのマスメディアの登場はものすごくデカくて、やっぱり人類に、それこそ社会変容に対してめちゃくちゃでかい。新聞の登場によってそれが出来るようになったのと、ちなみに新聞の登場の前段階の技術に電信ていうのがあるんですけど、電気通信で情報を伝えることができない限り新聞も登場できない。毎日新鮮なニュースを各地から集めることができないからですね。


樋口:ほぉ!


深井:それが出来ること自体が技術の発達を待たないと出来ないので。


樋口:はいはいはい。


深井:それが出来るようになったらやっと新聞がメディアとして稼働し始めて。


ヤンヤン:そうですね、稼働し始めたら。識字率が上がってる土壌の中で全員が世論形成していく。そこからちなみに世界大戦に突入していく。


樋口:うわ〜はっはっは、繋がるな〜。そうか電信技術かぁ。


ヤンヤン:電信技術によって、情報が伝わる速度が人間の移動速度を超えたんですよ。


深井:初めてね。


樋口:今のセリフめっちゃかっこいいですけどね。


(笑)


樋口:人間が作ったものが人間を超えたんですね。


(笑)


ヤンヤン:人間が移動しなくても電気が伝えてくれたんで。


樋口:へぇ〜


深井:それまで馬か儀礼で伝えてた、飛脚。


樋口:うわ〜、ちょっとじゃあ今回はお時間ここまでなんで、次回電気通信についてもうちょっと詳しく聞いていきたいなと思います。ありがとうございます。

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