#18 天皇と日本史 ―天皇と将軍、どっちが偉いの?

【ポイント】
①日本では武士が長きにわたって権力を握っていたが、その武士の源流である源氏と平氏たちも元を辿れば天皇の血筋。
②日本は権力と権威がそれぞれ将軍と天皇に分かれているという特殊な支配構造だった。
③将軍と天皇はそれぞれ「偉さ」の領域が違う。


樋口:それでは次に参りましょう。続いてのキーワードは「天皇と日本史」です。ということで、僕らが学生時代に学んだ時の日本史でも天皇って出てくる箇所がたくさんあったと思うんですけど、日本の歴史と天皇ってどういう関わり合いをしてきたかっていうことをお聞きしたいと思ってるんですけども、どんな感じなんですかね?


深井:そうですね、さっきの前の話の天皇がどういう風に生まれてきたかの話の続きですよね。えーっとね、平安時代あるじゃないですか。飛鳥時代から平安時代ね、普通に天皇がそこそこ権力持ってるんですよ、普通に。当然他にも貴族がいてその人たちも権力はあるんだけど、本当に天皇の全歴史を通じてかなり権力がある方の時代。逆にいうとこれ以外はあんまりない。


樋口:は〜、そうなんですね。


深井:飛鳥時代から平安の初期くらいまでですかね。ここら辺は天皇が、それこそ天智天皇とか天武天皇とかが出てきてるのがここら辺ですよね。その後に摂関政治ってのがあるんですよ。


樋口:摂関。


深井:平安時代中期がそれですね。摂関政治ってね、字を説明するの難しいね。手偏に耳に。


樋口:摂関政治でググりましょう。


(笑)


深井:摂関政治っていうのが要は外戚、要は天皇の親戚に貴族がなって、実質的な権力を握る時代ってのが次くるんですよね。だからこの時点で天皇の、天皇自身の権力がだいぶなくなってくるんですけど、その全盛期が藤原道長。これみんなほら、中学校の歴史でも高校の歴史でも習ったんじゃないかなって思う。


樋口:名前だけは知ってますけど、たいぶ忘れて何をやったか全く覚えてない。


(笑)


深井:すっげーオレ、権力あるっていう和歌を詠んだ人です。


樋口:ふ〜ん。


深井:っていう時代があって、その後に院政の時代ってくるんですよ。


樋口:院政。


深井:これ後期院政っていって上皇が出てきて、天皇じゃなくて上皇のほうが要は引退した天皇ですよね、そっちの方が権力を握ってる時代っていうのが次くる。ざっくりこんな感じだから一回説明します。天皇の権力の推移を説明します。その後に武士の時代になるじゃないですか、鎌倉時代。


樋口:出た。


深井:鎌倉時代と室町時代は比較的天皇の武家政権なんだけど、天皇結構ちゃんとこう
リスペクトされてるし、権力はないんだけど存在感がある時代っていうのはあるんだけど、鎌倉時代もいきなり武家に権力が渡ったわけじゃないんですよ。段階的に権力が移行していったんですよね。鎌倉幕府に。まず武士がバーって生まれて、生まれ方ってすげえ諸説あるんだけど、僕勉強してて面白かったんが天皇の中にものすごく奥さんを持ってる人達が何人か出てくるんですよ、平安時代に。その人達の子ども、ホントに二十何人とか奥さんがいて子どもめっちゃたくさんいますみたいな。そうすると末端の方の子どもって天皇どころか貴族にもなれないかもみたいな、全然なんかこう出世全然絶対できんわ、みたいな。お兄さん何人死ねばオレが天皇なれるんだみたいな人が出てくるじゃないですか。そういう人達が
武士になっていくんですよ、ちなみに。


樋口:はぁ!武士ってそうやって生まれたんですね!


深井:諸説あるけどそうなんじゃないかって言われてる。武士って元々貴族なんです、まず。


ヤンヤン:源氏も平氏もですよ。


深井:源氏も平氏も普通に貴族なんですよ、元々。


樋口:へ〜。


深井:だから別に田舎の百姓が武士になっていくわけじゃなくて、普通に中央にいた要は京都にいた貴族の中で、そういう風に血筋があんまり良くない人、レースに参加できなさそうな人、権力レースにその人達がこれ覚えてると思うけど、墾田永年私財法って覚えてます?


樋口:あーったなんか、名前だけは。


深井:あれは開墾したら開墾した人の土地になるよっていう法律ができたんですね。それまでは誰が開墾しようが天皇の土地だって言ってたんだけど。


ヤンヤン:公地公民です。


樋口:公地公民。


深井:もう少し公地を拡げたいから、開墾したらあなたにあげるからどんどん開墾しなさいって話になったの。その時にその権力ではない貴族達が地方に降っていって、そこで開墾してそこで地盤を築いていくんですよ。その人達が最終的に武士になっていったじゃないかなっていう説が。


樋口:面白すぎるな。


深井:その人達の政権になっていくんだ、その後。


樋口:か〜、スタートアップじゃないですか。


(笑)


深井:スタートアップですね。


樋口:要は民営が民間企業の起こりというか。


深井:フロンティア。フロンティア開拓した人達。


樋口:自分に利益があるからこそ開拓するっていう選択を選んだ人達。


深井:そうそうそう。


樋口:だから今までは自分の利益なかったわけですよね、自分の土地にならないから。


深井:既存の権力。それで既存の権力ない人達が、平清盛とかが出てきて。


樋口:うっひゃー。


深井:その後に源頼朝とかが出てきてっていうのが出てきて、そこそこ権力を握るわけですよ。それもなんで握ったかっていうと、摂関政治してる摂関家って言って外戚の人がいるんですよね、親戚の天皇の。この人達と上皇の権力争いが起こるんですよ。その時に第三勢力として、その時に武士がいる。この武士がどっちを手伝うかってことでこの権力構造が崩れるじゃないですか。要は二つしか勢力がない。


樋口:一対一。


深井:この二つの戦いで強い方が勝つんだけど、第三勢力として武士が出てきちゃってるから、手伝ったらこの手伝ったやつが手伝ったことによって権力を得ていくじゃないですか。君があの時手伝ってくれたからってなるじゃないですか。それによって権力が徐々に増していって、武士の。超ざっくり言ってますからね。ほんとはちょっと違うんだけどね、超ざっくりとそんな感じ。えーと武士が獲得していったんだけど、最初はね、東日本だけだったわけ、鎌倉幕府が権力持ってたのって。そっちってフロンティアで、京都中央から見たら野蛮な国ですから。東は東北は。


樋口:今と逆ですもんね。


深井:逆です。そこを治めてただけなんだけど。途中で後鳥羽上皇って人が承久の乱って微妙に覚えてるんじゃないかと思うけど、反乱。鎌倉幕府倒そうとしちゃうんですよ。


ヤンヤン:権力を回復しようとした。


深井:失敗するんですよね。


樋口:うぉ〜。


深井:それで朝廷の権力がバーンと落ちるんです。


樋口:はい。


深井:六波羅探題っていって監視するやつが置かれて、日本史少しでも覚えてる人は聞いたことはあると思う。


樋口:ある!ある!


(笑)


深井:それで武家政権の権力が東にも西にも伸びていって、鎌倉幕府として武家政権が成立していくと。室町時代まではそれでも建前上征夷大将軍て家臣ですから、天皇の。天皇の方が当然やっぱり偉いっていう感覚はあったんだけど、戦国時代に突入した時にほんとに実力社会になっちゃったから、実力ないやつってなんなん?てなるんですよね。だから戦国時代の大名達って、ほんとに天皇のこと結構リスペクトが弱いんですよ。


樋口:なるほどね〜。


深井:その状態のまんま江戸時代に突入する。江戸時代はさらに権威が下がっちゃってるっていう時代があって、皆さんご存知だと思いますけど長州と薩摩と土佐が。


樋口:出た。


深井:倒幕活動をして、明治になったら一気にバーンってまた今までの長い長い武家政権が一気に倒れて。


ヤンヤン:徳川幕府の権威が下がって、黒船という海外勢力にもなかなか上手く対応出来ずに。じゃあこれから日本をどういう風に国として持っていこうかってなった時に、あっオレらには天皇がいるって。


樋口:か〜、相対的に武家の、武家というか将軍の力がなくなったから。相対的にまたドンて戻ってきたみたいなイメージなんすね。


深井:これほんとに流れであるのが、既存の一番でっかい勢力というか権力があるじゃないですか、将軍みたいな。それに対抗する人たちが出てきた時に、対抗する人たちと既存の人達どっちが天皇を担げるかっていうのがめっちゃ重要なんですよ。担げた方が勝つから。


樋口:スゲ〜。


深井:ただ幕府も錦の御旗を掲げられた時に負け決定して、その前に負けてんだけど、錦の御旗って言って要は勝てば官軍って言葉あるじゃないですか。あれはいわゆる官軍ていうの
天皇に認められた軍隊、あなたは天皇側だよって意味なんですけど、どっかのタイミングで幕府じゃなくて薩摩とかが官軍になっちゃうんですよね。


樋口:なるほどね〜、そうかそうか。


深井:交代したってのがすぐ分かる。日本の主勢力が交代した。


樋口:なるほどな、だから一貫してそうですね。天皇の座を取りに行くんじゃなくて、天皇に認められるという座を取りにいってる。


深井:そうそう、寄ってたかって。


深井:複雑じゃないですか、それってちょっと。あの面白いのがさ、幕末の時にイギリスとかアメリカが来た時に天皇と将軍を外人が理解するの、超むずかったらしいですよ。


樋口:いやオレ、それって小学校の時に日本の歴史って漫画を読むじゃないですか、全然理解できないんですよ、将軍。要は幕府と朝廷の意味と関係性が全く分かんないんですよ、小学生だったら。なんで偉いのに偉い人がこの人を…うわ〜ってなるんすよね。


深井:だから権威しか残ってないよね、天皇って。


ヤンヤン:権威、そうですよね。


樋口:ピンとこない人には権威と権力の差が分からないし。


深井:なんか会社で例えてみようか。成功するかどうか分かんないけど、会社で例えてみようっか。例えば上司がいますと。でも上司はなんの仕事も基本的にしてなくて、承認も与えてるんだけど全部事後報告でオッケーですみたいな。実務は全部その部下がやってて、その部下めちゃめちゃ有能でみたいな。その人がほぼ全部決めてて最後にこれでいいすか?っていったら良いよって言ってくれてるみたいな状態に近い。


樋口:近い。


ヤンヤン:会長も創業者だからね。


深井:そうね、その例えの方が分かりやすいね。


ヤンヤン:今の経営能力は別として、でも創業者だからねみたいな。


深井:創業者のおじいちゃんの会長みたいな感じ。


樋口:そうかそうか。


深井:たまーに株主総会に出てきて、全部いいよって言ってくれるみたいな。


樋口:でも意外とその一言で皆がゾワって動くっていうのもあるし。


深井:そうそう。


樋口:は〜、そういう関係なんですね。この話の中で一番うわぁ!ってなったのが、武士がどっから生まれたかって考えたことなくて。


深井:実はそれ、歴史学上ね、答え分かんないですよ。


樋口:そこもちょっとミステリーですよね。


深井:そこがミステリーなのがめっちゃおもろいなって。


樋口:もしかしたら宇宙からポーンて。


(笑)


樋口:ブシ。


(笑)


樋口:ズンって。


深井:その説もあるからね。


樋口:だから武士面白いなって思ったのが、自分で耕して自分で貯蓄をして、財を蓄えて力を蓄えて今まであった既存のところに対抗するようになったというイメージですよね、武士って。


深井:だけどそうですね、そうなんですけど僕たちのちっちゃい頃の教科書とかに結構書かれてたのが、いわゆる腐敗した貴族政治を倒す勢力として出てくる、みたいな書かれ方してるんですよ。それは全然嘘です。


樋口:ふーん。


深井:なんか要は朝廷の政治が腐敗してて、摂関政治とか上皇とかのアレでもう自分の思い通りにしてるみたいな。それを倒す勢力として出てきたみたいな感じなんだけど、全然それは違いますね。武家政権こそ貴族政治なんで。


樋口:うーん、なんか武家って何の為にあんなに力を蓄えてるというか、強くなってたんすかね。


深井:武家がなんで強くなってきたか。


樋口:なんかオレ分かんないですけど、強くなりたいって興味もすげえあったんじゃないかっていう、なんていうんですかね分かんないけど、空手やったりするじゃないですか、今の子ども達とかって。なんか分かんないけど世界一強くなろうとするじゃないですか、人間って。格闘技の世界ではボクシングの世界チャンピオンになりたいとか、なんかこう強くなりたいっていう意思って、人間って本能的にあるような気がしてて。そういうのもちょっとあったんじゃないかな。


深井:よう分からんですけどそこの領域は。武士は弓矢。結構刀って思われてるけど刀じゃなくて、馬術と弓を極めてる人として出てくるんですよ。武士の出方が、平安時代のさ武士とかって、弓の正確さがどんだけあるかみたいな逸話が結構残ってる。


ヤンヤン:那須与一とか。


深井:そうそう、あれが武士の教養なんですよ。


樋口:へ〜。


深井:反対に貴族とか和歌詠んでるじゃないですか。文化が違うんですよね、ちょっと。


樋口:だからそこも、極めたいとする人間の欲求というかそんなんもあったんじゃないかな〜って、僕勝手に想像して言ってるんだけど、なーんも説得力ないっす。


(笑)


ヤンヤン:血筋とか、さっき深井くんが言ったように血筋が全然優れてなかったから、成り上がるには腕っぷしかないっていうのはあったかもしれない。


樋口:僕思うに、なんか僕そういうのないんすね、血筋とか生まれ持ったものってないからそん中に自己をどうやって確立するかって、やっぱ力をつけるっていうのが一個あるんですよ。力をつけて自立したいってのがあるんですけど、そういう文化の中から生まれてきたのかなぁって勝手に思いましたね。


(笑)


樋口:すいません想像だけで話してるんで。結局じゃあ天皇と将軍とどっちが偉いっていうのは、もうなんか偉いとか偉くないとかじゃないですよね。


深井:さっきの会社のアレが本当一番分かりやすいと思うよ。創業会長でみたいな。建前上偉いのは会長ですよ。けど実質、中の構成メンバーから見た時に一番誰に気使ってるかで言ったら、本当の経営をしてる社長ですよね、当然。


樋口:っていうことですよね。じゃアレとかもそうなの?ローマ法王、ローマ。


深井:教皇。


樋口:ローマ教皇とかはまたどういう、


深井:あぁいいですね、ローマ教皇と対比したら面白いよね。


樋口:将軍、天皇とまたどうなんですか、どっちに近いんですか?


深井:えーとね、天皇に近いです。


樋口:は〜。


深井:近いか当以下で言ったら天皇に近い。


樋口:はいはい。


深井:ローマ教皇も、当然ローマ教皇自体が権力がを握ってる時期っていうのもあるんですけど、ローマ教皇も皇帝に対して任命したりとか、してるような立場として存在してる。


樋口:ふーん。


ヤンヤン:宗教のトップだしね。


深井:そうそう、宗教のトップって意味で祭祀を司ってる。祭祀を司ってるわけじゃないんだけど、宗教のトップっていう意味でも祭祀を司ってる天皇と近いですよね。ローマ教皇の場合は世襲じゃないからね、そこは全然違うんですよ。


樋口:そこが違うのでもだいぶ違うような気がしますね。


深井:ローマ教皇は選挙制ですから。枢機卿の選挙で決まるから。


樋口:へ〜、同じように見えても全然違って同じような役割をしてたりとか、流れと国の文化とかむちゃくちゃですね。


深井:千差万別というか、みんな違ってみんな良い。


(笑)


深井:それぞれ違う、みんな違うよね。それぞれ違います、ちょっとずつ違います。


樋口:ふ〜ん、なるほど。


深井:はい。


樋口:今回も色々と権力と権威とは何かとか、分かりやすい会長の例えとか出てきましたけど、次回はですね、いよいよ現代の天皇陛下について。


深井:そうですね、現代。そうか、侍以降でしょうね。


樋口:侍以降ですね、天皇についてまたちょっと、お聞き頂ければと思います。ありがとうございました。


深井・ヤンヤン:ありがとうございます。

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