#01 古代のソーシャルベンチャー起業家「墨子」

【ポイント】
①ソーシャルベンチャーの最大の課題は「理想と現実のギャップの大きさ」の処理の仕方
②現実に挑むだけの実力を持った状態で理想を説くが、世の中どころか弟子すらもその理想を理解できなかった
③しかし墨子は弟子に理想の押し付けはせず、理解してくれない彼らを排除もしなかった。ただ行動の化身となって城を守り、死ぬまで理想を説い続けた。


ヤンヤン:はい


深井:はい


ヤンヤン:では僕から質問を深井君に質問をするけど、今ソーシャルベンチャーって増えてて、利益を求めるっていうよりも社会の課題を解決する事を目指したベンチャー起業家が物凄く増えてるけれども、そういった中で深井君がこういったソーシャルベンチャーに関わっていく中で、何か感じた課題とかというのがもしあったら教えて欲しい。


深井:そうだね、ソーシャルベンチャーのやっぱり一番端的な課題は、目指してる理想の部分と。


ヤンヤン:理想?


深井:そうそう。今のある姿の現実の部分とのギャップを。


ヤンヤン:あぁギャップね。


深井:ギャップ凄いんだよね。


ヤンヤン:あぁ確かにね。


深井:それをどのようにして、社員とか経営者が、経営者は処理出来るんだけど社員が処理するのか。そのギャップをどうやって納得していくのかっていうのは、すげえムズい。


ヤンヤン:新しいモデルっていうか。


深井:そうそう。


ヤンヤン:作るって事だもんね。


深井:そうそうそう。要は既存のビジネスであったりとか既存の思考の中で、完結するものであればなんていうんだろうな、ステップが分かるから。そこに至るまでの理想まで、どういうステップでいくんだろうって事が、ある程度モデルケースもあるし成功してる人達が傍にいるから分かるじゃん。


ヤンヤン:うんうん。


深井:定点観測しやすいんだよね。今の自分の状態を評価しやすい。それは例えば、じゃあ僕がネット回線を売りましょうってなったとするじゃん。


ヤンヤン:そうだね。


深井:じゃあネット回線をやってるヤツの中で、その今の自分がどういう状況かっていうのは、ソーシャルベンチャーよりはだいぶ分かりやすいわけ。


ヤンヤン:うん、そうだよね。他にやってる人もいるだろうし。


深井:でもソーシャルベンチャーって、今までそのいわゆる民間とかが手出さなかったような社会課題を、民間が何らかの新しいビジネスモデルなり何なりを作って解決していきましょうって話になっていくので、近しいモデルケースがないことがとても多い。


ヤンヤン:なるほどね。


深井:だから評価が難しいし、ともすると自分が今やってる事は意味がないんじゃないか?これは結果に繋がらないんじゃないかっていう見方も簡単に出来てしまうわけ。ソーシャルベンチャーの活動って。


ヤンヤン:あーなるほど。


深井:で、しかもその社会活動として影響を与えるまでの潜伏期間がめちゃくちゃ長いので、本当に2、3年とかかかったりも平気でするから。ネット回線に2、3年って、あんまりなんないじゃん、ネット回線販売で。物販して利益が上がるまで2、3年かかりますってこともないんだけど、そうなりがちなんでそういう理想、自分がその社会活動、理想を掲げてる人達が集まってるからね。その理想と、じゃあ今実際自分達が出来てることと現実との距離を、どう埋めていくかが見えないって人って、そういう凄い悩みを抱えてる人はオレもすげえ見てきたし、その僕たちがやってる事業自体も理想遠いじゃん。コテンもソーシャルベンチャーではないけど歴史のデータベース作るの理想遠いので、そこもそうだよね。


ヤンヤン:そういったこう理想と現実の距離があまりにも遠い場合に、経営者としてどういう風な処理をしていけばいいの?


深井:そうね、えーと経営者としてっていうのと、社員に向かってどうするのかっていうのと、後社員がどうすればいいかってのと3つ。


ヤンヤン:なるほど、なるほど。


深井:意外とソーシャルベンチャーの経営者はこれに悩んだりあんまりしないわけ。勿論悩むんだけど、一番多分軽度なんだよねメンバーの中で。なんでかって言ったらもう理念に寄りまくってるから。もう出来ないとか出来るとかあんまり考えてない。もうやるつもりしかない。そういう人しかソーシャルベンチャーってそもそも、たぶんやんない。やりてぇって気持ちだけでずーっと突き進めます!みたいな。問題は社員の方が大変。


ヤンヤン:周りだよね。


深井:創業者でもないし、理想と現実のギャップを現場で、それこそより強く感じてしまうし。じゃあどうするんか?っていうのがあるんだけど、実は古代の中国、今から2500年前の春秋戦国時代の中国に、墨子って墨の子どもと書いて墨子っていう人がいて、僕はこの人の社会活動がとてもソーシャルベンチャーと構造的に似てるなって思ってて。


ヤンヤン:なるほど。


深井:オレはその人からすげぇ勇気もらったちなみに。この人のスタンスから凄く勇気を貰うっていう経験をした。


ヤンヤン:どういうところで?


深井:そうだよね、どういうところでかっていうと墨子の説明になるんだけどね。墨子ってすんげー戦国時代に生まれた。500年間くらいずっと中国ってその当時の中国って戦国時代だったんだけど。


ヤンヤン:そうだよね。


深井:もう皆で殺し合ってるわけ。その時代に墨子が生まれて、この人が言ったのが愛が大事だって言ってた。だから意味わかんないわけ、他の人からしたら。


ヤンヤン:北斗の拳みたい。


(笑)


深井:北斗の拳よりすごいと思う。なんだろうな、今に例えたらどうなるかわかんないんだけど、もう皆当たり前に戦争して殺し合ってるわけ。すっげー当たり前な中で超真面目な顔して、ホントに愛が大事だから愛で満たそうぜって、本気で言ってくる人がいるっていう凄さ。


ヤンヤン:場違い感だね。


深井:場違い感がすごい。おぉってなると思う、みんなね。っていう人が出てきて、今でもいるじゃんそういう人。


ヤンヤン:戦争はやめようって。


深井:いっぱいいるし、それこそヒッピーとかもそうだったじゃん。


ヤンヤン:なるほど。


深井:けど墨子とヒッピーの明確な違いがあって、墨子は戦争超強えんよ!


ヤンヤン:あーね。


深井:愛を唱えてて戦争とか皆やっちゃダメだと。もう愛で満たす。人のことを自分と同じように捉えたら戦争もなくなるし、国も治まるんだぞって言って、そういう考えを布教してるわけよね遊説家として。ただそこに終始するんじゃなくて、彼は非攻兼愛って呼ばれるんだけど、非攻ってのは攻めない、兼愛ってのは愛を兼ねるって書いて、この非攻の部分があって自分は理想は愛の世界を作りたいと。けど現実としてはみんな戦争してる。だからすげえ解離じゃん、こんなんソーシャルベンチャーより解離してる。


ヤンヤン:それどころじゃないもんね。


深井:それどころじゃない。けど彼はこの理想を全く捨てずにずーっと言い続けながら、この現実に立脚にした圧倒的なスキルを持ってるわけ。圧倒的なわけ。しかもそれがどれくらい圧倒的かっていうと、彼は戦争なくすことは出来ないから、せめて攻められてる城が落ちないようにしようとした。攻められてる城の所まで行ってあんたの城守ってあげるよって言ったんだよね。マジで?ってなるじゃん。最初多分信頼されなったんだろうけど、話すうちにホントにこの人すっげえ頭良くて、戦争できるんだっていうのが分かってくるわけ。戦力とか聞いてると。任せてみようってなっ。70戦無敗なんよ、この人。全部守り切ったんだよね。だからめちゃくちゃ強えの。


ヤンヤン:なるほど。


深井:守るだけだけど、完全に守り切れるわけ。全然落ちないみたいなことが出来て。そのスキルを持った状態で理念の話をずっとする。


ヤンヤン:なるほど〜、説得力っていうか。


深井:誰も聞いてないよ。


(笑)


深井:誰も理念の部分は聞いてないんだけど、僕がこの人から何を学んだかっていうと、理念を分かってもらうとか分かってもらえないとか、出来るとか出来ないっていう概念の外で、しっかりと毎日仕事をすごいしてるわけ。


ヤンヤン:現実にしっかりと向き合ってるわけね。


深井:普通ね、今の世界に生きてる人はそうだけど、現実に向き合ってる人は理想を捨ててるわけ大体。ほとんどの人間が。


ヤンヤン:そうだね。


深井:現実が過酷すぎて、理想なんて持ってたら精神が分離しちゃうので出来ない。


ヤンヤン:まぁそうだね。そっちの方がだってね、楽だもんね。


深井:楽だから。一方理想に燃えてる人はその逆で、理想ばっかり見て現実を見ずに現実を捨ててるわけ。


ヤンヤン:なるほど、なるほど。


深井:だからヒッピーみたいになるよね。戦争反対してるけど、具体的にどうやって戦争を無くしていくかって話は全然してない。


ヤンヤン:戦争なくそう!終わり!


深井:そりゃそうだろってなる。どうやって?って話になるんだけど、そこがない。


ヤンヤン:確かに確かに。


深井:この間を埋めようとしてる人達もいるんだけど、埋まらないから。埋まんないからみんな諦めてるんだけど、墨子がすげえところは、埋まんないけど諦めないところがすげえ。埋まってないわけ全然、ちなみに。けど諦めなかった。その結果どうなったかっていうと、確かに墨子が生きてる間は戦争はなくならなかった。誰もその墨子の話を聞かなかった。部下というか弟子が300人いたんだけど、300人中298人がマジで全然戦争とか愛とか、クソどうでもいいと思ってた。戦争の技術を学ぶためだけに墨子に行ってた。あと二人くらいは2%くらいは分かってくれてて、それに墨子が超感動するくらい。墨子の感動ハードルが下がってる。オレが墨子から学んだソーシャルベンチャースピリッツは、現実との解離があるけど絶対に諦めないっていうところと、墨子はそういう世界が実現できそうだからやってるわけじゃないんだよね。したいからやってる、あの人。出来るからじゃなくて。


ヤンヤン:打算的ではない。


深井:打算的じゃない。やりたいから止むに止まれず彼はやってる。その精神がしかも誰にも伝わってないんだけど、それも気にしながら諦めはしない。しかも現実のスキルは誰よりも高いわけ。この二つ超大事。これでどっちか欠けたら意味ないよ。どっちかの人なんて、死ぬほどいっぱいいるから。どっちも持ってる人がいないんだよね。


ヤンヤン:スピリッツと現実を対処する能力だよな。


深井:そのソーシャルベンチャーにいても全く同じ葛藤があるわけ。普段働いてて、これ出来るんだっけみたいになる瞬間もいっぱいある。これ無理じゃね?って瞬間もたくさんある。一方で理想に燃える瞬間もたくさんある。ソーシャルベンチャーも墨子と全く同じスピリッツ持ってたらたぶん良くて、諦めないんだけど現実の仕事というか、現実に立脚したスキルを行使していく。大事なこと言ってなかったんだけど墨子は。弟子も全然理解してない。墨子が生きてる間にはある意味戦争の技術しか伝えられてない。けど凄かったのはその後なんだよね。これが歴史の学ぶ面白さなんだけど、死んだ後が凄かったやん。死んだ後にこの人の思想はものすごく受け継がれて、凄まじい墨子集団が作られたわけ。生きてる間誰もこの人の話を聞かなかったのに、死んだ瞬間みんなあれ墨子が言ってたことって素晴しくない?みたいになった、死んだ瞬間。


ヤンヤン::なるほどね。


深井:2代目と3代目は、めちゃくちゃ理念特化型の凄まじい組織作ったの。


ヤンヤン:逆にそっちの方に振ってしまった。


深井:振り切って、いやもちろんアレだよ。戦争技術持った状態でだよ。


ヤンヤン:あ〜、なるほど。じゃあ彼が死んだ後に完成したって感じやね。


深井:完成はした。組織としては。社員もみんな、ほんとにどっちも持ってる状態まで達成して、最後どうなったかっていうと理念に振りすぎてみんな切腹みたいな感じの死に方、自殺した。一回失敗しただけで。一回失敗したんよ、3代目の時に城を守りきれんかったんよ。全員で自殺したんよこの人達。


ヤンヤン:武士か。


(笑)


深井:死なんでいいのにって思うけど振り切っちゃったよね、そっちにね。それがいいかは別として、経営者が抱えてる悩みは理念は、伝わりきれらないことがすごい。彼らの葛藤だよ、やっぱり自分ほどの温度感で持ってないからさ、みんな。


ヤンヤン:ほとんどがそう。


深井:そうそう。現実に立脚した意見をバンバン言われるわけ。それは分かってるわけ。分かってるけど思いがあるからそこに行きたいわけ、っていう状況があって、そこに関しては墨子がすごい参考になるし、墨子のメンタリティーがね。さっき言ったとこのどっちも捨てずに、しかも墨子は部下298人が全然理解してないことに一切キレないの、この人。


ヤンヤン:キレない?


深井:キレない。だから依存してないんだ。全く依存してないわけ。依存心があったら、彼らの部下に分かって欲しくて、この人たちがいないとそれができないとか思ってると、理解してもらえないことにキレ始めちゃうじゃん。


ヤンヤン:そうだよね。


深井:けど墨子は一切キレない。むしろ1%でも理解してくれたら超感動する。


ヤンヤン:それありがたいと思ってる。


深井:そのメンタリティを経営者は学んだ方がいいし、社員からすると、社員からするとどうなんだろうな。社員からするとどうなるんだろうね。社員もそういうメンタリティを持つしかないんだろうね。理想と現実をどっちも持つっていうと。


ヤンヤン:うーん、なるほど確かに。普通の熱いリーダーとかだったらなんで分かってくれねえんだよとか。


深井:なるなる。アレクサンドロスは確実にそうなったね。アレクサンドロスはマジでそうなったから、自暴自棄になったもんね。アレクサンドロスは当方遠征っていってペルシア帝国を倒した後、どんどんアジアに行きたい、もっと攻めたいって思ってて。けどその思いは全然自分以外は理解してくれなくて、途中で拒否られて、兵士にもう僕たちそれ以上行きたくないです。


ヤンヤン:人生で初めて拒否られて。


深井:今までずっとカリスマ性で説得できてたのに初めて拒否られて、アレクサンドロス自暴自棄になって、戦場に先陣で突っ込んで致命傷を負ってしまうみたいな感じだったから。全然墨子と違うメンタリティが。


ヤンヤン:ヒステリックになっちゃったんだね。


深井:ヒステリックになっちゃう。墨子は全然自分が言ってること誰が聞いてくれんでも怒りはしないんよ。


ヤンヤン:そうだね怒りもしないし技術を教えるもんね。


深井:技術も教える。惜しみなく、しかも教える。


ヤンヤン:なるほどね。


深井:あの人すごいよ。


ヤンヤン:その精神状態はなかなか今は。


深井:いや〜、あれは僕はだから、ソーシャルベンチャーに関わったからこそ、墨子のメンタリティーがいかに難しいかってことがよくわかる。だって一番戦争が嫌いな人なはず、あの時代の中で。


ヤンヤン:そうだな。


深井:その人が最も戦争に強いって、オレらに例えたらどういうこと?ってなるわけ。それってソーシャルベンチャーでも全く一緒でさ、ソーシャルベンチャーの人たちってみんな理念が強いから、よくないって思ってることがあるわけ。


ヤンヤン:社会の不正義だよね。心からよくない、そこに一番成立してるってことだから、墨子で言ったら。それ相当すげえよ、やっぱ。そのよくない人たちと最も付き合える状態。彼らにとって最も価値がある状態だから、すげえよ。


ヤンヤン:う〜ん、なるほどね〜。


深井:だねって話。解決になるかどうか分かんない。


ヤンヤン:ということで、ソーシャルベンチャーで成功したかったら墨子に学べと。


深井:学んだ結果どうなるんやろうね、分かんないけど(笑)


ヤンヤン:自分が死んだ後にソーシャルベンチャーが成功してるって思った方がいいんじゃない。


深井:死ねばいい。


(笑)


深井:ソーシャルベンチャーの経営者はそうだね、2代目に期待って感じか。


ヤンヤン:そうだね。


深井:そうだね。


ヤンヤン:だってそれだけギャップがあるから、自分の代で完遂させることに思わなくてもいいかもしんない。


深井:自分の代だけで完遂させよう、完遂させるつもりで全部やってるけど完遂できなくてもキレないってこと。


ヤンヤン:そうそう。なるほど了解です、勉強になりました。

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