#13 文字、爆誕。― 人類のコミュニケーション史

【ポイント】
①文字は人類の思考回路を徹底的に変えた
②文字によって情報の「記録」と「分析」ができるようになった
③文字によって世界を「数字」で量的に把握・記述できるようになった


樋口:それでは次に参りましょう。歴史に学ぶコミュニケーション概論、続いてのキーワードは『文字』


深井:そうですね。


樋口:ということなんですけども、先週ちょっとチラッとお話ししましたけど、どういうことなんですか?


深井:めちゃくちゃデカくて実は。文字の登場っていうのが人類の思考回路を徹底的に変えてるんですね。


樋口:徹底的に!?


深井:僕たちってめちゃくちゃ当たり前に文字認識して読んで使いまくってますよね。書くことも出来るし読むことも出来ると。ただ人類史でいくと、そういうことが出来るようになったのってホント最近なんですよ。


樋口:ふ〜んそうか。


深井:ずっとみんな文字も書かず読まず、声だけでコミュニケーションしてた。


ヤンヤン:数万年の間。


深井:数万年ずーっと。


樋口:へ〜。


深井:その文字を一回も見たことのない人、読めたことのない人の思考回路と、文字を一回でも読んだことがあって読むことが出来る人の思考回路っていうのは、徹底的に違うんだっていう研究があって。


樋口:わぁ興味深い。


深井:はい。それがどういう風に違うかっていうのは、本気で話したら全然尺に収まらないんで。


(笑)


ヤンヤン:掻い摘んで。


深井:掻い摘むとですね、一つは記録と分析がまず出来るようになったんですよ、人間が。


樋口:記録?


深井:そう。


樋口:はいはい。と分析ですね。


深井:情報のストレージ、外部ストレージとして記録をすることが出来る。


樋口:これはメモれるってことですよね?


ヤンヤン:覚える必要がなくなった。


樋口:分かります、分かります。


深井:それまでは声で覚えやすいことしか覚えれなかった。


樋口:どういうことですか?覚えやすい…歌にするとか?


深井:歌にするとか。吟遊詩人とかいるじゃないですか。


樋口:あー、そういうことか、あれ。


深井:例えば昔の古代文学とか読んだら分かるんですけど、古代文学って文字の文化じゃないんですね。声でコミュニケーションしてた時の文化なんで、例えば韻を踏む事がすごく多かったりだとか繰り返し同じことを言う。あとは形容詞がすげえなんていうか、華美な形容詞を付けますよね。兵士とか言わない、屈強な兵士とか勇猛果敢な兵士とかそういうような表現をゴテゴテしてる。


樋口:耳で聞いてインパクトあるように、演出するんすね。


深井:枕詞として使ってるんですけど、兵士とセットとして覚えやすいようにっていうことです。そういうような記録の仕方しか、人類は実はずっと出来なかったんですね。それがもっと本質的で、かつ事象を客観的に記述するやり方で記録できるようになるのが文字の出現。


樋口:ふ〜〜〜ん。


ヤンヤン:簡単にいうといま深井くんが言ったようにある事象、物事を詩とかで韻を踏んで記録するじゃないですか。仮に今僕たちが毎日読んでる新聞がみんな詩のやり方で書かれたら、真面目に新聞やる気あんのか。


(笑)


樋口:そうですね。


ヤンヤン:世界の認識が全く違うんですよ。


深井:全然違う。


ヤンヤン:今の新聞っていうのは事実リアルを伝える。そのためには5W1Hですよね。誰がいつどこで何をどうやって、どういう風にしてるのかって。でもそれって私たちにとって当たり前なんですけど、昔の人たちにとっては当たり前じゃないんですよ。そういう認識の仕方で世界を認識してないんですよね


深井:例えば三角と四角とか丸っていう概念とかも実は声の文化って呼んでるんですけど、文字を一回も読んだことのない人たち、その人たちは認識できないっていわれてるんです。


樋口:エー!ヘッヘッヘ。


深井:丸って言ったら例えばお皿っていうのに、お皿っていうものは認識できるけど、丸という概念は認識できない。


樋口:ちょっとこれはそうなってないから、いま僕が。文字が当たり前だから。


深井:そうなんです。僕たちからはめちゃくちゃ想像しづらいけど、そういう研究がある、まず。


樋口:図形を図形としてそのまま捉えられないっていうことですね。


深井:図形に限らず要は抽象的な概念を、概念として認識することに長けてないってことですよね。例えば文字の文化が浸透する前までの思想家たちは、基本的に対話によって思考を先に進めていくんですね。けど文字が浸透してくると、自分一人ですごい深い所まで考えていく事が出来るようになるっていうのも、文字の認識による変化。人間の思考の。


ヤンヤン:計算のメモとかで出来ますからね。


深井:そうね。数学とかもそもそも文字がないと全部暗算しないといけないじゃないですか。無理だよね。


ヤンヤン:出来た人もいるだろうけれども、それがものすごく限られた人が能力を持ってるんですよ。


深井:その人も文字で書けた方がより出来るからね、数字をね。


樋口:矢野兵動の兵動さんていう吉本の先輩がいるんですけど、もうめちゃくちゃ話術がうまいっすね。すべらない話とかにも出てる。でその人がYouTubeかなんかでトークのコツを言ってたんですよ。なぜあなたはそんなにトークがうまいんですか?っていう質問に対して、もうこれ言うかな〜言うまいかな〜、じゃあ今日言っちゃうかっつって書くんや!って言ってたんですよ。


深井・ヤンヤン:へぇ〜!


樋口:トークの流れを全部一回書くと、これいるなぁ、ここちょっとボリューム足したいなぁ。これはもっとこうしようとか、このフリはもう一回最初に持ってきた方がいいなとか、要は図形的に見てんすね。


深井:それ非常に分かりやすくて。


ヤンヤン:俯瞰ていう事だよね。


深井:そういう風に客観的に自分が喋ってることとかを認識することも、文字を書けない限り出来ない。鍵はですね、書けるかどうかよりも、文字を書く技術を持ってるかどうかですね。


樋口:あーいいね!いいね!!


深井:要はその、使うかどうか関係ないんですよ。


樋口:いいね〜。


深井:さっき仰った兵動さんみたいに、書いても書かなくても書いた事のある人間はそういう事を出来るんですね。書いた事がないとその概念が存在しないから。話戻るけど記録。あとは分析的思考が全然発達しない。発達しないって言い方はちょっと違うけど。


ヤンヤン:分析するためにはさ、要はデータベースが必要やん。


樋口:そういう事ですね。


ヤンヤン:音声だけあったら、その場限りで終わってしまうし。あくまで人間の記憶の。


深井:若干消えるからね。


ヤンヤン:記憶の中に留めるだけだし、その記憶も人間の寿命によって制限されるから、100年で終わるんですよね。


樋口:なんかあの戦争ゲームで例えると、言葉だけのコミュニケーションって一人称目線で10を抱えてる人間が見てる世界だと思うんですけど、文字の世界ってそれを真上から見た二次元のマップで見てるような感覚。


深井:イメージとしてそんな感じ。


樋口:何で一回ゲームで例えたかちょっと分かんない。


(笑)


ヤンヤン:国造りです。


深井:信長の野望的なやつだよね。なので文字も実は発明なんですよ。文字の発明が一番インパクトがデカくて、それ以降の次回話しますけど印刷であるとか。


樋口:興味深い。


深井:電信であるとか。


樋口:興味深い。


深井:モールス信号とかですね、そういうものに対して圧倒的な影響というか、その延長線上の出発点ですよね。


樋口:うんうん。


ヤンヤン:国の仕組みとかも関わってくるもんね。


樋口:国の仕組みっすか?


深井:今日紙の話もしたい。この次が紙の発明なんですよ、文字の次が。本当はその間に色々あるんだけどパピルスとか。次でっかいのに紙の発明っていうのがあって、紙って西暦105年くらいだからもう今から1900年くらい前に中国人が発明してますね。一応世界史の授業で出てきますけど、蔡倫っていう人だね。


樋口:蔡倫。


深井:その人発明じゃないって最近分かったんだけど。


ヤンヤン:改良者だったみたいだよね。


樋口:ざっと1900年前か。


深井:死ぬほど前ですよね。アジアでは結構バリバリ使われてたんです、紙って。特に中国で。紙が出てきたことによってメモが出来るじゃないですか。紙の良さってコストが低いんですよ。それまでは木簡っつって。


樋口:木簡ですよね。


深井:木に彫るとか、その前はさらに石板とかですよね。粘土板とかね。木簡とかパピルスとか羊皮紙とか動物の皮とかあったんだけど、紙ってコストが低いんで結構気軽に使いやすい。ちゃんと生産体制を整えてればなんですけど使いやすいんで、数学とかはそれで発展したみたいなって話があるね。


樋口:はぁ〜、書きまくれるから。


深井:メモ出来ることによって発展する事が発展する、それで。


樋口:はぁ〜〜。


ヤンヤン:その大きな国を統治する為に、数学を発達せざるを得なかったんですよ。


樋口:ん?


ヤンヤン:何でかっていうと、税金の納税とか人口管理とかどこでどれくらいの生産物が
生まれてるのかって。要は今まで人類が接してきた情報っていうのは例えば木の下にキノコが生えてるとかあそこに獣の群れがいるとか、それくらいの認識で良かったんですよね。でも国が大きくなればなるほど扱うべき情報、管理すべき情報ってのは膨大に上ってるんですよね。人間の記憶だけで覚えれるわけないんですよね。


樋口:そりゃそうだ。


ヤンヤン:そこで初めて人間の認識する情報の中で。数字っていうのがものすごく大きく出てきたんですよ。それで紙に記録してそれで管理できるようになって、大きな国が回せるようになったんですよね。


樋口:そうか。


深井:古代中国とかで、官僚制っていうのが出来てくんですよ。今も官僚いますよね。それを一番最初に体系的に形作ったのは中国王朝なんですけど、そこにまず紙がめちゃくちゃ活躍してる。その紙の上に成り立ってるっって言っても過言ではない。


樋口:なるほどな、だから自分の目で見えなかったり届かないところまでも、管理できるようになったみたいなイメージですね。


深井:管理できるし、単純に紙の方が木簡とかより運びやすいですよね。大量の情報を遠隔地に指示とかで伝える時とかに、文章によって伝えるっていうのがやりやすくなっていきます。


樋口:それまではやっぱ人に伝えて馬走らせて。


深井:使者にこういう事言ってって伝えて使者が分かったって覚えて、伝言ゲームみたいな。


(笑)


深井:少し間違って伝わるみたいなのもたぶんないことはない。


樋口:そいつ馬鹿やったらやばいっすね〜。


ヤンヤン:うんうん。


深井:たぶんね、馬鹿だったらなれないんだけど。


(笑)


深井:だったらやばいっすよね。


樋口:だって現代でもありますからね、お前あれ言ってっていって言ったって、お前そのニュアンスで言ったらめっちゃ失礼やろみたいな。


深井:だから仕事とかやってても、部署が小っちゃいときとかは2〜3人とかだったら
、何しろ会社が小さい時は全部口頭で説明しとけばいいじゃないですか。大きくなっていくと自分が直接関わらない人間とか出てきて、じゃあなんかこうSlackに書いといてみたいなチャットに書いといてみたいなとか今でもありますよね。


樋口:あります。


深井:あれと同じことが国家運営で起こり、それにSlackじゃなくて紙が使われたってこと。


樋口:はぁ〜、だから現代のSlackなんですね。なるほど〜。


ヤンヤン:あと法律もそれで発達したと思いますよ。


樋口:それはなんとなく分かる。


ヤンヤン:仮にこうお互いが同じ土地を所有権を主張して、オレがこん時に土地を買ったんだ。いやオレが買ったんだ。じゃあどういうふうに証明するんだって、自分の頭の記憶しかないんですよね。でも紙によって記録できたから、じゃあその紙を出してみんなで確かめ合おうぜっていうことが出来るようになった。


樋口:だから記録できることによって証拠が生まれるんですね。


ヤンヤン:証拠が生まれますね。


樋口:客観的証拠。言うた言わんの話が出来なくなるんですね。


ヤンヤン:そうですね。国がやっぱり大きいとそれだけ人間も情報も増えていくと、どうしても争いっていうか意見の食い違いが出てくるので、そこを上手く処理する為のシステムとして、紙による記録って大きな役割を果たしたと思います。


深井:あとは道路もあるんだよね。


樋口:道路!?


深井:紙と道路も結構、密接に関わってるというか。


ヤンヤン:うんうんうん。


深井:大きい帝国って、古代の、全部道路ちゃんと作ってるんですよ。ローマもしかり。秦の始皇帝も作りましたし、モンゴル帝国とかもそうだし、古代じゃないけど。古代の国っていうのは道路網を整備して行政文書を届けるっていう事が出来ない限り、そもそも大きい広大な土地を統治する事が出来ない。だって指示も届かないし何が起こってるのかも分かんないわけで、何千キロも離れたところを統治しようとしたら電話があれが出来ますけどね、当時ないから。そこもすごくコミュニケーションに役立ってる。道路も。


樋口:それはそうだ。紙がPDFファイルで道路はインターネット。


深井:そういう事です。


ヤンヤン:あー、分かりやすいですね。


深井:だからその通りで、いわゆるウェブって言われる蜘蛛の巣っていう状態を道路で作ってたのが昔。今はそれが電子ネット上にある状態ですよね。電子ネット上というか、物理的にあるんだけど実際。


樋口:なるほど。文字っていう一個のテーマで国家いったり道路いったり、もうちょっとすげえっすね。全てが密接に関わってる。


深井:関わってますね。


樋口:文字面白かったですね。

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